防水・断熱施工の不具合75%以上の確率で発覚!工事中の検査で住宅寿命は変わる

  • Update: 2023-02-01
防水・断熱施工の不具合75%以上の確率で発覚!工事中の検査で住宅寿命は変わる

3月と言えば年度末。さまざまな業界がその年の決算を控えており、利益が確定する大事な時期です。実は住宅業界も同じく決算時期であるため、引き渡しを終えて利益を確定するのが望ましい時期でもあります。加えて不動産市場の動向を見ても、日本は3月がとても忙しい時期です。

そんな3月に新築一戸建ての引き渡しを迎える方に、ぜひ知っておいていただきたい内容をご紹介します。ぜひ最後までご覧ください。

3月は不具合が発生しやすい時期

3月は住宅業界にとって最も忙しい時期であることから、残念ながら3月は不具合の発生率がものすごく増えやすい時期でもあります。3月にお引き渡しの形で一番起きて欲しくないのは沢山の工事で立て込んでしまい、突貫工事をしてしまうということです。

突貫工事は時間が限られているため、品質チェックなどのミスを防ぐ作業が疎かになります。その結果建物の不具合が起きやすい状況となります。

夢のマイホーム。長く快適に住める方がいいですよね。もちろん不具合が起こっても構わない人はいないと思います。

3月引き渡しに間に合うか判断する目安

不具合の発生リスクを抑えるには、無理な工程で完成させるより、工期を伸ばして、ゆとりを持って工事を行ってもらう方が良いでしょう。

とは言っても、どれくらい工事が進んでいれば3月に間に合うのか、それとも4月以降に延期した方がいいのか分からないですよね。そこで3月引渡しに間に合うかどうかを判断する目安と、その理由をご説明します。

結論から言うと、目安はズバリ「2月中に内部下地工事を完了させる」ことです。内部下地工事について理解するために、まずは新築工事の流れをご紹介します。

工事の流れは以下の通りです。

  1. 地盤調査・改良
  2. 基礎
  3. 土台、床組
  4. 建方工事(上棟)
  5. 外壁防水工事
  6. 断熱工事
  7. 外壁工事
  8. 内部下地工事
  9. クロス工事
  10. 設備機器取付け
  11. 外構工事
  12. 引渡し

※工程は施工会社や条件により、多少前後します。

内部下地工事は新築工事の8番目の工程です。内部下地工事を簡単に説明すると壁紙の下地となる石膏ボードを壁と天井に張る工事です。最低でも2月中に石膏ボードを貼り終えていないと、3月にやらなければならない作業がたくさん残されてしまいます。3月に引き渡しを控えている方は2月中に石膏ボードが張り終えるかどうかを現場監督に確認しましょう。

ただ工事途中でトラブルなどが発生し、スケジュールが変わる可能性もあります。可能であれば、引渡しまでの工事スケジュールがまとめられた工程表を共有してもらい、最新の工事進捗を常に確認できるのが望ましいです。

ポイントは外壁防水と断熱工事

ここまで3月引き渡しに間に合うかどうかの目安について解説しましたが、もう一つ知っておいて欲しいポイントがあります。

それは外壁防水、断熱工事の重要性です。

外壁防水と断熱工事は建物の基本的な性能に対して重要な役割を担っています。

外壁防水工事とは簡単に言うと、雨漏りが発生しないように建物を守るための工事です。

対して断熱工事は外部の熱を室内に入れない為に行われます。つまり建物の中を夏は涼しく、エアコンをつけて涼しく、冬は暖房機を使ってちゃんと暖かく保つことを目的とした工事です。

この2つの工事が重要とされるもう一つの理由は、他の重要な機能や建物の寿命に大きく影響を及ぼしているためです。

3月引渡しの方は、おそらく2月に外壁防水、断熱工事を行うことになります。先にご紹介した事例のように断熱、防水の不具合は建物の寿命に影響を与えます。夢のマイホームの寿命を保つための重要なチェックポイントだということを頭に入れておきましょう。

しかし残念ながら、この外壁防水、断熱工事の2工程で不具合が多発しているのが現状です。

ここで我々さくら事務所がまとめたデータを見てみましょう。以下の表は2019年〜2022年の4年間で、弊社が第三者として防水検査と断熱検査を実施した際の、不具合の発生率を表したものです。

