新耐震基準は安全ではない!?旧耐震基準との比較と地震に強い家に住む方法を解説

  • Update: 2023-07-13
新耐震基準は安全ではない!?旧耐震基準との比較と地震に強い家に住む方法を解説

日本は地震の多い国です。小さなものを含めると、ほぼ毎日どこかで地震が発生しています。日本に住むのであれば、地震と無関係ではいられません。だからこそ「自宅は地震に強い安全な建物が良い」と考える方は多いでしょう。

建物の地震に対する安全性を表す基準が耐震基準です。耐震基準は何度か改正されており、建築年月によって「旧耐震基準」「新耐震基準」など基準が異なります。自分の住んでいる家、これから住もうとしている家がどれくらい地震に強いのか、過去と現在の耐震基準をとおして確認してみましょう。

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新耐震基準とは?

耐震基準は法令で建物に要求される最低限満たすべき地震への耐性基準のことを指します。その中の新耐震基準とは、「震度5強程度の中規模地震では軽微な損傷、震度6強から7に達する程度の大規模地震でも人命に危害を及ぼすような倒壊等の被害は免れる」ことを建物に求める基準です。

新耐震基準は1981年6月に施行されました。新耐震基準は現在も適用される基準です。新耐震基準以前にも耐震基準はありましたが、古い基準と区別するために「新耐震基準」と呼ばれています。

旧耐震基準とは

新耐震基準に対して1981年5月までの基準を「旧耐震基準」と呼びます。旧耐震基準は1950年に制定された建築基準法に含まれており、複数回の改正を重ねながら30年以上運用されてきた基準です。

旧耐震基準は震度5(中規模)までの地震で倒壊・損傷しないことが求められていました。

新耐震基準ではさらに強い震度6強から7に達する程度の大規模地震動も検証を行うように求められています。対応する地震動の規模が異なることから、新耐震基準のほうがより地震に対して強いことがわかります。

木造住宅には2000年基準と呼ばれる耐震基準も存在する

木造住宅の場合はさらに「2000年基準」と呼ばれる耐震基準も存在します。2000年基準は1995年に発生した阪神・淡路大震災の被害を教訓として制定されました。

直下型地震のような強い上下動であっても柱と土台や筋交いがはずれないように接合部に金物を取り付けることを義務化、耐力壁をバランスよく配置して安全性を高めた建物にすることなどが要求されています。

さらに地耐力と呼ばれる地盤が重さを支える力に応じた基礎の設計も求められました。

新・旧耐震基準は建築確認日で見分けられる

建物が新耐震基準か旧耐震基準かどちらに該当するかは建築確認日で見分けられます。

建築確認日とは建物を建築する前に役所や民間の確認検査機関に申請し、問題がないと判断され、申請が受理された日です。受理されると「確認通知書」が発行されます。この書面の日付が1981年6月1日以降かどうかで見分けが可能です。

例えば1981年6月以降に完成した建物であっても確認通知書の日付がそれ以前の場合、旧耐震基準の建物となります。1985年以降の完成であれば、ほとんどが新耐震基準と考えられますが、1981年前後に建築された建物の場合は注意が必要です。

新耐震基準と旧耐震基準の違い

新耐震基準と旧耐震基準はどのような違いがあるのでしょうか。大きくわけると耐震性能、地震による被害状況、税制優遇の面でそれぞれ違いがあります。小さな地震は頻繁に、大きな地震も時折発生する日本。自分や家族の住んでいる建物やよく行く建物がどの基準で建てられているのか知っておきましょう。

新耐震基準

旧耐震基準

耐震性能

震度6強~7程度の大規模地震で倒壊・崩壊しない

震度5程度の中規模地震に際し、倒壊あるいは崩壊しない

地震による被害状況

(熊本地震・益城町内)

倒壊率10.9%

(うち2000年基準2.2%)

倒壊率28.2%

税制優遇

住宅ローン控除適用

登録免許税・不動産取得税の減税

住宅ローン控除適用なし

(耐震基準適合証明書があれば適用)

耐震性能

耐震性能では大きな違いがあります。旧耐震基準が震度5程度の地震で倒壊しないレベルが要求されているのに対し、新耐震基準は震度6強~7程度の大規模地震で倒壊しないレベルが求められています。気象庁の「令和4年(2022 年)の地震活動について」では、2022年中に国内では、震度6強が1回、震度6弱が1回観測されました。旧耐震基準では耐えられない可能性がある地震が実際に発生しているのです。

地震による被害状況

耐震基準ごとに被害の状況も変わります。平成28年に発生した熊本地震の被害状況を国土交通省がまとめた『「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書のポイント』によると、新耐震基準の建物が約11%の倒壊率でした。一方の旧耐震基準は倒壊率28%。約3割が倒壊する旧耐震基準と1割足らずの新耐震基準では大きな差があります。耐震性能の差がそのまま倒壊率の差となっています。

新耐震基準

旧耐震基準

地震による被害状況

(熊本地震・益城町内)

倒壊率10.9%

(うち2000年基準2.2%)

倒壊率28.2%

国土交通省『「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書のポイント』をもとに筆者作成

税制優遇

新耐震基準の建物は税制面でも優遇されています。新耐震基準の建物は住宅ローン控除制度を利用可能です。登録免許税や不動産取得税の控除も受けられます。住宅ローン控除はローン残高の0.7%、新築なら一般住宅で21万円、長期優良住宅なら最大35万円が控除される制度です。

