専門家が解説「令和6年能登半島地震」の特徴と盲点

  • Update: 2024-01-03
専門家が解説「令和6年能登半島地震」の特徴と盲点

 2024年(令和6年)1月1日の16時10分ごろ石川県能登地方を震源とするマグニチュード7.6の地震があり、気象庁はこの地震を「令和6年能登半島地震」と命名しました。2日夜の時点で倒壊家屋や灯篭の下敷きなどにより、57名の方がお亡くなりになっております。亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、被災された皆様には、一日も早く平穏な日常生活へと戻れますよう、心からお祈り申し上げます。

 令和6年能登半島地震では、石川県羽咋郡志賀町で震度7を記録しました。2018年9月の北海道胆振東部地震以降、約5年半ぶりの震度7が観測された地震でした。ほか、石川県七尾市、輪島市、珠洲市、穴水町で震度6強を記録気象庁|地震情報)しています。また、東北地方太平洋沖地震(災害名:東日本大震災)以来、13年ぶりの「大津波警報」が発表された地震でした。

 大きな地震があるとニュースやSNSで様々な情報が飛び交っている昨今ですが、旧TwitterがXとなったあと、日本では初めての震度7の地震ともなりました。SNSは災害時には欠かせない情報収集、公開ツールになっていますが、利用の上では課題もみられます。

 ここでは、令和6年能登半島地震の特徴に加えて、大地震後にニュースや災害情報を見たり、SNSを活用するときに注意したい点も含めて、各地の地震・災害の現地調査を行っている「だいち災害リスク研究所」所長地盤災害ドクターの横山芳春が、「令和6年能登半島地震」の特徴や、災害時特有のSNSリテラシーの必要性について解説します。

令和6年能登半島地震の震度分布(気象庁|地震情報 2024年1月1日21時閲覧)

新築一戸建て引き渡し前チェック(内覧会立会い・同行)

「令和6年能登半島地震」の特徴は?

 能登半島では、2018年から地震が増加傾向であり、地殻の浅い場所で地震で多く発生していました。さらに2020年12月ごろから地震活動が活発となって以降、概ね3年が経過しています。

 このような地震は、地下にある「流体」が上昇することによって群発地震が起きた可能性(東工大ニュース)が指摘されているほか、直近では「高温の流体上昇が要因か」(Yahoo!ニュース)といった見解もあります。この地域は、東側から太平洋プレートが沈みこんでいく先端付近にあり、何らかの下から押し上げる力が地下浅い部分での地震を引き起こしているものとみられます。

 1月1日9時以降の震央(震源の地表の場所)分布をみると、能登半島付近の北東‐南西方向に、約300㎞×40㎞ほどの広い範囲に延びており、非常に広い範囲に地震の震源域が及んでいることがわかります(気象庁|震央分布)。

能登半島付近の震源域は非常に広い範囲に及ぶ(気象庁|震央分布

 

 能登半島付近における一連の地震活動は、特に2023年5月ごろから益々活発になり、5月5日には石川県珠洲市で震度6強を記録する地震が発生しました。この地震では著者であるだいち災害リスク研究所所長の横山が現地調査を実施し、結果を「能登半島地震の現地調査報告 被害の特徴と傾向 」として、現地の被害の特徴を以下のようにまとめています。

2023年5月5日に発生した能登半島を震源とする地震被害の特徴

・耐震性が低いとみられる家屋の倒壊・損壊

・ブロック塀の損壊・倒壊

・家屋の倒壊に巻き込まれた自家用車

・屋根瓦・窓ガラスなどの落下

・鳥居、石塔、狛犬などの倒壊・転倒

・壁の落下、塀の転倒

・港湾部では地盤の液状化によるものとみられる地盤沈下

・斜面が背後にある住宅では、崖の崩落

※このほか、同じ地域でも軟弱な地盤と考えられる地点で被害が大きかったことなどがわかっています(能登地方の地震による建物被害集中の理由は?)。

 今回の「令和6年能登半島地震」でも、火災の発生や、より多くの建物の倒壊など甚大な被害の発生が想定されますが、能登半島北部という地域で発生した大きな地震として、共通した被害も多くみられました。

2023年5月5日の地震被害「能登半島地震の現地調査報告 被害の特徴と傾向 」より

 

