新型コロナウイルス感染防止のため、多くの企業がテレワークを導入し、家で仕事をする時間が増えた人も珍しくなくなりました。
通勤が便利ゆえに不動産価格が高い地域で手狭なマンションに住む方が、「テレワークができるなら郊外で広い家に住めるじゃないか!」と、リーズナブルに購入できる郊外の中古一戸建てを買い求める、というケースもあるようです。
ところが選ぶ物件によっては、広さと快適を得られるはずが、目論見が外れてしまうこともあります。特に、見た目にはわからず生活に影響を及ぼしやすい違いが「断熱性」です。
ここでは、中古住宅購入において重要な建物の”断熱性”について、そのリスクと注意点、対策についてホームインスペクター(住宅診断士)が解説します。
そもそも建物の断熱性能とは?
断熱とは熱の移動を断つということで、断熱性が高いほど熱の移動が少なくなります。
熱は温度の高いほうから低いほうに移動し、夏には温かい空気は屋外から屋内に、冬ではその逆となります。
熱の移動が頻繁に行われる環境では、つまり断熱性能の低い住宅では、エアコンや暖房機器をつけてもなかなか快適な温熱環境が作れません。「夏暑く、冬寒い家」になってしまいます。
せっかく広い一戸建てで快適に仕事できる環境を・・・と思っても意外なところに落とし穴があります。
マンションから戸建てへ・・・断熱性能次第では大きな支出増に
日本生活協同組合連合会の「電気・ガス料金調査(2019年9月)」によれば、一戸建ての電気の使用量・料金は、集合住宅の1.3倍~1.4倍、月2,000円ほど余分にかかる結果となっています。
断熱スペックが不明の中古一戸建てを選んだ場合、この金額差はさらに大きくなる可能性も。
物件がリーズナブルでも、建物の断熱スペック次第で想定外のランニングコストがかかってしまうことがあります。
断熱性の低さによりカビ発生で健康被害も
カビといえば夏と思われがちですが、断熱性が低い家は冬もカビによる健康被害のリスクにさらされるのです。
エアコンで部屋が乾燥するからと多量に加湿したり、石油ストーブやガスファンヒーターなど水分が発生する暖房器具を使ったりすると、外壁付近に湿気が集まります。
断熱材がない又は断熱性が低い外壁は夜間に急激に温度低下するため、壁表面に結露が発生、そこにカビが繁殖することがあるのです。
断熱性が低いと冬の仕事効率は大幅に低下!?!?
断熱材を使っていない家では冬の寒い日にいくら暖房しても、屋根・天井・外壁・床・窓などから80%以上の熱が逃げ、その58%は窓など開口部から出ていきます。
一戸建てはマンションより開口部が多く、窓の断熱対策がなければ冷え込むため、石油ストーブやガスファンヒーターを利用する方も多いようですが、これらの暖房器具は二酸化炭素を生成し、眠気を引き起こすことがあるのです。
寒い部屋でのテレワーク中、更に眠気が襲ってくるのも困りますね。
特に要対策は1999年以前の中古一戸建て
今の新築でも先進国の中では断熱基準が低いと言われる日本ですが、1999年以前に建てられた一戸建ては、その低いとされる「次世代省エネ基準」よりはるかに低い断熱性であることが多く、時代によっては無断熱の家も。
光熱費やカビ被害どころではなく、ヒートショックによる死亡リスクも注意しなくてはいけません。
断熱改修(リフォーム)するならどこから?優先順位は?
建物の断熱性を向上させるには、やはりリフォーム工事が必要になります。
リフォーム工事を考えるなら、費用対効果から見てもおすすめなのが「窓」でしょう。
屋根や外壁に断熱を新たに施工するには、大掛かりな工事が必要になりますが、手っ取り早く改修が可能です。
インナーサッシ(内窓)の設置は、窓の大きさにもよりますが1か所10万円程度で可能になります。同時にブラインドやカーテンを見直すことで更に熱の出入りは抑えることができますので、あわせて上手に活用してみてもいいでしょう。
次に見直したいのは、天井や床。
床は薄いながらも断熱が施工されていても、天井の屋根裏にはまったく断熱材が入っていないというケースもあります。2階の温熱環境に大きく影響しますので、2階をもっと有意義に使いたいという方はぜひ検討してみてもいいでしょう。
また、一戸建てでは足元が冷える、という声もよく聞かれます。床暖房を入れても、断熱材が入っていないと効率がわるく底冷えがなかなか改善されない、というケースもあります。
また、換気扇の見直しもお勧めです。全熱交換型の機器に交換することで、熱を逃がしにくくしながら空気の入れ替えを可能にします。
築年数のたった中古物件購入をお考えの方や、今のお住まいで寒さが気になる、という方はぜひ参考にしてみてください。