完全理解!さくら事務所が解説する【フラット35】中古マンションの技術基準

  • Update: 2020-08-11
完全理解!さくら事務所が解説する【フラット35】中古マンションの技術基準

いつまでも安心固定金利のフラット35。利息が変動しないため、資金計画が立てやすいのが大きな魅力です。さくら事務所でも、ご希望物件の「中古住宅フラット35の適合証明書の審査・発行」を行っております。今回は、数多くの審査を担当してきたさくら事務所のホームインスペクターが、フラット35の審査項目や技術基準についてわかりやすく解説いたします。

適合証明審査とは

住宅金融支援機構が行っている「フラット35」を利用するために、融資の対象となる物件が住宅金融支援機構が定める基準を満たしている建物かどうかを調べることを「適合証明審査」と言います。
適合証明審査は、住宅金融支援機構が指定する講習を受け「適合証明技術者」として登録された建築士が、現地建物および必要書類について、住宅金融支援機構が定める各種基準に照らし合わせて審査を行います。
ここでは、中古マンション適合証明審査の多数の審査項目の中から、代表的な審査項目をいくつかご紹介します。
※実際の審査では、本項でご紹介する項目以外も多数の審査が行われます

適合証明審査の前に、まずは「らくらくフラット35」を検索

新築マンション建設時に、断熱性能などの性能が住宅金融支援機構の技術基準を満たすマンションは、住宅金融支援機構の「らくらくフラット35登録マンション」に登録されており、登録マンションは物件の審査が省略されるようになっています。
2000年に入ってから建設されたマンションが多くを占めますが、2000年以前のマンションの一部にも、管理組合が独自でらくらくフラット35に登録する審査を受け、適合したことで登録されたマンションもあります。
登録されているマンションは全国で約1700棟で(2020年7月末時点)、供給されている分譲マンションのごく一部の物件しか登録されていませんが、住宅金融支援機構のホームページで、物件名や所在地から登録の有無を調べられますので、お目当てのマンション名で一度調べてみることをお勧めします。

耐震評価

登記事項証明書などにより「建築確認日」(設計図等が役所に受理された日)が、建築基準法が大きく変更となった昭和56年6月1日以降のマンションは、耐震評価は「適合」と判定されます。あくまでも、制度上、細かい建物の形状審査などが不要というだけで、その建物の実際の耐震性を確認しているわけではないことにご留意ください。
建築確認日が昭和56年5月31日以前、一般に建築基準法の「旧耐震基準」と呼ばれる制度下で建てられたマンションの場合、竣工図書(設計図書)を住宅金融支援機構が独自に定めた規定に照らし合わせて審査していきます。
旧耐震基準の建物について、本当の「耐震診断」を行う場合、構造計算や建物の劣化診断等で数百万円単位のお金がかかる事が一般的です。また、管理組合の承認なども必要で時間(月単位)とお金がかかることから、適合証明審査においては、図面と診断基準を照らし合わせ、簡略的な耐震評価を行っています。税制優遇などで必要な「耐震適合証明書」とは異なるものであることを覚えておきましょう。
なお、竣工図書(設計図書)は貸出していない管理組合が多く、旧耐震基準のマンションで適合証明審査を行う場合は、管理事務室等で図面閲覧することになります。調査・診断日が決まったら、仲介会社などに、図面の閲覧手配をお願いしましょう。

管理組合に関する資料


下記の2点が審査対象となります。

  • 管理規約はあるか(物件名が記載されている必要あり)
  • 長期修繕計画が20年以上の計画であり、調査日はその計画期間内か
    (すでに期間が終わった過去の長期修繕計画しかないのは不可)

上記2つだけが対象となるため、適合証明審査では実際の管理組合運営や管理の質を審査しているとは言い難い内容です。そのため、適合証明審査が適合であっても、管理組合運営に関しては別に詳しい調査を行っておくとより安心です。
 マンション管理インスペクション

劣化状況


基礎、外壁、柱及び梁、バルコニーに、「鉄筋の露出」が無いかを確認します。適合証明審査によるフラット35の融資は1住戸を単位としますが、劣化診断は建物全体を対象とします。
ただし、1住戸の検査のために建物全体をくまなく見て回るのは、かなり時間が過剰に取られてしまい現実的ではありません。フラット35適合証明審査においては、道路面から見上げて見える範囲や、エントランスから住戸への動線ルート、対象住戸のバルコニーについて建物のごく一部を抜粋し、鉄筋の露出をチェックします。
このほかにも、敷地の接道や住戸の間取り、広さなどの審査項目があります。ただし、フラット35Sの審査を除き、住戸の「内部」に関する現地調査項目はありません。そのため、フラット35Sの利用が必須ではない場合、前所有者が居住中であっても審査を進めることができます。
住戸内の立ち入りが不要であるため、実際に売買する住戸内で設備配管からの水漏れが起きていないかや、修繕が必要な傷みがどのくらいあるのかは、フラット35適合証明審査では一切わかりません。購入者が最も多くの時間を過ごす住戸内の故障や傷みは、ホームインスペクション(住宅診断)できちんと調べておいたほうが納得して購入できます。

番外:フラット35S

住戸の断熱性能やバリアフリー対策、浴室の手すり有無など、いくつかの中から適合する項目を選ぶことができますが、最も審査対象になることが多いのは「浴室の手すり有無」です。
浴槽脇や浴室内壁などに、ひっぱってもぐらつかないしっかり固定された手すりが取り付けられているかどうかを確認します。ここで注意は下記2点。

  1. フラット35の現地調査当日に取り付けられていること
  2. 容易に取れる固定方法ではないこと

よく、「現地調査日には浴室の手すりがついていないが、引越し前には取り付ける予定」「現地調査日に向け、吸盤タイプの手すりを浴室につける」というご相談をいただくことがありますが、これらは全てNG。
フラット35Sを利用したいと考えている場合は、現地調査までの間に実際に使うことを想定したしっかりとした手すりを浴室内部に設置しておくことをお勧めします。後日取り付け、写真で設置状況を判定するということが認められていませんので、必ず現地側の状況を適合するようにご準備ください。


このように、適合証明審査は、融資を行う物件として大きくは基準から離れていないかを確認するものですが、そのチェック項目は非常にざっくり大きなものですから、その物件の個性や状況を判断するには足りません。
どういった管理組合運営をしているマンションなのか、建物の傷み度合や修繕すべきものはなんなのかの情報は別でインスペクションを行うなどして収集するようにしましょう。