 なお、観測された地震の強震動データは防災科学技術研究所が公開しており、最も揺れが大きかった地点で K-NET富来(ISK006)の最大加速度2828.19gal(3成分合計値) を記録しました。同資料によると、輪島や穴水の観測点などでは周期0.5~2秒前後の周期の揺れが大きいことがうかがえ、古い木造住宅に大きな被害をもたらす「キラーパルス」が襲っていた可能性も考えられます。

 地震被害の全容はまだ分かっていませんが、木造住宅の火災が広がっている様子や、ビルが倒壊している様子が報道されています。特に輪島市中心部では、ビルの倒壊や住宅地の火災などが相次いで報道されています。地盤から見てみると、輪島市中心部は川や海が運んで来た土砂が堆積し、比較的軟弱な地盤の海岸平野・三角州からなっています。

 地震時の、地盤の揺れやすさの目安を示すマップ(J-SHIS Mapより表層地盤・地盤増幅率)を見ると、輪島市中心部は地震時にやや揺れやすい地盤(表層地盤増幅率1.8前後)、少し内陸側にある市役所付近は揺れやすい地盤(表層地盤増幅率2.0前後)となっています。揺れやすさは、揺れやすい側から濃い赤色>赤色>オレンジ>黄色>薄黄色>青となっています。なお、海岸平野・三角州などは、一般的には液状化も起きやすい傾向がある地形であるといえます。

J-SHIS Mapより、輪島市中心部の「地盤増幅率」を表示

 

 このほか、内灘町では地盤の変状などが確認されています。砂丘背後の三角州・海岸平野にあり、J-SHIS Mapによる表層地盤の地盤増幅率は1.85~2.0ほどと、揺れやすい地盤と考えられる地形です。砂丘背後の潟湖付近などでは、軟弱な地盤や液状化現象も懸念されます。同様に、新潟市などでも砂丘背後の後背低地や、以前川が流れていた旧河道付近など、液状化が起きやすいと考えられる地形の付近で、液状化現象とみられる被害が多数報告されています。

 金沢市内では、山地のへりの造成宅地で住宅が崩落する被害も報告されているようです。この場所は地図上での確認では20m程度の高さの差がある「へり」の立地で、重ねるハザードマップの確認では周囲に土砂災害(特別)警戒区域もあるような地域でした。各地でがけ崩れなども発生していますが、「がけはいつか崩れるもの」である、まして巨大な地震時には一層崩れやすいと認識も必要です。

意外と知られていない津波報道の盲点

 「令和6年能登半島地震」では、石川県能登地方に大津波警報が発表されました。その後、石川県能登地方の大津波警報は津波警報に「切り替え」がされました。これは、津波に対し安全になったということでしょうか?答えは、安全ではありません。NGです!決して安全ということではなく、「大津波警報はなくなりましたが、津波警報としては継続」されていますので、津波に対して危険な場所にお住まいの方は引き続き避難が必要となります。

 なお、以前は「大津波警報は解除」のように表現されていましたが、「解除」と言う言葉だけで安全だと勘違いされやすいとして、津波警報への「切り替え」として言い換えが進んでいます。しかし、報道機関の一部ニュースやSNSでは「解除」NHK生活・防災_X)の表現が残っている場合などもあります。大津波警報が津波警報に切り替えになったのか、津波警報も含めて解除となったのか良く確認しましょう。

 次に、津波の到達予想時刻として「すでに到達か」と表現されていることがあります。その時、例えば津波が低かった場合、もう津波が来たとして大したことない、と考えてよいのでしょうか?これもNGです!津波の第1波が比較的小さくても、津波の第2波、第3波などが、第1波より大きな津波となることは珍しくありません。

 下の図は、気象庁による令和6年能登半島地震の報道発表資料です。グラフは津波観測状況(波形)を表し、時間(横軸)と津波の高さ(縦軸)を示しますが、一番上の線は坂田の観測データですが、第1波(青丸)より、その後に続く第2波以降のほうが波が高く、グラフの期間における最大の波は赤丸で示した波でした。実際、酒田の第1波観測は17:12とされていますが、最大波観測は19:08とされており、第1波到達から2時間近く経過した後であることがわかります。

 「第1波到達」の津波の高さが低くても甘く見ず、より大きな津波が押し寄せる可能性を考えて速やかな避難を行いましょう。

気象庁資料に加筆(気象庁「「令和6年能登半島地震」について(第3報)」

 

