建ぺい率とは?容積率との違いなど家づくりで知っておきたいポイントを解説!

  • Update: 2023-07-10
建ぺい率とは?容積率との違いなど家づくりで知っておきたいポイントを解説!

理想の住まいを建てる際には、建築に関するさまざまな制限を把握することが重要です。代表的な制限に建ぺい率が挙げられます。

建ぺい率とは敷地面積に対して、どれだけのスペースを建物が占めるのかを表した指標です。建築基準法により建物を建てるエリアによって上限が設定されています。

建ぺい率は、上限を守らないとさまざまな問題が発生する可能性があるため、家づくりにおいても重要な指標です。

また建ぺい率に似たものに容積率と呼ばれる指標があったり、そのほかにもさまざまな建築制限が存在します。理想の家を建てるためには、制限をしっかり把握し、計画段階からの適切な対応が必要です。

そこで今回はこれから家づくりを行う方向けに、建ぺい率の概要を中心に容積率との違い、家づくりに関わるその他の建築制限について、わかりやすく解説します。

建ぺい率とは?

建ぺい率は建築計画の制限で、敷地内の空きスペースを確保するために用いられます。計算には建築面積と敷地面積と呼ばれる建物と土地の面積を用いて算出するので、計算方法を理解すれば、自身でも計算可能です。

建ぺい率の目的と計算方法について、一般の方でもわかるようにわかりやすく解説します。是非参考にしてください。

建ぺい率の目的

建ぺい率で建築計画を制限する目的は、用途地域に応じて防火と良好な住環境に配慮し、敷地内に通路や駐車場などの空きスペースを確保するためです。

それぞれの建物が敷地いっぱいに建ってしまうと通風、日当たりが確保できなくなってしまいます。

また、万が一火事が発生した際に隣地に燃え広がる可能性があがったり、避難経路が確保できないなど防災面の問題が起こりうるでしょう。

つまり建ぺい率は適切な空きスペースを敷地内に確保し、街の安全性と環境確保を主な目的としているのです。

建ぺい率の計算方法

建ぺい率は以下の計算式で求められます。

建ぺい率(%)=建築面積/敷地面積×100

建築面積、敷地面積の意味はそれぞれ以下の通りです。

  • 建築面積:建物を真上から見たときの面積
  • 敷地面積:建物を建てる土地の面積

上記の式を用いて自身の建物の建ぺい率が求められます。

建ぺい率が建物を建てる土地に定められた建ぺい率の上限を超えていないかの確認が必要です。

建ぺい率の上限は地域によって異なります。地域ごとの都市計画で決められた用途地域によって建ぺい率が変動するので、あらかじめチェックしておきましょう。

容積率とは?

容積率も建ぺい率同様、建築計画を制限するために用いられる指標です。建物の大きさを制限して、街の快適な環境を守るためにエリアごとに上限が決められています。

容積率は延床面積と敷地面積を用いることで計算が可能です。

建ぺい率同様に一般の人でもわかるように目的と計算方法を中心に容積率について解説します。

容積率の目的

容積率は建物の規模を制限するのが目的です。

たとえばあなたが一定規模の土地を持っていたとしましょう。その土地に賃貸マンションを建てることになった場合、できる限り多くの住戸を作って家賃収入を増やしたいと考えるかと思います。

しかし、さまざまな建物が高層化してしまうと街に入ってくる人口が急激に増加する可能性があります。実際に人口が増えなかったとしても、許容人口が増えると交通量が増える可能性を見越して、道路の計画や交通機関の整備が必要です。さらには人口規模に合った下水の処理能力などのライフラインも改善しなければなりません。

