新築一戸建ての第三者機関検査は必要?費用やよくある悩みを住宅診断のプロが解説!

  • Update: 2023-08-21
新築一戸建ての第三者機関検査は必要?費用やよくある悩みを住宅診断のプロが解説!

この記事はプロのホームインスペクターが監修しています

新築一戸建てには何の不具合もない状態と考えておられる方がほとんどではないでしょうか。実はさくら事務所が行った住宅診断では、新築一戸建ての約8割に不具合が見つかっているのです。そのため新築一戸建てでも第三者機関の住宅診断(ホームインスペクション)は必要だと私たちは考えています。本記事では、新築一戸建てを建てたときに第三者機関検査がなぜ必要なのか、検査にはどのくらいの費用がかかるのか、などよくある悩みを住宅診断のプロが解説します。これから新築一戸建てを建てることを検討している方は、ぜひ読んでください。

新築工事中ホームインスペクション(第三者検査)サービス

自ら依頼する第三者機関の検査は新築工事でも効果的

新築の住宅であっても、さくら事務所がおこなった検査においては約8割に不具合が見つかっています。さらに引き渡し前の内覧会同行において、施工不良が見つかることもあるのです。新築だから不具合はないだろう、と思わず、買主が自ら第三者に住宅診断(ホームインスペクション)を専門家に依頼し、実施することで、見た目ではわからなかった不具合を見つけられます。引き渡しが終わった後に不具合が見つかっても、売主の責任を問うことが難しくなり、買主負担で修理を行うケースもみられます。「安心」を買う意味でも、引き渡し前の住宅診断(ホームインスペクション)は有効な手段です。

新築時の第三者機関による検査は5種類に分かれる

新築における第三者機関による検査は、主に以下の5種類に分かれます。5種類の検査の中で買主が依頼するのはホームインスペクションのみです。そのほかの検査は施工会社が主体となって依頼を行います。ここでは、以下の5種類の検査の概要について解説します。

  • ホームインスペクション(買主が依頼)
  • 建築基準法(建築確認申請)による検査(施工会社が依頼)
  • 住宅瑕疵保険による検査(施工会社が依頼)
  • 住宅性能評価による検査(施工会社が依頼)
  • フラット35適合証明による検査(施工会社が依頼)

ホームインスペクション

ホームインスペクションとは、対象となる住宅の老朽度、改修すべき箇所や時期、施工の不良や欠陥の有無などを、ホームインスペクター(住宅診断士)が中立的な立場で専門的に調査し報告する業務のことです。新築工事のホームインスペクションは、買主が自ら第三者としての検査業者に依頼して実施します。

住宅リフォーム・紛争処理支援センターの上記資料によると、新築を含めた住宅の相談のうち、8割以上が住宅のトラブルにまつわる相談であることがわかります。このような状況を踏まえて、ホームインスペクション(住宅診断)は、中古住宅の流通を活性化するための施策の一つとして国によって推進されているのです。

建築基準法(建築確認申請)による検査

家を建てるときは、建築基準法に則った設計が必要です。そのため設計段階で建築確認と呼ばれるチェックを受けることが求められます。建築確認は、建築基準法の規定に沿っているかどうかを確認するものです。

法令上問題のない設計図を役所や民間の指定確認検査機関に提出し、建築確認申請と呼ばれる手続きをおこないます。この検査によって、建物が法令を遵守して設計されていることが確認できることから、買主が安心して建物を購入できる点が、建築確認をおこなうメリットです。また建物が安全であることが保証されるため、将来的なトラブルや問題が発生する可能性が低くなります。

一般的にこの検査は売主が依頼します。売主は建築確認申請書を提出し、確認済証の交付を受ける必要があります。買主は、建築確認済証を確認することで、建築物が法令に適合しているかどうかを確認することが可能です。

住宅瑕疵保険による検査

住宅瑕疵保険による検査は、住宅の品質を確保するために行われる検査のことで、住宅瑕疵保険の指定した検査機関によって行われます。

住宅瑕疵保険には住宅の品質が確保されることで、購入者は安心して住宅を取得できる、万が一引渡し後に建物に瑕疵が見つかった場合でも、その補修費用をまかなうことができる、といった点が主なメリットです。