 もうひとつ、上の津波波形からわかることは、「津波が来る前に必ず『引き波』が起きるわけではない」ということです。X(旧Twitter)の気象庁防災情報が投稿した津波クイズで、「皆さんは、「津波の前には必ず潮が引く」という話を聞いたことがありますか?さて、この話は本当でしょうか?」とのアンケート形式のクイズを展開していました。

 このクイズには本当と答えた方が54.8%でしたが、正解は上記の通り、「間違い」です。このような、「津波の前に必ず潮が引く」という迷信を信じてしまうと、「潮が引かないと津波は来ない」のように考えてしまうこともあるので、どうかご注意ください。

気象庁防災情報「【 #津波クイズ 】 より

 それでは、自宅やよく知っている場所だけでなく、出先などで津波警報、大津波警報が出たらどうするべきでしょうか。近隣の津波避難に関する看板などを見て、すぐ近くに津波避難場所となっている高台などがあれば避難することが望ましいでしょう。しかし、場所によっては必ずしも高台があるわけではありません。そのような場合は、近隣にある津波避難ビル(施設)などに避難をすることができます。沿岸部や海に遊びに行く際は、事前に現地付近にて近隣の津波避難ビル(施設)、津波避難場所の場所などを確認しておくことをお勧めします。

災害時の通信ツールは?

 災害時には、通信が輻輳(ふくそう)することや、停電の影響などでご家族、知人との連絡が難しくなることがあります。筆者は、大規模停電(ブラックアウト)があった2018年9月の北海道胆振東部地震で、被害の大きかった現地で使えたツールは以下の通りでした(以下は、同地震の際に筆者が各ツールを使った経験則です)。

2018年北海道胆振東部地震の現地で使えた通信ツール
・ライン  ◎
・メッセンジャー  ◎
・メッセージ(SMS)  ○
・Gmail  △
・ブラウザメール △
・電話 ×

 電話はまず通じず、ブラウザメール、Gmail、また一般のウェブサイトは読み込めないこともあり、関係ないメール等を受けていると(特に添付ファイル)必要な情報が見られないこともありました。最も良かったのが、軽い文字情報(テキスト)を送受信するツールでした。

 なお、ご家族や知人との連絡手段には、通常の音声電話は通じないこともあるので、複数の連絡手段を持っておくことをお勧めします。便利なものに、災害時に利用できる「災害用伝言ダイヤル」があります。使い方は下の図の通りですが毎月1日、15日のほか正月三が日、防災週間(8月30日9:00~9月5日17:00)、防災とボランティア週間(1月15日9:00~1月21日17:00)などには体験利用ができます。是非、平時のうちに試しておくと良いでしょう。

 災害用伝言ダイヤル(171)の使い方( 総務省の報道資料より

災害時特有のSNSリテラシーを

 大きな災害があると、何度もデマ発信・拡散が繰り返されています。1923年の大正関東地震(関東大震災)でも、様々なデマが拡散されたり、有名な「避難民の背後に黒煙が迫る写真」が、煙が追記された「フェイク画像」であったなど、大地震・大災害には常にデマがつきものであるともいえます。

 SNS社会の近年にあっても、2016年4月の熊本地震で動物園からライオンが逃げ出したとTwitterに投稿(投稿した男は偽計業務妨害容疑で逮捕)された事例や、2022年の台風15号で静岡県で水害被害が多発している折、生成AIによる洪水被害のフェイク画像がTwitterに投稿された事例もありました。昨年のトルコの地震でも、東日本大震災の津波画像が転用されたデマ投稿がTwitter上に流布されるなど、後を絶ちません。

 そのような中、今回の「令和6年能登半島地震」は、旧Twitterから「X」となって以降、初の震度7の地震であるといえます。「X」体制にあっては、収益プログラムの開始や、アルゴリズムの変更(一般には動画・画像などメディア添付の投稿、トレンドに沿った投稿、リプライの重視、サブスクアカウントの優先などと言われる)や、バズった投稿は保持時間が長くなる変化があると言われています。ユーザーが見たい情報、最新の情報より、「X」側が見せたい情報が上位に来やすくなっている状況と考えることもできます。

 以上のアルゴリズムの変更とされる点は、デマ、フェイク投稿が拡散されやすくなっている可能性があります。メディアを添付し、煽情的で突っ込みどころも多いデマ投稿は、多くのユーザーのリプライ(批判的なものを含め)を受け、結果的にバズった投稿となることで長く保持され、多くの人の目に触れてより一層拡散していくという流れが繰り返されることが想定されます。正しい発信源を示すため、出典となるURLを示す情報が減点されることも拍車をかけていることが想定されます。

