昨今の集中豪雨などで話題になる「床下浸水」「床上浸水」。
平成最大の水害と言われた西日本豪雨も記憶に新しいところです。
首都圏や都心では、水を吸収・浸透させないアスファルトやコンクリートが地表を覆っていることも影響し、その排水処理能力を越えることによる「都市型水害」も年々増加傾向しています。(行政によっては、浸透性の高いアスファルトを舗装しているところも増えているようです。)
今回は、ホームインスペクター(住宅診断士)が、床上浸水・床下浸水のリスクと対策について解説します。
床上浸水、床下浸水とは?浸水しやすいエリアは?
そもそも床上浸水、床下浸水とはどのようなものなのでしょうか?
簡単に言えば、床下浸水とは「住宅の床より下の浸水」を、床上浸水とは「住宅の床より上までの浸水」を指します。
「我が家は近くに川もないし、高台だから大丈夫」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、そうとも言い切れません。
街全体は高台に位置していても、その地域内で周辺より低い場合は注意が必要です。明らかに坂に囲まれた窪地のような場合はわかりやすいのですが、なだらかな傾斜地などに面した場所は、そこが果たしてその地域における低地なのかどうか判別しにくいところも。
見た目や歩いた感触など体感で判断するのではなく、しっかりと調べておいたほうが安全でしょう。
具体的には、地域の浸水リスクを調べる方法として最も一般的なのは「洪水ハザードマップ」です。
今回の西日本豪雨でも、多くの地域が冠水した岡山県倉敷市真備町で、ハザードマップで危険を示していた場所と浸水被害エリアはほぼ一致していたとされています。
その他に、過去の水害被害の履歴を公開している行政もありますので、そちらも併せて参考にしてみてもいいでしょう。
浸水被害が予想されるのはこんな家
浸水の可能性のあるエリアの中でも、特に浸水被害が予想されるのはどんな家なのでしょうか?
・都市部の3階建てに多い、基礎の低い家
都市部では、都市計画法により、建物の最高高さや軒の高さを制限しているエリアがあります。そんな中、制限を守りながら、各階数の階高も維持し、3階建てを建てるとなると、どうしても基礎の高さを抑えがちな傾向にあります。基礎の高さが低いということはその分、床下空間も低くなりますので床上浸水の危険も大きくなります。
・床下換気口を設置している
床下の換気を床下換気口に頼っているものは、水が流れ込みやすくなります。基礎パッキンで換気する方法がいいでしょう。これは、基礎と土台の間にパッキンを挟み、土台を少し持ち上げそこから換気する方法です。
・半地下、地下室がある家
地下の居室は容積率の緩和を受けることができますので、都心の狭小敷地などでよく見かけます。地盤面より低い居室があれば、当然浸水しやすくなります。
また、半地下はトイレが逆流を起こす可能性も高まります。
住宅の水周りと下水管の高低差が少ないほど、水がのぼってくる可能性が高まるからです。激しい逆流を起こすとトイレやお風呂が使えなくなるばかりか、部屋の中も水浸しになってしまいます。排水設備の設計にもよりますが、注意が必要です。
また、半地下や地下に寝室を置いている住宅もあるでしょう。そういった場合、夜間に浸水したら、水圧でドアが開かなくなってしまう危険があります。
浸水時にその部屋にいなくても、すでに浸水が始まっている場合、地下には下りないようにしましょう。
水害に備えた対策と注意点
では、災害に備え、今の住まいでできることはどんなことでしょうか?
・コンセントの位置は高くして漏電を防ぐ
浸水しやすい場所に家を建てるのであれば、コンセントの位置を通常より高く設置してもらうのもおすすめです。コンセントの高さまで浸水した際の漏電を防ぐためです。
・床上浸水に備えて、大きな鉢植えや自転車など大きなものを建物のまわりに置かない
浮いてしまって、窓ガラスを割ってしまうかもしれません
・逃げ道確保のため、大きな家具は置かない
大きな家具に進行を阻まれ、逃げられなくなってしまうかもしれません。固定しておくか、逃げ道までに置かないことをおすすめします。
・水回りはなるべく上階に置きましょう
設備関係は被害にあうと、金銭的な負担が大きくなってしまいます。導線が許すのであれば、水回りはまとめて上階いもってくることを水害対策としてはおすすめします。
もし浸水してしまったら・・・
床上浸水の被害は、室内の床や壁、家電製品などが泥水で汚され破損するというものが頭に浮かびやすいですが、床下浸水の場合は被害に気が付かなかったり、そのまま対処されないケースもあります。
そもそも点検口がついていない住宅では、床下浸水の状況も確認しにくいでしょう。被害が拡大、更に二次被害を生む可能性もあり、建物に思わぬ影響を及ぼすことがあります。
床下浸水してしまったら、まずは床下の水を抜き、十分に換気をしましょう。最近では小さなサーキュレーターが売っていますので、床下においてまわすと効率的に湿気を放出することができます。
床下の構造部の木材を濡れたままにしておくと、建物の構造部分の劣化を進行させるだけでなく、湿気を好むシロアリが集まってきてしまいます。
いかがでしたでしょうか?災害への備えとして今一度、ご自宅を点検されてみてはいかがでしょうか?
ご自宅のウィークポイントを把握することで、より有効な対策をとることができるでしょう。
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災害リスクとその備え方は、立地だけでなく建物の構造にもよります。戸建て住宅でも平屋なのか、2階建てなのか、また地震による倒壊リスクは築年数によっても大きく変わってきます。
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■記事執筆者(災害リスクカルテ監修)
横山 芳春 博士(理学)
だいち災害リスク研究所所長・地盤災害ドクター地形と地質、地盤災害の専門家。災害が起きた際には速やかに現地入りして被害を調査。広島土砂災害、熊本地震、北海道胆振東部地震、山形県沖地震、逗子市土砂災害等では発生当日又は翌朝に現地入り。
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