「築50年マンションはいつまで住めるの?」
「築50年を超えたマンションって将来的に売れるの?」
「入居後にメンテナンスが必要にならないか不安…」
築50年前後のマンションに住んでいる人や、これからマンションを購入しようとしている人の中には、上記のような悩みを抱えている人もいるのではないでしょうか。
築50年と聞くとすごく古いイメージをもつかと思いますが、実はマンションの寿命は適切な管理を行なっていれば100年以上住める可能性があるのです。ただし、必要なメンテナンスを行なえばという前提です。
そこで今回は以下の内容について解説していきます。
- 築50年のマンションはいつまで住めるのか
- 築50年以上のマンションは売れるのか
- 築50年のマンションを購入する際の注意点はなにか
ぜひ最後までお読みください。
築50年のマンションはいつまで住める?
築50年マンションを購入検討している人の多くは、「いつまで住めるのか」という疑問を抱いていることでしょう。結論としては適切な管理を行なっていれば100年以上住める可能性があります。
建物の価値を評価する指標である法定耐用年数では、マンションの一般的な工法である鉄筋コンクリート造は47年と定められています。耐用年数というと建物の寿命とイメージしてしまいますが、実際は必ずしも47年が寿命というわけではありません。
ここで国土交通省の資料をみてみましょう。
平成25年度にまとめられた、「国土交通省|期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新 による価値向上について」によると鉄筋コンクリート造の構造体の寿命は120年以上とされています。つまり、設備や外内装を適切に修繕、管理していればマンションは100年以上の寿命を有していることになります。
築50年以上のマンションは売れる可能性あり
築50年マンションを所有している、購入しようと考えている人は「住まなくなった時に、築50年以上のマンションは売れるのだろうか?」と感じることでしょう。
結論からいうと、今後は築50年マンションであっても売れる可能性があるといえます。
具体的な理由は以下のとおりです。
- 築古物件の方が好立地の場合が多い
- 築古マンションのストック数が増えていく
- 日本のマンションは長寿命化へシフトしている
それぞれの理由について解説していきます。
理由1.築古物件の方が好立地の場合が多い
築50年以上のマンションは高度経済成長期の建設ラッシュで建てられたものが多く、利便性の高い立地も多くみられます。
利便性の高い人気のエリアである場合は、築年数に関係なく、売れる可能性は考えられます。
その反面、ニュータウンなどの郊外型のマンションに関しては高齢化が著しく、また供給戸数も多く、売却に関してはかなり難しいと言えるでしょう。
理由2.築古マンションのストック数が増えていく
現在日本では毎年10〜11万棟のマンションが建てられています。この数字を建設ラッシュ全盛期の棟数と比較すると約半数です。
「国土交通省の統計「高経年マンションストックの増加」によると、築50年以上のマンションストック数は、2021年時点では21万戸ほどに対し、2041年には11倍以上の249万戸にまで急増することが予想されています。
このように、築50年以上のマンションストック数は、今後20年で急激に増加する傾向にあるといえます。
そのため、不動産市場としても築古物件に関するフィルターが薄れていき、一定数の需要が見込まれることが予測できるでしょう。
理由3.日本のマンションは長寿命化へシフトしている
現在のマンションに対する考え方は、高度経済成長期のスクラップアンドビルドの考え方とは異なり、適切に修繕を行ない、長寿命化を目指す考え方にシフトしています。
しかし、入居者の高齢化などが進み、管理組合が正常に機能していないなどが要因となり、老朽化の進んでいるマンションも少なくありません。
そのため我が国ではマンションの長寿命化を後押しする政策が打ち立てられています。マンションの長寿命化が確立されれば、優良な築古マンションが増える事になり、結果として資産価値のある築古マンションの流通の活性化につながるでしょう。
築50年のマンションの費用相場
築50年のマンションはどれくらいの価格で売り出されているのでしょうか。ここからは販売事例を交えながら築50年マンションの費用相場をご紹介します。
東京・大阪・名古屋の3都市における3LDKマンションについて販売事例を以下のとおりまとめました。
所在地 |
築年数 |
価格 |
東京都杉並区 |
44年 |
3,880万円 |
東京都八王子市 |
50年 |
1,880万円 |
