築40年のマンションについて「すぐに建て替えにならないか不安」、「あと何年住めるのかわからない」、「古いマンションに住むのはなんとなく不安」といった疑問や不安を感じる方もいるでしょう。
中には「築40年のマンションは売れるのか」と売却への不安を持っている方もいるかもしれません。
実は築40年のマンションは適切な管理を行っていれば住み続けることも、適正価格で売却することも十分に可能です。ただし、押さえておくべき注意点も存在します。これらの注意点を知らないままだと「こんなはずではなかった…」と後悔してしまうことも。
そこで、この記事では築40年のマンションを売る人、買う人それぞれに向けて、どのようなポイントに注意すべきかを解説します。この記事を読んで、築古マンションの管理状況や不具合の把握の重要性を理解し、安心して売買契約を進めていきましょう。
築40年のマンションはあと何年住めるのか
国土交通省の統計データ「築40年以上のマンションストック数の推移」によると、2022年末時点で築40年以上の分譲マンションは約126万戸存在し、今後10年で約261万戸、20年後にはおよそ445万戸まで急増すると見込まれています。
このように不動産市場に多く流通するようになる築40年以上のマンションは、果たしてあと何年住めるのでしょうか。
ここからは築40年のマンションが住める具体的な年数を統計データを用いながら解説していきます。
マンションの法定耐用年数は47年
マンションの主要構造である鉄筋コンクリート造(RC造)の法定耐用年数は47年と定められています。ただし、法定耐用年数は税制上の減価償却費を計算するための基準であり、建物の物理的な寿命を示すものではありません。
実際に築50年や60年以上のマンションは存在し、取引も行われています。築47年以上のマンションは住めないということはありません。
築40年のマンションは、あと30年以上住める
国土交通省の資料「期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について」には建物が取り壊されるまでの平均寿命は、鉄筋コンクリート造住宅では68年とする研究例が示されています。つまり、築40年のマンションでもあと30年程度は居住可能といえます。
ただし配管や電気設備などの設備面での寿命は構造体より短いため、それらの更新時期を迎えている可能性が高く、修繕積立金の状況や長期修繕計画の確認が重要です。
加えて、同資料によると鉄筋コンクリート造の建物は、適切な管理が行われていれば、平均寿命68年を大きく上回る120年程度使用できることを示した研究例があります。さらに適切な外装仕上げのメンテナンスを行うことで150年もの長期間にわたって使用できる可能性も示されているのです。
鉄筋コンクリート造の物理的な寿命は、コンクリートの耐久性に大きく依存します。定期的な外装仕上げのメンテナンスを行うことで、コンクリートの劣化を防ぎ、建物の寿命を大幅に延ばすことが可能です。
築40年のマンション購入で注意すべきポイント
築40年のマンションでも、適切な管理がなされている鉄筋コンクリート造の建物であれば、長く住める点を解説しました。とはいえ、築40年のマンションを購入する際はいくつか注意すべきポイントがあります。注意点を理解せずに購入してしまうと、後悔につながるケースも見られます。
そこで、築40年のマンション購入で注意すべきポイントを解説します。具体的な注意ポイントは以下の5点です。
- 住宅ローン利用可否をあらかじめ確認しておく
- 耐震基準を確認しておく
- リフォームが必要な範囲を把握する
- 管理状況を確認しておく
- 大規模修繕や建て替えの計画がないか確認しておく
以降で、それぞれのポイントについて解説します。
住宅ローン利用可否をあらかじめ確認しておく
築40年を超えるマンションの場合、住宅ローンが組みにくくなる傾向にあります。
理由は金融機関の借入条件に築年数が影響するためです。金融機関によっては、住宅ローンの要件や借入期間・金額に築年数による制限を設けている場合もあります。
さらに1981年(昭和56年)12月31日以前に建設された住宅については、下記条件を満たさない限り、住宅ローン控除の適用を受けられないため、築40年を超えるマンションを購入する際には注意が必要です。
○その者が主として居住の用に供する家屋であること
○床面積が50㎡以上であること※1
○合計所得金額が2,000万円以下であること※1
