多彩な顔と個性あふれる大田区!エリアごとの地形と災害リスクを知っておこう

  • Update: 2021-11-05
多彩な顔と個性あふれる大田区!エリアごとの地形と災害リスクを知っておこう

羽田空港を有し、面積は61.86km2と23区内トップの広さを誇る大田区。東京都の東南部にあり、北側は世田谷区、目黒区、品川区に接し、東側は東京湾、西側から南側は多摩川に面しています。

皆さんは大田区にどのようなイメージをお持ちでしょうか。実は大田区は、その特徴を一言で言い表すのが難しいエリアです。閑静な住宅地として知られる田園調布、日本のものづくりを支える町工場、さらに賑やかな繁華街・蒲田エリア、そして交通の要である羽田空港まで、すべてが大田区に集まっているからです。

大田区には古くから人々が暮らしを営んだ証として、大森貝塚をはじめ多くの遺跡が残されています。また勝海舟記念館や池上本門寺など歴史や文化の街としての顔も垣間見えます。地域によってまったく異なる顔を持つ大田区。地形や災害リスクについても多種多様な特徴をもっている地域です。

数多くの災害リスクを調査してきた東京都のホームインスペクター(住宅診断士)が、大田区を地形や地盤の特徴を中心にエリアごとに詳しく解説します。大田区での暮らしをお考えの方はぜひご一読ください。

太田区のエリア別の地形と特徴

1947(昭和22)年、「大森区」と「蒲田区」が1つとなり、それぞれから一字とって生まれた大田区。東西方向に東急池上線と東急多摩川線が通り、南北方向にJR東海道本線と京浜急行電鉄本線、臨海沿いに東京モノレールがあるなど蒲田エリアを中心に鉄道網が発展しています。

道路状況は東西方向に環状第7号線と環状第8号線、南北方向に第2京浜(国道1号線)と第一京浜(国道15号線)、産業道路(国道131号線)が通っています。

大田区は地形の特徴から、おおよそ次の4つのエリアに区分されます。

  • 武蔵野台地にある北西部の高台
  • 多摩川沿いから蒲田付近にあたる多摩川低地
  • 大森周辺の海沿いに広がる海岸平野
  • 平和島、城南島、羽田空港などの埋立地
大田区の地形の特徴
国土地理院「地理院地図」に土地条件図を表示して抜粋。
図中に地形の名前(紫色文字)、上に地形の凡例を追記

 

地形・地盤・災害の特徴をエリアごとに見ていきましょう。

安定した地盤「武蔵野台地」にある北西部

大田区の北西部は、東京の西側に広がる「武蔵野台地」と呼ばれる高台の平坦地にあります(主に上図「台地」の地域)。青物横丁交差点から、第2京浜を経て環八通りに至る池上通りに沿って北西側のエリアです。

このあたりは火山灰(ローム層)からなる標高の高い平坦地である台地にあり、地震の揺れ、液状化、大規模な水害などの災害リスクの小さいエリアで、比較的安定した地盤だといえるでしょう。ただし、最近の研究では、区内の一部で台地の上でもゆれやすい地盤の地域があるという報告もあります。

川沿いの標高の低いところ、台地との境の斜面には注意

台地でリスクの少ないエリアとはいえ、川沿いなど標高が低くなる場所では注意が必要です。世田谷区、目黒区、大田区の3区にかかり、東京湾へとつながる呑川(世田谷区と目黒区の上流域では暗渠)などの川沿いでは河川によって削られた「谷底低地」(主に上図でオレンジ色の「台地」の間にあり、低地だったところを埋めて現在は「盛土地」の地域となっています)が広がっています。「谷底低地」では盛土されていても標高は低いため、河川の氾濫・洪水のリスクも念頭に置いておきましょう。

河川の流れによって削られた土砂が再堆積しているこれらの地域では、軟弱地盤が存在します。以前は沼地で植物が溜まってできた「腐植土」と呼ばれる土の層によって、地盤沈下を引き起こしやすいところもあるのです。地震の時に揺れが大きくなりやすい点にも気をつけておかなくてはなりません。

高台の台地と川沿いの低地の間は、標高差がある斜面が形成されています(主に、上図「台地の斜面」の部分)。斜面では土砂災害警戒区域が指定されていることがありますが、区域指定がされていない箇所でも油断は禁物です。これらの場所では大雨の際や地震時に土砂災害(がけ崩れ)が懸念されるからです。

また、斜面を宅地に造成する際には、山側を削り、谷側を埋めて平坦な部分にするひな壇型の造成地として開発されるケースもあります。土砂の締め固めに問題があった場合、強度によっては災害リスクへとつながりかねません。地震時の宅地地盤の崩壊や、地盤沈下、擁壁の倒壊などの災害リスクを想定しておかなくてはならないでしょう。

