いよいよ新築マイホームが着工し完成を待つだけの状況になった、もしくは自宅の新築工事が進行中の方。皆さん、施主として進捗状況が気になるのは当然です。
工事中は、トラブルや施工ミスを発見する絶好の機会です。一度完成してしまえば見えない箇所も多いですし、後々の補修が困難な部分も少なくありません。「現場が図面通りに進んでいるのか」「不具合が発生してはいないか」と心配はしながらも、「チェックするポイントがわからない」との声もよく耳にします。
私たちさくら事務所は建物に精通したホームインスペクター(住宅診断士)が複数回の検査を行う新築工事中ホームインスペクション(第三者検査) サービスを提供しています。2019~2020年にかけて、大手ハウスメーカーや地元の工務店まで幅広く集計・分析した結果、おおよそ8割近くで不具合が発生していることがわかりました。
不具合が8割近くという事実に、あらためて現場に足を運びたいと考えた施主様もいるでしょう。それでは、施工不良やミスを含め、工事のどのタイミングで不具合が発生しているのでしょうか。
今回は工程別に、重要度や発生頻度をランクで分類し、注意すべきポイントを詳しく解説します。また実際に不具合を発見した際の補修や修正方法についてもお伝えします。ぜひ参考にしてください。
新築工事の工程の内容と不具合の割合
さくら事務所の集計データによると、基礎工事2工程では1.配筋71%(91/129件)、2.型枠64%(52/81件)の割合で不具合が見つかっています。また建物が建ち上がった後の3工程では3.構造金物82%(150/182件)、4.防水81%(102/126件)、5.断熱81%(60/74件)と8割近くの施工不良が発見される結果に至りました。
それぞれの工程について簡単に触れておきます。
建物をつくるあたって、まずは土台となる部分を作りますが、これが基礎工事と呼ばれる工程です。基礎工事では、主に「配筋」「型枠」2つのタイミングでチェックを行います。住宅と地面をつなぎ、支える「基礎」はとても重要で、安全な建物を作るための基本となる部分です。また、住宅など建物に垂直にかかる力また地震の揺れでかかる横向きの力を受け止め、安全に維持する上で基礎工事は大きな役割を担うものとなります。
基礎工事
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1.配筋
建物の基礎部分の芯にあたる箇所は、鉄の棒である鉄筋で組み立てられています。この鉄筋を図面通りに組み立てて配置するの作業を配筋と言います。基礎部分の維持や強度に大きく影響する部分です。そのため建築基準法をはじめ法律で設計基準が定めてられているのです。ただ、基礎のコンクリートを打設すると、見えなくなる箇所でもあります。
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2.型枠〈基礎工事②〉
同じく基礎工事において、配置された鉄筋の周囲にコンクリートを流し込み、建築物の土台部分をつくります。コンクリートを流し込む木製や鉄製などの枠を組み立てる作業が型枠です。型枠を正確につくることで、建物の強度が保たれますし、出来映えそのものにも関連する工程です。型枠は設計図に沿って組み立てられた後、アンカーボルトをしっかりと設置します。アンカーボルトとは基礎部分と建物の上部の木材などとをつなぐ金属の部材のことです。アンカーボルトを設置後、コンクリートを流し込みます(コンクリート打設)。
基礎工事以降の工程
基礎工事は、安全な建物を作るための基本となる部分として非常に重要ですが、もちろん、それ以降の工程も非常に重要です。
どれだけしっかり基礎ができたとしても、住宅全体をを支える木材の組み立てに不備があったり、接合部の補強や材の脱落防止が甘いと、基礎を作った意味がありません。また、断熱・防水対策の不備があった場合、建物の劣化速度が早まったり、防寒の面でのマイナスが大きくなります。
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3.土台敷き検査
建物の土台部分の工事が終わると、土台敷きを行います。この工程では、基礎コンクリートの上に床を支えるための木材(土台、大引・根太など)を設置していきます。
