上棟前後にずっと雨…建物に影響あり?注意点や対策法を住宅診断のプロが解説!

  • Update: 2023-10-05
上棟前後にずっと雨…建物に影響あり?注意点や対策法を住宅診断のプロが解説!

上棟前後にずっと雨が降ることも、季節や気象条件によってはあり得ます。もし上棟をはさんで雨が続いたとき、建物にはどのような影響があるのでしょうか。本記事では上棟前後にずっと雨だったときの注意点や、上棟前後の雨の対策について、住宅診断のプロが解説します。これから上棟を迎える予定の方は、ぜひ読んでください。

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上棟前後の長雨で木材が濡れた…品質に影響はある?

上棟しただけでは屋根がないため、雨が降ると当然、木材は湿ってしまいます。上棟前後の長雨で木材が濡れてしまったとき、品質にはどのような影響があるのでしょうか。ここからは、上棟前後の長雨が木材に与える影響について、詳しく解説します。

表面が濡れただけでは品質に影響を与えない

住宅の建設に用いられる木材は、含水率(木材に含まれる水分量)が20%以下の「乾燥材」と呼ばれるものです。ここまで乾燥させた木材が水分を吸収するには、煮沸といった特別な処理が必要になります。つまり乾燥材が雨によって多少表面が濡れたとしても、品質に大きな影響を及ぼさないのです。

ここでポイントとなるのが「多少」という点です。いくら乾燥材であっても、長雨にさらされ続ければ、品質に良くない影響を及ぼしてしまいます。どのくらいの雨ならOK、という基準を示すのは難しいため、上棟後は天候によってはブルーシートなどで覆う、といった雨対策が必要です。

木材が長期間湿潤状態の場合は要注意

木材が長雨によって長期間、湿潤状態(水分を多く含んでいる状態)が続くと木材が腐食するおそれがあるため、十分な注意が必要です。具体的には木材の含水率が20%を超えている状態が続くとカビや腐りが発生する危険性が高まると言われています。

そのため、柱や梁と仕上げ材との間に水分が入り込まないような、緻密な設計と施工が求められます。仕上げ材の通気が不十分であったり、結露しやすい状態にあると、湿潤状態が長期化し木材が劣化する原因となってしまうのです。

上棟前後の工程で雨が降りつづいた際に押さえたいチェックポイント

ここからは、以下の4つの工事のタイミングで長雨が降った場合の、チェックポイントを詳しく解説します。それぞれの工事のタイミングで、どのような確認が必要なのか、どのポイントをどのような見方でチェックすればいいのかを詳しく解説しているので、参考にしてください。

  • 基礎工事中
  • 建方工事中
  • 上棟後
  • 外壁工事完了後

基礎工事中

基礎工事中

長雨がいつどのタイミングで何日続くかは、人間にはコントロールできないことです。しかしチェックするべきポイントと長雨時の対策を知っておくことで、影響を最小限にできる可能性が高まります。基礎工事中に長雨が降った場合は、以下の2つのポイントをチェックしましょう。

  • アンカーボルトの状態をチェック
  • コンクリートの排水状況をチェック

それぞれ詳しく解説します。

アンカーボルトの状態をチェック

鉄筋に関しては多少のサビがついても過度に心配する必要はなく、工事を再開する際に、適宜ワイヤーブラシなどで清掃する程度で基本的には問題ありません。

しかし、コンクリートの打設後、基礎と建物をつなぐアンカーボルトがサビていないかという点には注意が必要です。アンカーボルトはサビ防止の加工がされていますが、長時間、雨にさらされた場合は、表面の加工が剥がれてサビてしまうことがあります。場合によっては交換が必要になるかもしれません。完成後の建物の耐久性に影響がでる可能性がありますので、工事再開の際には、このアンカーボルトの状態を確認しておきましょう。

コンクリートの打設時は雨を避ける

コンクリートの打設(流し込み)中に大雨が降ると、コンクリートの品質が下がってしまいます。小雨程度なら気にする必要はありませんが、大雨になる場合は品質確保のため、コンクリートの打設が予定より大幅に遅れることがあります。