防水、断熱検査ともに7〜8割以上の不具合が発生しています。もちろん不具合の内容には簡単に治るものから大掛かりな手直しが必要なものまで、さまざまです。

外壁防水の不具合事例

まずは外壁防水の不具合には、どのような事例があるのかをご紹介します。

以下の写真は国土交通省のWeb サイトから抜粋したものです。

出典:「長持ち住宅の選び方」http://www.nilim.go.jp/lab/hcg/htmldate/index.html

壁の雨漏り被害の状況です。被害を確認するために石膏ボードなどを剥がし、構造躯体が丸見えの状態になっています。写真を見ると、墨のように黒くなっており、それがさらに進行すると穴が開いてしまうことも考えられます。これらの現象はすべて雨漏りによる腐食が原因です。

雨漏りと言うと、屋根からポタポタ落ちてくるのを想像される方が多いかと思います。しかし実際は上記事例のように壁、バルコニー内部など見えない部分で雨漏り被害が発生している割合の方が高いです。

上記事例のような状態まで雨漏り被害が進行してしまうと家の寿命に大きく影響してしまいます。とくに懸念されるのは建物の耐震性能が下がってしまうことです。

淡路大震災で倒れた建物の多くがシロアリや腐食により構造体が劣化し、耐震性が下がってしまっていた可能性があることが当時の調査からわかっています。

いくら設計時に強固な建物に設計されていても、雨漏りによって木材の腐食や鉄骨の錆びが発生してしまうと、耐震性がぐっと下がってしまいます。

本来安全であるべき家が雨漏り被害が原因で、いざという時にあなたの命を守ってくれないかもしれません。

雨漏り被害は施工ミスによって引き起こされる場合、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)と呼ばれる法律によって、施工不良が原因の場合売主が10年間は補修責任を負うことになっています。

しかし雨漏り被害はゆっくり進行するため、残念ながら10年経過後に雨漏り被害が目に見えて現れる場合も少なくありません。その場合は実費で直さざるを得ない場合もあるでしょう。

以下の表は住宅における不具合別の補修費用の目安です。

出典:『災害に強い住宅選び』(日本経済新聞出版)

表によると、外壁で起きた雨漏りの補習費用は700万を超える可能性があるとされています。場合によっては1,000万を超えるようなケースもあるでしょう。

仮に売主が補修費用を負担してくれないとなった場合、一般の方が700万円を超える補修費用を支払うのは、おそらく難しいでしょう。

以上のように雨漏り被害は気づかないうちに建物へ甚大な被害を与える原因です。このようなリスクを防止するためにも防水工事は重要な工事と言えるでしょう。

外壁防水工事のチェックポイント

ここまで雨漏り被害の怖さをご紹介しましたが、施工中のチェックをしっかり行えば雨漏りリスクを抑えられるので怖がる必要はありません。そこで防水工事は何をチェックすべきなのかをご紹介します。

実はチェックポイントはとてもシンプルです。具体的なチェックポイントは以下の通りです。

  • 正しい材料が使用されているか
  • 防水材に隙間がないか
  • 防水材に穴が空いていないか、空いている場合はしっかりテープで補強されているか

水はちょっとした隙間からでも内部へ入り込みます。

たとえば上の写真のように防水テープという水の侵入を防ぐ専用のテープが施工されていても、1ミリでも隙間があると水が侵入してしまいます。

このような状況を見つけたら、対処後の写真のように、隙間なく貼り直してもらいましょう。

近年の住宅は軒が無い、すっきりとした屋根が多くみられます。いわゆる「軒ゼロ屋根」と呼ばれているのですが、雨がかかる部分が広くなるため雨漏りの可能性が上がるのがデメリットです。

しかし軒ゼロ屋根に関しても防水工事がしっかり出来ていれば雨漏りリスクをぐっと抑えられます。軒ゼロ屋根の家を計画している方は、念入りにチェックを行いましょう。

断熱工事の不具合事例

続いては断熱に関する不具合事例をみてみましょう。

以下の写真は断熱施工不良によって結露が発生している状況です。

出典:「長持ち住宅の選び方」http://www.nilim.go.jp/lab/hcg/htmldate/index.html

寒い日に窓ガラスが濡れているのをご覧になったことがある方は多いと思います。これは寒暖差により結露が発生している状況を表しています。断熱がしっかり行われていないと写真のように壁の中で結露が発生してしまいます。