名古屋市北区 |
50年 |
820万円 |
大阪府大阪市北区 |
51年 |
1,680万円 |
築50年マンションの費用相場 さくら事務所が独自にリサーチのうえ作成(2024年4月)
築50年のマンションの費用相場は1000万円以下から2000万円までの物件が多く見られました。ただし東京都においてはエリアによって高値で売り出されているようです。
築50年以上のマンションで想定されるメンテナンス内容
築50年のマンションで想定されるメンテナンス内容は以下のとおりです。
- 給排水管
- 外壁
- 屋根(屋上)防水
- 設備機器
ただしメンテナンスする箇所が、専有部分(所有者の居住スペース)か、共用部分(廊下・ホール・階段など)かでメンテナンス実施の権限が下記のように異なります。
- 専有部分:基本的には区分所有者の判断で決定できる
- 共用部分:区分所有者の4分の3以上の賛成が必要
そこで共用部分と専有部分、どちらに該当するのかもあわせて解説します。
給排水管
給排水管の種類にもよりますが、15〜40年程度が目安です。
大規模修繕でメンテナンスが行なわれていなければ、築50年マンションでも今後メンテナンスが行なわれる可能性があります。
ここで注意したいのが、大規模修繕で行なわれるメンテナンスは共用部分のみである点です。もちろん専有部分にも給排水管は通っていますが、専有部分の修繕は区分所有者の判断に委ねられます。
仮に耐用年数を過ぎた給排水管を使用し続けると、水漏れや詰まりを引き起こすリスクが高まります。これらの不具合が発生すると住環境に悪影響を与えるだけでなく、近隣住民にも迷惑がかかるため適切なメンテナンスが必要です。
外壁
外壁もメンテナンスが必要な部分です。雨風にさらされる部分のため、メンテナンスを怠るとマンションの老朽化につながります。
たとえば塗装がされているマンションの場合は塗装が劣化し、めくれてしまうとコンクリートが雨風や日光にさらされます。結果表面の劣化が進み構造体内部へ雨水が浸入し、内部の鉄筋が錆びてしまい構造体の耐久性が低下する恐れがあります。
またタイル仕上げの場合はタイルの剥離、落下により歩行者が怪我をするリスクも高まります。
外壁は共用部分に該当するため区分所有者の責任で修繕を行なうことはありませんが、これから購入検討する人は修繕履歴を確認し、適切にメンテナンスが行なわれているかを確認しましょう。
屋根(屋上)防水
マンションのメンテナンスのひとつに屋根や屋上の防水が挙げられます。防水工事も外壁同様、共用部分に該当します。
メンテナンスの時期も12~15年と外壁のメンテナンスに近いペースなので、合わせて行なわれるのが一般的です。
建物における防水はいうまでもなく、建物の寿命に直結する大切な要素です。防水部分が劣化し、万が一雨漏りを引き起こすと各住戸内に影響が出る恐れがあります。
場合によっては一時退去して改修を行なわなければならない事態にもつながりかねません。
外壁と同様にメンテナンス履歴は必ず事前にチェックしましょう。
設備機器
マンション内の各設備機器も築50年経過すると何度か交換が行なわれているはずです。
具体的に設備機器の耐用年数をまとめると、以下の通りになります。
設備機器 |
耐用年数の目安 |
|
共用部分 |
エレベーター |
26〜30年 |
インターホン |
15〜20年 |
|
防犯設備(防犯カメラなど) |
15〜20年 |
|
専有・共用部分 |
照明器具 |
10〜25年 |
給排水管 |
15〜40年(材質による) |
|
専有部分 |
キッチン |
15〜25年 |
洗面台 |
15〜25年 |
|
トイレ |
10〜20年 |
|
給湯器 |
15〜25年 |
専有・共有部分別 設備機器の耐用年数の目安
※実際の寿命は各メーカーや材質等により上記目安と異なる場合があります。
これらのメンテナンスを適切に行なわれていないと不具合の発生につながります。注意しましょう。
築50年以上のマンションを購入する際の注意点
築50年のマンションの購入を検討している人は、覚えておきたい注意点がいくつか存在します。具体的には以下の5点について注意しましょう。
- 住宅ローンの審査が通りづらい
- 住宅ローン控除が利用できない可能性がある
- 修繕積立金が高額なケースが多い
- 建替え計画が立てられている場合がある
- 耐震性の劣る物件がある
それぞれについて解説します。
住宅ローンの審査が通りづらい
築50年のマンションを購入する際の注意点に住宅ローンが組みにくい(審査が通りづらい)点が挙げられます。
住宅ローンにおける融資の原理は建物や土地を担保にしてお金を貸し出すというものです。つまりマンションにおいては建物に資産価値があるかどうかがポイントとなります。
