新築一戸建て工事中のチェックポイント ② 基礎工事(根切り~捨てコンクリート)

  • Update: 2023-10-05
新築一戸建て工事中のチェックポイント ② 基礎工事(根切り~捨てコンクリート)

今回は新築一戸建てのチェックポイント基礎工事編の第2回です。前回のコラムでは基礎工事の準備に関する解説を行いました。今回は基礎工事が着工してから鉄筋を組む前までの作業について解説していきます。着工から配筋工事までには大きく分けて以下の工程で工事が進んでいきます。

 1. 根切り(ねぎり)工事

 2. 地業(じぎょう)工事

 3. 防湿シート敷き

 4. 捨てコンクリート打設

今回はそれぞれの工事の意味とチェックポイントについて見ていきましょう。

配筋工事以降の工程に関するチェックポイントが知りたい方はこちら

基礎工事でのチェックポイント/根切り(ねぎり)工事

ここからは基礎工事におけるチェックポイントのうち、根切り(ねぎり)工事とは何か、また根切り工事の種類やチェックポイントについて、より詳しく解説します。根切り工事の重要性を詳しく解説するので、これから基礎工事を控えている方は、ぜひ参考にしてください。

根切り工事とは

「根切り」とは、建築物の土台や地下施設を設置する過程で、地表を掘削して空間を形成する作業です。根切りは基本的に適切な深さまで穴を掘ることで、基礎用のコンクリートを施工可能な状態に整えることを目的としています。

通常、この過程は建築物の解体が完了した後や、新しい建物の建設が始まる前に実施されます。一般的に根切りは、バックホウなどの大型機械を活用して行われます。穴の深さが適切でないと、その建物の構造的な安全性や耐震性に悪影響を及ぼす可能性があるため、計画的に適正な深さに掘削することが重要です。

根切り工事の種類は大きく分けて3種類

根切り工事の種類は大きく分けて以下の3種類があります。ここからは根切り工事のそれぞれの種類と特徴について詳しく解説します。

  • つぼ掘り
  • 布堀り
  • 総堀り

つぼ掘り

柱といった「独立している基礎」に限定して穴を掘る施工手法。特に、独立型の基礎構造を用いる際に採用される。柱のサイズを精密に測定しながら、それに適した形状と深さで穴を掘っていく。

布堀り

布基礎または基礎梁の特定の場所だけを掘削する手法。杭の設置の準備としても実施される。連続的な掘削が多く、通常は線状に細長く穴を掘る形が採用される。

総堀り

一区画全体を掘削する施工手法。ベタ基礎の底面全体を対象として掘り下げる場合に用いられる。このため「ベタ掘り」とも称される。

根切り工事のチェックポイント

ここからは根切り工事における以下の3つのチェックポイントをそれぞれ、より詳しく解説します。なぜ根切り工事においてチェックする必要があるのか、どのような視点でチェックすればいいのかを解説しているので、ぜひ参考にしてください。

  • 地盤の強度は確保できているか
  • 根切りの深さや幅は適切か
  • 根切り底は平滑になっているか

地盤の強度は確保できているか

根切り作業を実施する前には、地盤の強度が確保できているかを広範囲で確かめるステップが不可欠です。この確認作業が不十分な場合、地震や洪水のような自然災害が発生した際に建物が倒壊する危険性が高まります。地盤に不備が検出されたケースでは、状況に合わせて、補強工事が求められることが多いです。さらに根切りをおこなったあとに、基礎のベースと改良体にずれがないかも確認しておきましょう。

根切りの深さや幅は適切か

根切り作業において、深さと幅は選定された基礎タイプに応じて、最適な数値が設定されます。深さが不足すると、新しく建設する建物の構造的安全性や耐震能力に問題が生じる可能性があります。一方で掘削が過度に深い場合は、埋め戻しという手段で調整が必要となる場合もあります。同様に、幅も設計図に則っているか、寒冷地ではとくに凍結震度を考慮した深さになっているかを確認することが重要です。

