基礎工事から上棟までは文字通り家の基盤となる重要な工事。基盤がしっかりしていなければ、住宅は長持ちしません。
基礎工事から上棟までの工程は、工事中でしか確認できないことが多くあります。コンクリートが流し込まれ、壁が出来上がるとチェックできないのです。
じつは、私達さくら事務所が2019~2020年にかけて大手ハウスメーカーや地元の工務店まで幅広く工事中の施工ミスを集計・分析した結果、おおよそ8割近く発生しており、重大な欠陥も少なからず含まれるなど、購入者側も最低限のことは理解しておきたい部分でもあります。
基礎工事のチェックポイント
住宅の基礎工事を地縄張りや配筋、型枠工事、コンクリート打設に分けることができます。各工程の注意点やチェックポイントを見ていきましょう。
ベタ基礎と布基礎
ベタ基礎は建物の底一面を鉄筋コンクリートの基礎で支える工法です。
床一面で建物を支えるため、建物が沈む(不同沈下)可能性を下げる基礎と言われています。シロアリ対策にも有効です。布基礎よりもコストが高くなる一面もあります。
一方、立ち上がっている部分のみで支えるのが布基礎。かつては地面がむきだしでしたが、土間コンを打設することも増えてきました。こうなると見た目はベタ基礎と変わりなくなります。
湿気やシロアリ対策に土間コンは有効だと言われているため、多くの住宅で採用されています。
地縄張りが正しく行えているか
建築予定地に縄を張って、設計図通りに建物の配置を決めていく作業のことです。
万一この工程が間違っていると、後の作業がすべて狂ってしまいます。建物の方位や配置を確認してみましょう。地縄張りをすると、ある程度の完成後のイメージができます。
型枠工事はかぶり厚さの確認を
配筋が終わると型枠工事に入ります。型枠の出来によって基礎工事の出来が左右されるのです。型枠工事ではかぶり厚さを確認しましょう。
かぶり厚さとは、鉄筋がどれほどの厚さでコンクリートに覆われているか、のことです。かぶり厚さは鉄筋の耐久性にも影響します。住宅で使われている一般的なコンクリートの中性化速度は10年でおよそ0.5㎝程度とされており、かぶり厚さが3㎝で60年程度の耐久性が見込まれることになります。
仮に5mm配筋がずれてしまうと、10年も早く鉄筋が傷んでしまう可能性に繋がります。先ほどの配筋検査をしっかり行うことで耐久性を維持することができます。
配筋が適切か
鉄筋を組み上げることを配筋といいます。配筋やアンカーボルトの配置、鉄筋の間隔等が適切であれば、設計通りの強度を発揮することが可能です。
一方、鉄筋が曲がっている、あるいはゆがんでいるのは適切な配筋とはいえません。こうした状態でもそのままコンクリートを打設してしまうこともあります。コンクリート打設後には配筋を変更することができません。このタイミングでしか、配筋は確認できないのです。
ずさんな基礎工事の施工不良事例紹介
基礎とは文字通り建物を支える部分です。この基礎工事をおろそかにすると建物の耐久性にも影響を与えます。そんな重要な基礎工事ですが、中には是正が必要な場合もあるものです。今回は配筋検査や型枠検査で指摘された失敗事例をご紹介します。配筋検査における不具合事例
多くの現場で見つかっている不具合事例。その中でも配筋検査で見つかる主な事例は次のとおりです。いずれの事例もこの段階で是正しないと取り返しがつきません。- 人通口のスペースが取れていない
- 定着長さが取れていない
- 基礎の穴(スリーブ)と鉄筋が密着している
- ベースのひび割れ
これら不具合事例の検査や是正方法について見ていきましょう。
人通口のスペースが取れていない
こちらの事例は、発生すると大きな問題となる人通口(じんつうこう)のトラブルです。
ちょうど写真の赤丸の箇所が基礎の図面上は人通口となるはずでしたが、現地に行ってみると確保されていませんでした。人通口を後から開けようとすると、一度完成した基礎をすべて壊さなくてはならなくなり、傷みが出てしまったり、適切な強度を保てなかったりする可能性もあります。
