#正直不動産 第7話を解説!「賃貸併用住宅」「リバースモーゲージ」には手を出すな!?

  • Update: 2022-05-31
#正直不動産 第7話を解説!「賃貸併用住宅」「リバースモーゲージ」には手を出すな!?

俳優の山下智久さんが主演を務めるドラマ『正直不動産』(NHK/毎週火曜22時)。全10回のうち3話、さくら事務所会長の長嶋修が取材協力をさせていただいています。

時には嘘もいとわないセールストークで営業成績No.1の座を欲しいものにしていた登坂不動産の営業マン・永瀬財地(山下智久さん)が、アパート建設予定地にあった祠を壊したことでたたりに遭い、なんと、嘘がつけない身体に……。本当のことしか言えない、まさに「正直さ」だけを武器に働かなくてはならなくなった永瀬が不動産業界で奮闘する姿を描いた同名漫画をドラマ化した作品です。

※長嶋が取材協力を務めた第5話「優しい嘘」に関する記事はこちら、第6話「仕事をする理由」はこちらをご覧ください!

さて5月17日、第7話「過去の自分と今の自分」が放送されました(この回は長嶋が取材協力を務めた回ではありません)。永瀬のライバル、桐山貴久(市原隼人さん)のその後が気になるところですが…?

第7話「過去の自分と今の自分」

数回にわたって描かれてきたミネルヴァ不動産によるスパイ疑惑。結局、疑われた桐山ではなく、営業成績の振るわない登坂不動産の営業課長がミネルヴァ不動産社長の鵤聖人(いかるが・まさと/高橋克典さん)によって金で引き込まれていたことがわかった。退職した課長に変わって課長代理に抜擢された永瀬だが、うそを連発していた過去の契約者からのクレームが次々と舞い込んでくる。その中には、以前永瀬の勧めで「賃貸併用住宅」を建てた契約者も…。

そんな時、メインバンクの融資課・榎本美波(泉里香さん)が永瀬を訪ねてくる。美波はある定年夫婦の自宅売却に絡み、永瀬に協力を求めてきたのだが、実は自社の扱う「リバースモーゲージ」を売りたいがための策略だった。

これが第7話のストーリーでした。不動産業界的には「賃貸併用住宅」「リバースモーゲージ」の2つがキーワードとして登場していますが、この2つはいずれも、ドラマの中ではデメリットの多いものとして取り上げられていました。実際のところはどうなのでしょうか。

「賃貸併用住宅」を建てるなら、適した環境に適したスペックの物件を建てられるかを十分に考えてから実行に移すべし

さて、まず「賃貸併用住宅」とは何でしょうか。これは、戸建て住宅の中に、自らの居住部分の他に賃貸住宅を設けた物件のこと。たとえば3階建ての物件を建てて自分は3階に住み、1階と2階は賃貸に回す、といった形態の物件を指します。

仮に、住宅ローンを組んで3,000万円借り入れて賃貸併用住宅を建て、10万円ずつ返済していくとしましょう。税金など諸費用を除くと、家賃収入が月々10万円あればローンと相殺できますよね。つまり「実質タダ」で新築の戸建て住宅が手に入るということです。よく言われる営業トークは、まさにこれ。

ただし、この営業トークを鵜呑みにしてしまうと、ドラマに出てきた契約者のように後悔してしまうことも…。注意点をいくつか挙げましょう。

賃貸住宅の借り手はいるか

言わずもがなですが、賃貸住宅を貸し出すということは、誰かに借りてもらうということです。

たとえば賃貸併用住宅を駅から徒歩20分くらいのところに建てたらどうなるか。駅から物件に向かう20分の間に賃貸住宅が山のようにあるわけですよね。物件それ自体の魅力だけでこの競争に勝てるでしょうか。また、学生の多い街に3LDKの物件を用意した場合、借りる人はいるでしょうか。

周辺環境を考え、借り手がつきやすいのかどうかを考慮せずに買ってしまうと、空室続きに悩まされることになります。

家賃は維持できるか

新築の時に家賃設定10万円で借り手がついたとしましょう。ところが15年、20年経てば、見た目は古くなるし、室内も傷んできてしまいます。家賃もそれに合わせて下げざるを得なくなるでしょう。この、家賃の下落率の設定が甘いと、思っていたような家賃収入が得られずに返済がきつくなってしまいます。

価格を下げないと売れないかも

前述の通り、賃貸併用住宅は特殊な造りなので、ローンの返済ができなくなって賃貸併用住宅を手放す、売りますとなった時に、欲しい人がなかなか見つかりません。そういう場合は値段を下げて売ることになるわけですね。「戸建てが欲しい」と思って物件を探している人は、やっぱり賃貸併用住宅ではなく、普通の戸建てが欲しいものです。

賃貸併用住宅は、適した環境に適したスペックの物件であれば問題ありませんが、このあたりのことを熟考せずに建ててしまうと、おすすめできなくなってしまいます。

自宅を担保に融資を受けられる「リバースモーゲージ」とは

続いて「リバースモーゲージ」です。これは、自宅を担保にして、そこに住み続けながら金融機関から融資を受けられるという金融商品の1つ。商品によって異なる部分もありますが、基本的には、融資額の金利分だけを毎月返済し、契約者が亡くなった後に建物と土地を売却してその売却益で返済をするという仕組みです。

老後の生活をさらに豊かにするための資金としてとても魅力的に映りますが、これもやはり、注意点があります。

適用エリアが限定される?