 加えて特筆すべきは、収益プログラムの開始により、多数のアクセスを求めているユーザーがいることです。もともと、バズることで知名度を高める「炎上商法」的な手口もありましたが、「X」収益化以降はこのような動きが強くなっていることも懸念されます。注意喚起は、書いている人がいれば重ねて行う事は不要です。安易な拡散は、相手のアクセス数を増やして、投稿者を応援してしまうことにもなります。

 2018年・北海道胆振東部地震時のTwitter(現:「X」)におけるデマ情報の拡散状況
(画像を一部加工しています)

 

 それでは、以上のようなアルゴリズムの現状を踏まえて、デマの拡散を防ぐにはどうすればよいでしょうか?災害時に、できれば平時からデマを拡散しないためのチェックポイントは以下の通りです。

・不確かな情報を拡散しない心がけ
 災害時には様々な情報が展開されます。それらの中には、残念ながら確実にデマと考えられる投稿が混じってくることが現状です。投稿者の属性やコメントなどから少しでも怪しい、おかしいと判断した情報については、拡散をしない(リプライ等も含む)ことが望ましいです。拡散しない「心のブレーキ」が一番効果的です。

投稿が最新のものであるか確認する 
現状のところ、「X」の「おすすめ」は時系列順に出てこない状況にあること、バズった投稿は長く表示されることから、上のほうに出てくる投稿が最新のものとは限りません。古い情報でないか日時を確認しましょう。古い情報は訂正されていることもあります。可能な限り、最新の同じ話題の投稿がないかチェックしましょう。

・発信者の過去の投稿を調べて、不審なものがないか確認する 
例えば、トレンドのワードを羅列しただけのあきらかにインプレッションだけを狙っているような投稿や、宣伝広告目的、愉快犯とみられる場合など、一貫性がない発信者の情報は相手にしないことが得策です。

・投稿のコメント欄を確認する
 怪しい投稿には、コメントや引用RPとして、デマであることや誤っていることを指摘する投稿がついていることがあります。そういった投稿が多くついていないかもポイントです。科学的に、また事実に基づき否定されているような場合にはデマ等の可能性も高いと判断できます。

・過去の災害の生成AIの画像・動画を流用していないか
 注意喚起目的などではなく、あたかも現在の状況のように、過去の災害や生成AIの画像・動画を流布してインプレッション稼ぎをするケースがあります。正確に出典元などを記載していないこともあり、誤った理解を引き起こすこともあるので、コメントなどを良くチェックしましょう。

・つい拡散したくなりそうな投稿に要注意 
 明らかにデマとわかる投稿や、逆に救援依頼を装ったものなど、ついついひとこと言いたくなったり、注意喚起したくなる画像も、相手にする必要はないと考えます。どんなコメントでも、結局はインプレッションを伸ばしてしまい、その投稿が広まることを手助けしてしまいます。相手にしないことがいいでしょう。特に、怒りの感情やたたいてやろうという気持ちになる投稿は、爆発的にバズりやすい傾向があります。見かけたら、ミュートして閲覧しないことをお勧めします。

・つい賞賛、同意したくなる投稿にも要注意
 今回の地震でも、灯篭が揺れていて「危なかった」と動画を投稿した動画を引用し、灯篭が倒れなかった事例と、日本の技術は素晴らしい、というようなコメントをつけて回覧されて、多くの賞賛が得られていました。しかし、実際には灯篭の転倒は各地で発生し、下敷きとなって亡くなった方や複数の負傷者が報告されています。本当にいま伝えるべきは、灯篭が倒れなかった事例の賞賛ではなく、灯篭は倒れることが多いので危ない、離れるべきという注意喚起です。灯篭は安全だ、倒れないという勘違いも懸念されます。このように、意図していなくとも、良いと思った投稿を妄信してしまうと、結果的にはミスリードを招いてしまうことにつながります。
 公的機関や専門家の長い文章より、一見面白そうな書きぶりの投稿が拡散されやすい傾向もあるので、「面白そうな投稿」はミスリードがないかなど、コメントなどを良く確認することをお勧めします。

・信頼できる公的機関・専門家の情報を回覧する
 災害時などは、良かれと思って誤った認識の投稿が流布されてしまうこともあります。信頼できる公的機関や専門家の投稿かどうか確認しましょう。「〇〇から聞いた情報」というケースは、出典となる情報が明示されない場合は、デマであることもあります。