根切り底は平滑になっているか

根切り作業がひと通り終わったとき、根切りされた底表面が平滑な状態になっているかどうかを確認しなくてはいけません。凹凸があると、基礎の仕上がりに影響するためです。また地中内にゴミやコンクリートの塊といった廃棄物が埋もれていないことも確認してください。ゴミが埋まっていると、ゴミの影響で地質に影響が出ることがあるため、根切り作業中に出た産業廃棄物が適切に処理されていることも合わせて確認しましょう。

基礎工事でのチェックポイント/地業(じぎょう)工事

地形

ここからは基礎工事のうち、地業(じぎょう)工事とは何か、また地業工事の種類やチェックポイント、その重要性をより詳しく解説します。これから基礎工事を控えている方は、ぜひ参考にしてください。

地業(じぎょう)とは

「地業」とは、建築基礎の支持を確実にするために、砂利や割栗石を敷いたり、地面を加工したりする作業です。地業の目的は建物からの荷重を地盤に安全に伝達することで、使用する手法はさまざまです。例えば、支持地盤が表層に位置していてそのままでも建物を支持できる状態の場合、地面を平坦に整えた上で割栗石を配置して固める手法を「割栗地業」といいます。砕石を使用する場合は「砕石地業」と呼ばれ、根切り底部に砂利を用いて固める場合は「砂利地業」と呼びます。

地業のチェックポイント

ここからは地業工事の以下の2つのチェックポイントについて、なぜ確認しなければいけないのか、どのような視点でチェックするのかについて、詳しく解説します。これから地業工事を控えている方は、ぜひ参考にしてください。

  • 割栗石(砕石)敷きの厚さは適切か
  • 平らに敷いているか

割栗石(砕石)敷きの厚さは適切か

国土交通省が公表している公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和4年版(23ページ)によると、「砂利及び砂地業の範囲及び厚さは、特記による。特記がなければ、厚さは 60mm とする。」と定められています。そのため、地業工事においては割栗石(砕石)が60mmの厚みで敷き詰められていることを確認しましょう。もし厚みが不足していたり、厚すぎたりする場合は、再度工事が必要です。また厚みが300mmを超える場合は、300mmごとに締固めという処置が必要です。

平らに敷いているか

地業工事においても根切り同様に「平ら」であることは重要です。基礎の精度に影響することから、地業工事においても平らに敷かれていることを必ず確認しましょう。さらに沈下防止のために締固めが行われているか、目潰し砂利が敷かれているかどうかも確認してください。

割栗石(砕石)敷きを行わないケースがある

表層の地盤が既に改善されていて、沈下のリスクが低い場合は、砕石の使用は不要です。なぜなら砕石を基礎下に敷く主な目的は、地盤を安定させることだからです。

建築地の土壌は必要な深度まで掘削されるため、その領域は安定していない状態になります。このように掘られた土は、隙間が多くて沈下しやすい性質を持っています。そのため砕石を配置してしっかりと固める必要があるのです。砕石を敷くことにより、地盤は平坦かつ安定し、建物の沈下を防ぐ効果があります。しかし地盤が改善され、沈下のリスクが低い場合は、この処置が不要となります。もし砕石が敷かれておらず不安に感じた場合は、現場監督に確認してみることをおすすめします。

基礎工事でのチェックポイント/防湿シート敷き

ここからは基礎工事におけるチェックポイントのうち、防湿シート敷きについて詳しく解説します。基礎工事においてなぜ防湿シートが使用されるのか、防湿シート敷きについてどのような視点でチェックすればよいのかを解説するので、ぜひ参考にしてください。

防湿シート敷きとは

防湿シートとはその名の通り、対象物を湿気から守ることを目的としたシートのことです。防湿シートを敷く主な理由は、床下の湿度を制御して、木製部分の腐朽やシロアリ被害を防ぐことにあります。特に土台、大引き、根太などの木材は湿気で腐りやすいため、この措置が重要です。

