マンションの雨漏りの原因は?損害賠償や保険の適用、対処法を解説

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マンションの雨漏りの原因は?損害賠償や保険の適用、対処法を解説

この記事はプロのホームインスペクターが監修しています

マンションで雨漏りが発生した場合、原因の追究が重要です。雨漏りの原因によって責任の所在が異なり、損害賠償や保険の適用に関しても対応が変わってきます。

とはいえマンションは戸建てに比べ規模が大きいことから、雨漏りの原因追及が難しいのも事実です。
雨漏りによる被害を最小限におさえるためにも、考えられる原因や対処法を理解しておきましょう。

本記事ではマンションの雨漏りの原因や責任の所在、対処法を解説します。保険の適用や損害賠償の範囲についても紹介するので、マンションの雨漏りでお困りの方はぜひ参考にしてください。

マンションの雨漏りのおもな原因は4つ

マンションの雨漏りのおもな原因は以下の4つです。
(1)屋上やベランダの防水材料の劣化
(2)外壁や屋根のひび割れ
(3)窓サッシやコーキングの劣化
(4)施工時の不具合

順に詳しく解説します。

(1)屋上やベランダの防水材料の劣化

屋上の防水材料が劣化して、防水性が低下したことで、天井から雨漏りすることがあります。また、上の階のベランダ部分が下の階の居室になっている形状の場合は、ベランダの防水材料が劣化し天井から雨漏りすることも。

防水材料を劣化させるのは、経年によるものだけではありません。屋上やベランダの排水溝に落ち葉などが詰まると、うまく排水されずに水溜まりができます。長時間水が溜まった状態が続くと、防水材料の劣化を促進してしまうのです。

(2)外壁や屋根のひび割れ

外壁や屋根のひび割れ部分から雨水が浸入し、室内に漏れてくることもあります。外壁や屋根に大きなひび割れが生じている場合は要注意です。

ひび割れから雨水が浸入した際、すぐに室内に漏れてくるとは限りません。外壁内部で雨水が広がり時間をかけて室内に漏れてくることもあるため、雨が降っていなくても雨漏れするケースもあります。

(3)窓サッシやコーキングの劣化

経年により窓サッシが歪んですき間ができたり、窓サッシ周りや外壁材のコーキングが劣化したりすることも雨漏りの原因になります。コーキングの耐用年数は約10年が目安です。

コーキングが劣化すると、ひび割れや収縮によってすき間が生じます。10年以上補修していない場合は、コーキングの劣化による雨漏りを疑いましょう。

(4)施工時の不具合

新築や築浅のマンションで経年劣化が考えられない場合は、施工時の不具合により雨漏りしているケースも考えられます。たとえば、窓周りのコーキングの処理があまく、風で打ち付けられた雨水が浸入していることもあります。

また、屋上やベランダの勾配不足が原因で雨漏りすることも。通常、屋上やベランダには排水溝に水が流れるように勾配がついています。しかし施工時の不具合により勾配が不十分だと雨水が流れにくいため、水溜まりが長時間残ってしまうことで、防水材料の劣化や雨漏りに繋がってしまうのです。

