外断熱とは?特徴や内断熱との比較、費用相場を解説

  • Update: 2023-08-24
外断熱とは?特徴や内断熱との比較、費用相場を解説

外断熱とは、建物の外部において熱の流れを遮断する仕組みのことです。外断熱を施すことで、建物の気密性が高まり、光熱費や結露を軽減できるメリットがあります。

本記事では、外断熱の特長や内断熱との違い、外断熱の費用相場を詳しく解説します。戸建てにおいて外断熱を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。

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外断熱とは

断熱とは断熱材を建物の各所に配置することで、建物内外からの熱の流入と流出を遮断する手法を指します。断熱材の設置場所により、それが外断熱となるのか、あるいは内断熱となるのかが定義づけられます。

外断熱は、構造体の外部を覆い、建物全体を断熱材で包み込むように施工する方法です。

ここからは、外断熱の仕組みや使用する断熱材などについて、詳しく解説します。

構造体の外側で断熱層を作る工法

外断熱は文字通り「建物の外側」で断熱を図る工法です。具体的には建物の構造体の外側(柱と外壁の間)で断熱します。また、外断熱の工法も以下の2種類に分けられます。

  • 湿式工法
  • 乾式工法

以下の表がそれぞれの工法の特長です。

工法

特長

湿式工法

軽量で透湿性のある素材をコンクリートの外壁に密着させる

軽量性と透湿性により建物全体の軽量化が可能

乾式工法

支持金具(ブラケット)を使用して外装材(外壁)を安定させる

外壁と断熱材の間に水蒸気の通路がある

使用する断熱材

外断熱に用いる断熱材として使用されるのは、主に以下の2種類に限定されます。

  • 繊維系断熱材
  • 発泡プラスチック系断熱材

素材別に分けると下表の通りになります。

素材名

繊維系断熱材

グラスウール、セルロースファイバー、ロックウールなど

発泡プラスチック系断熱材

ウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリスチレンフォーム、フェノールフォームなど

上記断熱材の中でも特に多くの外断熱工事に採用されている断熱材は、耐水性と透湿性が高いポリスチレンフォームです。

コンクリート造と木造・鉄骨造とでは考え方が異なる

外断熱とは一般的に、コンクリート構造物に適用される施工法を指します。木造や鉄骨造の場合、外断熱は外張り断熱と呼ばれます。

コンクリートは「暖まりにくく、冷めにくい」という高い蓄熱性を持つ特性があるため、外断熱を採用することで、構造物に伝わる熱を外部で遮断し、断熱性を強化することが可能です。一方で木造や鉄骨造では、このような効果は得られません。

【構造体別】外断熱のメリット

ここからは建物の構造体別で外断熱のメリットを詳しく見ていきます。構造体にかかわらない共通の外断熱のメリットは、以下の2つです。

  • 気密性が高くなる
  • 断熱効果が高くなる

コンクリート造(RC造、SRC造)の外断熱のメリットは、

  • コンクリートの寿命が伸びる

で、木造や鉄骨造の外断熱のメリットは、

  • 広い空間利用が可能

です。それぞれ詳しく解説します。

【共通】気密性が高くなる

外断熱は内断熱と異なり、建物全体を構造材や軸組ごと断熱材で包み込むことで、気圧変動の影響を最小限に抑え、高い気密性を実現できます。この高い気密性により、室外と室内の温度差がほぼゼロに近くなるため、激しい温度差で生じる結露がほぼ発生しないメリットがあります。

高い気密性があると冬季に冷たい外気の影響によって部屋の温度が下がることを防げるため、暖房装置の利用頻度を減らし、冬でも暖かさを保ちながら室内で快適に過ごすことが可能です。

ただし、気密性が高まると通気性が低くなるデメリットがあります。そのため、換気といった空気の入れ替えが必要になる点には、注意が必要です。

【共通】断熱効果が高くなる

内断熱の施工では、断熱材が柱や床などの部位で途切れてしまうことから、熱を伝えやすい箇所(ヒートブリッジ)が形成されやすくなってしまいます。一方で外断熱では、構造体全体を断熱材で覆う施工方法がとられるため、熱が出入りしやすい部分がなくなるのです。そのため同じ厚さの断熱材を使用しても、ヒートブリッジにより断熱性能に違いが出ます。

さらに鉄筋コンクリート造の建物で外断熱を採用する場合は、コンクリートが暑い夏の日光による熱を長時間保持することがありません。したがって、冷房を切ってもコンクリートの蓄熱性により、涼しさが長く持続します。また、反対に冬季の場合も、暖房を切った後の室内温度が急速に下がる事態を防げます。

【コンクリート】コンクリートの寿命が伸びる

鉄筋コンクリート造の建物は、コンクリートが中性化するのを防ぐことで耐久性が向上します。

自然環境下でコンクリートは表面から次第に中性化していき、鉄筋に達すると錆び始めます。その結果、鉄筋が体積膨張し、内部からコンクリートを押し広げ、ひびを生じさせるのです。このひびから雨水や二酸化炭素が侵入し、コンクリートの中性化を加速させ、鉄筋の錆びが進行するという負のサイクルが始まります。

鉄筋コンクリート造に外断熱を採用する際、コンクリートの中性化を抑制する観点から、外断熱工法は大いに有効とされます。日本コンクリート工学会が公表した資料によれば、内断熱工法の耐用期間が平均55年であるのに対し、外断熱工法の場合はその耐用期間が145年に達するとの研究結果があります

引用:(一社)日本建材・住宅設備産業協会 補助金活用による大規模修繕工事(団地・マンション事例)8ページ

【木造・鉄骨造】広い空間利用が可能

木造や鉄骨造住宅における外断熱(外張り断熱)は、広い空間利用が可能です。外断熱は、壁や屋根の外側に断熱材を設置することで、室内の空気を温めるものです。この工法により、室内の空間が広く使えるようになります。

