戸建て住宅の寿命は何年?構造別の耐用年数や長寿命化のコツを紹介

  • Update: 2025-01-13
戸建て住宅の寿命は何年?構造別の耐用年数や長寿命化のコツを紹介

戸建て住宅の寿命について疑問に感じている人は多いのではないでしょうか。

戸建て住宅の購入にはまとまった資金が必要です。さらに、一生暮らす家でもあるため、長く安心して住み続けたいと考えるのは当然のことでしょう。

また、日本の戸建て住宅は寿命が短いと言われることもあり、マイホームの購入に不安を感じている人もいるのではないでしょうか。

とはいえ、戸建て住宅の寿命は入居者がきちんとメンテナンスを行うか否か、どのような住宅構造であるか、などで異なるものです。

そのため、戸建て住宅の購入を検討しているのであれば、住宅の構造と寿命の関係や、建物を長持ちさせるためのメンテナンス知識を把握しておく必要があります。

そこで本記事では、本当に日本の戸建て住宅の寿命は短いのかといった点のほか、住宅構造別の寿命やメンテナンスした場合の住宅の寿命について紹介します。併せて、戸建て住宅の寿命を延ばすコツについても詳しく解説していきます。

戸建て住宅の購入を検討している人や、戸建て住宅の寿命を延ばしたいと考えている人は、ぜひ参考にしてみてください。

日本の戸建て住宅の寿命は短いって本当?

「日本の戸建て住宅の寿命は短い」といった話を耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。

戸建て住宅の購入を検討している人からすると、気になるでしょう。

まずは、日本の住宅における寿命について解説していきます。

一般的に言われている平均寿命は30年程度

一般的に、日本の住宅の寿命は、平均して30年程度と言われています。日本の戸建住宅の平均寿命が30年といわれる背景には、取り壊しや自然災害などで失われた住宅(滅失住宅)の平均築後年数が約30年であることと、混同されてきたためです。

「滅失住宅の平均築後年数30年」という年数は一見すると長く見えるかもしれません。日本の滅失住宅の平均築後年数が30年であるのに対して、アメリカはおよそ55年、イギリスに至ってはおよそ77年とされています。

日本の滅失住宅の寿命は、欧米の事例と比べると、短いことがわかります。実際、アメリカにおける滅失住宅の平均築後年数はおよそ55年、イギリスに至ってはおよそ77年とされています。

他の国と比べ、日本の住宅の寿命が短い理由は、地理的な要件や自然災害の発生頻度などが関係しています。

また、住宅に対する国民の意識の違いも理由として挙げられるでしょう。日本の場合、住宅を購入する際、新築を希望する人がほとんどです。間取りやデザインの自由度が高く、耐震性能や耐久性、設備の面でも安心感があるのが理由です。

そのため、住宅購入を検討している人は、既存住宅を購入してメンテナンスしながら住むよりも、古くなった建物を取り壊して新たに建てることを希望するほうが多い傾向にあります。

一方、アメリカやイギリスなどの欧米では、住宅を手入れして長持ちさせることが重視されています。「既存の建物を長く使う」といった意識が強いため、住宅を壊して新しく建てるケースは少数派です。

ちなみに、日本における住宅の法定耐用年数は、木造・合成樹脂造のものが22年、木骨モルタル造が20年、鉄骨コンクリート造が47年、と全体的に20年~50年程度です。

そのため、住宅の寿命はおよそ30年程度といった認識になっています。

こうしたさまざまな要因によって、日本の住宅の寿命は短いと言われることがあるのです。

実際の戸建ての平均寿命は65年程度

前項では「一般的には住宅の平均寿命は30年程度と言われている」として解説しました。しかし、実際の住宅の平均寿命はもっと長いのです。

現代では、戸建て住宅の平均寿命は65年程度とされています。

そもそも、滅失住宅の平均築後年数の算出には、現存する建物は含まれていません。

また、現代は材料や技術の質の向上に加え、住宅の長寿命化に対する関心も高まり、適切な維持管理やリノベーションなどが増えています。実際、現代では建物の長寿命化が進んでいるのです。

滅失住宅の平均築後年数30年には、現存する住宅の築年数は含まれていませんが、両者を含めた平均寿命を試算した統計によると、戸建て住宅(専用住宅)の寿命は1997年から2011年にかけて、20年ほど延びており、構造種別による寿命には大差がないことがわかります。

区分 2011年 2006年 1997年 1987年
木造専用住宅 64.62 54.00 43.53 38.68
RC造専用住宅 68.74 56.76 49.94 40.

