マンションでいま続発する外壁タイルの不具合は、想像を越える大問題

  • Update: 2021-09-24
マンションでいま続発する外壁タイルの不具合は、想像を越える大問題
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さくら事務所 編集部

あなたがマンション居住者、もしくは投資用マンションのオーナーだったとして、マンションの外壁タイルが浮いてしまった、もしくはすでに剥がれてしまったので、管理組合にて補修費用を払った経験はあるだろうか?

「そんなの当たり前だろ!」と結論を急ぐ前に、少し冷静になって考えてもらいたい。単純にその費用は払ってしまって良かったんだろうか?

もしかしたら、あなたはそれによって非常に大きな損失を被ったかもしれない。でももしかしたら、それはまだ間に合うかもしれないのだ。なぜ損を被ったのか、そしてなぜまだ間に合う可能性があるのか。その疑問について解消していきたい。

中古マンションホームインスペクション

外壁タイルの不具合が続発している

外壁タイルの浮き

現在、将来のことを考え、不動産投資先として投資用マンションいわゆるワンルームマンションに投資をしている、もしくは検討されている方は多いかもしれない。不動産投資で大事になってくる要素は間違いなく資産価値だ。その資産価値を明らかに毀損する可能性があるのが、今回取り上げている外壁タイルの不具合の話だ。

なぜ、当コラムで今外壁タイルの不具合について改めて警鐘を鳴らそうとしているのか。それはいわゆる投資用マンションの外壁タイルの不具合について問い合わせが激増しているからだ。

さくら事務所では、2005年から外壁タイルの不具合に関する調査を始め、2005年から2020年までのあいだで投資用マンションの外壁タイルの不具合を実際に調査した事例は2件だった。

しかし2021年になると、すでにさくら事務所だけでも4件の問い合わせが来ている。約15年で2件だったものが、たった1年(約6ヵ月間)ですでに4件も問い合わせがあることは異常でしかない。

これをハインリッヒの法則(1:29:300の法則)に照らし合わせれば、潜在的に外壁タイル不具合予備軍と目される件数は1000件以上存在している計算になる。

マンションは購入者が居住をしている場合と、今回のテーマになっているように投資用にマンションを区分所有で購入し、それを賃貸で貸すことで運用していくケースがある。

今回のケースのような外壁タイルの浮きや剥離などの不具合が生じた場合、購入者=居住者である場合は、即座に理事会や総会が開催され、すぐに対応を協議するケースが多い。

しかし、投資目的でマンションを購入して賃貸物件として運用するケースでは、購入者≠居住者のケースが多く、排水などのトラブルとは違いすぐに生活に直結しないことから、前者と違いすぐに対応を協議されないことが懸念となる。

しかもさくら事務所で調査したケースはいずれも投資用マンションでありながらも、理事会が機能しているマンションからの問い合わせに対して調査を実施したケースで、すべての不具合で施工不良が確認された。投資用マンションでは管理会社がマンションの管理運営を代行しているケース(*第三者管理方式)も多い。

その場合、仮に外壁タイルの不具合が見つかっても原因などについて調べることなく、管理会社が管理組合が自腹で費用を捻出して修繕工事を行うことを決定し、その負担を各区分所有者に負わせた上で修繕しているため、実態を完全には把握することが難しい。

大規模修繕費用と同じ負担が必要

外壁タイルの補修工事

外壁タイルの不具合というフレーズだけだとちょっと大事に聞こえないが、実際に掛かる費用を考えると、これがとてつもなく大きな損害になることが分かる。

要は、不具合の程度によっては大規模修繕工事と同じだけの金額が費用として掛かってしまう可能性が限りなく高い。「大規模修繕工事」と「外壁タイルの不具合」の言葉のニュアンスで両者はまったく規模感が合わないかもしれないが、修理する方法が、両者とも足場を組んで修理を行うことが基本的に同じなので、結果的に同じような費用が掛かる。

1棟40戸程度の投資用マンションで考えた場合、足場を組み立て、外壁タイルを修繕する場合に掛かる費用は、3500万円~4000万円程度になってしまうことも少なくない。

これは世帯あたり90万円~100万円の負担になり、一般的に12~15年ごとに行われる大規模修繕工事1回分と同程度の費用になる。つまり、もし外壁タイルの不具合が施工不良が原因で発生した場合に、これを誤魔化されると、大規模修繕工事1回分程度のかなり重い損失を被ることにつながるのだ。

投資用マンションで重視されるのは利回りだが、この大きな損失を利回りに当てはめると、所有する期間によっては、0.5%程度も利回りが変わってしまい、非常に投資として由々しき問題となってしまう。

だからこそ、少しでもおかしいと感じた場合は、交渉することが必要になってくる。

交渉する余地はたくさん存在している

外壁タイルの打診調査

基本的にマンションで外壁タイルに不具合があった場合、それを補修するためのアフターサービスは存在しているが、外壁タイルの一般的なアフターサービス期間は2年、長い場合でも最大5年しかない。現在見つかっている外壁タイルの不具合は、竣工後マンションの引き渡しからすでに7年以上経っている物件が多い。

うん、えっ保証期間が切れている。そう、保証期間が切れているので、アフターサービスを使っての補修工事は無理な場合が多いと考えられる。管理会社に問い合わせても、「アフターサービスの期間が終了しているため、管理組合で対応してください。」となる。

次に一般的に知られているのは、瑕疵担保責任として10年目まで分譲会社と施工会社には施工不良の事案として異議を申し立てることが出来る。また、住宅品質確保促進法(品確法)も10年の保証があることが認められているが、こちらの場合は外壁タイルの不具合は対象外になっている。

条件付きではあるけれど、10年目以降は施工会社を不法行為責任で竣工・引き渡し後20年目まで交渉することが出来る。このケースの場合は最長20年目まで交渉を行うことが可能だ。ただ、条件付きと書いているのは、施工会社が破産したり会社更生法が適用された場合は追求をすることが出来ない。

外壁タイルの不具合の最終的な交渉では、掛かった費用の全額を負担してもらえるケースはほぼないという。「施工不良なんだから全額負担だろ!」と思われるかもしれない。

しかし、何もしなければ100%費用負担で払っていた可能性があるものが、半分もしくは半分以下の費用負担になったとしても、その金額が大きければ大きいほど大きな意味を持ってくる。

さらに辛いことは外壁タイルの不具合が起きる時期は、自ずと最初の大規模修繕工事を実施する年に近い。外壁タイルの補修だけでも負担になるなか、さらに大規模修繕工事の負担が掛かる。これは本当にまったく居住者に非がない場合は地獄でしかない。

そのため、このコラムをここまで読んできて、外壁タイルの不具合について、何か思い当たるフシのある方々がいれば、どんな些細なことでも、できるだけ早く第三者によるアドバイスを受けてほしい。管理会社が管理運営を代行しているマンションは、管理会社にまず連絡する前に、第三者機関に相談することをおすすめしたい。