一方で、ベタ基礎を採用する際には、コンクリートの厚みによって透湿抵抗(湿気の移動のしにくさ)が達成できる場合があります。そのため、床下換気がしっかりと行われている状況では、防湿シートは不要と判断する企業もあります。

防湿シート敷きのチェックポイント

防湿シートの施工についても注意すべき点が存在します。具体的には以下の点について注意しましょう。

  • 使用材料は適切か
  • 重ね合わせの幅は適切か

上記2点については施工上のルールが存在します。もしルール外の施工を行っていた場合、防湿シート本来の性能を発揮できない可能性が考えられます。その結果、構造体の腐朽やシロアリ被害が発生する恐れがあるため、これから紹介する施工上のルールについてしっかり押さえておきましょう。

使用材料は適切か

防湿シートは0.2mm以上の厚みがあるポリエチレンフィルムが用いられることを確認しましょう。0.1mmでは薄く、破れやすく、防湿の役割を果たせなくなることがあるため、0.2mmのシートであることが理想です。

重ね合わせの幅は適切か

防湿フィルムの重ね幅は150mm以上であることが求められます。そのため防湿フィルムの重ね幅もチェックしておきたいポイントです。仕上げとして防湿フィルム全面が乾燥した状態の砂や砂利もしくはコンクリートで押さえられているかどうかも確認しましょう。

基礎工事でのチェックポイント/捨てコンクリート打設

レベルコンクリート

ここからは基礎工事におけるチェックポイントのうち、捨てコンクリート打設について詳しく解説します。基礎工事における捨てコンクリート打設とは何か、どのような役割を果たすのか、捨てコンクリート打設についてどのような視点でチェックすればよいのかを解説するので、ぜひ参考にしてください。

捨てコンクリート打設とは

捨てコンクリートとは、地盤や基礎下、さらにはスラブ下や地中梁の下に注入されるコンクリートのことです。捨てコンクリートは主に強度よりも高さを整える、型枠の位置出しをしやすくする、配筋作業をしやすくするといった目的で使われるため、「捨て」という名前には、犠牲になるといったニュアンスが含まれています。このため、捨てコンクリートは、レベルコンクリートとも呼ばれます。

捨てコンクリートには鉄筋がないため、クラックが出る可能性は高いですが、基礎工事の初期段階で使用されることから、クラックが問題になることはほぼありません。また、捨てコンクリートの厚さは、通常約50mmとされています。

捨てコンクリート打設のチェックポイント

ここからは捨てコンクリート打設の以下の2つのチェックポイントをそれぞれ詳しく解説します。基礎工事において捨てコンクリートをチェックするとき、ぜひ参考にしてください。

  • 捨てコンクリート打設の有無
  • コンクリートが乾いてから次工程に進んでいるか

捨てコンクリート打設の有無

捨てコンクリートは構造強度に直接関わらないため、施工会社によっては捨てコンクリートの工程を省略するケースもあります。しかし基礎の配置や鉄筋作業の精度に影響が出るため、品質を高く維持するには捨てコンクリートは重要な工程です。基礎工事が始まる前に捨てコンクリートをするかどうかを確認し、必要であれば捨てコンクリートの施工を依頼しましょう。

コンクリートが乾いてから次工程に進んでいるか

捨てコンクリートの施工が完了した後は、基礎の配置を決定する作業に進みます。ただし次の作業に入る前にコンクリートが十分に乾燥しているかをチェックする必要があるのです。季節によって異なりますが、通常コンクリートが完全に乾燥するまでに1日から3日程度必要です。

そのためコンクリートを流し込んでから、何日以上経過しているかを確認しましょう。

まとめ

特に問題が起きやすく、施工後の補修が難しい「基礎工事」。家づくりのスタートになりますので、安心して進めたいですね。第三者による工事中の現場検査サービスもぜひご検討ください。

次回は、社内検査や第三者機関が現場のチェックを行う際の項目にはほとんど入っているという重要な工程「配筋」について解説します。