(参考)小松幸夫「建物の寿命と価値」『建築雑誌』2020年12月号

戸建て住宅の寿命についてもう少し掘り下げてみよう

ここからは、戸建て住宅の寿命についてさらに掘り下げ、さまざまな視点で戸建て住宅の寿命について見ていきたいと思います。

住宅の構造別にどの程度の違いがあるのか、メンテナンスを適切に実施したらどの程度寿命が延びるのか、気になりませんか?

また、住宅の品質による寿命の違いについても解説していくため、これから戸建て住宅の購入を視野に入れている人は、ぜひ参考にしてみてください。

まずは、戸建て住宅の寿命について確認しましょう。リフォームの有無によって寿命がどのように変化するのかも併せて解説します。

住宅構造別の寿命

一口に「戸建て住宅」といっても、その構造は「木造」「鉄骨造(S造)」「鉄骨鉄筋造(RC造)」などが挙げられます。

まず、耐久性の観点で見ると、木造住宅は湿気を防ぐことができれば、建物の寿命を大幅に延ばすことが可能です。劣化の要因は、主に腐朽が原因であるからです。

また、鉄骨造の場合は、錆によって耐久性が低下する傾向にあります。しかし、基本的には耐久性が高く、極端に湿度が高いなどの問題がなければ長持ちしやすい構造です。

なお、RC造は鉄筋とコンクリートを組み合わせた建物です。コンクリートの中性化や鉄筋の錆などで耐久性が低下する傾向にあります。しかし、物理的な耐用年数は非常に長い傾向にあります。

現代では、コンクリートや鉄筋の品質が向上していたり、防錆技術が進化したりしているうえに、施工品質も上がっています。そのため、一昔前と比べて、どの住宅構造も長寿命化していて、長く安心して住めるようになりました。

基本的には、前項で触れたとおり、どの住宅構造も60年以上の寿命であるため、住宅構造別で見ても、寿命の長さにそこまで大きな差はありません。

メンテナンスをした場合の住宅の寿命

木造の住宅は定期的なメンテナンスをしなければ、寿命は30年程と言われています。しかし、定期的にメンテナンスを行ったり、不具合が生じた箇所をリフォームしたりすれば、80~100年ほど住み続けることも可能です。

メンテナンスは、築年数が浅いうちから定期的に行うことが大切です。何か不具合が見つかったら、早急に対処しておきましょう。早いうちから対応しておけば、修繕費を最小限に抑えることにもつながります。

住宅性能表示制度を参考にできる

戸建て住宅の寿命を図るには、住宅性能表示制度を活用するといいでしょう。住宅性能表示制度とは「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づいて制定された制度のことです。新築住宅が持つ基本性質に共通の基準を設けて、第三者が明確に判断できるようにと制定されました。

住宅性能表示制度にある項目のうち「柱や土台などの耐久性(劣化の軽減)」では、住宅劣化についての対策レベルに応じて3段階の等級を設定しています。これを「劣化対策等級」と呼び、大規模改修が必要な築年数など住宅の寿命に関わる内容を把握できます。なお、各等級の目安となる築年数は以下のとおりです。

  • 劣化対策等級1:25~30年
  • 劣化対策等級2:50~60年
  • 劣化対策等級3:75~90年

最近の建売住宅は、ほぼすべてが最高等級である劣化対策等級3以上を保有しています。つまり、一般的な建売住宅の多くが寿命75~90年ほどのポテンシャルを持っているのです。

戸建て住宅を長寿命化させるコツ

戸建て住宅を長持ちさせるためには、メンテナンスとリフォームを定期的に行わなければいけません。良い状態を少しでもキープすることで、住宅の寿命を延ばせます。つまり、住宅を資産として大切にすれば、長寿命化が期待できるでしょう。

ここでは、戸建て住宅を長寿命化させるコツを紹介します。

戸建て住宅の寿命を延ばすメンテナンスサイクルの考え方

戸建て住宅の寿命を延ばすためには、適切なメンテナンスをする必要があります。一般的には、15年ごとのサイクルでメンテナンス実施が必要です。つまり、建物が完成したら15年後・30年後・45年後・50年後を目安にメンテナンスしなければなりません。