室内空間のゆとりスペースを活用して収納を設けたり、部屋の利用面積を増やしたりすることが可能です。

外断熱のデメリット

ここからは外断熱の以下の4つのデメリットについて、詳しくみていきます。外断熱を検討している方は、メリットだけでなくデメリットも理解し、判断する材料にしてください。

  • 工事費用が高くなる
  • しっかりと換気計画を行う必要あり
  • 水漏れ・雨漏りの特定が難しくなる
  • デザインに制限が発生する恐れあり

工事費用が高くなる

外断熱をする場合は、内断熱よりも建設コストが高くなることがあります。ただしランニングコスト、例えば光熱費を考慮した場合には、外断熱が高価であるとは一概には言えません。長期的に見るとコスト節約の効果が期待できるでしょう。

また外断熱するには敷地や間取りに余裕が必要となり、狭い都市部の住宅には必ずしも適していないかもしれません。また、木造住宅で発泡プラスチック系の断熱材を用いる際には、火災へのリスクが増す課題もあります。発泡プラスチック系の素材は比較的低い温度でも燃えやすいため、耐火性の高い素材で断熱材を囲うなど、火災の発生には細心の注意が必要です。

しっかりと換気計画を行う必要あり

外断熱をする場合は、建物の気密性が高くなるため、生活するうえで換気を行いやすいよう、適切な計画が必要となります。適切な空気の流通がなければ、冷暖房による理想的な室内温度が保たれず、断熱効果を発揮できません。室内の温度変動を最小限に抑えつつも適切な換気を実現するには、全熱交換器の活用が効果的です。全熱交換器を使用すれば、空気の換気を行いつつも、室内の温度を維持することが可能となります。

水漏れ・雨漏りの特定が難しくなる

外断熱をした建物は、屋根や壁を介した水の浸入が見つけにくいため、漏水の問題を防ぐために施工段階での細心の配慮が必要になります。

さらに木造あるいは鉄骨造の外断熱(外張り断熱)では、断熱材の上に外壁材を取り付けるため、適切な施工が行われていなければ、年数経過や地震により外壁の位置がずれるリスクがあるため、注意が必要です。

デザインに制限が発生する恐れあり

外断熱をした場合、コンクリート壁の外部に断熱材を設置し、さらにその外側に外壁を配置するため、基本的に外観はコンクリート打ちっぱなしとはなりません。

しかし外断熱の家では、高い断熱性が必要とされないスペースの外壁に、部分的にコンクリート打ちっぱなしを使用することもあります。

一部のみコンクリート打ちっぱなしは可能ではあるものの、外断熱をした場合、建物全体の外観デザインとしてコンクリート打ちっぱなしにはできないことは、理解しておく必要があるでしょう。

内断熱との比較

ここでは外断熱と内断熱を比較しながら、それぞれの特徴を詳しく見ていきます。

気密性

断熱材を入れる場所

建設時のコスト

外断熱

高い

柱と外壁のあいだ

(内断熱より)高い

内断熱

低い

柱と柱のあいだ

(外断熱より)安い

そのほか外断熱には、室内に結露が生じにくくなる、光熱費のランニングコストが抑えられるといったメリットがあります。

一方の内断熱には、使用できる断熱材の種類が外断熱より多い、外壁のデザインに制限がない、といったメリットがあります。

外断熱工事の費用相場

ここでは外断熱工事の費用相場を、詳しくみていきます。

既存の外壁の上から外断熱を施す場合と、外壁をはがす場合ではコストが異なります。外壁をはがす工事が必要になるため、その分のコストがプラスされるためです。外壁をはがすかどうかは外壁の劣化具合などによって決めることになります。

以下が外断熱工事の費用相場の例です。

費用相場

外壁をはがさずに外断熱を行う場合

100万円程度(家の広さによって異なる)

外壁をはがして外断熱を行う場合

150万~290万円程度(家の広さによって異なる)

外断熱工事において、まとまった費用はかかるものの外断熱を施すことで、建物の気密性が上がり、光熱費の軽減につながることから、長期的に見ればコストが減らせる可能性があります。住んでいる地方の気候条件や、空調の使用頻度、快適と感じる温度によって軽減できる光熱費には差が生じるため、一時的なコストとともにランニングコストも計算に入れて、外断熱をするかどうかを検討しましょう。

外断熱を取り入れて快適な家を手に入れよう

本記事では外断熱の特徴や内断熱との違い、外断熱のメリット・デメリット、外断熱工事の費用相場について、詳しく解説しました。

外断熱を採用することで、一時的に経済的な負担は増えるものの、建物の気密性が高くなったり、結露が減ったり、光熱費が軽減できたり、といったメリットを享受できます。

一方で外断熱は外壁や断熱材のずれの不具合が発生する確率が高い部分です。また雨漏りや水漏れが見つけにくくなるデメリットも持っています。

外断熱に関わらず、断熱工事全般は住宅の快適性や寿命を決める大切な部分です。建物の専門家であるホームインスペクターによる住宅診断を受けると、不具合の有無やその後の対応方法がわかり、安心して住み続ける家を手に入れられるでしょう。

さくら事務所でおこなった住宅診断において、新築の75%以上で不具合が見つかっています。さくら事務所のホームインスペクションサービスでは、断熱材の仕様や、取り付け状況、隙間がないかどうかをチェックいたします。

安心して快適に長く暮らすために、外断熱工事を行う際は、さくら事務所のホームインスペクションサービスをぜひご利用ください。