水回りはリフォームで移動できる?場所別リフォーム費用と注意点を解説

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水回りはリフォームで移動できる?場所別リフォーム費用と注意点を解説

この記事はプロのホームインスペクターが監修しています

水回りはライフスタイルの変化に応じて移動を伴うリフォームが必要になる場合があります。また中古マンションを購入する際には、どこまで水回りリフォームできる物件なのかも、重要なチェックポイントです。

本記事では、水回りの移動リフォームの注意点や場所別に掛かる費用などについて詳しく説明します。

マンションは戸建てよりも自由に水回りを移動できない

戸建ては配管の自由度が高いため、水回りの移動が比較的容易です。一方、マンションでリフォームできるのは専有部のみで配管が通るパイプシャフトや共用竪管の位置は移動できません。

ただし、壊せない梁や壁を避けつつ共用竪管やダクトの排気口まで配管を繋げられれば(排水管には勾配も必要)基本的にはマンションでも水回りを移動できます。マンションで水回りリフォームをする際は、戸建て以上に制約が多いことを理解しておきましょう。

水回りの移動リフォームができない(しにくい)マンション

マンションで水回りの移動リフォームを検討する際、まずは下4つのポイントをチェックして可能かどうかを見極める必要があります。

・管理規約で禁止されている
・スラブ下に配管が通っている
・水回り周辺の壁が耐震強度の要になっている
・直床・直天井が採用されている

管理規約で禁止されている

そもそも管理規約で水回りの移動が禁止されていれば移動リフォームはできません。また、防音規約により床下の工事が行えず配管の移動ができない場合もあります。まずは管理規約を確認しましょう。

スラブ下に配管が通っている

マンションの配管方式は「床スラブ上配管」と「床スラブ下配管」の2種類があり、床スラブ上配管であれば専有部の扱いになるため自由なリフォームが可能です。しかし、床スラブ下配管の場合は、配管が床のコンクリートスラブを貫通して階下の天井裏を通っているため移動を伴うリフォームは非常に難しくなります。

浴室の天井の点検口から覗いた時に上の階からコンクリートを貫通して伸びてきている配管が無いかチェックを行って、自宅の配管が専有部になるのか共用部になるのかを確認してみましょう。

水回り周辺の壁が耐震強度の要になっている

梁や柱ではなく水回り周辺の壁によって耐震強度を確保している構造の場合、その壁は壊せません。壊せない壁が多ければ水回りの移動に伴う間取り変更は難しくなります。

簡単なチェック方法としては、壁を叩いたときに中が詰まっているような低い音がすれば耐震強度の要になっている可能性が高いです。

直床・直天井が採用されている

直床のマンションは、水回りがあるスペース以外は床下に空間がないため新たに配管を通せなかったり、排水管がスラブに埋め込まれていたりすることがあります。また、天井も床と同様に直天井なら、天井裏にスペースがなく空調や電気の配管や配線の移設が困難です。

ただし、移動先の一部分だけ床を上げたり天井を下げたりしてスペースを作れば、直床・直天井でも水回りを移動できます。天井が低くなるデメリットもありますが、あえて段差を付けたりダクトを露出させることでデザイン性を持たせることも可能です。

直床か二重床かを見分けるポイントの一例としては、サッシと床の高さを見比べて10㎝以上差がある場合は直床の可能性が高く、ほぼ同位置であれば二重床の可能性が高いです。

移動が難しい水回りのリフォーム内容

水回りのリフォームにおいて、基本的に元の場所から大きく移動させることはおすすめしません。中でも移動が難しいのは、以下のようなケースです。

・遠い距離への移動
・トイレの移動

遠い距離への移動

勾配が必要な排水管はパイプシャフトから離れるほど床下の高さが必要になるため、遠い距離への移動リフォームには限界があります。

空調の配管については、勾配が不要なため排水管ほど距離(長さ)を気にする必要はありませんが、ダクトが長くなると接続があまくなり空気が漏れやすくなることが考えられるため、施工上は短いほうがおすすめです。

トイレの移動

トイレは他の排水管よりも詰まりやすいことから汚水専用の竪管が通っているマンションが多いです。その場合、汚水専用の竪管は動かせないためトイレの移動が非常に難しくなります。壁排水の場合も同様です。汚水専用の竪管があるかどうかはプロに診断してもらいましょう。

水回りの移動費用の目安とリフォーム内容

マンションの水回りリフォームで掛かる移動費用の目安は、下の表を参考にしてください。(※設備の取替えなし)

水回りの場所

移動費用の目安

洗面所

約40万円

キッチン

約40~90万円

浴室

約70~100万円

トイレ

約40万円

次に、場所別のリフォーム内容を解説します。

洗面所

洗面所の主なリフォーム内容は、洗面台の取り外し・取付け工事、洗面台があった部分の内装工事、給排水管工事、電気配線工事となり、移動費用は約40万円です。

移動先に既存の洗面台が収まるかどうかが費用を抑えるポイントで、収まらなければ新しい洗面台に買い替えたり拡張工事を行わなければいけなかったりと費用が高額になります。