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4.構造金物検査
土台敷きの後、さらに柱や梁など建物の基本構造に着手、屋根の上部に木材(棟木)を組むことになります。その組み上がった建物の骨組み部分(柱、梁)の確認、建物構造を補強する筋交いなどが図面通りか確認します。また部材と部材をつなぐ金物がきちんと取り付けられているか、緩みがないかなどもチェックします。
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5.防水検査
建物は、雨水や地下水の浸水による腐食やカビの発生で劣化が進み、耐久性が損なわれていきます。また、建物の寿命にかかわる、ひび割れや塗膜のはがれも発生し、寿命が大きく縮まってしまい、このような状況を防ぐための非常に重要な工事が防水工事です。防水検査では屋根や壁面など防水シート施工などの状況を確認していきます。
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6.断熱検査
建物の内外の熱移動を断ち、冷気や熱の出入りを防止するために断熱材を用います。夏は涼しく、冬は暖かく快適に過ごすために断熱材は欠かせません。断熱材の施工は、住環境を整えるのはもちろんエアコンの効き、ひいては電気代にも関係してきます。床や屋根裏、外壁などそれぞれの場所に応じた適切な施工がされているかをチェックします。
以上、特に注目していただきたい工程について挙げました。次の項目ではそれぞれの工程における工事の事例を重要度、発生頻度をA~Cの3段階に基づいてご紹介していきます。
工程1 配筋検査〈基礎工事〉における不具合事例
住宅の基礎の骨組みとも言える配筋検査。不具合を後々修正するのが難しい箇所でもあります。しっかりとチェックする必要が出てきます。
最初の事例は、頻度はそう高くはないものの、発生すると大きな問題となる人通口(じんつうこう)のトラブルです。
基礎を作る際、下部のベースになる板部分と、垂直になる部分があります。この垂直部分を立ち上がりといいます。部屋の区画や外周などをすべて立ち上げると、床下をトータルで点検するのが困難になります。 それぞれの区画に点検口を作らなければならなくなるからです。そこで人が通れるほどの開口部を設けておきます。これを人通口と呼び、少ない箇所で効率よく点検するためにつくるものです。
人通口は強度を保つため、決められた位置に設けられ、鉄筋などで補強も行われます。床下の通気にも関係します。
ちょうど写真の赤丸の箇所が基礎の図面上は人通口となるはずでした。ところが実際現地に行ってみると、人通口が確保されていませんでした。人通口を後から開けるのはとても大変です。一度完成した基礎をすべて壊さなくてはならなくなり、傷みが出てしまったりとか、適切な強度を保てなかったりする可能性もあります。
人通口基礎の強度を考えた上で開ける箇所が計算されているため、安易に別の場所に設けるのも難しいのです。それが重要度にSを付けた理由です。指摘の後、ここに人通口を作るような形で修正していただきました。
基礎配筋においての鉄筋がコンクリートにしっかり埋まり、抜け出さないよう固定されていなければなりません。鉄筋が定着するためには、適度に埋め込まれている長さが必要になります。この長さを「定着長さ」と言い、鉄筋の材質や直径、コンクリートの基準強度別に定められているのです。
他にも配筋では鉄筋と鉄筋を組み合わせていきますから、2つの鉄筋が重なる箇所においても最適な長さがあります(重ね継手)。
例えばこの鉄筋では、と40D(鉄筋の直径の40倍)と決められていました。しかし実際は、計算通りの定着長さが確保されていなかったのです。必要な定着長さが確保できていなければ、建物全体の強度にも影響を及ぼしますので、注意が必要です。
鉄筋は鉄でできていますから、時間が経つと錆びていきます。ボロボロに錆び、弱くなった鉄の強度は低下していきます。そこで、鉄筋の劣化をできるかぎり遅らせるため、コンクリートに埋め込みます。適切な距離を保って埋め込まれていると、鉄の酸化を遅らせることができるのです。
そこで鉄の酸化を防止するため、コンクリートの必要な厚さ(鉄筋からコンクリート表面までの最短距離)が決められています。それが「かぶり厚さ」です。建築基準法により、例えば基礎の立ち上がりなら4センチ、その他の基礎部分は6センチ等、適切な厚さが決められています。