新築工事の場合、住宅瑕疵保険による検査は原則として施工会社が依頼して保険加入費用を負担し、検査機関へ検査を依頼します。

住宅性能評価による検査

住宅性能評価は日本住宅保証検査機構によって行われる検査を指し、以下の4つの検査必須項目と6つの選択項目の10項目で構成されています。

<必須項目>

  • 構造の安定
  • 劣化の軽減
  • 維持管理・更新への配慮
  • 温熱環境・エネルギー消費量

<選択項目>

  • 火災時の安全
  • 空気環境
  • 光・視環境
  • 音環境
  • 高齢者への配慮
  • 防犯

依頼は施工会社が行います。住宅性能評価は、国が定めた共通の基準に基づいて客観的に行い、住宅性能評価書を交付します。設計図書の通りに工事が行われたかどうかを、下記4回の現場検査により確認したうえで建設住宅性能評価書を交付するものです。

<性能評価の検査タイミング>

  1. 基礎配筋工事の完了時
  2. 躯体工事の完了時
  3. 下地張り直前の工事の完了時
  4. 竣工時

フラット35適合証明による検査

フラット35適合証明による検査は、住宅金融支援機構が定める技術基準に適合しているかどうかを確認するためのものです。同検査は、第三者の適合証明検査機関によって行われます。依頼は会社が仲介して行われるケースが多いです。

フラット35適合証明による検査には、いくつかのメリットがあります。まずフラット35(長期固定金利住宅ローン)を利用できる性能を持つ住宅であることを示すことができ、商品としての価値向上が期待できます。さらにこの検査を受けることで住宅性能や品質が担保され、買主が安心できる点も大きなメリットです。

新築時における第三者機関検査の費用相場は?

ここからは新築時における第三者機関検査の費用相場について、それぞれ詳しく解説します。買主が依頼する際の費用がいくらになるのかを具体的に知ることで、第三者機関に住宅診断を依頼するにあたっての、参考にすることが可能です。

ホームインスペクションの費用相場は5~12万円

ホームインスペクションの一般的な費用相場は、一戸建ての場合、目視の基本検査で5~7万円、詳細な検査では6~12万円程度です。物件のタイプや検査の詳細度により価格は異なり、通常、一戸建てはマンションよりも多くの検査箇所があるためコストが高くなります。

詳細な検査とは、目視では確認できない屋根裏や床下の検査や、ドローンを活用した屋根の劣化にまつわる調査を指し、工数やさまざまなツールが必要になる分、コストがやや割高となるのです。

さくら事務所では、新築工事のホームインスペクションサービスを事前相談無料、基本料金は65,000円(税抜)からおこなっております。詳しくはこちらのコラムをご一読ください。

施工会社が依頼する検査は会社によって費用にばらつきがある

今回は代表的な審査機関をピックアップしてそれぞれの検査費用相場を表を用いて解説します。ただし実際の費用は依頼先の検査費用に加えて申請書作成費や図面作成費などの手数料が加算されるため、施工会社によって費用にばらつきがあります。正確な費用を知りたい際は施工会社に直接確認を取りましょう。

<住宅瑕疵担保責任保険による検査費用>

戸建ての場合、延べ床面積によって保険料と検査料が変わります。検査の費用は保険料と検査料の合計額です。

引用:JIOわが家の保険 標準料金表

<建築基準法(建築確認申請)による検査費用>

建築確認申請による検査を受ける場合、依頼する会社や建築地域などの条件によって費用が変わります。条件によっては下図表2の料金が加算されるため、注意が必要です。

引用:建築基準法関係申請手数料 | 東京都都市整備局

<フラット35適合証明による検査費用>

<住宅性能評価書取得にかかる費用の相場>

住宅性能評価書の取得にかかる費用の相場は、設計住宅性能評価書だけなら10万円、建設住宅性能評価書も含めると20万円が必要です。さらに評価の項目や等級に応じて、追加の工事費が発生することがあります。

ホームインスペクションが利用できるタイミングは?ケースごとに解説

建売住宅の工事中

建売住宅は、建物が完成してから買主に所有権が移るため、工事途中の所有者は不動産会社。契約者であっても工事現場には気軽に入れないことから、工事中の検査はできないと思っておられる方も多いようです。

ですが、「より工事の品質を高め、契約者に安心・納得してもらえるのであれば・・・」と、工事中のホームインスペクション(第三者検査)を承諾してくださる不動産会社・工務店はたくさんあります。

まずは、どんなタイミングでどんな検査を行うのかなど、ホームインスペクションのサービス内容の説明をお聞きになり、ご自身が全体像を把握しておきます。その次に、売主不動産会社や営業担当の方に第三者チェックを利用したい旨を相談しましょう。