※1 2023年末までに建築確認を受けた新築住宅で40㎡以上50㎡未満の場合、合計所得金額が1,000万円以下で あること
○住宅の引渡し又は工事完了から6ヶ月以内に居住の用に供すること
○店舗等併用住宅の場合は、床面積の1/2以上が居住用であること
○借入金の償還期間が10年以上であること
○取得等した家屋が既存住宅の場合、以下のいずれかを満たすものであること
1)1982年1月1日以後に建築されたもの
2)建築後使用されたことのあるもので、地震に対する安全性に係る基準に適合するものとして、以下 のいずれかにより証明されたもの
・耐震基準適合証明書※2
※2 家屋の取得の日前2年以内にその証明のための家屋の調査が終了したものに限る
・建設住宅性能評価書の写し※3
※3 家屋の取得の日前2年以内に評価されたもので、耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)に係る評価が等級1、 等級2又は等級3であるものに限る
・既存住宅売買瑕疵保険付保証明書※4
※4 家屋の取得の日前2年以内に締結されたものに限る
住宅ローンを検討するときには、これらの条件を踏まえ、購入予定の物件が住宅ローン控除の対象になるかどうかも確認しておくことが重要です。
耐震基準を確認しておく
耐震基準の確認は、築年数が40年を超えるマンションを購入する場合に限らず、地震が多発する日本においては重要です。
1981年(昭和56年)5月31日以前に建築確認申請が受理された建物は、旧耐震基準に基づいて建てられています。この基準では、震度5強レベルの揺れに耐えうるとされていました。しかし、近年の大型地震の頻発によって高い安全性を求められる現代においては旧耐震基準の耐震性能では不十分であると考えられています。
一方で1981年(昭和56年)6月1日以降に建築確認申請が受理された建物は、新耐震基準に基づいています。この基準は、より強い地震に耐えられるよう設計されており、2024年現在も採用されている基準です。築40年以上の建物には現行の新耐震基準に適合していないものが多く存在するため、
- 検討物件が新旧どちらの耐震基準で建てられたものか
- 旧耐震基準で建てられている場合は耐震補強を実施しているか
などの確認が必要です。
リフォームが必要な範囲を把握する
築40年を超えるマンションは、さまざまな箇所で劣化が進行している可能性があります。そのため、購入や引き継ぎ後のリフォームを検討する際には、とくに注目すべきポイントが存在します。
まず水回りの設備や配管は、修繕履歴がない場合、リフォームが必要でしょう。なぜならば水回りの設備機器の寿命は15〜25年で、配管部材の寿命も配管種類によりますが20〜30年程度と40年以内には寿命を迎えるためです。
たとえ使用して問題がなかったとしても、突然故障や破損が発生する恐れは十分考えられます。また不具合が生じると水漏れや設備機器が使用できなくなるなどで日々の生活に大きな支障を及ぼしてしまいます。水漏れの場合にはご自身のお部屋だけでなく、階下の入居者にも迷惑をかける恐れがあるため注意が必要です。
リフォームを計画する際には、どのような範囲をリフォームするか見極めることが大切です。そのためには建物の現状を把握し、改修が必要な箇所に優先順位をつける必要があります。
劣化がとくに進んでいる箇所や、入居者の安全や生活の質に影響する可能性がある領域を優先して考えることが、効率的かつ経済的なリフォームのポイントです。
管理状況を確認しておく
築40年を超えるマンションでは、管理状況の履歴が蓄積されています。そのため、管理組合の動向や姿勢、修繕積立金の積立状況などを事前に確認しておくことは、マンション購入や引き継ぎを検討する際に重要な判断材料です。
とくに毎月の積立金額や積立金の運用状況を確認することで、将来の修繕費用の増加や特別積立金の徴収など、今後の費用負担の変動をある程度予測できます。
管理組合がどのような方針でマンションを運営しているかや、過去の修繕履歴や長期修繕計画の存在有無なども、後々のトラブルを防ぐ上で確認しておきたい重要なポイントです。これらの情報は、安定したマンション生活を送るための基盤となり、快適な居住空間を維持するための判断基準になります。
大規模修繕や建て替えの計画がないか確認しておく
築40年を超えるマンションの購入や入居を検討する際には、大規模修繕や建て替えの計画の有無を事前に確認しておくことが非常に重要です。