壁の中で結露が発生すると、カビが生えてしまったり、構造体が腐食し雨漏りと近い状況になってしまうことも。

断熱による不具合も目に見えてくる頃には被害が広がっている可能性が考えられます。その分、補修費用も膨れ上がっていきますので、事前チェックで不具合リスクの芽を摘むことが重要になるでしょう。

断熱工事のチェックポイント

断熱に関してもセルフチェックできるポイントをご紹介します。

具体的には以下のポイントです。

  • 正しい材料が使用されているか
  • 断熱材の厚みは確保できているか
  • 断熱材の抜けはないか
  • 隙間はないか

家の断熱性能は急激にレベルアップしている

また断熱工事に関して知っておくべきポイントがもう一点あります。それは現在、新築に求められる断熱性能が急激にレベルアップしている点です。

以下の図は断熱等級を表したものです。

参照:国土交通省「③住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく住宅性能表示制度におけるZEH水準を上回る等級について」
https://www.mlit.go.jp/common/001430097.pdf

2025年度から断熱等性能等級4というのが最低基準になります。実は断熱等性能等級4は1年前の時点で最高等級の基準でした。

要求される断熱性能をレベルアップさせるには、設計のクオリティはもちろん、工事の品質も向上させる必要があります。

理由は断熱性能が上がるほど、室内外の温度差が大きくなり、施工ミスによる結露の発生リスクが上昇するためです。たとえば断熱が抜けている、隙間の処理が甘いなどの原因が結露の発生に繋がります。

断熱性能のレベルが急激に上がっている現在は、現場の施工レベルが基準に追いついていない可能性が十分考えられるでしょう。だからこそ、ゆとりを持った工程でしっかりとチェックする体制を整える必要があります。

自発的に動いて不具合の発生リスクを抑えよう

3月引き渡しの形は繁忙期のため、手抜きやミスを現場監督がチェックしきれないケースも考えられます。

3月引き渡しの方は、まさにこれからが断熱工事や外壁防水工事が行われるタイミングとなるでしょう。

あらかじめ現場監督へ品質の確認依頼をしたり、立ち合いのもと確認する機会を設けてもらうようお願いしたりなど、あなた自身が自発的に動いて不具合発生リスクを抑えていきましょう。

ただし、現場に行く際は抜き打ち検査のようにアポ無しで行くことは絶対避けましょう。

なぜならば現場監督は建物のクオリティと工程のみを見ているわけでなく、安全面も管理しています。

仮にあなたが明日現場に抜き打ちで見に行ったとします。現場がちょっと危険な状態だったにもかかわらず勝手に入り、怪我をしてしまった…。

このようなことが起きれば、現場監督が責任を問われます。

「なぜお客様を一人で行かせたのか勝手に行かせたのか」「なぜヘルメットを被らせなかったのか」など現場監督は会社から問い詰められることになり、責任を負うことになります

もちろん現場を見に行くこと自体は悪いことではありませんが、現場監督の知らない間に現場へ入ることは大変危険なため避けましょう。

見に行く際は必ず事前に連絡し、安全を確保してもらったうえで見学しましょう。

不安ならばホームインスペクションの利用を検討しよう

先にも述べたように外壁防水、断熱工事は建物の快適性・安全性を保つための重要な工程です。また、これらの工程で発生した不具合は、出来上がってしまうと確認が困難になります。

ぜひ今回紹介したチェックポイントを参考にあなた自身の目でも確認してみてください。

家づくりは人の手で作り上げるため、必ずミスは発生します。ミスを未然に防ぐためには複数の人の目での確認が最も有効な手段です。

現場監督とあなた自身のチェックだけでは不安な場合は、さくら事務所の「新築工事中ホームインスペクション(第三者検査)」をご活用ください。年間3,000件以上の実績で培ったプロの視点で新築工事の各種チェックが可能です。

興味がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。