なお、さくら事務所でも、多数の建売住宅の工事中の検査にお伺いした実績があります。不動産会社や施工会社への相談の仕方も、アドバイスしています。

着工間近である 又は 工事中

新居を建てるとき、買うときは、予算や間取り・インテリアなど、考えることがたくさん。そのため、工事(施工)をチェックすることまで考えておらず、ホームインスペクション(第三者検査)の存在を知ったときにはすでに工事が進んでいたりします。

たしかに建物は工事が進むほど見えなくなる場所が出てきますので、できるだけ早い工事のタイミングで検査できるのがベスト。ですが、基礎、構造、防水、断熱・・・と、工事の種類ごとに検査できることはたくさんあります。

いつだと間に合わないということはありません。どのタイミングでもホームインスペクション(第三者検査)は利用できます。

「着工が間近だが来てもらえるのか」 「工事が進んでしまっている。途中からでも依頼できるのか」

こういったご心配がある方は、ぜひお気軽にお問合せください。

参考:工事タイミング別の検査内容

不動産会社や施工会社の反応が心配

配筋

施工会社を疑っていると思われてしまいそう

どの方も、「念のために」「納得のために」と検査を入れられますが、施工会社(ハウスメーカー・工務店)を疑っているように思われないかと心配になってしまうのは仕方ありません。

しかしながら、心配は御無用です。

なぜなら、法律に基づいた役所等の検査をはじめ、各種保険・保証の検査、社内検査など、職人や現場監督は誰かの検査を受け、指摘事項を直すことに慣れているからです。

また、第三者検査は施工不良を探すことが目的ではなく、図面通りの施工が行われているかどうか、各種ルールに基づいた工事ができているかの確認を行うもの。

きちんと施工されている現場では、第三者から施主に対し「特に指摘はなく、適切な工事が行われていた」という報告が入ります。

とても丁寧に施工されている現場でも、施主は見てもよくわかりません。客観的な第三者から適切な工事が行われていることが聞ければ、手を動かした職人や現場監督は丁寧な仕事ぶりが施主から評価されるというわけです。

直すべき指摘があれば建物の品質はより良くなりますし、直すべきところがなかったとわかれば建物=施工会社への信頼は増すかもしれません。

心配することなく、「自分が見ても専門的なことがわからないので、代わりに現場を見てもらいたい」と伝えて大丈夫です。

不動産会社や施工会社との関係が悪化するのが心配

検査により指摘が見つかると、工務店や仲介担当者などから「面倒が増えた」と思われ、関係が悪くなったりしないか心配な方も多いようです。

たしかに、現場に訪問する検査員が高圧的に検査を進めたり、厳しい物言いで勝手なふるまいをすることがあれば、最初は好意的に受け入れてくれた施工会社も、だんだん嫌がってしまうかもしれません。

ですから、第三者検査を依頼する会社に、施工現場ではどういったコミュニケーションに注意をしているのか、工事現場に迷惑をかけないようどんな配慮をしているのかを事前に確認しておくことは重要です。

前述のように職人も現場監督も、検査員が来ること自体には慣れています。第三者検査員が現場でどのようなことを行うのか、事前にきちんと確認しておけば問題は起きにくいでしょう。

こんな時はホームインスペクションは不要?ケース毎に解説

新築戸建てを建てるとき「ホームインスペクションは不要」といわれるケースがあります。ここからは、果たして本当に新築戸建て建築時にホームインスペクションが不要なのか、下記4つのケースごとに詳しく解説します。

  • 第三者の検査は必要ないと言われた
  • 家族で意見が合わない
  • 大手ハウスメーカーの注文住宅を購入する場合
  • アフターサービスがついている場合

第三者の検査は必要ないと言われた

「仲介の方に、新築でインスペクションなんていらないと言われた」「新築は役所の検査もあるし、瑕疵保険や10年保証もある。このうえ第三者のインスペクションは入れる必要がない」

不動産会社や施工会社の中にはホームインスペクションを「中古住宅で劣化(傷み)を診断するためのもの」と認知している人もいるため、「新築だから不要」と言われてしまうことがあるようです。

ですが、これは間違い。

新築住宅では確かに中古のような「劣化(傷み)のチェック」は必要ありません。しかし、基礎の鉄筋の組み方の間違いや、耐震性に大いに関わる構造部材の位置間違い、雨漏りを防ぐはずの防水紙の貼り方の間違いなど、「図面や仕様と、異なる施工」をチェックしています。