キッチン

キッチンの主なリフォーム内容は、キッチンの取り外し・取付け工事、給排水管工事、換気ダクト工事、電気配線工事、ガス工事、内装工事で、移動費用は約40~90万円です。

キッチンは移動場所やリフォーム内容に応じて金額が大きく変化するのが特徴で、アイランドキッチンは壁に配管を通せない、対面キッチンはキッチン背面の処理が必要など種類によって必要な工事や事情が変わります。

また、換気ダクト工事やガス工事が必要になるケースもあり、大きな移動となれば費用も高額になります。ただし、キッチンの向きを変えるなどの移動が少ない工事であれば比較的低コストでリフォームができます。

浴室

浴室の主なリフォーム内容は、浴室取外し・設置、給排水管工事費用、電気配線工事、内装工事です。移動費用は約70~100万円が目安で、内装工事費用は約20~30万円となります。

キッチンや洗面台とは違い、最低限の工事でも高額になりやすい傾向があり、また浴室は再設置すると防水性が下がるため年数によっては買い替えの必要性が出てくるかもしれません。

トイレ

トイレの主なリフォーム内容は、既存トイレ取り外し・取付け、給排水管工事となり、移動費用は約40万円です。トイレの場所を移動する際には、個室を作る必要があるため壁の増設もしなければいけません。また、分譲マンションの場合では珍しいとは思いますが、和式から洋式への変更は全体で70~80万円の工事費用が発生する可能性があります。

水回りを移動するリフォームの注意点

水回りを移動リフォームする際に特に注意すべき点は大きく2つあります。

・配管の状態によっては更新工事も視野に入れる
・雨漏りや水漏れなど他に不具合がないか調べておく

配管の状態によっては更新工事も視野に入れる

築35~40年前後のマンションなどは給水管や給湯管に鉄管が使われていることが多く、その場合は特に劣化が進んでいる可能性が高いため更新工事も視野に入れておきましょう。

雑排水管に白ガス管が使われている場合も、築40年前後が経過しているものは内部が錆びて漏水しているかもしれずリフォームを機に更新するのがおすすめです。

水回りの移動リフォームによって見た目は刷新されますが配管が長持ちするわけではありません。築年数の古いマンションでは配管の劣化状況もリフォーム時にチェックしておきましょう。

雨漏りや水漏れなど他に不具合がないか調べておく

水回りのリフォームを検討する際には、雨漏り(天井や壁の変色やシミがないか)、水漏れ(排水管を手で触ってみる)、各設備機器が使えるのかなども確認してください。

不具合が生じていれば当初の想定以上にお金が掛かってしまいますが、設備機器の補修は引渡しから7日間以内であれば売主負担になるケースが多いため、リフォームと同時期に不具合も早期発見できれば結果的にコストを最小限に抑えられます。

水回りの移動リフォームを依頼する施工会社の選び方

水回りの移動リフォームの施工者選びは、下2つのポイントを重視してください。

・新築マンションの工事経験が豊富な施工者
・第三者に見積もりをチェックしてもらうのもおすすめ

新築マンションの工事経験が豊富な施工者

一般的には、リフォームしか経験がない施工者よりも新築マンションの建設に携わっている施工会社のほうが建築のことを知っている人が多いため、新築マンションの工事や設計の経験がある人が在籍している会社に依頼するのがおすすめです。

第三者に見積もりをチェックしてもらうのもおすすめ

リフォームは単純に金額だけで会社を比較するのは危険で、工事の内容や見積りの妥当性を深く読み解く必要があります。しかし、それにはある程度建築について詳しくなければ難しい上に、知識の差によって疑問点があっても対等に意見が言えず納得させられてしまうケースもあるのです。

そこで、第三者機関に入ってもらって客観的なアドバイスを受けながら、適切な比較・検討を行うことをおすすめします。

水回りを移動するリフォームは専門知識が不可欠

水回りの移動を伴うリフォームでは、「そもそも移動できるのか?」「どれくらい費用が掛かりそうか?」などを事前に見極める必要があるため、リフォーム会社に依頼する前からプロによる正しい診断が不可欠です。

さくら事務所では、建築に詳しいプロが見積りや工事内容の妥当性を客観的にチェックし、お客様のマンションに合った無駄のないリフォームプランをご提案します。また、無料で永年アフターフォローが付いてきたり、オプションで災害リスクカルテや写真付き詳細報告書をお渡ししたりと、リフォーム後の安心・安全をサポートする体制まで整っております。
水回りのリフォームを検討する際にはぜひご相談ください!

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ホームインスペクター 鈴木 賢
監修者

鈴木 賢

築35年の中古マンションを購入し、自身の設計でスケルトンリフォームして住んでいます。
建築物定期調査報告や屋上防水改修、管理会社変更検討などマンションの理事会活動も行っており、設計監理者としてだけでなく、生活者としての視点も持ち続けて活動しています。

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