大阪府北部地震の教訓~ブロック塀のチェックポイント

  • Update: 2022-06-17
大阪府北部地震の教訓~ブロック塀のチェックポイント

朝方の通勤・通学時間帯に発生した大阪府北部地震

 大阪府北部地震は2018年6月18日、月曜日の朝7時58分という通勤・通学時間帯に起きた地震でした。大阪府北部を震源とする地震、大阪北部地震などと呼ばれることもあります。地震の規模はマグニチュード6.1、最大震度6弱大阪市北区高槻市茨木市枚方市箕面市で記録しています。消防庁のまとめでは、死者6名(大阪市・高槻市で各2名、茨木市・箕面市で各1名)、重傷者62名、軽症者400名、住家の全壊21棟、半壊483棟と報告されています。

 大阪府北部地震で亡くなった方では、塀や家具の下敷きになって亡くなった方が目立ちました。高槻市では、小学校のブロック塀が倒壊し、登校中の小学生児童が巻き込まれて亡くなるという痛ましい事態が発生しました。大阪市東淀川区でも児童の見守りに行く途中だった男性が塀の下敷きになって亡くなり、高槻市内では倒れたタンスに挟まれて女性が亡くなる事例などが報告されています。

 強い地震動は数秒であったとされていますが、小刻みな短周期の揺れであったとされています。古い木造住宅や背の高いビルより、新しい新築木造住宅や、ブロック塀、家具などが揺れやすい揺れ方の地震であったと考えられます。

大阪府北部地震における家屋被害・遠景
(2018年6月20日 横山芳春撮影)

ブロック塀の倒壊した地震

 高槻市寿栄小学校の事例では、約1.9mの高さがある既存プール基礎の上に、8段(約1.6m)のブロック塀が詰まれていました。建築基準法施工令では、ブロック塀の高さも「2.2m以下」とされていましたが。プール基礎を含めて地面からの高さは3.5mとなっていること、また「高さ1.2mを超えるブロック塀」では、「控え壁」の設置が義務づけられていましたが設置されていないことから、建築基準法違反であったという報道がありました。著者(横山)は、地震発生から2日後に現場を訪れましたが、現地に立って思わず涙が込み上げてきたことを記憶しています。

高槻市・寿栄小学校におけるブロック塀の倒壊
(2018年6月20日 横山芳春撮影)

 ブロック塀の被害が多かった地震はほかにもあります。同じ6月に発生した地震であり、耐震基準の改正にもつながった1978年6月12日に起きた宮城県沖地震では、人の移動の多い夕方に発生した地震であったこともあり、死者28名のうち18名(約64%)がブロック塀の倒壊により亡くなった方でした。

 2016年4月に起きた熊本地震、今年3月に起きた福島県沖の地震は夜間に発生した地震でしたが、ブロック塀の倒壊は多く発生していました。もし人の活動の多い時間帯に起きた地震であったら、ブロック塀の倒壊による人的な被害が多く発生していたことも懸念されるでしょう。古い基準で作られたブロック塀はいまだに多く、今後の大きな地震の際に被害をもたらすことも想定されます。自宅にブロック塀がある、またこれから買おうとする家にブロック塀がある方は、無関係ではありません。

熊本地震におけるブロック塀の倒壊事例
(2016年4月16日,熊本県益城町 横山芳春撮影)

ブロック塀のチェックポイントは?

 ブロック塀のチェックポイントは、主に3つあります。まず、①建築基準法に適合しているか。次に②ぐらつきやがたつきがないか目視に加えて触って確認、最後に、とくにブロック塀のある物件を購入しようとするときには、③所有者が誰であるのかを確認する、この3点です。それぞれ、詳しく解説していきましょう。

1.建築基準法に適合しているか

 ブロック塀は、建築基準法の適用を受けます。高さや厚みなど主なチェックポイントについては、国土交通省が点検の際のチェックポイントを公開しているので参考になります。6番目の鉄筋の有無はプロの目での検査が望まれますが、それ以外の項目はメジャーを持っていけば、誰にでも確認することができます。

 チェック項目は以下の通り、塀の高さ、厚さ、控え壁(ブロック塀の背後にある突出した壁で、地震や風で倒壊することを防ぐ)があるか(高さ1.2m超の場合)、基礎があるか、併せて、ブロック塀が健全かについてには、塀に傾きやひび割れがないかついて確認をしましょう。

 