写真はコンクリートでつくられた型枠から鉄筋、この矢印のところまでの長さが適切に保たれていなかったケースです下が是正後、適切な長さを取ったものです(左)。
右はコンクリート基礎の下のほう(ベース)。これもやはり長さが足りてなかった、6センチないといけないところが5センチ強ぐらいしか取れておらず、これも是正しました。正しい長さにしたかどうかを確認するためにも、写真などで履歴をわかる形で残しておくのが重要です。
基礎には、給排水管や各種設備の配管・配線などを通すため、多くの穴を開ける必要があります。後々穴を開けるのではなく、あらかじめ筒状の管を埋め込むことで筒部分にコンクリートが回らず、後で丸い穴部分が確保されます。この筒状の管をスリーブ管と呼びます。
このスリーブ管が鉄筋と密着していたり、鉄筋があるところに管が干渉したりしていると、必要なかぶり厚が取れなくなってしまいます。そこで、適切な配置にしてもらったのが下部分です。
また鉄筋と鉄筋の間隔(鉄筋の芯と芯の距離)についても、計算の上、規定されています。図面によってさまですが、今回の例では20センチの間隔でこの鉄筋が組む必要がありました。しかし20センチを少しオーバーしてしまっていました。指摘後、横の棒(鉄筋)場所を変えてもらい、適切な間隔に修正したケースとなります。
基礎のベース部分にひび割れが発生したトラブルです。ベースとは基礎の最下部(底)を指し、底盤(ていばん)とも言われます。
ただ、基本的に基礎やコンクリートにひびが入るというのは自然なことです。必ずどこかに入ってしまうものだとも言えます。一方、深くて幅の太いひび割れ、鉄筋までひび割れが貫通している場合は問題となります。
ヘアクラックと呼ばれる、髪の毛の太さほどのひび割れは0.3ミリ未満とされています。しかし、0.3ミリ以上のひびには要注意です。0.5ミリ以上となるとやはり早急に補修の必要が出てきます。
ひびの大きさはクラックスケールで測れます。リーズナブルに購入できるので、ひび割れの目安を知る上で現場に持参してもいいでしょう。
ベースの基礎を打つ前、コンクリートが流される前の底部分には、湿気が上がらないように防湿シートを設置します。ところがこのビニールのシートが破れていた事例です。重要度は低いものの、頻繁に遭遇するトラブルでもあります。専用のテープできちんと埋め、リペアすれば問題ありません。
工程2 型枠検査〈基礎工事〉における不具合事例
コンクリートを流し込むために設置する型枠も、基礎工事で重要な工程です。確認すべき項目は多岐にわたります。
基礎の中には、アンカーボルトと呼ばれる長いボルトが埋め込まれています。基礎と土台をつなぐ役割を果たすため、すべてが埋め込まれているのではなく、最終的に基礎の上に出ている部分もあります。
出ている部分に土台や柱などの木材を設置していくことになるわけです。ですから、アンカーボルトは土台と鉄筋コンクリートの基礎をつなぐために大きな役割を担っていることになります。
左の不具合例は、アンカーボルトの位置が間違っているケースです。図面上の適切な場所に移動するよう、依頼しました。さらに、アンカーボルト自体が入っていないという場合もありました(右)。
物件の図面では、150ミリ=15センチの基礎幅が必要なのに対し、写真では、少し厚みが足りませんでした。適切な距離を保つよう、修正した事例です。
コンクリートを打設する際、ゴミや木片など不純物が混じると、その箇所が空洞になってしまいます。
強度に難が生じることになりますから、職人さんも十分確認の上、掃除をして作業を行っています。
ただ、うっかりと木片を置き忘れる場合もあるでしょう。人の往来が激しい道路沿いの現場などでは、まれに誰かがゴミを入れてしまったケースもありました。不純物が入っていないか、用心するに越したことはありません。写真(下)は木片を拾ってもらい、取り除いたものです。
工程3 基礎工事後の土台敷きのチェックポイント
基礎工事を終え、いよいよ住宅の礎となる土台部分を設置する「土台敷き」の作業に入ります。
型枠検査の工程でも紹介した、アンカーボルトに関連する不具合事例です。
そもそもは、型枠検査の時にアンカーボルト位置をきちんと確認しておけば、ある程度は防げるはずです。