北西部は大田区の「住まいの顔」

関東大震災をきっかけに、東京(旧東京市)は郊外での宅地造成が進みます。大田区でもかつての田畑が整理され、田園調布、雪谷、久が原、馬込などで宅地化が進められました。昼間と比較して夜間人口が多い傾向にあり、大田区の「住まいの顔」を代表するエリアとして知られています。比較的緑の多い住宅地であることも特徴の1つです。

多摩川低地では氾濫・洪水リスクが考えられる

多摩川沿いから蒲田付近の多摩川下流~河口部に広がる「多摩川低地」は、標高が低く平坦なエリアとなっています。そのため、多摩川の氾濫・洪水リスクを十分留意しておきましょう。

大田区による「多摩川の氾濫」のハザードマップにおいて、想定される浸水深が3m以上の場合、また家屋倒壊等氾濫想定区域(氾濫流)の区域では、2階建ての木造住宅でも建物の2階以上へ上がって逃げる「垂直避難」が難しくなるでしょう。早いうちに区域外への避難を行わなくてはなりません。さらに海側では高潮の懸念もあり、想定浸水深を確認しておく必要があります。

多摩川の泥の沈殿などによってできたシルト(砂より小さく粘土より粗いさいせき物)や粘土層が多く、軟弱な地盤の可能性があります。地震の時に揺れが大きくなったり、地盤中の水分が排出されて体積が減少することによる圧密沈下を起こしたりする原因となります。また、低地のため地下水位も高く、ゆるい砂地盤のある地域では液状化のリスクがあることも予想されます。

産業、商業の顔を持つ低地部エリア

中央部(低地部)は、大正期以降、中小工場が進出し、住宅や工場が密集する住工混在地域や商業地を形成しています。主要鉄道駅周辺や鉄道沿線エリア、工場の集積地などでは夜間と比較して昼間人口が多い傾向にあり、大田区の「産業」「商業」を代表するものづくりエリアを含む箇所となっています。近年では、工場から集合住宅への用地転換が進められています。

大森周辺の海岸平野

大森周辺の海岸平野は、東京湾沿岸に広がる平坦な低地となっています。標高が低いため、多摩川の氾濫、内水氾濫、高潮のいずれもリスクがあります。各ハザードマップの確認が必要なエリアです。

海沿いに堆積した軟弱な泥や砂の地盤もあり、地震の時に揺れが大きくなりやすい地域です。海岸沿いの緩い砂と沈殿したシルトが多い軟弱地盤が存在します。多摩川低地と同様、土地が低く、地下水位も高い傾向にあります。

大森周辺もビジネス環境が整備されている

中央部(低地部)と同様、空港臨海部や物流、ものづくりの拠点として栄え、大田区の「ビジネス」を支えるエリアです。大森駅周辺には個性あふれる飲食店や商店も建ち並んでいます。

平和島、城南島、羽田空港などの埋立地

海岸平野の東側、上図で実線の斜線で示された部分が臨海の埋立地にあたります。沿岸部は、明治時代以降に埋め立てられており、標高は低地よりもかさ上げされており、標高は1m程度となっています。ただ、部分的に低いところがあり、内水氾濫、高潮、および津波による浸水が懸念されます。各ハザードマップであらかじめチェックしておくことをおすすめします。

埋立地は砂や泥で埋め立てていることが多く、状況によっては地震の時に揺れが大きくなりやすいこと、地盤の液状化が発生しやすい点に注意する必要があるでしょう。

夜間人口がほぼない「空」「海」の要所

埋立地である空港・臨海部は羽田空港をはじめ、トラックターミナルやコンテナふ頭、市場など物流施設や工場団地などが集積しているため、大田区の「空」と「海」を代表するエリアとなっています。都内唯一の区立海浜公園「大森ふるさとの浜辺公園」があり、バードウォッチングなどが楽しめるなど、都市機能施設も充実しています。夜間人口はほとんどないため、商店も少なく住生活としては不便なところもあります。

大田区の抱える問題点とこれからの街づくり

ここまで、大田区のエリアごとに地形や街の特徴についてお伝えしてきました。住宅地がありながら工場、繁華街、またビジネス拠点の顔を持つ多面的なエリアであるという特徴が見えてきました。一方で、後継者不足から工場が減るなど「ものづくりの街」としての顔に少しずつ変化が生じている現状もあります。

工場跡地が住宅地へと変わっている

大田区では、多くの中小企業・工場が集まって発展し、メイド・イン・ジャパンのものづくりを支えてきました。しかし、少子高齢化による後継者不足などの理由から、工場をしまったり移転したりする経営者が増えています。その跡地にマンションなどの集合住宅や一戸建てが建てられることが多くなりました。