国土交通省によるブロック塀点検のチェックポイント
国土交通省HPより

 ブロック塀に用いるコンクリートブロック1段の高さは、標準的には19㎝です。1段の高さがわかると、何段あるかで高さの目安をつけることができます。例えば、「控え壁」の必要な高さ1.2mの目安は6段、高さ制限の2.2m以下は、11段以下として目安にできます。7段のブロック塀(高さ約140㎝)で控え壁がない場合は、現行の基準を満たしていないことになります。控え壁があっても間隔が3.4m以上ないかを確認しましょう。宮城県沖地震の被害を受けた1981年建築基準法改正では、高さの基準が厳しくなるなどの変更がありましたが、古い市街地ではそれ以前のブロック塀もまだ多く見受けられることが現状です。

各項目を抜き出すと、以下の通りになります。チェックの際に活用ください。

ブロック塀のチェック項目

□ 1.塀は高すぎないか 
 塀の高さは地盤から2.2m以下か。

□ 2.塀の厚さは十分か
  塀の厚さは10cm以上か。
 (塀の高さが2m超2.2m以下の場合は15cm以上)

□ 3.控え壁はあるか。 (塀の高さが1.2m超の場合)
  塀の長さ3.4m以下ごとに、塀の高さの1/5以上突出した

□ 4.基礎があるか
  コンクリートの基礎があるか。

□ 5.塀は健全か
  塀に傾き、ひび割れはないか。

□ 6.塀に鉄筋は入っているか<専門家に相談しましょう>

 

2.目視と合わせて実際に触って確認

 敷地内のブロック塀の健全性は、目で見るだけでなく、実際に触ってみることで確認することをお勧めします。見た目でわかるひび割れや傾きがなくとも、触ってみるとぐらつき揺れ破損などがある状態になっていることがあります。

 大きなぐらつきや揺れがある場合は、地震などによる倒壊も懸念され、補修程度ではなく撤去して立て直しなどが必要な場合もあります。目視や触って確認する際には、表側、裏側だけでなく両側から確認しましょう。特に、大きなひび割れは劣化も進め、安全性にも影響するので、早めの補修などを行うことが望ましいです。

 

3.所有者は誰なのかを確認

 ブロック塀は隣地との敷地境界にあることも多く、敷地内のものか、隣地のものか、また敷地内と隣地の双方にまたがっていて、共同所有になっている場合があります。とくにブロック塀がある物件を購入しようとするときには、所有者が誰になるのかを良く確認しておくと良いでしょう。ブロック塀の劣化、破損などがある場合には、補修撤去の費用が売主負担か、買主負担のいずれとなるか、また買主負担での撤去が必要な場合、どれくらいの費用がかかりそうかは確認しておくことが望ましいと言えます。

 既に所有しているブロック塀の場合、倒壊や破損があった場合に、人や物を傷つけてしまったら、(正しい管理ができていなかった場合など)所有者としてその責任を問われる可能性もあります。ブロック塀が敷地内にある場合は、撤去やフェンスへの変更などは自己負担により可能です。できる限り、事前に隣地所有者に話をしておくとトラブルが発生しづらいでしょう。

 隣地側にブロック塀がある場合、今にも壊れそうな危険があるというような極端な場合を除くと所有者の同意がない撤去や修理などはできません。また、ブロック塀が隣地との境界部にあり、共同所有になっている場合には、双方の同意なくして撤去などはできません。いずれも、日ごろから隣地所有者との良好なコミュニケーションを密にしておくことが望ましいです。

補助金・助成制度も活用して倒壊の防止を

 以上、ブロック塀は地震で過去に被害が繰り返されてきたこと、またチェックするべきポイントについて解説しました。、ブロック塀は地震時の倒壊が問題となることから、耐震対策や除去、建て替え工事費用に関して補助金助成制度を設けている自治体もあります。いずれも要件が細かく設定されている場合が多いですので、事前に内容をよく確認したうえ、担当者への相談や申請などが必要かなど、良く確認しておくと良いでしょう。

 なお、モルタル塗りなどを施されたブロック塀では、一見するとコンクリートブロックの継ぎ目がみえないため、ブロック塀に見えない場合もあります。このようなブロック塀も、地震時には倒壊の危険性はあり、過去の地震でも実際に倒壊している事例があります。とくに物件を購入しようとする際に塀がある場合には、良く確認しておくと良いでしょう。

 熊本地震におけるブロック塀の倒壊事例(横山芳春撮影)

 以上、地震時に倒壊が懸念されるブロック塀のチェックポイントについて説明してきました。「自分だけでは不安、よくわからない」というときには、ホームインスペクター住宅診断士)や建築士など、建物の専門家に相談してみることも適切です。

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