新築なのに床が傾いている⁈ その要因と未然に防ぐ方法を解説

  • Update: 2023-07-31
新築なのに床が傾いている⁈ その要因と未然に防ぐ方法を解説

新築住宅に「床の傾き」が見られるケースは決して少なくありません。弊社による新築工事中ホームインスペクション(第三者検査)でも、3〜4%の新築住宅に床の傾きが確認されています。

(出典:国土交通省

また国土交通省によれば、住宅瑕疵担保保険における保険事故の発生部位のうち「構造」が占める割合は7%。この全てが床の傾きとは限りませんが、構造面にも一定数、瑕疵(かし:欠陥や不具合)が見られているようです。

本記事では、ホームインスペクターの友田雄俊が、新築住宅の床が傾く要因や未然に防ぐ方法を解説します。

新築工事中ホームインスペクション(第三者検査)サービス

新築住宅の床が傾むく3つの要因

新築時に床が傾いてしまう要因は、次の3つに大別されます。

1.施工精度

まずは、施工精度です。家は人が建てるものですので、たとえば木材同士の間に隙間が空いてしまったり、段差ができてしまったりすることもあります。一つ一つは微小な誤差だったとしても、それが積み重なって「傾き」という形で現れる可能性があります。

2.材料の凹凸や反り

木材は自然素材ですので、多少の凹凸や反りが見られるものです。凹凸や反りが見られた場合、本来であれば現場でうまく調整して施工していくべきものですが、それを妥協したり、見落としたりすると、床の傾きとなって現れてしまいます。

3.地盤沈下

建物全体を支えている地盤が沈下することによって、床に傾きが出ることもあります。家を建てる前の地盤調査や地盤改良の効果は「絶対」ではありません。地盤調査では、土地に鉄の棒を刺して硬い地盤まで到達するまでの距離などを見ていきますが、基本的には敷地4隅と中央付近の計5ヶ所で行います。言ってみれば、5ヶ所以外の地点の地盤は調査できていないことになります。従って、どんな場所であっても、地盤沈下により床が傾いてしまうリスクは一定程度あるといえるのです。

床が傾いていることによるリスク

床の傾きは、どんな建築物でも一定程度は見られます。しかし、傾斜が3/1000(1mに対して3mmの傾斜)を超えてくると、次のような事象が起こりやすくなります。

家具のガタつき・床鳴り

床が傾むく3つの要因のうち、施工精度や材料に原因があって局所的な場合は、ただちに倒壊の恐れがあるなど、重大な事象を誘発するようなリスクはほぼありません。しかし、床の傾きが局所的なものであったとしても、家具を置いた場合にガタついたり、歩くときしんで床鳴りがしたりすることがあります。

健康への影響

傾きの程度や住んでいる方の感覚にもよりますが、家が傾いていることで、めまいや自律神経の失調、気分が悪くなる……といった健康被害が出ることもあります。実際に傾きを感じていないとしても、傾いている場所で長期間暮らしていることで、徐々にこういった症状が出てくるケースも見られます。

建物の安全性や耐久性の低下

床の傾きが地盤沈下による場合や、施工精度が広範囲に著しくわるい場合には、大規模地震が起きた際に想定している耐震性が発揮できなくなるなど、建物の安全性や耐久性に影響を与える可能性があります。

地盤沈下は「即時沈下」と「圧密沈下」の2つに大別されます。簡単にいえば、即時沈下は築後急激に沈下するケース、圧密沈下は長期的にじわじわ沈下していくケースを指します。いずれにしても進行の正確な予測は難しいことから、すぐに直すべきか、経過観察していくべきか、傾きの程度を考慮して個別の検討が必要になります。

ただ、弊社の新築工事中ホームインスペクション(第三者検査)でも、地盤沈下が要因と考えられる床の傾きが見られた事例はごく少数。ほとんどが、施工や材料の精度に伴う誤差による局所的な傾きです。

資産価値の減少

家の傾きは、物理的な瑕疵(かし:欠陥や不具合)に該当します。雨漏りや設備の故障など、ただちに生活に支障をきたすものではなかったとしても、傾きの程度によっては一定数の買手が避けることになりえることから、資産価値の減少にも繋がる可能性があります。

床の傾きは簡単に直せるものなの?

局所的な床の傾きであれば、施工後に比較的、容易に直せる場合もあります。ただし、簡単に直せるのは、傾きの要因が床下にあり、なおかつ床下点検口があって床下に進入することが出来る場合に限られます。

比較的、容易に直せるケース

床の傾きの要因が床下にあるというのは、床下にある「鋼製束(こうせいづか)」という床を支えるつっぱり棒のようなもののテンションが一部強くなっている、あるいは緩んでいる部分があるということ。この場合、床下に潜って鋼製束のテンションを調整してあげることで、床の傾きは簡単に解消できます。

直すために大掛かりな工事が伴うケース

一方、次のようなケースでは、床を剥がすなど大掛かりな工事をしなければ傾きは解消できません。

  • 床下に傾きの要因があるにもかかわらず床下点検口がない、あるいは床下に進入することが出来ない
  • 床の傾きが床仕上げや下地合板の施工精度による場合
  • 床の傾きが材料の凹凸や反りによる場合
  • 床の傾きが地盤沈下による場合

大掛かりな工事が伴うときは誰が費用を負担するの?

新築住宅には、引き渡しから10年間の保証が付帯しています。これは法律で定められているため、例外はありません。しかし「全ての床の傾き」がこの保証の対象に入ってくるかというと、そういうわけでもありません。

「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づく住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準には、床の傾きについて次のように明記されています。

レベル

事象

瑕疵(欠陥・不具合)が存する可能性

1

3/1000未満の勾配の傾斜

低い

2

3/1000以上6/1000未満の勾配の傾斜

一定程度存在する

3

6/1000以上の勾配の傾斜

高い

たとえば「レベル1(1mに対して3mm未満の傾斜)」に収まる程度の傾きに対しては「許容範囲」とする施工会社が一般的です。その場合、修繕費用は施主側の負担となるでしょう。また、局所的な範囲における判断をするための基準ではないため、例えば床については3m程度離れた点同士の高低差が3/1000未満かどうかという観点になることにも注意が必要です。

「新築工事中ホームインスペクション(第三者検査)」で床の傾きを未然に防ぐ!

施工後に床の傾きを直すには、一定の費用や手間がかかるケースもあります。だからこそ、新築工事中にチェックすることが重要になってきます。

施工中の調査で床の傾きが発覚すれば、多くの場合、仕上げの工程で是正できます。また、床の傾き以上に発生頻度の高い壁や柱の傾きについても、施工中に発見できれば完成までに解消できます。

さくら事務所の新築工事中ホームインスペクション(第三者検査)では、傾きだけでなく、基礎の施工から防水・防蟻処理、断熱材の充填の状況、耐震性にも関わる内装下地の種類やビス留めの間隔なども、ご要望に応じて確認しています。

申込をするベストなタイミングは、着工の2〜4週間前です。しかし、着工後でも工事の途中からでも検査を受けることも可能なため、ぜひ無料相談からご連絡ください。いつでもご利用可能です。大切な家を守るための新築検査は、さくら事務所にお任せください。