基礎の打設後は、雨をうけて基礎の中が水たまりになっており、驚かれるケースがありますが、実はコンクリートは完成後、急激な乾燥によるひび割れを防ぐために、むしろ多少の水がある方がいいくらいなので、過度に心配する必要はないでしょう。

ただし、水たまりが乾燥する前に床を貼り始めると、床がカビたり変形することもありますので、水たまりができていたらしっかりと排水した上で、床の工事を始めてもらいましょう。

建方工事中

建方工事中に雨が降ると木材が濡れてしまい、少なからず品質に影響を与えることから、工事を中断することがあります。建方工事中に雨が降ったときにチェックすべきポイントは、以下の2つです。

  • 雨で工事中断した場合、雨養生がされているか
  • 合板の凹凸がないか

なぜ上記2つをチェックしなければいけないのか、詳しく解説します。

雨で工事中断した場合、雨養生がされているか

雨で建方工事が中断したとき、これ以上濡れないようにブルーシートで覆うといった「養生」がされているかをチェックすることが大切です。いくら乾燥材が使われており、多少濡れても問題ないとはいえ、長雨にずっとさらされ続ければカビの原因になり、品質に影響が出てしまいます。万が一、雨に対する養生が足りていない、と感じる部分があればその旨を担当者に伝え、対応してもらいましょう。

合板の凹凸がないか

1階の床下地となる合板は濡れないよう、しっかりと養生をしてもらう必要があります。通常は木材が濡れても乾燥すれば問題ありません。

最近では、内部の奥まで乾燥した「乾燥材」と呼ばれるものを使用しており、表面が濡れても、水分が奥に染みこむのには時間がかかります。雨が上がれば乾燥し始め、ほぼ元の状態に戻るでしょう。

茶色に変色している程度なら問題ありませんが、乾燥した後も凸凹していたり、水を吸って異常にふくらんでいたり、波打っている場合は要注意です。特に、一度濡れて乾ききらないうちにまた雨が降り、濡れた状態で放置されてしまうと凹凸ができやすくなります。

合板の上にフローリングを敷くので、合板は真っ直ぐであることが大前提となります。下地が凹凸のまま、フローリングが張られてしまうと、床鳴りの原因にもなります。床下地となる合板のカビ、変形、剥離があれば交換をしてもらいましょう。

上棟後

上棟前後に長雨が続いたとき、どうしても木材が水分を吸収してしまいます。そのため、以下の2つのポイントを踏まえて、木材の状態をチェックする必要があるのです。

  • 構造体の含水率は20%以下か
  • 床下に水が溜まっていないか

なぜこの部分を確認するのか、どういったチェック方法なのかを、ここから具体的に解説します。

構造体の含水率は20%以下か

構造体の水分含有量(含水率)の目安は、断熱材の施工時に20%以下であることが理想です。もし雨によって木材が濡れたとしても、天候が回復して工事が再開されれば、工事中に含水率は下がります。品質を維持するためには、最低でも含水率が30%以下になっているか確認しましょう。

木材の含水率を計測する機械はありますが、高価なため個人で所有するには向いていません。そのため、木材の含水率を正確に計測したい場合は、施工会社の現場監督に依頼するか、ホームインスペクターに住宅診断(ホームインスペクション)の依頼を検討されるとよいでしょう。

床下に水が溜まっていないか

上棟前後の長雨の影響は、床下に及ぶこともあります。もし床下に水が溜まっている場合は、早急な排水と乾燥が必要です。水が溜まったまま、あるいは水分が十分に乾燥しきれていないままだと湿潤状態が続き、土台や床材のカビや腐食の原因につながります。土台や床材も柱と同様、建物の構造体なので建物の強度に大きな影響を与えてしまいます。

床下部分が濡れていることがわかった場合は、現場の責任者にその旨を伝え、早急な対処を求めましょう。

外壁の施工まで終わって工事が中断した場合

工事が中断しても、外壁の施工まで完了していれば、雨の影響を受けることは少なくなります。

ただし、工事再開のタイミングでは室内側に雨染みがないかは念のため確認が必要です。

また、雨で敷地が冠水していると、床下に雨水が浸入している可能性があり、雨水が浸入すると蒸発しにくく、床下でカビが発生するリスクも高まります。したがって工事再開の際は、床下の確認もできると安心です。