マンションで生じた雨漏りの責任の所在

マンションで雨漏りした際はだれの責任になるのでしょうか。ここでは分譲マンションと賃貸マンションに分けてそれぞれ解説します。

分譲マンションの場合

分譲マンションの場合は、共用部が原因の雨漏りは管理組合、専有部は区分所有者の責任になります。

共用部が原因のときは管理組合

屋上防水や外壁などは共用部分に該当するため、修理費用や雨漏れにより被害を受けた居住者への損害賠償は、管理組合の責任です。

管理組合といっても、費用は区分所有者から徴収している管理費や修繕積立金でまかなわれるため、区分所有者全員で責任を負うことを意味します。

また、窓やベランダは基本的には共用部分の扱いになりますが、マンションによって異なることもあるため念のため管理規約で確認しましょう。

専有部が原因のときは区分所有者

専有部が原因の雨漏りは区分所有者の責任となります。

「ベランダの掃除を怠り排水溝を詰まらせ室内に雨水が漏れた」「窓の閉め忘れにより雨水が吹き込んだ」など過失による雨漏りも当然本人の責任です。

雨漏りしていることに気がつかずに、他の居住者まで被害が拡大した場合は損害賠償も請求されます。

賃貸マンションの場合

賃貸マンションに住んでいて雨漏りしたときは、マンションオーナーの責任になるのが一般的です。個人に過失があるときは居住者の責任になります。

マンションオーナー

賃貸マンションの経年劣化による雨漏りはマンションオーナーの責任となります。雨漏りの原因個所を修理したり、入居者の私物に被害が及んだときに損害賠償したりするのはオーナーです。

雨漏りの程度にもよりますが、適切に雨漏りに対応し損害賠償してもらった場合は、被害を受けたとはいえ、家賃の減額などは難しいでしょう。

個人に過失があるときは居住者

賃貸マンションでも分譲マンションと同様に、個人に過失があるときは本人が責任を負います。内装の復旧費用や下の階まで被害が及んだ際の損害賠償も本人の費用負担で行わなければいけません。

雨漏りで内装などに被害があったことを隠したり、自分で修理したりするのは賃貸借契約違反になることが多いです。速やかにオーナーや管理会社に報告しましょう。

施工時の不具合による雨漏りの費用負担は保証期間に注意

施工時の不具合による雨漏りは、保証期間内であれば施工会社や分譲会社が費用を負担します。

屋上・屋根・ルーフバルコニー・外壁・開口部・雨水排水管など雨水の浸入を防ぐ部分のアフターサービス期間は10年です。10年以内に施工時の不具合を発見できれば管理組合の費用負担は避けられます。

ただし雨漏りの原因が、施工時の不具合なのか経年劣化なのかを判断するのは難しいのが現状です。施工時の不具合が疑われる場合は、施工会社や分譲会社との交渉をサポートできる第三者機関に調査を依頼することをおすすめします。

マンションの雨漏りの損害賠償の範囲

分譲マンションの雨漏りによる損害賠償の範囲はおもに以下2つです。
・雨漏りにより被害を受けた内装の復旧費用
・雨漏りで濡れた家財の保証

家財については被害を受けた時点での時価相当額になるため、全額保証してもらえるわけではありません。

雨漏りに気がつかなかったり放置していたりすると、被害は拡大し続けます。壁や天井に不自然なシミやカビができているなど、少しでも違和感があれば専門家に調査を依頼しましょう。

マンションの雨漏りは保険が使えるかも

マンションの雨漏りは保険が使えるかもしれません。マンションの雨漏りで保険が適用されるケースと適用されないケースを解説します。

火災保険が適用されるケース

火災保険が適用されるケースは以下2つです。
・風災などの自然災害による雨漏り
・他人に損害を与えた際の損害賠償

台風や暴風といった風災などにより、窓ガラスが割れたり外壁が破損したりしたことが原因で雨漏りした場合は、火災保険が適用されます。ただし自然災害ごと(風災や雪災など)の補償が付帯していることが前提です。

損害賠償は火災保険に限らず自動車保険やクレジットカードに付帯していることもあるため、加入状況を把握しておきましょう。

火災保険が適用されないケース

以下2つのケースは火災保険が適用されません。

・経年劣化による雨漏り
・施工時の不具合による雨漏り

保険は突発的な事象において適用されるものです。経年劣化は予測でき、日々のメンテナンス次第で雨漏りを避けられるため保険の対象外です。

また施工時の不具合は、施工会社や分譲会社の責任になるため火災保険ではなくマンションのアフターサービスを利用しましょう。

水濡れや水災は雨漏りとは無関係

火災保険の「水濡れ」や「水災」は雨漏りとは関係ないため注意が必要です。

水濡れは、マンションの給排水設備などの不具合や他人の過失による漏水に適用されます。水災は、洪水や高潮により床上浸水したり土砂くずれで室内に土砂が流れてきたりする災害です。