ところが型枠検査ができなかったり、未確認だったりする際は土台敷きの工程でしっかりチェックしておきましょう。
写真の事例は(左)、土台敷きで、アンカーボルトの位置が適切ではなかったことが発覚したケースです。今回はやむを得ず、金物で土台をきちんと結合し、一定程度の強度を担保するという形で是正を行っています。
アンカーボルトは、コンクリートを流して固まった後に埋めるとなると、別の問題や課題が発生しトラブルとなりかねません。今回は金物で土台をきちんと支えてもらったというような事例となります(左下)。
また右の事例も同じくアンカーボルトの不具合です。
土台は1本の木材でなく、何本かを組み合わせたものです。
木材と木材のつなぎ目にあたる部分にアンカーボルトを配置するのは問題で、適切な場所に移動してもらったものが、右下の写真となります。
住宅の建築をしているさなかにも雨は降ります。
特に梅雨や台風のシーズン、ゲリラ豪雨に見舞われた後には床下が水浸しになるのはよくあることです。
しかし、そのまま床板などを貼ってしまうと、時間の経過でカビが発生し、腐食のリスクが生じます。
たまった水を排水したり、乾かしたりすれば問題ありません。
必要以上に心配しなくても大丈夫ですが、乾かさないで工事を進めないよう気をつけましょう。
コンクリートの表面にすき間が開いたようにでこぼこ、ボソボソしている状態をジャンカと言います。
コンクリートを打設する際に、材料が分離してしまった、締固めが不足していたなどの理由で生じます。見た目も気になりますし、ひどい場合はコンクリートそのものの強度にも関わってきます。
すき間が大きく、コンクリートがほとんどくっついていない、過度にボソボソになっている場合は基礎の全てや一部を解体し、基礎の再構築を行う必要が出てきます。しかし程度問題であり、写真の事例のようなジャンカであれば、補修により強度は保たれます。
このような状態にならないよう、配筋検査や型枠検査の工程でコンクリートが回りにくいトラブルがないかどうか、確認しておくことも重要なポイントです。
気密性の高い住宅づくりには、空気などの流れを遮断し、出入りを最小限にとどめる必要があります。高気密の住宅は、省エネかつ室内の温度を保つなど多くのメリットがあります。
特にユニットバス(浴室)は、外気が入らない仕組みを徹底している住宅が多くあります。
写真の左側を見てください。この白い板のようなものの向こう側が浴室や脱衣所などの区画となっています。その手前、写真を撮影している側、外気が入ってもいい場所ですが、ちょうど境界部分にある板にすき間が空いてしまっているのです。これでは、浴室の区画に冷たい空気が入ってしまいます。そこで、周囲を埋めてすき間をなくした事例です。
もう1つの右側は、基礎パッキンの取り付けを間違えてしまった事例です。基礎パッキンとは、コンクリート基礎と土台の木材との間にはさんで配置する部材です。写真の赤い丸部分の黒い部材が基礎パッキンです。
基礎パッキンには空気を通すタイプと通さない、いわゆる気密タイプのものが存在します。2つを適宜区別して用いなければならないのです。この2つを付け間違えてしまうケースがよくあります。
基礎パッキンは、空気を通す穴あきタイプと穴があいていない板のような形状で区別できます。実施に現場でご確認ください。不明点は現場監督さんなどに尋ねてみましょう。
頻繁に見受けられる事例で、配管の傾きが途中から逆になっているケースです。
排水は、基本的に角度による傾斜で流れていきます。傾きが間違っていると、詰まりやすくなったり、水が滞留したりしてしまいます。
今回のトラブルは排水管を固定するバンドが固定されてなかった点にあります。この丸印のついているところ、ここに本当は釘やビスなどの留め具で固定しなければならないのですが、できていません。このままでは、地震の際に揺れたり、排水時に大きな音が出たりします。
工程4 重要度が高い構造金物工程での事例
次のチェックポイントが構造金物の工程です。
基礎となる土台が完成し、柱や梁、筋交いやその他の横に渡された部材(棟木や母屋)など建物の心臓部となる部分の工事へと進みます。地震の性能(耐震)に直結するところですから、確認すべき項目の重要度が高い工程です。
加えて柱や梁などを接合・緊結し、補強するために金物が使われています。金物の有無や取付ビスの本数、取り付けが緩んでいないかなどを含めて目を光らせるべき箇所だと言えるでしょう。