建物の規模が大きくなると同時に、都市施設も強化しなければならなくなります。容積率は建物規模の規制によって、街の人口規模をコントロールしているわけです。

容積率の計算方法

容積率は以下の計算式で求められます。

容積率(%)=延床面積/敷地面積×100

延床面積とは簡単に説明すると、建物各階の床面積の合計を指します。

この計算式で求められた数値が計画地に定められた容積率の上限を超えないように計画しなければなりません。

なお、容積率の上限は用途地域による制限(指定容積率)と敷地に接している前面道路の幅による制限(基準容積率)の低い方になります。

建ぺい率との違い

建ぺい率と容積率の違いは計算対象の違いです。

建ぺい率は建築面積、容積率は延床面積を、それぞれ敷地面積で割って求められます。

それぞれ図で表すと以下の通りです。

建ぺい率と容積率

出典)国土交通省「市民景観まちづくりリーフレット⑥」

https://www.mlit.go.jp/crd/townscape/gakushu/data3/leaflet06.pdf

先に述べたように、建ぺい率は敷地の空きスペースの確保、容積率は建物規模のコントロールと、それぞれの目的も明確な違いがあります。

建ぺい率・容積率には緩和条件がある

先に述べたように、建ぺい率や容積率には、それぞれ上限が定められています。そのため中には上限を守るために要望を諦めなければならない場合もあるでしょう。

しかし、もしかすると建ぺい率・容積率の緩和条件をうまく活用すれば諦めようとしていた要望が叶えられるかもしれません。

ここからは建ぺい率・容積率の緩和条件について解説します。

緩和条件とは

緩和条件は建ぺい率・容積率ともに複数存在し、それぞれ以下のような条件が存在します。

【建ぺい率】

  • 角地緩和
  • 防火地域に耐火建築物を建築する際の緩和
  • 地下室の緩和

【容積率】

  • 特定道路、計画道路による緩和
  • 屋根付車庫の緩和
  • 地下室の緩和

これらを大きな括りでまとめると、「立地条件による緩和」と「間取り計画による緩和」の2つに分けられます。

立地条件による緩和は建物が特定の角地や道路に立地する場合や、火事を防がなければならない地域に火事に強い建築物を建てる場合に建ぺい率や容積率が緩和されるケースです。立地条件による緩和は専門的な知識を持っていないと、緩和条件に合うかどうか判断しづらい内容です。

対して間取り計画による緩和は一般の人でも判断可能なので、緩和を生かした家づくりができます。

緩和条件を利用した家づくり事例

続いては間取り計画による緩和はどんなものなのか、事例をあげて解説します。

今回ご紹介する事例は以下の通りです。

  • バルコニー・庇などによる緩和(建ぺい率)
  • 地下室による緩和(建ぺい率・容積率)
  • ロフト・屋根裏空間による緩和(容積率)
  • 吹き抜け空間による緩和(容積率)
  • インナーガレージによる緩和(容積率)

それぞれ詳細を見てみましょう。

バルコニー・庇・出窓

バルコニー・庇などのような、建物の柱や壁から突出した部分に関しては、1m以内であれば建築面積に算入されないといった緩和措置があります。この緩和を活用すれば部屋を広くできます。

また出窓に関しても下記条件を満たせば建築面積に算入されないので、建ぺい率を増やすことなく部屋を広く見せるのが可能です。

  • 出窓の下端が床面から30cm以上の高さであること。
  • 出窓が周囲の外壁面からの水平距離が50cm以上突き出ていないこと。
  • 出窓部分の見付け面積の1/2以上が窓であること。

引用)法第92条、令第2条第1項第2号 出窓の建築面積の算定

地下室

建物内に地下室を計画する場合は面積の緩和が利用できます。

具体的な緩和条件は以下の通りです。

  • 建物の地下部分は建築面積に算入されない
  • 住宅の地下室は延床面積の3分の1を限度に容積率の延床面積から除外

厳密には地上に1m以上地下部分が出ていなければ建築面積から除外されるので半地下のような空間でも建ぺい率が緩和されます。

ロフト・屋根裏空間

ロフトや屋根裏部屋などの空間は天井高さを一定以下にすると容積率の緩和が受けられます。

具体的な緩和条件は以下のとおりです。

  • ロフト・小屋裏部屋の直下面積の2分の1を限度に容積率の計算から除外
  • ただし天井高さは1.4m以下とする

この緩和をうまく活用すれば、限られた空間を有効活用して収納部屋や子供の遊び場などが計画できます。

吹き抜け空間

吹き抜けとは上階との「へだて」である天井と床を取っ払い、上下階が繋がったひとつの空間を指します。リビングや玄関に用いるケースが多く、天井高が高く、日光も取り入れやすくなるため開放的な空間を演出できます。

吹き抜け範囲は床がないため延べ床面積に算入されません。また吹き抜けに階段が隣接し、階段の吹き抜け側に壁がなく手すりのみの場合、階段部分も吹き抜けと見なされ、延床面積からは除外できます。うまく活用すれば容積率の上限を超えることなく開放的な空間を計画可能です。加えて他の部屋も吹き抜けがない間取りと比べて広く計画できる可能性があります。

インナーガレージ

建物の一部にガレージを取り込んだインナーガレージ。セキュリティ性はもちろん、お気に入りの車を室内から眺めたり、日光や雨から大事な車を保護できるなどさまざまなメリットがあります。