どちらも雨漏りと似ていますが、雨漏りが生じた際には適用されません。

マンションで雨漏りが起きた際の対処法

マンションで雨漏りが起きたときは次の手順で対処しましょう。

(1)応急処置をする
(2)管理会社や管理組合に連絡する
(3)写真や動画で記録する

順に解説します。

(1)応急処置をする

雨漏りを発見したら、まず被害を食い止めるために応急処置をしてください。家財をブルーシートなどで覆ったり、バケツで水を受けたりしましょう。近くに電化製品がある場合は、漏電の危険性があるため、電源を切りコンセントを抜いておきます。

(2)管理会社や管理組合に連絡する

応急処置が終わったら、管理会社や管理組合に連絡し指示を仰ぎます。雨漏りの原因が共用部にある可能性も考えられるため、勝手に修理業者を手配しないようにしてください。
夜間の場合は、マンション内に掲示してある緊急連絡先に連絡しましょう。

(3)写真や動画で記録する

雨漏り個所や被害状況を写真や動画で記録しておくと、雨漏りの原因調査や保険請求の際に役立ちます。雨漏り個所のアップや部屋全体などあらゆる画角で撮影しておきましょう。

マンションの雨漏り対策

築年数の経過とともに外壁やコーキングが劣化するのは避けられません。しかし、日ごろから以下3つの対策をしておくことで未然に防げる雨漏りもあります。

・ベランダをこまめに掃除する
・定期的に屋上を点検する
・ひび割れやシミを放置しない

順にみていきましょう。

ベランダをこまめに掃除する

ベランダやバルコニーはこまめに掃除しましょう。排水溝にゴミなどが詰まって雨水が流れないことがないように気を付けてください。

とくに雨が降ったあとや風が強い日は落ち葉が溜まりやすくなります。こまめに排水溝の状態を確認し、きれいな状態を保っておきましょう。

定期的に屋上を点検する

半年に1回程度を目安に屋上を点検し、劣化している個所や水たまりの跡がないかなど確認しましょう。
管理会社の定期清掃や点検に屋上が含まれている場合は、報告書などで屋上防水の状態に異常がないかチェックしてください。

屋上が管理会社の業務範囲外になっているケースもあります。その場合は管理組合で点検するか、管理会社に点検してもらうように業務範囲を見直しましょう。
屋上防水に劣化がみられるときは適切なタイミングで防水改修工事を実施してください。

ひび割れやシミを放置しない

外壁やコーキングのひび割れ・シミを発見したら放置せずに、専門家に詳しく調べてもらいましょう。現段階で雨漏りしていなくても、すでに外壁内部に雨水が浸入している可能性もあります。室内まで雨漏りの被害が及ぶ前に、雨漏りの原因となり得る個所を特定し修繕しておきましょう。

マンションの雨漏りは念入りな原因調査で解決しよう

マンションの雨漏りのおもな原因は、屋上防水の劣化・外壁のひび割れ・窓サッシ周りやコーキングの劣化などです。雨漏りが発生している場所や原因によって、責任の所在は異なります。

共用部に原因があるケースが多いですが、窓の開けっぱなしやバルコニーの掃除を怠ったことで雨漏りに発展することもあるため、日ごろから気を付けましょう。

また雨漏りの原因を調査すると、施工時に不具合があったことが判明することも少なくありません。施工時の不具合があった場合は、分譲会社や施工会社の責任になります。容易に「経年劣化が原因」と判断するのではなく、施工時の不具合の可能性も視野に入れて調査することが大切です。

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マンションの瑕疵・欠陥トラブル解決サポート

自宅マンションホームインスペクション

ホームインスペクター 鈴木 賢
監修者

鈴木 賢

築35年の中古マンションを購入し、自身の設計でスケルトンリフォームして住んでいます。
建築物定期調査報告や屋上防水改修、管理会社変更検討などマンションの理事会活動も行っており、設計監理者としてだけでなく、生活者としての視点も持ち続けて活動しています。

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