新築一戸建ての工事中のチェックポイントを工程ごとにご紹介する本連載、前回は骨組みと金物についてご紹介しました。
第11回のテーマは、木造住宅の敵「水」から守るための防水です。第三者の現場検査工事中の第三者現場チェックサービス「新築工事中ホームインスペクション(第三者検査)」を行うホームインスペクター(住宅診断士)が注意点を解説します!
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建物の寿命を短くさせる雨漏り
建物の寿命を短くしてしまう原因の一つに、雨漏りがあります。木造住宅の場合、雨漏りを放置しておくと木を腐らせてしまい、強度が大きく低下します。鉄骨造の場合でも、雨漏りがあるとサビが発生し、耐久性を大きく下げてしまいます。
雨漏りは建物にとって問題が大きく、防水工事は十分に注意する必要があるのです。
バルコニーの下に部屋をつくらない方がいい理由
雨漏りがしやすい家と、しにくい家があるのをご存知ですか?
雨漏りがしやすいのは、建物や屋根の形状に凹凸が多くて複雑な形をしている建物。複雑な形をしているほど屋根材や外壁材の加工も難しくなり、雨漏りしやすい箇所が増えてしまいます。また複雑な形をした建物は、地震の時にも「ねじれ」が生じやすくなります。雨漏りの可能性を低くして耐久性を上げるためにも、耐震性を高めるためにも、建物の外観はより単純な方が望ましいと言えるでしょう。
最近の建物にはほとんどの物件でついているバルコニー。このバルコニーの下には、できるだけ部屋を作らないほうが賢明です。バルコニーの防水は「FRP防水」と「シート防水」が主流。FRP防水とは、ガラス繊維にポリエステル樹脂を含ませて強くした材料を使い、防水を行う方法です。シート防水とは、水に強いシートを溶着したり、特殊な接着剤で圧着したりする方法です。木造の建物は、地震がくると他の建物より大きく変形するため、防水材も揺れてしまいます。そのときにヒビやすき間ができると雨漏りしやすくなるため、バルコニーの下に部屋があると被害が大きくなってしまうのです。
こういったリスクは、5~10年程度の話ではなく、建物をもっと長期的な視点で捉えたときのもの。バルコニーの防水に保証をつけてくれる工法もあるものの、通常保証期間は長くても10年程度です。平面計画の段階で避けられるのであれば、無用な将来リスクを抱え込まないためにも、バルコニーの下に部屋などは配置しない方が良いでしょう。
屋根の防水紙は、横張りで下から張っていく
最初に、屋根の防水紙の確認を。屋根の防水には「アスファルトルーフィング」というものがよく使われます。
屋根の防水紙は、横張りで下側から順番に張っていきます。これは、雨を入りにくくするため。実際に雨が降ってきて、屋根の上を伝ってくるときのことを想像してみましょう。上から順番に張ってしまうと、防水紙の中へ入り込んでいってしまいます。そのため防水紙は下から張っていくのです。
それぞれのシートの重ねには、上下方向に10cm(100mm)以上、左右方向に20cm(200mm)以上を確保してください。ほとんどの防水紙には、上下方向の重ね幅を示す線が印刷してあります。その線まで防水紙が重なっていれば問題ありません。防水紙の留め付けは30cm内外で行います。
また屋根と外壁が接するところは、外壁面に沿って立ち上げることが必要です。立ち上がりの高さは、瓦葺では25cm以上、その他は12cm以上あることを確認しておきましょう。
外壁の防水紙も横張りが基本
外壁面の防水も屋根と同様、横方向に張っていくのが基本であり、理想です。ただし、建物の形が複雑なときには縦張りで行います。張り方で比較すると、横方向で張るほうが雨に対しては強いのです。建物の形状が複雑な場合に雨漏りが多いのは、形状そのものの施工が難しいということに加え、防水紙を横張りしにくいからという理由もあるのです。
防水紙は、ホッチキスを大きくしたような「タッカー」と呼ばれる工具で留めつけていきます。タッカーによるステープル(針)の留め付けでは、ステープル周辺に大きな破れがないかを確認しましょう。あわせてステープルの間隔が広すぎないかの確認も必要。
防水紙の重ね長さは、住宅金融支援機構の仕様によると縦9cm、横15cm以上となっています。ただ防水紙の施工要領書がある場合には、そちらに従って確認しましょう。
次回は、お部屋の快適性&冷暖房費のランニングコストに大きくかかわる「断熱性」について解説します。