建物の強度を高めるため、斜めに入れる部材が筋交いです。バッテンのような形でクロスして入れるケースもあれば、片一方だけに取り付ける場合もあります。
左の事例は、筋交いの上部を接合するための金物(筋交いプレート)を付け忘れていたというものです。 その後、適切なものを取り付けてもらいました。
右側は、筋交いプレートは付いているものの、ネジの本数が不足していた事例です。穴が開いているところを全部埋めるのではなく、このプレートに適切な本数はあらかじめ決まっています。適切な本数を入れてもらったのが右下の写真になります。
金物は即座に1つずつ取り付けるのではなく、とり急ぎ必要なところに配置して仮止めをしておくパターンがほとんどです。その後、後でしっかり本留めするつもりが、つい忘れてしまうというケースとなります。とはいえ、ビスの本数が足りないと筋交いの本来の機能が果たせなくなりますから注意しておきましょう。
筋交いの代わりに構造用面材や構造用合板と呼ばれる強い板を壁に取り付け、耐震補強を行うことがあります。面材を取り付ける際には、決められた釘を用い、打つ間隔も定められています。それを守ることで、地震の揺れに耐える力を発揮できるのです。
ところが、許容範囲を超えるような大きな穴を開けてしまうケースがあります。これでは、面材の耐震性が働かないため、きちんと補強対応をやり直してもらいました(右下)。配線や配管で必要な穴を開けるのは問題ありません。
左のケースは、筋交いの向きが図面とは逆になっています。特に片筋交いの場合では、向きによって担う役割が変わりますから、間違いのないよう変えてもらう必要があります(左下)。
事例の写真は、屋根のほうを見上げて撮影しました。屋根の端、角部分にあるべき火打ちが入っていませんでした。筋交いの屋根バージョンのような役割を担うもので、地震や風圧など水平にかかる力による歪みを軽減してくれます。木材の他、金属(火打ち金物)が使用されます(写真左)。
続いて右側も同じく屋根部分の不具合です。
屋根を支える柱のような束(つか)と母屋(もや)や梁と呼ばれる横方向に設置される部材があります。
これらの接合部はかすがいという金物を打ち付け、施工していきます。かすがいとは、大きなホチキスみたいなコの字型の金物です。部材同士を接合する意味から、縁がつなぎ保たれることわざ『子はかすがい』のたとえとしてもご存じの方は多いのではないでしょうか。
この事例では、かすがいの本数が適切ではありませんでした。
部材同士を接合する意味から、縁がつなぎ保たれることわざ『子はかすがい』のたとえとして知られています。かすがいの種類にもよりますが、今回の事例では、本来2つ取り付けるところが1つしか打たれていないケースでした。
土台敷きの工程でもお伝えしましたが、時期によってはどうしても、雨の滴がかかってしまう場合があります。
もちろん、雨がかかるのはできる限り避けたいところです。ただ、きちんと乾けばそれほど気にしなくても大丈夫です。問題はカビが生えて腐食し、変形するぐらいの濡れた状態になったり、そのまま放置したりすることです。そこまでくると交換しなければなりません。
完全に乾いた状態は、基本的には部材の含水率が20%を下回る必要があります。写真の事例では含水率が35%を指していますから、まだまだ水分が多い状態です。一方、下はかろうじて24.5%まで下がりましたが、さらに20%を下回る必要があります。
板や柱を乾かす際、大きな扇風機を用いて一気に乾かす場合があります。方法は問題ないものの、2、3日経過すると、中からじわじわと水が漏れ出てくる事例も少なくありません。表面の水分しか飛んでいなかったことになります。放置したまま作業を続けると、カビや結露のリスクにつながりかねません。ひいては建物全体の傷みに発展しますから、きちんと乾かしてから工事を進めるようにします。
金物の取り付けに関して、基本的には構造図面に記載があります。左の事例では、取り付けそのものを忘れてしまっていました。不具合事例となります。
金物に関して、ご自身でチェックされたいとお考えの施主様はぜひ構造図面を入手してください。ハウスメーカーや工務店の担当者に「構造を描いた図面を見たい」と伝えれば、ほとんどの場合はいただけると思います。
右は、ホールダウン金物がついていなかったケースです。