特に新築住宅は中古住宅と違って、まだ誰も使ったことがないため、雨漏りや様々な「不具合が発生しているか誰も試したことがない」とも言えるのです。

「役所の検査や瑕疵保険があるから大丈夫では?」と言う声が聞こえてきそうです。しかし役所の検査は一般的な住宅はほとんど受ける検査ですし、瑕疵保険も不具合をなくす制度というよりは不具合があった際の保証を行うための検査といえます。

新築住宅だから、中古住宅だからではなく、放置すると被害が発生しかねない誤った施工が無いかをお知らせするのも、ホームインスペクション(第三者検査)の目的のひとつです。

【現場検査の指摘例】

基礎コンクリートを流したあとの検査で見つかった施工不良(ジャンカ)

【検査風景】

屋根の防水シートの重ね方と重なった寸法を確認

家族で意見が合わない

さくら事務所では、新築一戸建て第三者検査にお問合せいただく際、「私はどうしても利用したいが、家族が必要ないと言っていて意見が合わず困っている」というご相談をいただくこともあります。

たしかに物事の価値観は人により異なるので、どれが正解、どれが間違いと言えるものではありませんが、ご家族間で住宅、建築に関してご存知の情報に差があることから、意見が合っていない可能性があります。

大手ハウスメーカーの注文住宅を購入する場合

誰もが知っている大手ハウスメーカーで建売住宅を購入したり、住宅展示場などにあるハウスメーカーの注文住宅を建てる場合、ご家族内で「大手なんだから大丈夫じゃないの?」といった意見が出ることは珍しくありません。

結論からいうと、ハウスメーカーで建てる場合も第三者検査にはメリットがあります。

大手ハウスメーカーの場合、社内検査態勢が整っていることは多いですが、検索してみるとわかるように、大手であったとしても欠陥住宅のトラブルはゼロではありません。

1人の現場監督が複数の工事現場を同時に担当することが多く、どれだけ優秀な現場監督でも、人間なのでミスや見逃しの可能性は残ります。

また、ハウスメーカーから「当社で第三者機関の検査を入れているので大丈夫」という説明を受けることもあると思いますが、この場合、ハウスメーカーの関連会社や長い付き合いのある取引先であることが多く、厳しく検査されていたのかどうか、確認することができません。

何のトラブルもなく完成し、住み続けられる住まいは多数存在します。ですが、施工ミスのトラブルに見舞われた方々は「信じていたのに。なぜ我が家が」と思われたはず。

他が大丈夫だから大丈夫なのではなく、その家ごとに丁寧な施工が行われ、自分のための検査を入れることが重要だといえます。

【参考】さくら事務所でホームインスペクション(第三者検査)を行ったハウスメーカー例

積水ハウス、大和ハウス、旭化成ホームズ、ミサワホーム、住友林業、三井ホーム、住友不動産、一条工務店、タマホーム、飯田産業グループ、オープンハウスグループ、一条工務店、アイダ設計、大東建託、タツミプランニング など

アフターサービスがついている場合

雨漏りや構造の重要な部分の不具合は、法律により10年の保証が受けられますし、建具が動かなくなったり水漏れが発生したりすれば、「アフターサービス保証」として1~2年以内は無償補修を受けられます。

ですが、不具合の中には「経年劣化」「生活(使い方)による変化」に該当するからと、アフターサービスの対象外として断られる事象が多数あります。

簡単な部品を付け替える程度は対応してくれていた施工会社も、例えばそれが壁を大きく解体しないと調べられない、直せないような事案だとすれば、アフターサービスで対応できないと回答されたケースは過去にもたくさんありました。

なお、壁などの解体を伴う工事になれば、設置した家具や飾り類を全て移動させ、多数の人が出入りして工事が行われます。また、その修繕工事自体もきちんと行われているのか、元通り綺麗に直してもらえるのかまた目を光らせなくてはならず、施主・契約者の精神的な負担は大きくなりがちです。

どれだけ検査していた家でも、住み始め、使って初めて不具合が発生することは珍しくありません。人の手作りであり、使い、動かしてみないとわからないものがあるからこそ、アフターサービスは存在しています。

工事途中で見つけられたはずの不具合は、後から直してもらうのではなく、やはり工事中に対処するのがベストなのは間違いありません。

ホームインスペクター 豊泉 元
監修者

さくら事務所 プロホームインスペクター
さくら事務所 住宅診断プランナー

豊泉 元

大学工学部卒業後、建設会社に入社。ものづくりを現場で経験するため、住宅の基礎やマンション躯体の施工業務に職人(多能工)として従事。その後、大手リフォーム会社の現場管理者として、既存住宅及びマンションの改修工事に携わる