人通口基礎の強度を考えた上で開ける箇所が計算されているため、安易に別の場所に設けるのも難しいのです。
定着長さが取れていない事例
定着長さとは鉄筋が重なり合っている長さのこと。この定着長さは鉄筋の太さによって異なります。この定着長さが確保されていないと、鉄筋が計算通りの強度を発揮できません。発生頻度も比較的高い不具合なので注意が必要です。基礎の穴(スリーブ)と鉄筋が密着している事例
基礎には多くの穴(スリーブ)が開いています。これらは上下水道管などの配管が通る場所です。このスリーブが鉄筋に近すぎると、かぶり厚さが確保できません。スリーブは鉄筋と離れている必要があるのです。検査では目視や計測によって確認し、距離が近いものは是正を求めます。ベースのひび割れ事例
底盤とも呼ばれるベースにひび割れが起こるのも問題です。ただ、ひび割れ自体はコンクリートである以上避けられません。問題はその太さです。ひび割れの太さが0.3ミリ以上あると補修の必要があります。また、0.5ミリ以上になると補修が不可欠です。この太さはクラックスケールという道具で計測します。型枠検査における不具合事例
配筋と同様に型枠もこの段階で是正しなければならないものです。この型枠にコンクリートが打設されるのですから、型枠の出来が基礎の出来となります。型枠検査における不具合事例は次のとおりです。- アンカーボルトの位置、埋め込み方に関する不具合
- 基礎の厚みが違う
- 型枠の中にゴミや木片が入っている
ひとつずつ解説します。
アンカーボルトの位置、埋め込み方に関する不具合
型枠検査における不具合事例
基礎の中には、アンカーボルトと呼ばれる長いボルトが埋め込まれています。基礎と土台をつなぐ役割を果たすため、すべてが埋め込まれているのではなく、最終的に基礎の上に出ている部分もあります。
出ている部分に土台や柱などの木材を設置していくことになるわけです。そのため、アンカーボルトは土台と鉄筋コンクリートの基礎をつなぐために大きな役割を担っていることになります。
左の不具合例は、アンカーボルトの位置が間違っているケースです。図面上の適切な場所に移動するよう、依頼しました。さらに、アンカーボルト自体が入っていないという場合もありました(右)。
基礎の厚みが違う事例
基礎の立ち上がり部分の厚さが足りないことがあります。こうした事例は発生頻度こそ少ないものの、基礎の強度に直結する問題です。これを放置すると立ち上がり部分のかぶり厚さが不足してしまうおそれがあります。検査の際には型枠の幅を計測して確認をしていきます。型枠の中にゴミや木片が入っている
建築現場には木片などが散らばっているものです。こうしたゴミや木片が型枠の中に入ってしまうことがあります。型枠内に異物があると、その部分にコンクリートが入っていきません。その結果、空洞が発生してしまうのです。こうした異物は事前に取り除きましょう。コンクリート打設
コンクリート打設はコンクリートを打つ、とも表現されます。工場で部材をカット、生産することが多くなった建築業界でもコンクリート工事は現場打ちが基本です。
ここではコンクリート工事のチェックポイントをみていきましょう。きれいに打設されたコンクリートは美しいものです。反対に上手に打設できないと外観や内部に欠陥が発生してしまいます。
コンクリートの品質をチェック
コンクリートには納品書が付属しています。まずはここをチェックしましょう。専門的な数値や名称が並んでいますが、呼び強度だけは確認が必須です。呼び強度はコンクリートの強度の区分になります。
製造元から品質保証の証拠となるのが納品書なのです。多くても数枚の紙片ですが、重要な書類といえます。
出荷から打設までの時間をチェック
コンクリートは「生コン」とも呼ばれるほどで、すぐに固まり始めてしまいます。コンクリートミキサー車がコンクリートを回転させるようにできているのも、撹拌して固まることを防いでいるのです。