そもそも、土地や建物の担保価値に応じて融資を受けるのがリバースモーゲージです。ということはつまり、土地や建物が二束三文の価値しかない場合に融資を受けることはできません。リバースモーゲージが使えるエリアが首都圏などに限定されることは覚えておいてください。

借金が増える

ドラマで永瀬が言っていたように、リバースモーゲージは「借金が増える」手段でもあります。自宅を担保にして「融資」を受けるわけなので、まさにその通りですよね。どう捉えるかはその人次第ですが、あくまで「借金」であるということも忘れてはいけません。

長生きリスクがある!?

個別商品の設計によりますが、たとえば融資は30年間、20年間と期間が決まっているものがあります。この期間を超えて長生きした場合はその融資が打ちきりとなってしまうということも…。

評価額の半分ほどしか融資を受けられないことも

その物件を現在売った場合に5,000万円くらいの評価があったとしましょう。この時にリバースモーゲージで5,000万円の融資を受けられるのかというと、そんなことはありません。金融機関もリスクを背負うわけなので、100%の評価の半分、7割、それくらいの融資額になります。2,500万円から3,500万円くらいが妥当でしょう。

金利変動リスクを見越しているか

リバースモーゲージは月々、金利分のみ返済していく仕組みです。この金利は基本的に変動金利なので、もちろん、下がることもあれば上がることもありますよね。当初の想定以上に金利が上昇してしまう場合、月々の出費が大きくなってしまう可能性があるのでご注意を。

最大の注意点!必ず子世帯と相談を

子どもがいる場合、相続のことをないがしろにしてはいけません。相続人がいる場合は事前に必ず相談をしておいてください。自分の親が持っていた土地や建物を相続できると思っていたのに自分が知らない間にリバースモーゲージの契約を組んでおり、親が亡くなった直後に一括返済を求められたというケースは少なからずある話です。トラブルのないようにしておきましょう。

以上の注意点を全て確認した上でメリットがあると判断される場合は、リバースモーゲージ、おすすめします。

自宅を売却し、そこに賃貸で住み続けられる「リースバック」

リバースモーゲージに似た商品で「リースバック」というものがあります。これは、先に自宅を売却して現金化し、売却先から物件を借りて賃貸として済む仕組み。「自宅に住み続けられる」という意味では同じですが、売るタイミングが先なのがリースバック、後なのがリバースモーゲージですね。

最近話題ではありますが、これもやはり、メリットとデメリットがあります。注意すべき点をご紹介しましょう。

所有権を失う

自分の家を売り、貸してもらって住み続けるということはつまり、所有権を失うということ。自分の資産ではなくなるのです。リバースモーゲージと同様、のちのちのトラブルにつながりかねないので、相続人の人とはよく話しておいてください。

通常の売却額より低い

普通であれば5,000万円で売れるところ、リースバックだと8掛け、7掛けなど、リバースモーゲージと同じように実際の評価額より低くなるのが一般的です。

周辺の家賃より高い

自宅を売却し、そこに賃貸住宅として住まわせてもらうという時に、事業者側もリスクを負っているため、周辺の家賃設定よりも少し高めになりがちです。

賃貸期間は期限付きの場合がある

10年、20年など、期限が設けられていることがあります。期限を過ぎればもちろん引っ越さなければなりません。期間に期限があるかどうかは契約前によく確認しておいてください。

「自分自身の資産をどのように活用してお金を得るか」によって選ぶ手段が異なってくる

今回は「賃貸併用住宅」と「リバースモーゲージ」、そしてそれに関連した「リースバック」、この3つについて説明してきました。

全てに共通しているのですが、いずれも、「不動産というものをどううまく活用してお金を得るか」ということなのです。これは「事業」といっても過言ではありません。

賃貸併用住宅であれば、賃貸住宅を運営する事業ですよね。事業主として、借り手がつくのかどうかは十分に吟味する必要があります。リバースモーゲージ、リースバックの場合は、自分が持っている土地や建物を資産としてどう運用するのがベストなのかを見極める必要があります(当然、「売らない」という選択肢もあり得るわけです)。すべてにメリット、デメリットは存在します。よく比較した上で、活用を検討してください。

さて、ドラマ『正直不動産』。永瀬は嘘ばかりついていた過去の自分と対峙し、正直営業を続けようと決意を新たにします。最終回まで、まだ一波乱ありそうな雰囲気ですが…。第8話も楽しみですね。