さらに、最近はコロナウイルスの感染対策で、窓を開けっ放しにしている現場も少なくありません。職人さんが帰る時に窓の戸締まりを忘れてしまうと、夜に雨が降った場合、室内の床や壁がびしょ濡れになってしまいます。特に梅雨時や台風が接近しているときなどは戸締まりを徹底してもらいましょう。

建物完成後も要注意!大雨時の水害対策を紹介

まずはハザードマップの確認をしましょう。浸水想定エリアに該当しているなら、できるだけ水害の対策をしたり、水害用の保険を検討しましょう。

もし、ご自宅が設計段階なら「基礎の高さを45センチ以上」にできるか確認しましょう。なぜなら水害用の保険は「45センチ未満」で家が水に浸かったときには、保険の適用外になる可能性があるからです。

すでに設計が終わり、工事前や工事中でも、これから対策できることはたくさんあります。

排水管に逆流防止弁をつける

水害でまわりが水浸しになった時に、水が排水管から逆流して家の中が濡れてしまうことがあります。これを防ぐのが、排水管などに設置する逆流防止弁です。これは工事中に設置することもできます。

バルコニーやベランダにオーバーフロー管をつける

梅雨時期の大雨や台風でバルコニーやベランダが水浸しになった時に、室内に水が入ってくるのを防止してくれるのがオーバーフロー管です。あらかじめバルコニーやベランダの壁に小さな穴を開けておき、大雨で水浸しになった時に排水してくれます。洗面台に水をたくさん溜めると、上の方についている小さな穴から排水されて、洗面台から水が溢れ出ることを防いでくれるしくみと同じです。ご自宅にバルコニーやベランダをつける際は、必ずオーバーフロー管を設置しましょう。

エアコン用の配管穴(スリーブ管)を先に入れる

エアコン用の配管穴(スリーブ管)を先に入れる

梅雨時期の大雨や台風の後に、エアコンの配管を通す穴から雨漏りがした事例があとを絶ちません。よく、家が完成した後にエアコンの配管用の穴をあけるケースがありますが、これが多くの場合、雨漏りの原因となります。

完成後に穴をあけると、せっかく雨が入らないように工事している部分を壊してしまうことになるので、エアコンをつける可能性がある部屋には、エアコンを通すための穴を工事中に開けておく必要があります。その穴を使用しない場合でも、専用のフタをしておけば問題ありません。

専用のフタ

室外機や給湯器を高い位置につける

もし水害が発生した時に、エアコンの室外機や給湯器が水没してしまうと、すべてを交換することになってしまいます。そのような事態を避けるために、土台を作って高い位置においたり、壁に取り付けるなど、室外機や給湯器は水没しない位置に設置するようにしましょう。

基礎貫通部の隙間を埋める

水やお湯を通すための管や水を排水するための管、ガス管などを通すために、家の基礎にはたくさんの穴が空いています。これらの穴の周りに隙間があると、当然水が入ってきてしまいます。家が完成して引き渡しされる前に、そういった穴の周りに隙間が空いていないかを確認しましょう。隙間が空いていれば、しっかり埋めてもらう必要があります。

 

新築工事における「第三者チェック」はさくら事務所にご相談を

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これらの注意点に加え、もし工事を中断している間に災害があった際、工事現場の巡回などをしてもらえるのか、などを事前に確認しておくとより安心です。足場が掛かった状態で台風などの突風にさらされた場合、足場が倒れてしまう可能性もあります。

また、どんな対策をとっていても、どうしても工事のやり直しや、完成・引き渡しが遅れる場合が想定されます。工事再開時、無理に引き渡しに間に合わせるような突貫工事を生まないためにも、工程への影響や引き渡しまでのスケジュールについても、状況に応じて把握しておく必要があります。

建物への影響や今後の施工に工事に不安を感じる方は、さくら事務所にお気軽にご相談ください。さくら事務所の新築工事中ホームインスペクションでは、新築工事中の現場をホームインスペクター(住宅診断士)が第三者の目でチェックを行っています。工事直前や工事中のお急ぎのご相談にも対応致します。工事中の家が濡れているのが心配、といったピンポイントのご相談も受け付けていますので、お気軽にご相談ください。