コンクリート工場を出発してから打設が終了するまでの時間は、気温が25℃以上の場合は90分以内、気温が25℃を下回っている場合、120分以内になります。
コンクリートの打設は時間との戦いでもあります。コンクリートを打設するための圧送ポンプを使うのも時間短縮のためです。
打設時の天気をチェック
コンクリート打設は雨の日が厳禁です。打設時に雨が降っていると、まだ固まっていないコンクリートに雨水、つまり水分が混入してしまいます。
こうなると、コンクリートの配合が変わってしまうのです。これでは所定通りの性能を発揮できなくなります。
コンクリート打設が完了し、養生中は雨が降っても大丈夫です。むしろ雨が降ることが歓迎すらされています。
型枠を外すまでの日数や天気をチェック
型枠を外すまでの日数やその間の天気もチェックすることになります。コンクリートを打設して型枠を外すまでは少なくとも3日間は必要です。
最近のコンクリートは速乾性が高くなっているものの、ある程度の期間は必要となります。もしこの間に雨が降ればその分延長です。
上棟は短期間で終了
在来の軸組工法も、ツーバイフォー工法も柱などの部材は工場でカット、生産することが主流です。
このため、棟上げは一気に材料を搬入し、手早く済ませてしまいます。早ければ一日、かかったとしても2日から3日で完了です。ここでは図面と照合し、間取りや開口部の位置を確認しましょう。
上棟工事が終わった後も工事は続きます。ただ、ここで一度きちんとチェックすることがおすすめです。
上棟工事が終われば、ある程度の間取り、部屋の広さや配置がわかり、基礎や柱はこの後次第に見えなくなってしまいます。このタイミングで確認しないとチェックが困難になるのです。設計図と照合し、正しく配置されているか、部材は適切かを確認しましょう。
完成後に発見できない重大欠陥に「工事中の第三者チェック」を!
新築工事の段階ですでに「約80%」の施工ミスを発見!
冒頭でもご説明しましたが、2019~2020年にかけて大手ハウスメーカーや地元の工務店まで幅広く工事中の施工ミスを集計・分析した結果、おおよそ8割近く発生していることがわかりました。
新築工事中ホームインスペクション(第三者検査)サービスは、本来施工ミスを防ぐ最も良いタイミングである工事中に、完成後には発見できない基礎・構造など建物の重要箇所について、建物に精通したホームインスペクター(住宅診断士)が複数回の検査をし、引き渡し時の完成検査(内覧会同行チェック)も併せて行います。
施工ミスの原因は、現場監督が「法律や規定を知らなかった」「うっかり間違えた」など、初歩的なことが多いです。しかし、工事中の施工不良は住宅完成後に立ち戻り検査をすることができなく、時限爆弾式に10年以上たってから大きな不具合が発生するなどのケースも多々あり、欠陥住宅を未然に防ぎたいお客様には、当サービスを強くおすすめしております。
※工事途中からのご利用も問題ありませんので、お急ぎの方はまずは一度お問合わせください。
さくら事務所は業界No.1!経験年数20年以上のプロ集団が提供
さくら事務所は、国内におけるホームインスペクション普及のパイオニア的存在であり、これまでご依頼実績は業界No.1(累計68,000件超)、満足度98%(Google口コミ☆4.8)と非常に有り難い評価をいただいております。
非常に重要な観点である「第三者性・中立性」を保持しながら、建築・不動産・防災・マンション管理など、あらゆる難関資格を持つメンバーが連携、サービスご利用後にもあらゆる住まいのご相談に対応するための「永年アフターフォローサービス」もご用意。これから暮らす住まいの安心に加え、心強い建築士と末永いお付き合いをいただける内容となっております。
※ご依頼から概ね3日~1週間以内での調査実施が可能です。お急ぎの方は、まずはお問合せください!