年々関心の高まる、住宅の省エネ問題。
断熱性の高い住まいは、室内の温熱環境を快適に保てるのはもちろんのこと、電気代などのランニングコストが抑えられることも魅力でしょう。
また、2020年には住宅の省エネ義務化もスタートします。
とはいえ、ルールこそ厳しくなりますが、せっかくの計画も現場で図面通りに施工されていなければ、断熱材も本来の効力を発揮しません。
そこで今回は、さくら事務所の新築工事中ホームインスペクション(第三者検査)の事例から「断熱材の施工」のチェックポイントを、断熱材の種類ごとにご紹介します。
断熱材の種別にみる施工チェックポイント
断熱の基本は「家の断面を見たとき、断熱材を結んだ線が一筆書きできる」こと。
断熱材の種類や断熱材の位置に関わらず、全ての工法でいえることです。
例えば、こんな風に隙間が空いていたら、ここから熱が出入りしてしまうため、本来の設計上の断熱性能は期待できません。
この基本さえおさえておけば、どの工法であってもチェックは簡単です。
充填断熱の場合
充填断熱とは、柱や枠材の内側に、グラスウールやロックウールなどの断熱材を入れていく方法。
断熱の方法として現在最も多く採用されている方法で、日本では、袋に入っているグラスウールを使うことがほとんどです。
壁面を充填断熱する場合には、柱や枠材の間にすき間なく断熱材が取り付けられているかを確認してください。
軸組工法で建物の外周部に筋かいがある部分は、断熱材を取り付けるのが難しくなります。
筋かいは断熱材の入らないところに設置して、外周部は面材で強度を確保するという設計上の配慮があると良いでしょう。
断熱材は、すき間がある場合だけでなく、無理に押し込められていても本来の性能は発揮できません。適切に断熱材を切りそろえる必要があります。
日本でよく使われる袋入りグラスウールやロックウールには、「耳」と呼ばれる部分があります。この、「耳」を柱や間柱の上で重ね、表面の防湿シートを連続させることが重要。「耳」を柱や間柱の上で重ねていないと、防湿シートが連続せず、壁の中で結露が発生する原因になるのです。
断熱材は、ホチキスの大きなもので留めつけていきます。断熱材が垂れ下がらずに、しっかり留まっているかどうか確認しましょう。
天井断熱のチェック内容は、壁面とほぼ同じ。天井断熱では壁面と違い、部材に留めつけておくのではなく、単純に上から置かれているだけです。
作業をおこないにくい場所であるため、雑になりやすい部分です。断熱材がすき間なくきちんと敷かれているかどうか確認しておきましょう。
床の断熱も他の部分と同様、すき間がないかどうか確認を。床の断熱ですき間ができやすいのは、部屋をわける壁や配管が貫通している部分。
こういった場所にすき間があると、寒い時期には冷たい空気が入ってきて床が冷えてしまいます。
外張り断熱の場合
外張り断熱は、柱や枠材の外側に、板状の断熱材を張っていく方法。施工が簡単で、設計時の想定に近い断熱性能を出すことができます。
施工のチェック方法も充填断熱よりも簡単です。外から見てすき間がなければ大丈夫。
すき間が大きければ、余った断熱材を適切な大きさに切って取り付けてもらいましょう。すき間が小さい場合には、現場で発泡断熱材を使ってすき間を埋めてもらうと良いでしょう。
屋根断熱も同様に、すき間がないことを確認してください。天井断熱と比べて作業が簡単なので、大きなすき間ができることは少ないでしょう。
完成後に発見できない重大欠陥に「工事中の第三者チェック」を!
いかがでしたでしょうか?
断熱材に限らず、現場で正しい施工ができていなければ、どんな理想の設計をしていても、本来の住宅の性能は発揮されません。図面ができたら、あとは大工さんにお任せするのではなく、できるだけ現場に足を運ぶなど主体的に家づくりに関わっていくことをお勧めします。
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