このところ、報道番組やSNSなどで、新築の物件において不具合が頻繁に見つかると話題になっています。
住宅における不具合と言えば、基礎(建物を支えるコンクリート)や壁のひび割れ、雨漏りなどがその代表として挙げられます。しかし、「建てたばかりなのになぜ!?」と思いませんか? 建ててから数十年経っているならまだしも、新築なのにどうして……と、ほとんどの方がそう感じるのではないでしょうか。
ここでは、新築の物件に不具合が起きやすくなっている原因を細かく探っていきます。新築住宅を購入する際のアドバイスもありますよ!
不具合が発生する最大の要因は、現場監督の人材不足
まず最も大きな要因として、工事の品質を守る役割を果たす「現場監督」、つまり工事現場のリーダーの数が圧倒的に足りていないことが挙げられます。日本の高度経済成長期や新築住宅の全盛期を支えたベテランが引退していく一方で、若い人材が業界になかなか入ってこないため、慢性的に人手不足が続いているのです。そしてその半面、新築住宅の販売数は大きく下がることはなく、現場監督には大きな負荷がかかっています。
現場監督の人数が不足している中で、新築住宅の数が減るわけではないため負荷が増加、これにより現場監督が働きにくくなり、工事中の不具合が見落とされてしまっている……というわけです。
では、この状況で新築住宅を買うのは危険性が高いのでしょうか。
実は、必ずしもそうとは言い切れないのです。住宅を建てる事業者の種類によっては不具合を避けられる可能性が上がります。
新築住宅を建てる事業者としては、「建売住宅業者」と「注文住宅業者」の2つがありますね。そして、それぞれ規模の大小があります。この4つのパターンに分けて分析していきましょう。ここで言う規模の大小とは、上場している、もしくは上場を目指している会社(CMなどで社名を見かけることが多い会社、と言ってもいいでしょう)が「大」、世間一般に広く認知されているわけではなく、どちらかと言うと一定の地域に根付いて営業しているような会社が「小」というイメージです。
【規模が大きな建売業者の場合】
1棟1棟の工期が短く、現場監督のチェックが間に合わない
まず建売業者のビジネスモデルを確認しましょう。建売業者は、土地を仕入れてきて、そこに建物を建てて、それを販売することで売上を立てています。
規模が大きい建売業者は一般的に、より多くの土地を仕入れ、より原価を抑えた建物を作って土地に付加価値を付けより早く売ってお金に換えるというスピードが必要になります。土地を仕入れるということは在庫を抱えることになるため、早く売らないとどんどん経費がかさんでしまい利益が減っていくのです。
すると、当然ながら工事の期間(工期)が短く設定されやすくなります。現場監督は一度に20から30棟以上もの現場を見ることもあり、物理的に非常に忙しくなってしまいます。そうした環境だと、現場のチェックが間に合わなくなったり、十分な時間が取れないことが起こり得るのです。
住宅の大部分は手作りですので、人的なミスが起きてしまうことは当然あります。それをチェックするのが現場監督の役割なのですが、忙しすぎてそれができない。これが大きな問題になっているというわけです。
【規模が小さな建売業者の場合】
会社によって現場監督のスキルにバラツキが
では、建売業者の中でも規模が小さいところの場合はどうでしょうか。一般的には、規模の拡大を目指すのではなく、地に足の着いた経営をしていこうとされている傾向があります。
ただし、規模の大きな建売業者と同様、もっと言えばそれ以上に、現場監督の人手は足りていません。さらに、会社ごとに現場監督のスキルのバラツキが大きいのが現状です。現場監督の人手不足、ノウハウ不足によって不具合が見落とされる可能性が高い傾向にあります。
【規模が大きな注文住宅業者の場合】
優秀な現場監督が集まりやすく、大きな不具合は発生しにくい
続いて、注文住宅業者について見ていきましょう。注文住宅業者では、土地を自らが仕入れてくるのではなく、施主が準備した土地に建物を建てることで利益を上げます。
つまり、注文住宅業者は「請負契約」によって「建物をつくる」という価値を消費者に提供する「建築業」です。建売業者が土地(および建物)を消費者に「売買契約」によって販売している「不動産業」であることとは大きく異なるものだと考えてください。
規模の大きな注文住宅業者の場合、できるだけ高い付加価値で利益率を高める戦略を採ることが多いです。利益率が高い建物を作るため、現場監督など人への投資もしやすい環境にあり、現場監督を育成しやすい傾向にあります。
また、品質管理の重要なポイントは二重三重のチェックがされることもあります。
そのため、建て替えをしなければならないような大きな不具合は発生しにくいと言えます。
その一方で課題は、新卒など若い社員の育成も行っているため、スキル不足の現場監督が現場を見ることが一定数あり得るなど、エース級の現場監督に難しい現場が集中しやすい傾向にあることです。建売に比べて注文住宅は1棟1棟オリジナルの住宅を建てるため、現場監督への負荷がどうしても大きくなるのですが、その状態で現場監督の担当する棟数が増えるといった負荷がかかってしまうと、品質管理に支障を来す可能性があります。
【規模が小さな注文住宅業者の場合】
ローコストの住宅を売る戦略を採っている会社では大きな不具合が多く見つかる傾向
規模が小さい注文住宅業者の場合は、「高付加価値の住宅を売る」か「ローコストの住宅を売る」か、このいずれかの戦略を採ることが多いです。自社の強みが分析でき、マーケティングや営業で成果をあげられているところは前者、そこに苦労している会社は後者という傾向があります。
ローコストの戦略をとる場合は、注文住宅ゆえに現場監督にかかる一棟一棟の負荷が大きくなることに加えて、ローコストで利益率が低いため人件費や教育に投資しにくい構造になりやすく、工事の品質管理に課題を抱えてしまい、大きな不具合が多く見つかってしまうという環境がうまれやすくなります。
大きな不具合が最も発生しにくいところは?
ここまで4つのパターンを見てきましたが、ではいったい、最も住宅の不具合が少ないのはどういった事業者なのでしょう。
4つ目のパターンで少し触れた、「規模が小さい注文住宅業者で、かつ、高付加価値の住宅を売る戦略を採っている会社」。これが正解です。
規模が小さいということは、いつどこの現場で何が起きているか、すべてに責任者の目が届きやすいということ。また、高利益率の住宅をつくっているため人件費や教育にコストを割きやすく、現場監督を育成しやすいうえに棟数を無理に増やすことをしないため、品質管理をコントロールしやすいのですね。今回ご紹介したパターンの中では、不具合が見落とされにくい環境がそろいやすいと言えます。
不具合を見落とさないための「ホームインスペクション」
ただし、以上の内容は、私たちさくら事務所が第三者としてホームインスペクションで品質をチェックする中で気づいた傾向です。あくまで傾向ですので、実際にはその事業者ごとに課題が異なり、一棟一棟の現場ごとにも課題が変わってきます。
ただ、多くの事業者に共通していることは「現場監督が不足している」ということ。一定の傾向があるとはいえ、どの現場でも現場監督さんがすごく忙しく、負担がかかっていることに大きな違いはありません。多忙な現場監督と一緒にホームインスペクターが品質管理をサポートさせていただくことで、新築住宅の不具合が見落とされてしまわないようにお手伝いさせていただきます。
ご心配な方は、ぜひさくら事務所の新築工事中ホームインスペクションの無料相談をご利用ください。着工前や着工中でも、新築住宅を建てるにあたってのお悩みに無料でお答え致します。