ホールダウン金物とは、部材と部材を強固につなぐ役目を果たします。1階と2階の間などの柱と柱に用いられています。耐震補強の意味でも重要な金物ですから、適切に取り付けられていなくてはなりません。
構造には直接関係しませんが、図面と窓の高さが違いに気づきやすいのもこのタイミングです。奥の窓と手前の窓では明らかに高さが異なります。完成後、このような不具合に気づいても時は遅く、建物を壊したり、一部解体したり大がかりな補修になってしまいます。写真は構造金物の工程で発見、すぐに図面通りに修正できた事例となっています。
再びホールダウン金物の不具合事例です。
写真の右はナット部分、緩んでしまっている事例。手で回すとすぐにクルクルと回ってしまうような状態でした。
筋交いプレートの事例でもお伝えしたように、現場では一旦仮締めしておいて、後々本締めする場合が多々あります。そこで本締めを失念してしまい、確認すると緩みが発覚するわけです。頻繁に見受けられる事例の1つと言えます。
左は、止め付けているネジの種類が間違っていたケースです。
きちんと適したタイプに変更しました。
今度は住宅の外側からのチェックです。耐震強度を上げるため、外壁に構造用面材や構造用合板と呼ばれる強い板を張ります。板を留めるための釘の種類や間隔が決まっていて、その通りに打つことで補強性能が確保されます。
さらに、釘の打ち方にも注意が必要です。最近は、金槌ではなく空気の力を利用する釘打ち機を使って釘を打つのが一般的です。釘打ち機では空気を圧縮するコンプレッサーを使用しますが、圧が強すぎるとすぐに釘が板にめり込んでしまいます。
釘が板にめり込むと、板の厚みが薄くなってしまいます。きちんと釘を打つよりも、耐震性能が下がることにもつながります。
また、基本的に赤い線に沿って釘を打ち付けていくのですが、この事例ではズレが生じています。釘のピッチ(間隔)も合致していません。増し打ちして対応した事例となります。
工程5 防水検査で見つかる不具合
何度かお伝えしているように、住宅にとって水分は気をつけたい大切なポイントです。
雪や雨水、また湿気による結露が木材にカビを発生させ、部材を腐食させます。
さらに被害が及ぶと、住宅そのものの寿命をも脅かすことにつながります。
自宅を長持ちさせる意味でも、防水検査はチェックしたい重要な工程となります。
住宅の防水機能を高めるため、屋外の外壁に防水紙を防水紙・防水シートを施します。防水性のある紙で外壁をぐるりと囲うのです。
けれども残念なことに、防水紙・防水シートが破損しているケースを頻繁に見かけます。雨から守るためのシートを巻いているのに、破れていたり、穴が開いていたりしていてはせっかくの防水機能が台無しです。
そこで防水テープという専用のテープで埋める補修を行います。雨はわずか1ミリのすき間からも侵入してきますので、目をこらして破損がないかを調べましょう。
窓枠などは、特に丁寧な作業が必要になってきます。写真の左上は、窓枠に両面接着の黒い防水テープを貼り、防水紙を重ねていく処理を行ったもの。残念ながら、防水テープとテープの間にすき間が生じています。ここから雨水が浸入してきてしまうのです。左下はテープを重ねてすき間をなくした是正後の写真となります。
防水効果のある黒い両面テープは、貼り重ねる手順も決まっています。手順に沿って丁寧に貼ることで、より高い効果が得られるのです。
防水紙の破れと同様、シートが何らかの理由でこすれて薄くなっている事例の発生頻度も高いです。シートが薄くなると当然、防水性能も低下します。後に専用テープで補強しました。
続いて、右の事例もすき間が空いてしまったケース。平面な壁であれば、シートを貼るのはそれほど難しくありません。立体的な箇所、例えばベランダの手すりなどでは、まれに上手く貼れないこともあります。
ベランダの手すりが外壁にぶつかっている立体的な箇所におけるミスです。
今回の場合、ウェザータイトという専用の防水素材を使い、雨が入らないよう施してありました。
ところが、貼り方の手順に間違いが生じ、すき間が空いてたという事例です。ウェザータイトの上部に防水テープを施すよう、是正したのが下の写真になります。
窓のある箇所は凹凸があります。ちょうど角にあたる部分はシートとシートの境目になりますから、すき間があると水が入ってきてしまいます。
