建物状況調査(検査)とは?費用や具体的な調査内容・インスペクションとの違いも解説

  • Update: 2023-10-09
建物状況調査(検査)とは?費用や具体的な調査内容・インスペクションとの違いも解説

安心して戸建て住宅に住むために、住宅の専門家に調査してもらうという方法があります。

ただし住宅の調査にはいくつかの種類があるので、依頼の前に理解を深めておかなくてはいけません。

今回は住宅の調査のひとつである「建物状況調査(検査)」について、具体的な内容や混同されやすいホームインスペクションとの違いを解説します。

建物状況調査(検査)とは

建物状況調査(検査)とは、日本建築士会連合会が行う「既存住宅状況調査技術者講習」を受けて合格した建築士(既存住宅状況調査技術者)が行う調査を指します。

具体的には、建物に関する契約(売買契約や賃貸契約)を行う前に建物の基礎や外壁にあるひび割れや劣化、雨漏りなどの不具合の有無を目視や測定によって検査します。

既存住宅状況調査技術者には、講習を受ければなれる訳ではありません。

合否判定があり、また不適正な検査を行った場合には懲戒処分もある、重要な建築士の業務です。

どのような意味があるのか

建物状況調査(検査)を行うことで、売買契約や賃貸契約といった重要な取引を締結するまえに「今」の建物の「見える」範囲の状態を知ることができます。

建物状況調査(検査)を行ったあとで、契約書にはなかった建物の劣化が見つかるかもしれません。

建物の「見える」範囲の状態を建築士に確認してもらえるため「今」の建物に関して、納得したうえで契約を結ぶかどうかの判断ができるでしょう。

ただし建物状況調査(検査)は「見える範囲」の調査を「目視」をメインとして行う調査です。

建物内部の電気設備や水道設備など「見えない部分」の劣化の状態を確認できる調査ではないことは、認識しておく必要があります。

建物状況調査の費用相場

建物状況調査(検査)を依頼するにあたっての費用は依頼する会社によって異なり、相場は5万円~15万円ほどと、やや幅があります。

最低限の検査のほか、各社で提供するオプションの検査内容が異なるため金額に差が出るのです。

そこで料金体系の事例をいくつかご紹介します。

例1:第三者機関の料金体系

第三者機関の建物状況調査の料金体系は、戸建てと共同住宅(マンションやアパート)で分かれています。相場は以下です。

<戸建住宅の建物状況調査料金例>

延べ面積

基本検査料

125㎡未満

66,000円

125㎡以上150㎡未満

68,200円

150㎡以上200㎡未満

69,300円

<共同住宅(住戸型)の建物状況調査料金例>

延べ面積

基本検査料

85㎡未満

66,000円

85㎡以上130㎡未満

68,200円

130㎡以上200㎡未満

69,300円

上記のように、戸建住宅と共同住宅では延べ面積によってやや料金に差があります。一方でオプションとして床下のシロアリ点検や小屋裏(屋根裏)の総点検をおこなう料金は、以下のようにどちらも同じ料金です。

オプション検査

料金

しろあり床下点検

+33,000円

小屋裏(屋根裏)の総点検

+33,000円

耐震基準適合証明書

+44,000円

例2:住宅保証会社の料金体系

住宅保証会社の建物状況調査の料金体系は、延べ面積や戸建、共同住宅かどうかに関係なく統一されているのが特徴です。<住宅保証会社の建物状況調査の料金例>

建物状況調査費用

料金(面積問わず)

戸建住宅 (1住宅あたり)/

共同住宅等(1住戸あたり)

17,600 円(税込)

ただし、上記料金のほかに同時に申し込む住宅瑕疵担保責任保険の保険料が必要になります。また上記料金および保険料とは別に現場検査手数料、遠隔地や離島の場合は、出張費が必要です。

例3:個人型調査会社の料金体系

個人型調査会社の建物状況調査の料金体系は、延べ面積とオプションによって料金が決まる仕組みです。<個人型調査会社の建物状況調査の料金例>

調査の内容

100㎡未満

100~150㎡未満

150~200㎡未満

200㎡以上

建物状況調査の

基本事項

54,000円

(税込59,400円)

60,000円

(税込66,000円)

74,000円

(税込81,400円)

別途見積

設備と配管

(オプション)

10,000円

(税込11,000円)

10,000円

(税込11,000円)

10,000円

(税込11,000円)

別途見積

図面作成料

15,000円

(税込16,500円)

15,000円

(税込16,500円)

15,000円

(税込16,500円)

別途見積

ただし上記の金額のほかに非破壊調査を依頼する場合は、別途加算されるため、注意が必要です。

建物状況調査の費用は誰が負担するのか

建物状況調査の費用は、一般的に調査を依頼する側(売主または買主)が負担します。建物状況調査は、建物の構造的な安全性や状態を評価するために重要であり、多くの場合、不動産取引においては必須とされる検査です。ただし一部の不動産会社ではマーケティング戦略や顧客サービスの一環として、この種の調査費用を自ら負担する場合があります。