これが13年間(中古住宅は10年間)にわたって継続するため住宅を購入する際には多くの人が利用しています。この制度は新築住宅だけでなく、中古住宅も対象です。ただし、新耐震基準に適合していないと住宅ローン控除を受けることはできません。

旧耐震基準でも耐震基準適合証明書があれば住宅ローン控除を受けられる

一方の旧耐震基準の建物は基本的に住宅ローン控除の恩恵を受けることができません。ところが例外的に耐震基準適合証明書があれば住宅ローン控除が適用されます。旧耐震基準の建物でも新耐震基準並みに強いつくりの建物もあります。耐震補強によって強度が増した建物が代表例です。新耐震基準並みの強度がある建物と認定されれば住宅ローン控除の対象となります。耐震基準適合証明書は指定性能評価機関や建築士事務所などで診断・発行可能です。

耐震基準についてよくある質問

耐震基準といっても建物を見ただけではわかりません。世の中には木造建物もあれば鉄筋コンクリート造の建物もあります。どちらも耐震基準は同じなのでしょうか。

まちを歩けば昔から建っている古い建物もみかけます。果たして古い建物は耐震基準を満たしているのでしょうか。また新耐震基準であれば震度7を何度でも耐えることができるのでしょうか。こうした耐震基準についてよくある質問について答えていきます。

構造によって耐震性能は違う?

結論から言うと、構造によって耐震性能に大きな違いはありません。

建物の構造は数多くあり、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造などが有名です。木造でも軸組み工法やツーバイフォー工法などがあります。新耐震基準はこれらの工法に関係なく、震度6強や震度7程度の地震でも倒壊しないことが求められています。

また近年は建築基準法の1.5倍以上の性能を有する住宅(品確法 住宅性能表示制度 耐震等級3)を満たす建物が多く建てられていますが、木造や鉄骨造など構造を問わず耐震等級3の建物は設計可能です。

古い建物は新耐震基準じゃないけどなぜ残ってる?

有名な神社仏閣の中には建築後何百年も経過している建物も少なくありません。

例えば法隆寺は建築後1千年以上も経過しています。その間に何度も地震に見舞われているはずです。それでも倒壊しないのは、昔からそれぞれの建物が地震に対する備えをしていたからです。法隆寺の五重塔は地震動に対して揺れることでダメージを軽減しています。

耐震基準は地震に対する強度の最低基準を示しているに過ぎません。新耐震基準よりも古い基準やそもそも基準がない時代の建物であっても、当時の人々の知恵によって地震に強い建物を作ってきたのです。

新耐震基準は震度6以上の地震に何度も耐えられる?

新耐震基準は震度6や震度7でも倒壊しないとされています。ただし複数回の大地震について基準は言及していません。つまり複数回の大地震は想定していないのです。

実際に震度7の地震が複数回発生した熊本地震では、新耐震基準の建物であっても倒壊した例もあります。熊本地震の事例からみると、新耐震基準の建物だからといって、すべての建物が複数回の大地震に耐えられるとは言い切れません。

より地震に強い建物に住むには

先ほどもご紹介したように、耐震基準はあくまで地震に対する最低限の安全を保証する基準に過ぎません。建物の中には、耐震基準を大きく超える強度を誇るものもあります。地震に強いことをセールスポイントにする建物も増えてきました。ここでは地震に強い建物の見分け方を紹介します。この中には中古住宅にも活用できる方法も含まれています。

耐震等級3相当の建物を選ぶ

先にも触れましたが耐震等級とは、品確法と呼ばれる法律で規定された基準のことです。建築基準法に規定された耐震基準とは異なります。耐震等級は等級1から等級3まであり、数字が大きいほど高い性能です。耐震性能は等級3が最高等級です。等級3は新耐震基準の1.5倍の強度があります。耐震等級3相当の建物は新耐震基準よりも耐震性能が高く、その分倒壊のリスクが減ります。耐震等級3相当の建物はその耐震性がセールスポイントです。販売広告や販売サイトには耐震等級が言及されているケースが多くあります。

耐震診断を行い、必要に応じて補強工事を実施

補強工事を行えば、中古住宅でも耐震性能を向上させられます。補強工事の前段階として受けるべきなのが耐震診断です。耐震診断で耐震補強が必要な箇所を特定し、適切な計画を立てます。耐震診断には10万円から20万円ほどの費用がかかるものの、専門家による耐震性の診断が可能です。耐震補強を適切に行えば、旧耐震基準の建物であっても耐震性能を向上できます。補強方法によっては新耐震基準よりも高い耐震性能を得ることも可能です。

新耐震基準≠安全!プロの目でチェックを行い安心・安全な家を手に入れよう

日本に住む以上、地震は無関係でありません。地震で被害に遭わないためには、しっかりとした備えが必要です。地震に対する備えの最たるものは建物でしょう。自宅が倒壊してしまっては自分や家族の安全は保てません。新耐震基準は地震に対する備えではあるものの、最低限の基準です。「新耐震基準だから安全」ではないのです。また、新耐震基準で建てられた住宅でも時間の経過によってその性能が落ちていることもあります。

施工品質や耐震性の見極めには、ホームインスペクションの活用がおすすめです。ホームインスペクションとは、住宅に関する専門知識を持ったホームインスペクターが、第三者の視点で住宅の不具合や欠陥の有無などをアドバイスすること。外からは見えない箇所もチェックします。ホームインスペクターを利用すれば一定以上の品質を担保できます。より地震に強い住宅を購入したい場合は、ぜひさくら事務所のホームインスペクションを利用してみましょう。