地域の浸水リスクを調べる方法として最も一般的なのが「洪水ハザードマップ」。行政区ごとに発行されており、インターネットで公開している役所もあるので、土地検討の際に参考にされる方もだいぶ増えたようです。
ですが、建物の水害被害は地域の浸水予想だけでなく、建物の形状や間取り、構造によっても大きく変わってきます。
今回は水害に強い一戸建てについて、これまで多くの中古戸建てのホームインスペクション(住宅診断)を行ってきたホームインスペクターが解説します。
浸水被害を左右するのは「基礎の高さ」
床下浸水・床上浸水の被害は「基礎の高さ」によって大きく変わってきます。
基礎が低い建物では、地表面から床までの高さが低くなるため、浸水しやすくなります。最近では40㎝確保されている物件が主流ですが、築年数の古い物件であれば30㎝くらいが普通とされていたので、中古物件を検討の方は注意が必要です。
また、新築後に駐車場や犬走りにコンクリートを打って建物外周の地表面を上げてしまうと、地表から基礎の高さも低くなってしまうため、浸水の被害にあう可能性が高まります。
新築検討の際、住宅地などの高さ制限が決められているエリアでは、基礎を高くした分、生活空間となる階の天井の高さが制限されますので、設計段階で併せて検討しておきましょう。
すぐに対処できるかは「床下点検口」が鍵
木造の場合、浸水したら「いかに早く対処するか」で被害状況は変わってきます。
床下に水がたまったままだと、カビが発生し、構造材の腐食が進んでしまいます。まず被害にあったら、点検口から床下の状況を確認、必要があれば業者さんに頼むなどして水を抜き、その後はよく乾燥させましょう。
床下点検口のない建物の場合、そもそも床下の状況が確認できないので、知らないうちに水が溜まっていた、気がついたら床下がカビだらけ、というパターンも。
こんな被害も想定して、ホームインスペクターは床下点検口の設置をお勧めしています。
修繕費用、復旧時間に影響大「設備機器」
通常の床上浸水であれば、フローリングの張り替え、石膏ボードの交換で済みますが、設備機器が故障してしまった場合、修繕費用・復旧までの時間に大きく影響します。
これから新築あるいは購入を検討される方は、リビングや水回りを2階に持ってくることも検討してみてはいかがでしょうか。
ユニットバスやキッチンなどの大がかりな設備機器が1階にあると、床上浸水の被害も大きくなり復旧に時間が掛かります。
逆に寝室や子供部屋などは設備機器が少ないので、そういった意味での設備機器被害は少なくて済む可能性があります。ユニットバスが1階でも給湯器はなるべく高い位置に設置しておくといいでしょう。
また、ブレイカーが壊れてしまうと、電気の復旧に時間を要するのでなるべく2階に設置するか、1階2階と経路を分けておくのもおすすめです。
1~2Mの浸水被害が想定される場所では
自身の購入しようとしているエリアが1~2Mの浸水が予想される地域だった場合、水回りやリビングを2階に持ってくるほか、2階窓を掃出し窓にして避難口を確保しておきましょう。
更に心配な場合は、陸屋根にして搭屋を設けて屋上からの避難なども検討しておくと安心です。
いかがでしたでしょうか?
自身でのチェックだけで不安・・・という方は住まいのプロ、ホームインスペクター(住宅診断士)のアドバイスも取り入れてみてはいかがでしょうか?
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災害リスクとその備え方は、立地だけでなく建物の構造にもよります。戸建て住宅でも平屋なのか、2階建てなのか、また地震による倒壊リスクは築年数によっても大きく変わってきます。
レポートだけではない!建物の専門家による電話相談アドバイスも
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■記事執筆者(災害リスクカルテ監修)
横山 芳春 博士(理学)
だいち災害リスク研究所所長・地盤災害ドクター地形と地質、地盤災害の専門家。災害が起きた際には速やかに現地入りして被害を調査。広島土砂災害、熊本地震、北海道胆振東部地震、山形県沖地震、逗子市土砂災害等では発生当日又は翌朝に現地入り。
現地またはスタジオから報道解説も対応(NHKスペシャル、ワールドビジネスサテライト等に出演)する地盤災害のプロフェッショナル。