一見したところ、上部だから雨が入ってこないように感じられます。しかし、細い管や狭いすき間を、液体が伝って登っていく「毛細管現象」により、雨が上から侵入することもあり得るのです。左右どちらもすき間を専用の防水テープで埋めて補修しました。
よく見る不具合です。外壁は配管や配線を通すため穴が開いています。
このような箇所は、小さなすき間ができやすいのです。よくよく目をこらしてみないとわからない程度の微細なすき間でも、水は浸入してきます。
繰り返しとなりますが、防水テープには貼り方の手順が決まっています。その手順通りに張らないと、すき間ができ雨水が浸入してしまいます。配管回りにすき間が生じていないか、細かく確認するのがベターです。
ベランダの防水シートの長さが足りないため、下地の板が見えてしまっている事例。これでは雨水が入ってきてしまいますので、適切な長さに貼り伸ばしています。
外壁の下側から屋根が伸びる(軒天)の接合部分にあたるギリギリの防水シートが貼られています(左)。写真の例でも悪くはないものの、可能な限り貼ったほうが防水効果は高まります。もう少し長さがほしいという事例です。もしくは防水テープなどですき間がないように埋めたほうがいいでしょう。ちなみに屋根の防水工事は、水シートはまた別の材料であるルーフィングを使います。
右のケースは天窓回りの防水処理を撮影したものです。天窓のように突き出してしまう箇所は、すき間ができやすいところです。防水施工では、シートとシートの重なる部分、重ねしろができます。重ねしろ部分はただ単純にかぶせておくだけでは水が浸入してしまいます。必要な重ねしろは、10センチや15センチなど数値が定められています。天窓回りは雨漏りがしやすいですので、しっかりとした防水処理が必要です。
ベランダやバルコニーに出るための大きな掃き出し窓の不具合事例です。
残念ながら、完成後に気づくパターンがほとんどのケースでもあります。
雨が入る可能性の高いベランダやバルコニーは、防水層で覆われています。水がしみこまない、浸透しないよう、はじく素材が塗られています。吐き出し窓の下枠はネジで留めて固定されています。ところが同時にベランダの防水層も貫通してしまいました。これでは貫通しているところから雨漏りしてしまうリスクがあります。
そこで貫通箇所を埋める補修を行いました。このようなケースでは、あらかじめゴム材のようなシーリングを注入してから窓枠を留めるという方法を採用する手もあります。
工程6 最後のタイミング断熱検査の事例
いよいよ最後の工程である断熱検査です。施工ミスも数多く見られるタイミングですので、しっかり確認しておきましょう。
天井を見上げている状態の写真です。断熱材を入れるのをまるまる忘れてしまっていたケースとなります。
外気に触れる箇所には断熱材を入れるのが基本です。1階と2階で外壁のラインが異なる場合やベランダに接しているなどで複雑な凹凸がある際、どこが外気に面する箇所なのかがわかりにくくなってしまいます。そのため、まるまる入れ忘れるミスが起こりがちです。
イレギュラーな箇所は、断熱材の入れ忘れが増えます。
そもそも住宅用断熱材として幅広く利用される袋入りのグラスウールは、一梱包のサイズが決まっています。
一般的な場所にピッタリとはまる、ジャストサイズの大きさとなっています。
そのため、一般的な大きさより小さい、大きい箇所に入れる際、中のグラスウールを出して切らなければなりません。どうしても作業が後回しになる場合が多く、つい入れ忘れてしまうミスが多いようです。
続いて、外壁貫通部、配管やダクト等を通すところにすき間ができ、シート状の防湿気密シートが剥がれている事例です(左)。右も同じ外壁貫通部やその周辺におけるトラブルで、すき間が空いているケース。
写真ではわかりにくいですが、やはりフィルムが剥がれてしまっています。これは大きな問題となりますから、すき間を埋めて専用のテープで補修しています。
次はよく見るとすき間が空いてしまっていたケース。一見するときちんと入っているように見えるものの、よく見ると断熱材が入っていない箇所がありました。1度剥がした後、グラスウールをきちんと詰め直した事例です。
窓周りは複雑なため、すき間が発生しやすい箇所です(右)。大きなすき間があったので、直した後が右下の写真です。
