新築一戸建ての工事中のチェックポイントを工程ごとにご紹介する本連載、前回は土台敷きと上棟についてご紹介しました。
第10回のテーマは、木造住宅の要「金物」です。工事中の第三者現場チェックサービス「新築工事中ホームインスペクション(第三者検査)」を行うホームインスペクター(住宅診断士)が注意点を解説します!
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軸組工法(在来工法)の場合
骨組みの確認
骨組みの段階に入ったらまず、柱や土台、梁のような骨組みに配管や配線などを通すための大きな穴や欠き込みがないかを確認しましょう。
「欠き込み」とは、材料の一部分を欠いて取ってしまうことを言います。柱や梁など構造に関わる部分に欠き込みがあると、本来の強度を発揮できません。例えばこちら、上階の排水管を通すために、梁が一部削られています。
建物の骨組みに大きな欠き込みがあったら、可能な限り材料を新しいものに変えてもらいましょう。新しい材料に交換できない箇所には何らかの補強が必要です。
骨組みなど構造体への大きな欠き込みを防ぐためには、設計の段階であらかじめ配管を通す空間を確保しておくといいでしょう。配管を通すための空間を確保しておけば将来、リフォームするときにも大変役立ちます。
2000年に大きく変わった金物の仕様
次は「金物」を確認していきます。木造の建物における金物は、地震で揺れたときに「ねばり」を出すためのとても大切なものです。
平成12年(2000年)に建築基準法が変わり、金物の取り付け位置や数が細かく規定されました。これは軸組工法にとってとても大きな法律改正で、建物に使用される金物の数が大幅に増えました。耐震性能も法律改正後、大幅に向上していると考えてよいでしょう。
ところが、あまり勉強していない業者などの場合、この法改正の内容を理解していないケースもあるので要注意です。
金物の種類やその取り付け位置は、木造の構造に詳しい専門家でもないかぎり、その判断はなかなか難しいもの。金物の確認は、金物の取り付け位置を示した図面を施工業者からもらって、一緒に取り付け状態を確認するのがよいでしょう。
図面を入手できたら、最初に筋かいの取り付け状態を見ましょう。筋かいは、地震の時に建物が壊れないようにするためのとても大切な部分。
筋かいは柱と柱の間に入れますが、その端にこのような「筋かいプレート」などと呼ばれる金物を取り付ける必要があります。筋かいプレートは鉄やステンレスでできていて、専用のビスで取り付けます。取り付け方法や最低限必要なビスの本数は、金物によって多少異なります。取り付けは、ビスが奥までしっかりと入っているかを確認してください。
土台に取り付けられているアンカーボルトと筋かいプレートの位置が近いときは、金物同士が接触して上手く取り付けられないこともあるため注意しましょう。金物同士が接触してしまうのを避けることができる金物が金物メーカーから発売されています。接触してしまう場合はそれらの金物に変更するよう、依頼しましょう。
筋かいが両側から来るように取り付ける場合(たすき掛け)、どちらか、または両方の筋かいを削ってはいけません。必要な強度が発揮できなくなります。ただし、筋かいの大きさが9cm角以上あってボルトで補強してあるなら例外。また、筋かいを取り付けるために柱を欠き込んではいけません。もしそういったことが確認されたときは、柱を新しいものに取り替え、筋かいの位置を変更する必要があります。
筋かいの確認が終わったら、次は柱と土台、柱と梁・床を繋ぐ金物を確認します。
筋かいプレートと同様、しっかりとビスが入っているかどうかを確認してください。柱に無垢材が入っている建物では、柱のどこか1面に「背割れ」という割れ目があります。これは、木の伸縮によるひび割れなどを防ぐためにあらかじめ入れておく割れ目。
背割れがある位置に金物を取り付けようとする場合、専用の金物を使ってください。専用の金物を使わないとビスを入れる穴と背割れの位置が同じ場所になってしまい、ビスを入れることができないのです。
また、金物をチェックしていてよく確認されるのは、「ホールダウン金物」が柱から離れすぎている問題。
土台と基礎をつなぐ金物はアンカーボルト、専用のアンカーボルトとの組み合わせで柱と基礎を繋ぐ金物をホールダウン金物と言います。ホールダウン金物はこのように、柱が基礎から抜けないよう、建物の中でも特に力がかかる柱に取り付けられます。
ところが、この下からのアンカーボルトが柱から離れていると、アンカーボルトを柱と斜めに取り付けることになり、強度に問題が出てきてしまいますので注意が必要です。もし、柱から離れたところにアンカーボルトが出ている場合、位置が離れていても取付けができる種類の特殊な金物に変更してもらいましょう。
最近では、建物の外周部に、構造用合板などを張って耐震性能を上げている物件をよくみかけます。外からみると、まるで枠組壁工法(ツーバイフォー工法)のようです。
構造用合板などを取り付ける場合、特別な金物を必要とせず、柱にクギで取り付けていくだけ。そのため柱の太さや長さ、間隔が非常に重要になります。使用するクギの種類や間隔は、張り付ける板材によってかわります。施工業者に確認してその間隔と同じか、それより細かくなっていることを確認しましょう。
金物取り付けに関するミスはよくあること。
そのとき大切なことはミスを責めることではなく、それをどのように修正するかということです。
基礎コンクリートで問題がでてしまったときの修正は難しいものの、土台から上の部分でのミスは比較的直しやすいものが多いのです。建物が完成するまでにしっかりと直してもらいましょう。
枠組壁工法(ツーバイフォー工法)の場合
軸組工法が柱と梁のような「線」で建物の基本を構成するのとは異なり、枠組壁工法(ツーバイフォー工法)では、「壁」で建物を構成します。
その壁は通常、ベニヤ板などといわれる合板(ごうはん)と、クギを打ち付けるための木材(スタッド)で作られています。枠組壁工法でも軸組工法と同様、金物が取り付けられますが、それらもクギで留めつけるのがほとんど。そのため枠組壁工法では、クギの留め付けが非常に重要です。
建物外側に取り付けられている合板のクギを確認
建物の外側に取り付けられている合板のクギの状態は簡単に確認でき、また重要な項目です。
枠組壁工法における壁の合板は、CNクギという種類のクギの中でも長さ5cm(50mm)のものを使う必要があります。
クギの間隔は合板の外周部が10cm(100mm)間隔、合板の中間部が20cm(200mm)間隔。この間隔が守られていることを確認しましょう。クギの間隔が決められた間隔よりも細かく打たれているときは問題ありません。しかし間隔が広すぎる場合、決められた壁の強さに満たないため、耐震性能に問題がでてきます。
またクギは5cm(50mm)のものを使う必要があります。クギの頭が緑色をしているか確認しましょう。
枠組壁工法の壁は、工場であらかじめ作られたものを現場ではめ込む方法と、すべて現場で組み立てる方法とがあります。工場であらかじめ作られたパネルを使うのは、敷地や敷地に入るまでの道路が広いときが多いようです。現場で組み立てる場合、クギを打つときにはクギ打機を使うのが一般的。クギ打機を使うと、金づちで1本ずつ打っていくのに比べて何倍も早く打つことができます。
現場での作業は、工場で作るのと違ってクギの間隔を厳密に揃えるのが難しく、通常は施工誤差を考えて、決められた間隔より細かくクギを打ちます。
このときにクギ打機の調整が十分でないと、クギを打つ力が強すぎ、クギが合板にめり込んでしまうことがあります。クギがめり込むと、構造的な問題が生じてしまいます。近くにクギを増し打ちしてもらいましょう。
さて次回は、木造住宅の敵「水」から守る大事なポイント「防水工事」について解説します。