「毎月支払う修繕積立金 = 計画的に実施される修繕工事のための費用」。このことはマンションで生活されているほとんどの方がご存知です。
しかし、意外に知られていないのが『修繕積立金の金額はどのようにして決められているのか?』。マンションを新築で購入された方は、モデルルームの見学や売買契約の際に。中古で購入された方は、重要事項説明書の付属資料として。一度は「長期修繕計画」という書類を見たことがあるかもしれません。
見覚えありますか?「長期修繕計画」
管理組合の理事や修繕委員などを経験された方は、『あの書類だな!』と、ピンときたかもしれませんね。
計画を立てているからといって安心はできない
この「長期修繕計画」とはどういったものなのでしょうか。簡単にまとめると以下になります。
計画作成時点から概ね25年から35年間程度を目安に、その期間計画的に実施する必要があると思われる工事について、
- 屋上防水、外壁補修、鉄部塗装などの建築工事
- 給水設備、排水設備、照明設備、機械式駐車場などの設備工事
こ の2つに分別して、実施する見込みの時期と費用の概算額を試算。そして、『将来的に何年目の時点でどのくらいの資金を準備しておく必要があるのか?』とい うシミュレーションをした管理組合のマネープランが「長期修繕計画」なのです。分譲マンションにお住いの皆さんが毎月支払われている修繕積立金。先ほどの マネープランによって得られた結果をクリアできる金額となっていればよいのですが…。しかし実際のところ、
- 初期の設定額が著しく低額である
- 段階的に増額する計画となっていても、予定の時期に増額することなく先送りにしている
こういったケースで『そのままの積立額では必要な資金を確保することができない!』という困った状況に陥る方が少なくないのです。
一度は見直そう
マンションの維持管理にとって欠くことのできない、大切な長期修繕計画。管理組合にとって虎の子の修繕積立金を決定するための基となるものですが、見直しのコンサルティングご依頼を頂いたケースでは、間違った内容で計画されているものが数多くあります。
実際にどのような間違いがあるのでしょうか。下記は代表的な実例です。
ケース1 : 該当しない項目の設定
- 機械式駐車場が設置されていないのに、機械式駐車装置の項目があり修繕費用が計上されてしまっている!
- 機械式駐車場が塗装不要の溶融亜鉛メッキ仕様なのに、6年毎に塗装工事が計上されてしまっている!
- 負担する必要のない水道メータの交換費用が計上されてしまっている!
ケース2 : 必要な項目の抜け落ち
- 自動火災報知機や屋内消火栓などの消防設備項目の全部または一部が設定されていない!
- 給排水設備項目の全部または一部が設定されていない!
- 自家発電設備項目が設定されていない!
ケース3 : 数量の間違い
- 機械式駐車場の設置台数(パレット数)が、実際と違う台数で工事費用が計上されてしまっている!
- エレベーターの設置台数が、実際と違う台数で工事費用が計上されてしまっている!
- 照明器具の台数が、実際と違う台数で工事費用が計上されてしまっている!
これらは明らかな誤りです。マンションの規模や内容によりますが、30年間で1億円を超える工事費用が不足する結果となり、修繕積立金の増額を検討せざるを得ないことになった管理組合もあります。その他にも、間違いではないのですが、
- 修繕の周期について検討の余地があるもの
- 補修方法について再考の余地があるもの
という実例もあり、細かく挙げればきりがありません。代表的なものだけでも大きな間違いが珍しくないのが、長期修繕計画の実情です。皆さんのマンションの長期修繕計画も、一度は外部の専門家に相談されることをおススメします。