高断熱・高気密とは?戸建の断熱性能は気密とセット

  • Update: 2019-07-24
高断熱・高気密とは?戸建の断熱性能は気密とセット

快適な住宅を実現するうえで断熱性能の充実は欠かせない要素のひとつといえるでしょう。ただし断熱性能の向上を検討するにあたっては同時に気密性能についてもしっかりと追及していくことが重要なポイントとなります。
戸建住宅の性能は断熱と気密をセットで考える必要がある理由について解説いたします。

断熱と気密は両輪の関係、その理由は?

断熱の役割はそもそも何のため?

断熱とは熱の移動を断つということで、熱移動が少ないほど高断熱ということになります。熱は温度の高いほうから低いほうに移動し、夏には温かい空気は屋外から屋内に、冬ではその逆となります。熱の移動が頻繁に行われる環境では、空調の効果は極端に薄れ、光熱費がものすごくかかっているのに、なんだか冷暖房の効きがイマイチよくない・・・といった大変な非効率な状況になりかねません。

そのようなリスクを回避するためには、できるだけ熱の移動を抑えることが必要となります。断熱の方法として、住宅全体を断熱材で覆い、外部との熱移動をできるだけ防ぐということが一般的です。

気密とはどんな性能を表す指標?

そして、建物を断熱するときに合わせて検討が必要なのが「気密」です。気密とは空気を密閉するということで、空気が通り抜ける隙間が少ないほど高気密ということになります。
屋内と屋外で気圧差が生じる場合、均一にしようとする働きから圧力の高いほうから低いほうに空気が移動しますが、隙間が多いほど空気の流出入が活発になります。

高断熱を実現するためには高気密であれ

とくに冬場においては、温まった空気は膨張して軽くなるため上昇し、さらに隙間を通じて外部に流出しますが、その分だけ冷たい空気が隙間から流入するといった効率の悪い循環が生まれます。気密の確保には、部材どうしのつなぎ目や開口部周辺のような隙間ができる部位にテープを貼ることや、断熱材を隙間ができにくい吹き付け材にすることなどさまざまな方法がありますが、仕様の他に施工精度の影響を受けやすい部分でもあります。

このように断熱材の性能を上げて外部からの熱移動を防いだとしても、隙間が多いようであれば空気の流出入によって、屋内は屋外の温度の影響を受けやすくなるということです。
したがって高断熱を実現するためには高気密でないと効果は薄まるということになります。

高断熱・高気密住宅のメリットとは

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生活する家が高断熱・高気密であった場合、多くのメリットを得ることができますが、その内容とはどのようなことなのか解説いたします。

光熱費の削減ができる

外部の温度による影響を受けにくくなるため、室内の温度が安定し空調効率が良くなります。
したがって省エネが促進されランニングコストが下がります。

建物の耐久性の維持に貢献する

人が生活をする屋内には多くの湿気が存在していますが、隙間が多いと空気とともに湿気の移動も行われます。その際に壁内で結露が発生し、断熱材や構造体などが水分を含むようになる場合があります。
そのようなことがあるとカビの発生や木材の腐食といった現象が起こり、建物の劣化を引き起こすことにつながります。気密性が高いとこれらの現象を抑制するため、劣化の防止に貢献し結果として長持ちさせることができます。

ヒートショックの防止

屋内の断熱性能が良いと部屋ごとの温度差が大きく変わらないため、急激な温度変化が原因で起こるヒートショックを防止する効果が期待できます。

快適性が高い

室内温度が安定するため、不快に感じることが少なくなります。また結露の発生を防ぎ、カビなどによる健康被害を受けにくくなります。

断熱リフォームのポイントや注意点とは

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断熱リフォームは気密にも配慮

築年数の大きな住宅には断熱性能に乏しく、夏の暑さや冬の寒さによる影響を大きく受けることも多くなるのではないでしょうか。
そのような住宅では断熱リフォームを検討してみることもひとつの方法ですが、断熱性能を高めるためには多くのポイントや注意点があります。それは気密性が大きく関係しており、古い住宅ほど隙間が多く、断熱材の性能を向上させても気密性の確保ができないと効果が伴いにくいという点です。したがって、断熱リフォームのポイントは断熱性能と気密性能の向上をセットで検討することになります。

連続した断熱層を覆う

まず、断熱材どうしや間仕切りと壁・床など部位が切り替わる位置において隙間および欠損が生じないよう、「連続した断熱層」を必要な空間に対し全て覆うことが重要となります。これは施工精度の影響を受ける部分でもあり、多くは完成後に隠れてしまう部分でもあるため施工中の確認もポイントのひとつです。

気流止めも重要

そして「気流止め」も重要で、これは壁内に空気や熱が流れて行くことがないよう、適切な位置を塞ぐという施工方法です。壁内に空気が流れて行く状況は、建物にとってあまり良い環境とはいえません。
とくに冬場では、冷気が壁内に流れ込むと室内との温度差で、目視できない壁の中で結露を起こす原因となります。断熱材が水分を含むと断熱性能は下がり、また水分が構造体にまで及び腐食すると建物寿命を縮めることにもつながります。

断熱材だけに目を向けず、気密や施工方法にも注意

「連続した断熱層」や「気流止め」など、これらを確実に施工することが断熱リフォームのポイントです。

なお、比較的どの住宅でも行なえる効果の高い断熱リフォームは、最も熱移動が行われる窓の断熱性能を高めること。インナーサッシ(内窓)の設置のような手軽なことから検討してみることもよいかもしれません。

断熱は断熱材の性能に意識が向いてしまいがちですが、その他にも気密や施工精度など注意しておきたいことが多くあります。中古戸建のリフォーム・リノベーションの機会に、専門家によるアドバイスやホームインスペクション(住宅診断)によるチェックも検討してみてはいかがでしょうか。