住宅ローンでの資産価値の計算は、先ほど挙げた法定耐用年数が密接に関係してきます。鉄筋コンクリート造のマンションの法定耐用年数は47年です。この年数を過ぎると資産価値が限りなくゼロに近付くため、借入金額や期間などの条件が希望通りにいかず、資金調達に苦戦する恐れがあります。
築50年のマンションを購入する際はローン審査難易度が高い点に注意しましょう。
住宅ローン控除が利用できない可能性がある
築50年のマンション購入は住宅ローンの控除が受けられない可能性がある点にも注意が必要です。
住宅ローン控除(減税)とは借り入れたローンの年末残高に対し、一律0.7%の割合で所得税から控除される(差し引かれる)制度です。
たとえば年末残高が1500万円ある場合は控除額は10万5千円になります。
家計の手助けになる制度ですが、築50年マンションでは住宅ローン控除の下記対象条件が関係してきます。
- 住宅ローン控除の対象条件にて昭和57年1月1日以降に建築された建物が該当とされている
- 昭和56年12月31日以前に建築された住宅は現在の耐震基準に適合していることを証明する書類(耐震基準適合証明書)が必要
つまり2025年時点では築50年マンションは昭和56年(1981年)以前に建築された建物のため、対象から外れます。もうひとつの条件である耐震基準適合証明書がなければ、住宅ローン控除は受けられません。
耐震基準適合証明書は耐震診断を行なった上で、現在の耐震基準に適合するように耐震補強を行なうことで発行されます。
ただし、マンションの場合は建物全体が耐震基準に適合する必要があるため、耐震診断や耐震補強を行なうためには区分所有者の決議が必要です。
決議の結果、診断や補強工事が実施できないケースも十分考えられるため、注意しましょう。
修繕積立金が高額なケースが多い
築50年のような築年数が経っているマンションは毎月の修繕積立金の額を確認しましょう。修繕積立金とはマンションやアパートなどの共同住宅で、管理費とは別に、建物や共用部分のメンテナンス費用のために毎月徴収して積み立てておくお金のことを指します。
マンションの多くは大規模修繕を繰り返すたびに修繕積立金の見直しを行なうケースが見られます。
新築のマンションと築古マンションの修繕費は2倍違うといったケースも多々見られます。マンション購入を検討する際は修繕積立金の比較も視野に入れながら行なうと良いでしょう。
建替え計画が立てられている場合がある
希望条件のマンションが見つかったとしても建替え計画が進められている場合は注意が必要です。
綺麗になるのは魅力的ですが、建替えの際はお金が必要です。修繕積立金が潤沢にある場合は問題ありませんが、一般的には修繕積立金で賄えきれず、区分所有者が一時金を出し合って建替えを行ないます。
入居後まもなく建替えが決まる可能性もゼロではありません。購入検討物件の建替え計画が立っているかどうかは事前に管理組合に問い合わせておくと良いでしょう。
耐震性の劣る物件がある
先ほど少し触れましたが、築50年のマンションは旧耐震基準で建てられています。マンションにおける日本の耐震基準は以下の2種類に大きく分けられます。
- 旧耐震基準
- 新耐震基準
これらを見分ける指標は昭和56年(1981年)5月31日までに建築確認が行なわれたかどうかです。行なわれていれば旧耐震、同年6月1日以降であれば新耐震基準で建てられています。
旧耐震基準と新耐震基準の耐震性能の違いは、以下のように定められています。
- 旧耐震基準:震度5程度の中規模地震に際し、倒壊あるいは崩壊しない
- 新耐震基準:震度6強~7程度の大規模地震で倒壊・崩壊しない
つまり大規模地震が発生した場合は、倒壊のリスクが新耐震基準の建物より高いといえます。
築50年以上のマンションの購入は注意点を理解して後悔のないように心がけよう
好立地でお値打ちに購入できる可能性がある築50年のマンションですが、メンテナンスなどで入居後にお金がかかる点に注意が必要です。また住宅ローンの審査が通りづらい点や住宅ローン控除の利用も難しい点も見逃せません。
そのため築50年のマンションを購入する際はデメリットや注意点を把握した上で検討することが大切です。
今回紹介した内容のように、建替え計画や修繕積立金の積立額や月額費用のチェックも忘れず行ないましょう。
とはいえ
「管理組合にどうやって聞けばいいかわからない」
「聞いたは良いが自分で判断できるか不安」
という人も中にはいることでしょう。
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