実はインナーガレージの面積もその他の緩和条件と同様に、容積率の延床面積から除外が可能です。

具体的にはインナーガレージは建物の延床面積の5分の1を限度に除外できます。

つまりインナーガレージに容積率を圧迫されることなく、住居スペースを計画できるわけです。

その他の知っておきたい4種の建築制限

ここまで建ぺい率と容積率について解説してきました。実はそのほかにも建築制限がいくつか存在します。

具体的には以下の制限が挙げられます。

  • 斜線制限
  • 日影規制
  • 絶対高さ制限
  • 高度地区制限

建ぺい率と容積率の上限をクリアしていても、上記制限に引っ掛かる可能性が考えられます。

それぞれについて概要をわかりやすく解説します。是非参考にして下さい。

斜線制限

斜線制限とは名前の通り、特定の点から一定の角度で斜線を引いた時に、建物が車線から飛び出さないように、通風、採光等を確保し、良好な環境を保つために定められたルールを指します。

斜線制限には以下の3つが存在します。

  • 道路斜線制限
  • 北側斜線制限
  • 隣地斜線制限

ただし隣地斜線制限はビルやマンションなど中高層の建物の計画時に関係する制限なため、戸建て住宅の場合は道路斜線制限と北側斜線制限のみ検討すれば問題ありません。

日影規制

日陰規制とは冬至の日を想定し、特定の範囲内において、一定時間以上の日陰が発生しないように建物の高さを規制するルールを指します。

規制される建築物や日影時間は用途地域によって変わります。

一般的な2階建ての住宅の場合は規制対象外ですが、3階建ての場合は用途地域によっては規制対象になり得ますので、注意が必要です。

絶対高さ制限

日本の建築基準法では、絶対高さ制限に関する基準が設けられています。これは、建物の高さが周囲の安全や景観に影響を与えることを防ぐための規定です。

対象となるエリアは以下の用途地域です。

  • 第一種低層住居専用地域
  • 第二種低層住居専用地域
  • 田園住居地域

これらのエリアは主に1〜2階建ての戸建て住宅を建築するエリアのため、高層の建物が建ってしまうと周辺の住居が日陰になってしまいます。また景観上も好ましくありません。

そのため10m、または12mなどの高さ制限を上記エリアに設定して3階建て以上の建物が建つのを防いでいます。

高度地区制限

高度地区制限も日陰規制、絶対高さ制限と同じく、建築物の高さを制約するための規定です。

地域によって都市計画で特定のエリアに高度地区が指定されている場合があります。その際は建築物の高さに制限がかかる可能性があります。

具体的な制限内容は地域によって異なるため、気になる人は「地域名 高度地区」で検索すると高度地区の内容が調べられるので試してみて下さい。

建ぺい率などの建築制限に違反するとどうなる?

建ぺい率などの建築制限を無視して建築してしまうのは建築基準法違反です。建てた建物は「違反建築物」として扱われ、さまざまな問題が発生する恐れがあります。

具体例な問題は主に以下の点が挙げられます。

  • 行政からの是正・取壊し命令
  • 隣地トラブル
  • 建物の価値低下
  • 融資の制限

建ぺい率などの制限に違反した違反建築物は行政から是正命令や取り壊し命令を受ける可能性があります。その際は建物の一部を取り壊したり、改築したりして是正しなければなりません。

また建ぺい率に違反するということは隣地とのスペースが狭いケースも考えられます。その結果、隣人との紛争が生じる可能性もゼロではありません。

以上のように違反建築物になると、さまざまな問題を抱えることになります。そのため建物の価値低下も十分考えられます。価値が低下すると担保設定にも制約が生じ、最悪の場合融資が受けられなくなるケースもあるでしょう。

建築制限をしっかり把握して理想の家を建てよう

建ぺい率とは日照・防災面などの観点から敷地内に適切な空きスペースを確保するために利用される指標です。各自治体が定める都市計画によりエリアごとに建ぺい率の上限が設定されます。家などの建物を建築する際はこの上限を超えないように計画しなければなりません。

容積率も建ぺい率に似ていますが、目的は異なります。目的の違いを理解すれば、計算方法もイメージしやすいので今回ご紹介した内容を覚えておきましょう。

家づくりは建ぺい率などの制限・規制を守ることはもちろん大切です。しかし、工事が始まってからの品質管理も同じくらい大事なポイントです。さくら事務所では完成後に確認ができなくなる箇所を工事中に検査する「新築工事中ホームインスペクション(第三者検査)」サービスを行っています。

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