ゴールデンウィーク前、一気に暖かくなる頃に毎年お問い合わせを頂くのが「シロアリ」。
「急に大量の羽蟻が発生して・・・」なんて声が寄せられますが、まずは慌てずに羽蟻を見分ける必要があります。羽蟻が群飛するのは黒蟻も同じ。羽蟻だからと言って全てシロアリと言う訳ではありません。
また羽蟻が黒いから黒蟻ではなく、シロアリの羽蟻も黒い色をしています。しっかり見て確認し対処する必要があります。
黒蟻とシロアリの特徴
黒蟻の特徴
黒蟻は実は蜂の仲間。体形をみると蜂と同じく頭、胸部、腹部の3つにくびれています。羽蟻の翅は長いものと短いものの2枚づつ4枚あります。
シロアリの特徴
シロアリはゴキブリの仲間。体形は頭、胸部、腹部に分かれますがくびれがありません。羽蟻の翅は4枚ありますが、長さはほとんど同じです。
シロアリによる木材の食害による被害
対処が必要なのは建物に重大な被害を与えるシロアリ。シロアリの被害は日本に従来から生息するヤマトシロアリとイエシロアリが多くあり、ヤマトシロアリはほぼ日本全国で生息しています。イエシロアリは関東以南の温暖な地域で生息しています。
シロアリは枯れ木や朽ち木などの湿った木材を好みますが、住宅でも柱、梁、土台などの木材が湿っていたりするとシロアリが食害し、木材の耐久性が低下する被害が生じます。ヤマトシロアリは湿った木材の中でのみ生息していますが、イエシロアリは水気を運んで木材を湿らせて生息範囲を広げるため、イエシロアリの被害はヤマトシロアリと比べて大きいと言われています。
住宅でシロアリ被害が起きる原因
新築の場合、建物は風雨に耐えるように造られているため、周辺による環境からの影響を除けば木材に湿気があるようなことはまずありません。ではどのような場合にあるか例を挙げると、建物の経年劣化や突発的な事故による破損により、屋根や外壁、外まわりのサッシ・ドアなどから雨水が浸入することがあります。
また、キッチン・浴室・洗面所・トイレなどの水まわりからの漏水、結露が生じた場合は濡れてしまうことになります。室内側の表面は濡れても乾燥しますが、内部は乾燥し難いため湿気を帯びている状態が継続するとシロアリが好む環境になります。
シロアリ被害の状況
2013年『シロアリ被害実態調査報告書』によれば、国内の木造住宅の5軒に1軒は、床下にシロアリ被害があると言われています。
床下といえば、基礎や土台など建物の耐久性・耐震性に影響を及ぼす箇所であり、ホームインスペクション(住宅診断)でも重要なチェックポイント。こちらは、実際に床下でシロアリの被害に遭い床が抜けてしまった、というケースです。
床下は、普段の生活では目が届かないので、気がついたら頃には被害が大きくなっていた、なんてことも起こり得るのです。
ゴールデンウイーク前に点検・駆除
例えばヤマトシロアリの場合、活発に活動するのは12~33℃。冬は冬眠こそしないものの、6℃以下になるとその動きは鈍くなります。
2~3月頃に冬の寒さから解放されてシロアリが動き始めます。暖かくなるに連れて活発化し、そしてゴールデンウイーク前ぐらいから羽蟻の群飛が始まります。
群飛してしまうと各地に広がってしまい被害箇所が多くなってしまいます。また、群飛したあとの小さな巣は見つけ難く見逃してしまうこともあります。従いまして、群飛前には点検・駆除・予防をすることが大事です。
もしシロアリがいた場合には、この時期に駆除ができないと被害が一気に拡大してしまいます。
5年サイクルの防蟻処理
新築時には防蟻(シロアリ)処理はされていることが多いのですが、一般的にシロアリ被害に対する保証は5年間です。もちろん保証期間が切れてすぐに被害が出るというわけではありませんが、時間とともに薬剤効果も薄れてくるので、5年毎に防蟻処理をすることがシロアリ被害の予防になります。
新しいシロアリ被害
近年ではアメリカカンザイシロアリという新しいタイプのシロアリ被害が増えてきました。外来種であり、湿った木材ではなく乾燥した木材を食害するシロアリです。
一つの巣に生息する数が少ないため羽蟻も少なく群飛にはなりませんが、数が少ない分見つかり難く見逃してしまいます。また、新築の建物でもアメリカカンザイシロアリの被害は保証の対象外となっていることがほとんどで厄介なシロアリです。
首都圏では特定の地域で生息していますが、ホームインスペクションでも被害を見かけるようになりました。
ホームインスペクションで見つかった被害
床下の環境(湿気)や屋根や外壁からの漏水等が原因で、比較的早い時期から被害が出るケースも。下の写真は床下の木材の水分量を測っている様子。左側に上下に走っているのはシロアリの道、蟻道(ぎどう)です。木材の含水率では19.1%とやはり高めの数字を表しています。
土台や柱など主要な構造部材に被害が及ぶと耐震性も低下し、最悪の場合は倒壊の危険もあります。
これまで多くの物件でリフォームの相談やホームインスペクションを行ってきた経験からの印象として、木造住宅においては定期的な防蟻処理の有無により、10年~20年以上、建物の耐用年数が違っていると感じます。
また、大規模なリフォームを行う際の費用も、構造材の腐食に対する補修費用は定期的な防蟻処理費用の数倍かかります。
一般的に「シロアリは発見してからでは手遅れ」とも云われていますので、予防の意味でも年に1回の定期点検、また、中古の一戸建ての購入を検討する際にも、ホームインスペクションで床下まで徹底的にシロアリチェックを行うことをおすすめします。