#正直不動産 第5話を解説!中古マンションのリノベーション物件実際どうなの…?

  • Update: 2022-05-13
#正直不動産 第5話を解説!中古マンションのリノベーション物件実際どうなの…?

俳優の山下智久さんが主演を務めるドラマ『正直不動産』(NHK/毎週火曜22時)。

時には嘘もいとわないセールストークで営業成績No.1の座を欲しいものにしていた登坂不動産の営業マン・永瀬財地(山下智久さん)が、アパート建設予定地にあった祠を壊したことでたたりに遭い、なんと、嘘がつけない身体に……。本当のことしか言えない、まさに「正直さ」だけを武器に永瀬が不動産業界で働く姿を描いた同名漫画をドラマ化した作品です。

全10回のうち3話、さくら事務所会長・不動産コンサルタントの長嶋修が取材協力をさせていただいていますが、5月3日、そのうちの1話である第5話「優しい嘘」が放送されました。

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第5話 あらすじ

登坂不動産の新入社員、月下咲良(福原遥さん)が、両親の離婚以来8年間会っていなかった父・昌也(加藤雅也さん)と再会。東京で物件を探しているという昌也のため物件探しに張り切る月下ですが、ライバル会社であるミネルヴァ不動産から強引な営業を受けた昌也から「いま別の物件を内見している」と言われてしまう。不穏に感じた永瀬と月下は内見中の現場に急行し……というストーリー。インスペクターが物件を調査した結果、昌也が内見した物件はなんと、欠陥住宅でした。過去に漏水事故が起きていて、それを隠す形でリノベーションが行われていたのです。

欠陥① 排水管を交換するためという名目でコンクリートスラブに大きな穴が

さて、今回ドラマで放送されていたような中古マンションのリノベーション物件にまつわるトラブル、実際のところはどうなのでしょう。

ドラマでは、床のコンクリートスラブに水が染みていて「このままの状態で住むと命の危険性がある」と永瀬が言うシーンがありました。そこまでの事例はなかなかありませんが、この写真のように、マンションの床に穴を開けてしまったという事例はインスペクションでまれに見られます。このケースでは、排水管を交換する都合上、どうしても床に穴を開けざるを得なかったとのこと。安易にコンクリートに穴を開けるなんてことをしてはいけないのですが、リノベーション会社が不用意に開けてしまった。これは当然、よろしくありません。構造的な部分に関わる大きな欠陥と言ってもいいでしょう。

欠陥② 壁一面に広がるカビ

こちらは気持ち悪い画像かもしれませんが、壁の全面にカビが生えていたという現場。リノベーション工事中の物件に伺った時の写真です。本来はカビを根絶した上で壁紙を貼らないといけないのですが、それが放置されていました。このまま壁紙を貼って蓋をしてしまうと、カビが壁紙の表面に染み出てくる可能性があります。

欠陥③ 古い排水管が水漏れを引き起こす

このような例も。写真は古い排水管ですが、左は錆びて穴が開いてしまっています。右は、血管にコレステロールが溜まってしまったかのように、いろいろなものが詰まって凝固してしまったケース。排水管や給水管に穴が開いてしまうと水漏れを起こし、自分の家だけでなく階下の住民にも大迷惑をかけてしまいます。階下がプール状態になってしまった例を見たことがありますが、もし赤ちゃんが寝ていたら、もし寝たきりの高齢者がそこにいたら……、そのような事態は絶対に避けなくてはなりません。

欠陥④ 湿気のせいでトイレにキノコが

続いては、トイレの便器の横にキノコが生えていたという事例。原因は、水漏れによる湿気です。マンションは水に強いというイメージを持っている方が多いですが、実はそうではなく、建物というものは全般的に水に弱いのです。こういった形で水漏れを起こすと、カビやキノコが生えたり、階下がびしょびしょになったりという被害につながります。

欠陥⑤ マンションの外壁に勝手に穴が開けられた

続いてはキッチン部分。写真の右下、これはマンションの外壁です。換気扇の排気ダクトが見えますが、実はこれ、リノベーションの際に施工業者が勝手に外壁に穴を開けてしまいました。マンションの壁は一般的に鉄筋コンクリートで作られていますが、強度の面から、勝手に穴を開けてはいけないということになっているのです。一見すると何も問題がないように見えるので、要注意です。

欠陥⑥ 遮音性能の低い二重床

続いては二重床の例。ドラマでは直床(じかゆか)といって、コンクリートスラブの上にクッション付きの床材が貼られていました。原作漫画では二重床といって、スラブの上に脚を立てて床が張られているんですね。この脚には高い遮音性能が求められ、マンションごとに求める性能が決められているのですが、左の写真のように脚が正しく設置されていなかったり、右の写真のように脚の部材が間違っていたりして、遮音性能が低くなってしまうということがあります。騒音問題を引き起こしかねない欠陥だと言えます。

リノベーション物件に不具合が頻発してしまう構造的理由とは

さて、なぜリノベーション物件で上記のような不具合が頻発しているのでしょうか。これには、リノベーション物件にまつわる事業構造が関係しているのです。

こちらの図をご覧ください。リノベーション物件が販売されるまでの流れを簡単にまとめたものです。

普通の中古住宅の取引だと、一般的には個人の売主がいて、個人の買主がいて、その間に仲介事業者が入ります。ところがリノベーション物件の取引は、ちょっと違います。

まず「仕入れ」。買取再販事業者が競売や仲介などのルートで中古マンションを仕入れます。

そして、「商品化」。仕入れた物件を事業者がリノベーションして商品に仕上げます。リノベーションは自社で行う場合もあれば、外部のリフォーム事業者に発注することもあります。

最後に「販売」です。代理店を経由して、または直接、顧客に販売するという流れですね。

ここで重要になるのが物件の価格です。物件を販売する時には、周辺の中古マンションの相場にある程度は合わせる必要があります(そうでないと売れません)。そのため、買取再販事業者は出口戦略を採り、まず販売価格を決めて、そこから逆算して仕入れ価格を決め、リノベーションに回せる予算を出すのです。

単純な話ですが、業者としては、仕入れ価格やリノベーション費用を抑えれば抑えるほど、利益が上げられます。そうすると当然、しっかりお金をかけてリノベーションするのではなく、売れればいいやという発想に……。結果、トイレや洗面台といった水回りなど目に見える場所だけ綺麗にして、給水配管や床下など目に見えない場所を放置したリノベーション物件がまかり通ってしまうというわけなのです。

ただ、買取再販事業者には、物件の売却から2年間、契約不適合責任(瑕疵担保責任)があります。これは、物件に何かあったら、2年間は売主が修繕に関する責任を負うというルールです。もちろんリノベーション物件の契約をする前にインスペクションを活用するのがベストですが、もしインスペクションが間に合わずに契約、引き渡しに至った場合でも、諦めないで。2年の間にインスペクションを入れ、不具合をあぶり出しておきましょう。

『正直不動産』の第5話、タイトルは「優しい嘘」。それは、これから再婚し新しい家族を持とうとする父・昌也の再出発を明るく見送るための、月下が昌也についた精一杯の嘘でした。このような愛情溢れる嘘なら大歓迎ですが、こと物件に限って言えば、多少の嘘も許せませんよね。騙されない物件選びのためにも、ぜひインスペクションをご活用ください!