ちなみに、かつては戸建て住宅が完成後30年程度を目安に建て替えると考える方も一定数いました。しかし、近年の建物の長寿命化にともない30年程度経過しても、メンテナンス次第でまだまだ長く安心して住み続けることが可能です。

とはいえ、戸建て住宅が完成してから60年程度が経過したら、大規模なリフォームは必須となります。

なお、戸建て住宅を長持ちさせるためには、水の問題に向き合う必要があります。雨漏りや水漏れリスクを軽減するためのメンテナンスは必ず実施しましょう。

雨漏りや水漏れ等が生じてしまうと家の中に湿気がたまってしまい、カビや木材の腐食や金属の錆などを招きます。

屋根や壁などの防水処理や排水設備などをきちんと点検・修理しましょう。

また、木造住宅の場合は、シロアリに気を付けなければなりません。木造住宅にとってシロアリ被害は深刻です。シロアリに柱や土台を食べられてしまうと、建物がもろくなってしまいます。家全体の安全に影響するため、防虫処理などのメンテナンスは重要です。

点検のタイミングで迷ったときには、まずは契約不適合責任(瑕疵担保責任)の期限が切れる前のタイミングを選びましょう。新築の際に保証される「契約不適合責任」の期間内であれば、住宅の不具合を無償で修理してもらえる可能性が高いからです。

およそ9年目あたりで契約が切れることが多いため、1回目のメンテナンスタイミングとして選んでみてはいかがでしょうか。

参考記事:
https://www.sakurajimusyo.com/guide/29220/

メンテナンスとリフォームにかかる費用相場

戸建て住宅のメンテナンスを検討するにあたって、気になるのが「どれくらいの費用がかかるのか」ではないでしょうか。

ここからは、メンテナンスのリフォームにかかる費用相場について解説していきます。

まず、メンテナンス及びリフォームの費用相場については以下のとおりです。

年数

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

防蟻

15

15

15

15

15

15

15

15

15

15

外壁(窯業系S)

屋根(スレート)

130万~150万円

・外壁再塗装

・屋根再塗装

550万~650万円

・外壁張り替え

・屋根葺替

・サッシ、外装金物交換

130万~150万円

・外壁再塗装

・屋根再塗装

バルコニー

10万~15万円

10万~15万円

10万~15万円

給湯器

25万~30万円

25万~30万円

25万~30万円

便座

10万~15万円

10万~15万円

便器

20万~25万円

コンロ

20万~25万円

20万~25万円

キッチン

60万~70万円

UB

90万~100万円

洗面台

20万~30万円

戸建て住宅の長寿命化にはホームインスペクションが不可欠

日本の戸建て住宅は、劣化状況を把握したうえで適切なメンテナンスを実施すると長く住み続けられます。とはいえ「自分で劣化状況を把握するのは難しい」「適切なメンテナンスがわからない」と悩む人もいるでしょう。

そのような場合は、プロの力を借りられるホームインスペクションを活用するのもひとつの手段です。ホームインスペクションとは、建物に精通した専門家が住宅を診断するサービスです。

専門家が現場となる住宅へ訪問し、調査や点検を行うのが一般的です。劣化状況について調べたり、不具合の有無を確認したりします。万が一、問題が発生していた場合は、ホームインスペクションの段階で発見できるため、不具合の早期発見としても役立ちます。

主に、雨漏りや水漏れ、設備の動作不良、シロアリ被害、劣化状況などが基本のチェックポイントです。ホームインスペクションを実施するタイミングは、目的や依頼者側の考え方によって異なるものの、主にリフォーム・メンテナンスを検討したときが多い傾向にあります。

ただ、ホームインスペクションを依頼する場合は、サービス内容をしっかりと確認しておかなければなりません。業者によって「点検のみ」「修繕箇所の指摘のみ」といったケースもあるからです。

さくら事務所のホームインスペクションでは、現時点で発生している修繕箇所の指摘だけではなく、将来改修すべき箇所やその時期、費用などの具体的なアドバイスも提供しています。現状を把握しながら将来起こり得る不具合をあらかじめ理解していると、メンテナンスのタイミングを調整しやすくなり、住宅の長寿命化が実現しやすいでしょう。戸建て住宅に長く住み続けたい人は、ぜひさくら事務所のホームインスペクションをご活用ください。