一般的に大規模修繕は約12〜15年のペースで行われるため、とくに築年数が長いマンションでは次回の修繕が近づいている可能性があります。また建て替え計画が進行中のマンションの場合、入居後に計画が発表されると、修繕積立金の状況によっては、所有者が一時金を負担する場合があるのです。
このような突発的な費用負担は、新しく入居する住民にとって大きな負担となる可能性があるため、購入や入居前に修繕計画や建て替え計画の確認が求められます。
築40年マンションは売れるのか
築40年を超えるマンションの売買市場には、特有の傾向があります。全体の売買成約件数に占める割合は低いものの、年々、築40年を超えるマンションの成約件数が増加しています。そのため、築40年を超えるマンションであっても、条件が揃えば売却できる可能性は十分にあるでしょう。
築40年マンションを売る際のコツ
ここからは、築40年を超えるマンションを売る以下の4つのコツについて、詳しく解説します。築40年を超えるマンションの売却を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
- 複数業者へ査定を依頼する
- 査定価格を参考に販売価格を決める
- まずはリフォームを行わず売却活動をしてみる
- 不動産買取での手段も検討しておく
複数業者へ査定を依頼する
築年数が40年のマンションを売却する際は、複数の不動産業者への査定依頼が重要なポイントです。それぞれの業者が持つ、市場に対する見解や販売戦略は異なるため、提案される販売価格もさまざまだからです。複数の業者への査定依頼で、自身の物件が市場でどの程度の価値を持つのか、多様な角度から評価を得られます。
また査定結果を比較検討する過程で、どの業者が自分のニーズに最も合っているか、そしてどの業者が物件の価値を高めてくれる可能性が高いかを見極めることができます。
査定価格を参考に販売価格を決める
築40年のマンションを売却する際、査定価格を基にして販売価格を決定しましょう。売り出す際の販売価格は、希望売却価格よりも少し高めに設定するのがおすすめです。
なぜなら、販売過程で値引き交渉が発生する可能性があるためです。具体的には、査定価格に対して1〜2割ほど加算して販売価格を設定すると希望売却価格に落ち着く可能性が高まります。
ただし重要なのは、市場の動向を注視し、不動産業者と密接に連携して適切な価格設定を行うことです。売り急ぎではなく、適切なタイミングで最適な価格にて売却を行うためにも、査定価格を基に慎重に販売価格を決めることが鍵となります。
まずはリフォームを行わず売却活動をしてみる
築40年のマンションを売却する際はリフォームする前に、そのままの状態で売却活動を開始してみることをおすすめします。その理由は、築40年を超えるマンションはリフォームを前提として購入する人が多いためです。
とくに自分の好みに合わせてリフォームしたいと考えている買主は、カスタマイズしたいと考えることが多く、そのためにはベースとなる物件が元々リフォームされていない状態の方が望ましいと感じることがあります。
そのため、たとえ築年数が相当経過していても、そのままの状態で売り出してみると、意外とスムーズに売却できるケースが見られるのです。
不動産買取での手段も検討しておく
築40年のマンションを売る際、不動産買取の選択肢も考慮に入れておくことが大切です。
不動産買取とは不動産会社が直接買い取る方法のため、一般的な仲介による売却と異なり、市場に出すことなく迅速に売却できます。不動産買取の大きなメリットは、販売活動期間が短いためすぐに現金化できることです。しかし市場価格での売却よりも価格が下がる可能性があるため、その点は注意が必要です。
不動産買取を売却の選択肢のひとつとして頭に入れておくことで、もし市場での売却が難しい場合にスムーズに対応できます。
まとめ
築40年を超えるマンションであっても、適切な管理がされている物件であれば、長く住むことが可能です。適切な管理がなされているかどうかをチェックするには、この記事で紹介した5つのポイントを十分に確認する必要があります。
また築40年を超えるマンションの売却も可能です。こちらもこの記事で紹介した4つのポイントを踏まえて、売却の可能性をより広げましょう。
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