先ほどのグラスウールは、ガラス繊維系の断熱材です。断熱材には他にもさまざまな種類があり、吹き付けることで膨れ上がるタイプ断熱材を使用する場合もあります。
吹き付けタイプの断熱材は、厚みが不足するとすき間が発生してしまいます。厚みは基本的に図面に描かれていますから、適宜比較してみるのがおすすめです。写真の事例では、左、中、右、それぞれ大きなすき間、小さなすき間が生じてしまっています。各々適した厚みに変更しています。
次は袋入りロックウールという別タイプの断熱材を使用した例。グラスウールがガラス繊維系の断熱材なのに対し、ロックウールは天然鉱物由来の繊維でできています。ふわふわした繊維が入ってる点ではグラスウールと似ている断熱材です。
断熱材は本来、袋を貼り伸ばして、柱の部分である縦の部材で留めておかなくてはなりません。ところが、左の写真の例では、縦の部材に接する部分も中に折りたたんで入れる形で納めています。そのため、きちんと埋まっているように見えるものの、左右の折り返し部分が曲がっているだけで、柱のところにきちんと留まっていないのです。すき間が生じますから、後ほど専用のシートをかぶせて対策しました。
右の写真は配線を通す際にすき間が空いてしまった事例です。こちらもすき間を埋める補修済みです(右下)。
外気を入れるところ、入れないところがあることは型枠検査の工程の時にも触れました。例えばユニットバスは外気を入れないところだとお伝えしています。この事例は外気を入れたないために、断熱できちっと埋めたのに、配管を通すところに少し空間、穴が開いてしまっていたケースになります。給水管、給湯管等が入ってるところに穴が空いてしまった写真となります(右下)。そこで、発泡系の断熱材で埋める対応をしています。
以上、新築住宅の工程・タイミング別不具合チェックポイントについてかいつまんでご紹介しました。
不具合があった際は不具合と修正後、双方の写真や動画を残しておくのがポイントです。内容が専門的すぎて難しい、プロの視点で判断してほしいという場合には、私たちさくら事務所もお手伝いしますので、ぜひご相談ください。
現場に断りを入れてから見学に出かけよう!
最後に、現場での不具合チェックの際に、心に留めておいてほしいポイントがあります。それは、現場監督さんに一言断りを入れた上で、見学に出かけていただきたいということです。
それはひとえに、皆さんの安全を確保するためです。
現場監督さんは、安全管理の全責任を負っています。職人さんはもちろんのこと、施主様にも安全に見学してもらうよう配慮しなくてはならないからです。
きちんとした監督さんであれば、現場にヘルメットを準備してくれたりとか上履き準備してくれたりするはずです。できれば黙って現場にいくのではなく、監督に断りを入れるのがベストです。まずはしっかりと現場の方々とコミュニケーションを取ってこそ、安心安全な現場チェックが可能になると考えます。
マイホームが建つ過程を見るのは、幸せなことです。また自身が長く暮らす家だからこそ、「納得いくまでチェックしたい」との思い至るのも、施主様のごく自然な思いではないでしょうか。現場での確認作業に、この記事が役立てば幸いです。
完成後に発見できない重大欠陥に「工事中の第三者チェック」を!
新築工事の段階ですでに「約80%」の施工ミスを発見!
さいごに、冒頭でもご説明しましたが、2019~2020年にかけて大手ハウスメーカーや地元の工務店まで幅広く工事中の施工ミスを集計・分析した結果、おおよそ8割近く発生していることがわかりました。
新築工事中ホームインスペクション(第三者検査) サービスは、本来施工ミスを防ぐ最も良いタイミングである工事中に、完成後には発見できない基礎・構造など建物の重要箇所について、建物に精通したホームインスペクター(住宅診断士)が複数回の検査をし、引き渡し時の完成検査(内覧会同行チェック)も併せて行います。
施工ミスの原因は、現場監督が「法律や規定を知らなかった」「うっかり間違えた」など、初歩的なことが多いです。しかし、工事中の施工不良は住宅完成後に立ち戻り検査をすることができなく、時限爆弾式に10年以上たってから大きな不具合が発生するなどのケースも多々あり、欠陥住宅を未然に防ぎたいお客様には、当サービスを強くおすすめしております。
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