3.11~東日本大震災から9年 見えてきた課題と今後の備え<前編>

  • Update: 2020-03-11
3.11~東日本大震災から9年 見えてきた課題と今後の備え<前編>

2011年に発生した3.11~東日本大震災から9年を迎えるいま。東日本大震災がどのような災害で、何が起こり、被害はどのような場所で発生したのでしょうか。
津波や原発による大きな被害がクローズアップされがちですが、地震による被害の特徴や起こったことを振り返ることで、これからの土地選びや住宅づくり、災害への備え、さらにいざ災害が起きた時の行動に役立てることができます。
東日本大震災で見えてきた課題と今後起こりうる大地震、大災害への備え方のポイントについて解説します。

東日本大震災はどんな災害だった?

東日本大震災は、2011年3月11日、14時46分ごろに三陸沖を震源として発生した地震、東北地方太平洋沖地震による一連の被害です。地震の規模を示すマグニチュードは9.0という超巨大地震で、これまでの日本の観測史上で最大の規模でした。
1995年の兵庫県南部地震、2016年の熊本地震(いずれもマグニチュード7.3)の350倍、以上、2018年の北海道胆振東部地震など(マグニチュード6.7)の3000倍近いエネルギーというと、その巨大さがわかります。
地震の揺れは、宮城県栗原市で震度震度7に達し、震度6弱以上の地域は8県、震度5弱以上の地域は17都県に及び、東日本の広い範囲で大きな揺れがありました。また広範囲に津波が押し寄せ、高さ3m以上の津波は北海道から茨城県に及びました。


東日本大震災では何が起こったか?

津波~建物が倒れて津波でにげられない

東日本大震災では、最大40mにも及ぶ津波が発生し、亡くなった方の8割以上が津波によるものでした。大きな津波が想定されている地域では、かさ上げや戸建て住宅の2階への避難では対応が難しく、いち早く高台の山や頑丈な建物の上の階への避難が必要になります。津波からの避難の際、建物の倒壊によって、避難路の道路が塞がれてしまうケースもみられました。建物の耐震性がないと、住宅の倒壊による被害だけでなく、避難のさまたげとなってしまうケースもあります。耐震性の調査や耐震改修を行うことは、我が家と地域の防災につながります。

関東でも被害をもたらした地盤の液状化


震源から離れた関東地方では、地震の揺れじたいによる家屋の大きな被害は少なかったですが、地盤の液状化によって茨城県、千葉県、東京都、埼玉県などで家屋やマンション等のインフラなどに大きな被害がみられました。液状化は、ゆるい砂地の地盤で地下に水分が多いとき、地震の揺れで地盤が液状になり砂粒が支えあっている状態が崩れる現象で、地盤の沈下や、建物が沈み込む被害がみられます。
基礎の下に杭がない直接基礎の建物(戸建て住宅・店舗など)では、液状化により地盤が沈下することで大きく住宅が傾いて地盤に埋まってしまう被害がみられました。1m以上傾いて地盤に沈む(不同沈下)することで、そのまま住み続けることはできず、傾きを修正する工事にも数百万円以上という費用がかかってしまいます。
杭のある杭基礎建物(マンション等)では、建物自体が傾くことは少ないですが、建物はそのままで周りの地盤が沈下することで大きな段差ができました。上水道、下水道、都市ガスなどのインフラが被害を受け生活の再建に長い時間を要しました。

宅地の滑りや崩れによる被害

宮城県や福島県では、内陸の高台にある造成地や分譲地で、宅地の地盤が滑る、または崩れる(滑動崩落)により、街区ごと地盤が流れるような現象がみられました。さらに、山と谷があった場所を平らに、またひな壇型の造成地にした際に、谷だった場所を埋めた「盛り土」の地盤は地震の揺れが大きくなりやすく、注意が必要です。
関東地方でも「盛り土造成地」は多摩地域や川崎市・横浜市西部に多くみられます、あと一歩地震の揺れが大きければ、このような宅地の滑りや崩れ、盛り土地の被害が発生していたことも指摘されています。
個別の宅地で対策が難しいケースもあり、家を建てる時の地盤調査では見抜けないことも多く、造成の履歴を調べる、大規模盛り土マップで確認する、専門家に相談するなどが望ましいです。

被害はどのような場所で起こったのか

海や沼を埋め立てた土地では

液状化現象は、もともと海や沼を埋め立てた場所で多く発生します。埋立地はゆるい地盤からなり、地震の揺れが大きくなりやすいです。さらに、ゆるい砂地の地盤からなり、地下に地下水も多いことから液状化が起きやすい土地であるといえます。このような場所に住宅を建て、液状化に対する対策を行わなかった場合、大きな地震によって液状化が発生すると、広範囲に液状化被害が生ずることがあります。
海や川の近くの場合、もともと海や沼地であった場所を埋め立てて造った土地や、また長い間水田であった土地は、地震の揺れが大きくなることや、地盤の液状化に注意が要る土地であるといえます。

高台の造成地でみられた宅地被害

海や川から離れた高台の造成地、分譲地で、がけも近くにないから安心!という声を聞きます。今は平たんな住宅街でも、山を削り、谷を埋めて造成された土地の場合、東日本大震災で震度6クラスの揺れがあった仙台市内の造成地では、「盛り土」の地盤に建つ住宅や、「盛り土」と「切り土」の境界で大きな被害が多くみられました。
もともと山であった「切り土」の地盤に建つ住宅に比べて、「盛り土」や、「切り土」と「盛り土」の境目では、全壊した確率が25~26倍にも達した事例もあります。このケースでは、地震の揺れにより住宅が倒壊したものではなく、地盤の沈下や亀裂によるものでした。

地震の被害を受けやすい場所とは

地震によって住宅が被害を受けやすい場所は、1)地震の揺れが大きくなりやすい地盤、2)地震で地盤の崩れや滑りが起きやすい地域、3)地盤の液状化が起きやすい場所が目立っています。
これらに当たる場所として、代表例が海や川、沼を埋め立てた場所と、谷あいを埋めて作られた造成地(盛土造成地)です。ただし、これら埋め立て地や盛土造成地は全て危険が大きいわけではなく、適切な対策工事などが行われていれば被害が軽減される可能性もあります。川沿いの低地なども、地震の揺れが大きくなることや、地盤の液状化に注意のいる場所です。
急傾斜地沿いであれば、固い地盤でも土砂崩れや地滑りが起こる可能性もあります。土砂災害警戒区域などに相当する場所などが相当します。

 

明日へつづく



地盤災害ドクター
横山 芳春博士(理学)

地形と地質、地盤災害の専門家、災害が起きた際には即現地入りし被害を調査。
広島土砂災害、熊本地震、胆振東部地震、山形県沖地震等では当日又は翌朝に現地入り。
現地またはスタジオから報道解説対応も(NHKスペシャル、ワールドビジネスサテライト等に出演)する地盤災害のプロフェッショナル。