 以上のような点をチェックしましょう。反応したら負け、結局はデマの拡散を手助けしてしまいます。インプレッションを増やさないようにして、まして拡散など行わず、あまりこのことは指摘されていませんが、投稿をバズらせずに枯らすことが最も大事であると考えます。

 

 なお、災害時の「助けて」投稿はよくよく吟味することと、拡散しすぎないこともポイントです。

 まず、実際に存在しない住所や、必要としていない救援を求める愉快犯や、個人的に援助を求める目的にしている投稿であることもあります。能登半島地震でも実在しない住所などからの救援要請投稿が知られています。コメントや引用RPなどを見て、デマ等と看破されて指摘されていないかをチェックすることが必要です。

 もし本当の救援要請であっても、数千、数万件ものRPなどで拡散されて通報が繰り返されても、現地では同じ情報が重複するだけです。1通の通報があれば十分です。現地では既に手が回っていない中、現地の通信・人的・救助リソースの妨げになることも想定されます。拡散の前に、既に通報等がなされているか確認し、通報されていれば、それ以上の拡散には効果はないでしょう。拡散は、必要な時に、少しでも多くの人に知ってもらいたいときに行う事と考えます。知ってほしくないこと、良くない投稿は、とにかく拡散をしない心がけが大切です。

 このような「X」のアルゴリズムも理解し、拡散希望投稿に対する考え方や対策を災害時だけでなく普段から心がけておくことが望ましいことでもあります。まして、電話で怒りを示す、私怨に乗っかって誹謗中傷や迷惑行為に及ぶと、拡散した方の法的責任も問われかねません

能登半島地域の今後の注意点

 1)大きな揺れを受けて住宅の耐震性が劣化していることもあります。今後の地震で倒壊の危険もあるので、安易に自宅に戻らないこと。特に1981年5月以前の建築確認申請が行われた「旧耐震基準」の住宅は要注意です。なお、自宅に戻られる場合は、木造住宅であれば2階建ての1階部分より、2階または下屋(平屋部分)が比較的安全と言われています(構造王・佐藤実氏「X]より)。

 2)崖の近くにお住まいの方、崖下を通る方は土砂災害にご注意ください。特に、今後石川県周辺では雨も想定されています。少しの雨でもがけ崩れなどにつながることもあります。崖の下やきわにお住いの方は、できれば雨が降る前に、明るいうちに安全な場所に避難をお願いします。崖の下をなるべく歩かず、やむを得ず歩く際は上方に注意することを怠らないようにしてください。

 3)車の中や避難所で同じ姿勢でいると、エコノミークラス症候群になってしまうことも懸念されます。2度の震度7の地震があった熊本地震では、地震後に「災害関連死」で亡くなる人が多く発生しました。水分をとって、定期的に手足を動かして運動する、同じ姿勢を続けない、ベルトをきつく締めないなどで、エコノミークラス症候群の回避をしてください。

 4)引き続き、悪質なデマなどには要注意を。時間差で、より大きな地震が来るなどのデマが出回ることはよくあります。引き続き地震に注意は必要ですが、短期間の地震予測はできません。出所の分からない情報、不確かな情報についてはよく吟味し、怪しい情報については拡散しない心がけが必要です。

 5)大規模災害の後には悪質な訪問業者の来訪も頻発する傾向があります。見知らぬ業者は家に入れない、屋根に上げない、その場ですぐ契約をしないことです。できれば信頼できる身内や知人とも相談して、利用する際には納得してから、金額の記録を複数残すなどの注意が望ましいと考えます。

 

さらに詳細を知りたい方はこちらで続報を公開しています。(1月8日追記)

>>>令和6年能登半島地震・金沢市周辺の市街地の緊急調査からの提言

 

■記事執筆者(災害リスクカルテ監修)

横山 芳春 博士(理学)
だいち災害リスク研究所所長・地盤災害ドクター

地形と地質、地盤災害の専門家。災害が起きた際には速やかに現地入りして被害を調査。広島土砂災害、熊本地震、北海道胆振東部地震、山形県沖地震、逗子市土砂災害等では発生当日又は翌朝に現地入り。
現地またはスタジオから報道解説も対応(NHKスペシャル、ワールドビジネスサテライト等に出演)する地盤災害のプロフェッショナル。