●工場エリアの住宅増加による騒音トラブル

もともと工場が集積していたエリアにマンション・一戸建てなどの住宅が増えたことで、さまざまなトラブルも増加しています。既存の町工場からの音や振動、または臭いなどに対する住民からの苦情が問題化しています。今後、住宅の割合が多くなるにつれ、このようなトラブルも多くなりますが、共存共栄も大事な課題です。このような地域に新たに暮らす場合、どの程度の騒音や振動があるのかを知っておく必要があるでしょう。

●工場や作業跡地は土壌汚染調査を

工場・作業跡地は、加工方法や製造物によっては土壌汚染の有無を調べておかなければなりません。有害な化学物質や排水などが浸透し、土壌にとどまっている可能性があるからです。工場や指定作業場を廃止した場合、汚染状況調査を行うことが規定されています。工場や作業場の跡地ではないか、調査の記録はあるかどうかについて必ず確認しておきましょう。土壌汚染の可能性が考えられる場所でありながら、記録がない場合には汚染状況調査を実施することをおすすめします。

歴史あるエリアに木造住宅密集地域が存在

大森エリアは、幹線道路や補助幹線道路の整備の遅れが指摘されています。道路網が整備されないまま市街地化が進んだため、老朽木造住宅、道路に接していない住宅が密集する地域があります。大森中地区(西糀谷、東蒲田、大森中)、羽田2、3、6丁目地区、東馬込2丁目などが該当します。このような場所は、震災の際に延焼被害が大きくなる危険性があり、早急な改善が必要となります。

まずは、都市計画道路の今後の整備状況や狭あい道路(幅員4m未満の道路)の有無などの確認を怠らないようにしましょう。その上で状況に応じ、住宅の耐震化・不燃化など対策を練る必要があるでしょう。

物流の要所ゆえの騒音問題が発生

主要幹線道路の慢性的な交通渋滞などがある大田区では、道路の騒音も気になるところです。加えて航空機や新幹線による騒音や振動も発生しています。一戸建て住宅の場合、気密性の高い二重サッシや内窓などの防音・防振対策が不可欠となる場所があります。

低地と台地が混在する大田区ならではの土砂災害リスク

低地と台地が混在する大田区では、その境目となる傾斜地が存在することを念頭に置く必要があります。傾斜地は地盤が不安定なことが多く、新築では深基礎や地盤改良が必要になるケースもあります。

高低差のある土地に建物を建てる場合、高い方に圧力や重さがかかることで、斜面が崩落する可能性が出てきます。斜面の土を留めておくため、壁のような構造物を作り崩落のリスクに備えます。この壁を擁壁(ようへき)と言います。

擁壁には設置や技術基準などのルールが法律で決められており、基準に適合していなければなりません。しかし、設けられている擁壁が古い場合はそもそも基準に適合していなかったり、適合していても経年による劣化、維持管理が適切でなかったりといった理由から、安全性に不安が残るケースもあります。

擁壁を設けた造成地に建物がある場合、埋め戻した人工的な地盤と元の地盤の強度の違いから、不同沈下(一方向へ傾く)が生じる可能性もあります。地盤についてきちんと確認をしておくことが大切です。土砂災害警戒地域に指定されているかどうか、大田区ハザードマップ(土砂災害編)もチェックしておきましょう。

詳細な土地の情報は専門家に相談を!

大田区は安定した地盤である武蔵野台地にある北西部の高台、多摩川沿いの多摩川低地、海沿いに広がる海岸平野、羽田空港付近の埋立地までそれぞれ別の特徴を持った土地で構成されています。台地面は比較的安心なものの、境目には高低差もあり、一見して土地の様子を知るのは難しいでしょう。また、工場跡地を住宅にする時には、地盤に加えて土壌の汚染状況なども調査する必要があります。

近年、日本では自然災害が頻発し、甚大な被害をもたらす結果となっています。地球温暖化の影響に伴う集中豪雨なども増え、もともとリスクがあるところはもちろん、意外なエリアが被害に見舞われる可能性も高まっているのです。そのため、住みたいエリアのハザードマップのチェックは、土地探し・家探しの大前提となってくるでしょう。

ただ、土地や地盤の知識は一朝一夕に得られるものではありません。どれだけ事前にチェックしても不安はつきません。より専門的な知識を持った土地や地盤のプロに、詳細な地盤調査やアドバイスを得たいとお考えになる方も多いのではないでしょうか。

そこで検討したいのが、ホームインスペクション(住宅診断)です。当社では、第三者としての立場を守りつつ、住宅そのものの診断だけでなく、地盤の揺れやすさを考慮した耐震性アドバイス、ご希望地点の災害リスクのアドバイスなど、不動産・住まいの総合不動産コンサルティングサービスを多数ご提供しています。

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