3月引き渡しの新築戸建ての33%が未完成!?早めのインスペクションで対処を

  • Update: 2023-04-24
3月引き渡しの新築戸建ての33%が未完成!?早めのインスペクションで対処を

なかなか衝撃的なタイトルですが、この「3月引き渡しの新築戸建ての33%が未完成」という言葉は、釣りでもなんでもなく、さくら事務所の調査結果に基づくデータです。いったいどういうことなのか、解説していきましょう。

工事が完成検査に間に合わなかった物件が「未完成物件」

まず、何をもって「未完成」と呼ぶのか。今回は新築の一戸建てに限った話ですが、戸建ての工事が完成し、施主に引き渡しをする直前に行われる最後の検査のことを「完成検査」と呼びます。施主自身も物件の様子を確認できる機会であり、「内覧会」とも「施主検査」とも呼ばれます。

そのタイミングで、「外構(庭)がまだ仕上がっていない」「照明の設置が追いついていない」など完成に至っていない状況が確認できた場合、完成検査時点でも「未完成物件」ということになるため、その後も必要な工事が引き続き行われ、それら全てが完成してからの引き渡しとなります。

何らかの原因で工事が遅れており、そもそも完成検査に間に合わない場合は、以降の日程、つまり完成検査、引き渡し、引っ越しなどの日程を後ろにずらすということもあり得ます。工事が遅れているのですから、致し方ないといえば致し方ありません。

……しかし。

引き渡し予定が3月になっている物件となると、そうはいかない可能性が高まります。

年度をまたいで引き渡し時期が延びることは少ない

多くの企業において3月は年度末にあたり、それは建築業界でも同じです。年度末ギリギリまで、より多くの売上を立てたいと考えます。

新築戸建てに関して言えば、建築会社の売上が立つのは引き渡しが終わって買主からの入金が済んだタイミング。つまり、3月の引き渡しを4月以降に延期することは、その売上を翌年度に回すことになり、できるだけ避けたいことなのです。4月引き渡しの予定を5月にずらすのはいい、しかし、3月引き渡しの予定を4月にずらすのはマズい、そういうことです。

こういったことから、3月引き渡し予定の物件の工事に遅れが生じていたとしても、引き渡し日程を後ろにずらすことはせず、無理なスケジュールで突貫工事を行い、強引に完成させて引き渡すということが起こりやすいのです。

未完成箇所の多い物件は不備も多い

その結果が、冒頭にお伝えしたデータです。

2023年3月にさくら事務所が携わった新築戸建てのインスペクションの結果を集計したところ、全63件のうち、何らかの未完成箇所があった物件が21件もありました。これが33%という数字の根拠です。内訳を見ると、未完成箇所が1カ所だったもの(レベルC)が15件、2カ所だったもの(レベルB)が3件、3カ所以上だったもの(レベルA)が3件でした。

また、インスペクションで何らかの不備が指摘された数も集計したところ、平均して1件につき13カ所の不備が見つかったことがわかりました。未完成箇所のあった物件に限って見ていくと、レベルCの物件は11.5カ所、レベルBの物件は13カ所、レベルAの物件はというと、なんと29カ所です。

調査の母数は少ないものの、未完成箇所の多い物件は、そもそも無理矢理なスケジュールで建てられた可能性が高く、それに伴い不備も出やすくなる、という傾向が見られることは間違いないのではないでしょうか。

可能であれば、引き渡し前にインスペクションを

このような状況で、買主としてはどうすべきか。

この時期の物件にはある程度の不備が発生しやすいという前提のもと、なるべく早いタイミングで私たちのようなプロの手によるインスペクションを入れることで、出来るだけ不備のない状態で引き渡しを迎えやすくなります。

可能であれば、引き渡しを受ける前がベストです。それが無理なら、引き渡し後の引っ越し前。引っ越しをして荷物を搬入してしまうとインスペクションがしにくくなるためです。

既に3月の間に引き渡しを受け、引っ越しが済んでしまっているという場合でもインスペクションの実施は可能です。

一般的な新築戸建ての場合、引き渡しから1~2年の間は一定の保証が付いているため、この期間内であれば何らかの不備が見つかった際にも修繕の交渉がしやすくなります。時間が経つほど修繕交渉がしにくくなっていきますので、可能な限り早期のインスペクション実施が望ましいでしょう。

一般的に新築戸建ての場合、引き渡しから12年の間は保証が付いているため、この期間であれば、何らかの不備が見つかった場合に修繕を交渉することが可能です。ぜひ、早期のインスペクションをご検討ください。

ちなみに……。建物を支えるコンクリート部分、これを基礎と呼びますが、完成検査時に基礎表面の仕上げが未完成だった場合、これはある意味、チャンスかもしれません。

というのも、基礎の仕上げ作業(コンクリートの表面にモルタル等を塗り、綺麗に仕上げること)が済んでしまっている場合、コンクリート自体にヒビが入っていないかどうかの確認ができないからです。未完成状態というのは買主にとって非常に不安なものですが、こと基礎に関して言えば、ポジティブに捉えることもできます。

いずれにしても、憂いなく新生活を送るには、建築会社に任せっきりにするのではなく、できるだけ早いタイミングで検査を行い、不安を払拭しておくことが重要になってくるでしょう。