建物状況調査(検査)の具体的な内容

ここからは建物状況調査(検査)では、どのような検査を行うのかを具体的にみていきます。具体的な内容を知ることで、検査をすることで得られるメリットを理解できるでしょう。

一戸建住宅の例

 一戸建て住宅の場合の建物状況調査(検査)は、上図の箇所を検査・調査します。具体的な検査例は、以下です。

調査箇所 調査内容
ベランダ ひび割れや劣化の状態
外壁 ひび割れや劣化の状態。サッシの開閉不良やスキマの状態
柱、梁 劣化や傾斜の状態
土台 土台(木枠)のひび割れや劣化の状態
基礎 基礎部分のひび割れや欠損の状態
床、壁 傾斜の状態
小屋裏 劣化の状態や雨漏り跡の状態(目視)
屋根 ひび割れや劣化、はがれの状態
軒裏 シーリングの割れや欠け、雨漏り跡の状態
内壁、天井 雨漏り跡の状態(目視)

マンション(共同住宅)の例

出典:国土交通省「既存住宅の購入を検討されるみなさまへ 建物状況調査(インスペクション)を活用しませんか」より画像を抜粋

 マンション(共同住宅)の場合の建物状況調査(検査)は、専有部分(室内)のほか、共用部分も検査の対象です。トラブルを防ぐために、検査を依頼した場合は管理会社あるいは管理組合に検査が入ることを伝えておきましょう。具体的な検査例は、以下です。

調査箇所 調査内容
専有部分の床、天井 劣化の状態
排水管 劣化の状態
共用廊下 ひび割れや劣化、傾斜の状態
共用エントランス ひび割れや劣化、傾斜の状態
屋上 ひび割れや劣化、防水層の状態
建物の外壁、基礎、躯体 ひび割れや劣化の状態

建物状況検査(調査)で出来ないこと

建物状況検査(調査)は専門家である建築士が講習を受けて行う検査ではあるものの「できないこと」もあります。
目視による検査や、非破壊検査(構造物を破壊しないで行う検査)のため、できないことがあるのです。
ここからは建物状況検査(調査)ではできないこと、わからないことについて具体的にみていきます。

構造金物の取付状況の確認

建物状況調査(検査)ではできないことに「構造金物の取付状況の確認」があります。
構造金物とは、建物の構造部において接合部の補強や資材の脱落を防止するために用いられる金物部品のことです。木造建築においては、柱と土台、柱と梁などを金物でつなぎ補強を行います。
構造金物は建物が完成するとほぼ目視できない状態になるため、目視の検査である建物状況調査(検査)では現況の取付状況の確認を行うことができません。
完成したあとは見えなくなるために、万が一、構造金物で補強されていなかったとしても建物状況検査(調査)では発見できないのです。

「宅建業法に定められた基準に基づいた検査」に該当しないもの

建物状況調査(検査)は宅建業法に定められた基準に基づいた検査を行います。そのため「宅建業法に定められた基準」に該当していない項目については、検査されないことになります。
「宅建業法に定められた基準」に該当していない項目の例は、コンクリートの強度の確認です。コンクリートの強度を確認するには、ドリルなどを用いて穴をあけ、テスト用のピースを採取する必要があります。
しかし現実問題として、完成した建物にダメージを与える「コンクリートに穴をあける」行為はできません。建物にダメージを与えない「非破壊」の検査は誤差が大きく、正確な値が出せません。そのため、建物状況検査(調査)だけでは、コンクリートの強度を正確に測定できないのです。

ホームインスペクションはより広く・深く建物検査をする

建物状況調査(検査)が「建物の見える部分の現況を知ることができる検査」であるのに対し、ホームインスペクションは「住宅に施す検査全般」のことです。
建物状況調査(検査は現況の建物の状態を知るために行うものですが、ホームインスペクションは、建物に何らかの異変があった場合、適切な対処法や修理費用の検討もしてくれます。
「調査するだけではなく、調査結果を受けたアドバイスが受けられる」ことが、建物状況調査(検査)にはない、ホームインスペクション最大のメリットなのです。さくら事務所のホームインスペクションは、廊下や水回りだけでなくすべての居室を100以上の項目で調査を行います。

本気で住宅の安心を買うならホームインスペクションを活用しよう

建物状況調査(検査)は宅建業法に基づいた検査であるため、義務ではないものの行ったほうがいい検査です。
ただし建物状況調査(検査)では、建物の「見える範囲の今の状態」しかわかりません。さくら事務所が過去に行ったホームインスペクションでは、新築の8割以上で施工の不具合が見つかっています。
新築でさえ、施工の不具合が見つかるのは珍しいことではありません。他人事ではない、ということですね。
さくら事務所のホームインスペクションは、創業以来68,000件超えの実績があり、Google口コミの同業比較でもNo.1を獲得しています。さらに個人向けインスペクションを提供している企業では唯一、国際規格「ISO9001」認証を取得しています(2021年7月時点)。

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