管理不全マンションの購入を回避せよ!

  • Update: 2022-06-28
管理不全マンションの購入を回避せよ!

2022年4月に開始された「管理計画認定制度」・「管理適正評価制度」の施行に伴い、将来的な資産価値維持を考慮して、マンション管理に注目する人が増加しているようです。

当社で提供している、購入をご検討中の中古マンションの管理状況について、第三者の視点で専門家がチェックする「マンション管理インスペクション」の今年の3月~5月のお申込者数は、昨年の3月~5月のお申込者数と比較して3.2倍にも増加しました。また、5月だけのお申込者数でいえば、昨年の5月と比較すると、その数なんと6倍にも上りました。それだけ、「マンションは管理を買う」という認識が一般に広まってきたということです。

今回のコラムでは、多くのマンションで散見される注意すべき事例と共に、管理不全・スラム化予備軍マンションを避けるためのポイントについて解説していきます。また、当社の「マンション管理インスペクション」サービスを受けた実際のご依頼者さまの声もいただくことができましたので、ぜひ参考になさってください。

購入前に必ずチェック!意外と多い要注意な事例集!

マンション管理の状態を見るうえで、「長期修繕計画の妥当性」や「管理規約・使用細則」の内容について予め把握しておくことはとても大切なことです。当社で管理状況の調査を進めるにあたって様々な傾向や事例がありましたのでご紹介します。下記に当てはまるようなマンション管理は要注意です。

修繕積立金が国交省ガイドラインより低額な設定になっている

「修繕積立金」が安いのは決して良いこととは言えません。元々の修繕積立金が低額に設定されているマンションは将来的に増額となる可能性が高いです。また、現在このようなマンションが大半を占めていることにも注意しなくてはなりません。将来的な修繕工事の際に、資金不足が生じることにより、必要な修繕が行えずに、スラム化に向かうリスクもあります。

窓や玄関ドアの改良に関する規約・細則の定めがない

窓や玄関ドアは、専有部分のように見えながらも、管理組合が一体管理する共用部部分に位置付けられているマンションが大半となります。共用部分として維持管理していく上で、管理組合が修繕するのか、区分所有者でも修繕可能なのかが明確ではない場合には、リフォーム時にトラブルとなるリスクがあり、断熱性等の居住快適性にも影響してきますので、事前にチェックする必要があります。

リフォーム工事実施における明確な定め(ルール)がない

各区分所有者判断でのリフォームを行うことにより、工事中の騒音はもちろんのこと、フローリングを変更した場合の上下階での騒音問題や漏水発生時に対応が難しくなるなど、もしものことがあった場合に、管理組合としての一括管理ができていないことによるトラブルに巻き込まれる可能性があります。

共用部分で禁煙の規定がされていない

不動産購入時には、限られた時間での内見で購入可否を判断することとなります。目に見える部分は気付くことも多いのですが、目に見えない臭気によって、不動産購入後に隣人トラブルに巻き込まれる可能性があり、住みづらくなってしまうリスクがあります。

絶対に避けて!本当にあったヤバい事例

上記の事例は多くの中古マンションで見られる事例となります。決して良好な管理状態とは言えませんが、管理組合の動き次第で改善を図ることは可能です。それに対して以下の事例は、ここからの改善は難易度が高い「スラム化予備軍マンション」と言っていいでしょう。現在検討中のマンションが当てはまっていないか、必ずチェックしてください。

長期修繕計画が10年以上見直しされていない

旧消費税率(5%・8%)で修繕費用が計上されており、資材・建築コスト増による単価見直しがされておらず、長期修繕計画のアップデートが全くなされていないケースが稀にあります。これでは修繕積立金が何を根拠に積み立てているのかわからず、必要な修繕が行えない可能性があります。

管理組合の未収金(管理費・修繕積立金)が年間収入額の10%以上

必要となる管理・修繕が行えなくなるリスク、未収督促(訴訟含む)のリスク、未収の常態化による管理組合運営の秩序の乱れなど、将来的に様々なトラブルの元となるでしょう。

なぜこのような管理状況になってしまうのか

現時点での居住者(区分所有者)の「管理」に対する意識が低く、管理は「管理会社」がやってくれると思っている方が多い傾向があります。そこにはマンション管理業界が保守的な業界のため、管理会社からも積極的提案がなされておらず、役員任期も1年が主流となっており、ことなかれ主義になっている背景があります。

また、管理会社との契約内容に「長期修繕計画の作成・見直し」や「未納管理費等の督促方法の詳細」が含まれておらず、管理組合もどのように進めれば良いかも分からないため、そもそも問題という認識すらないケースが多く、意思疎通が図れずに「気付いた時にはヤバい管理状態になっている」といった、管理会社と管理組合の業務上のやりとりに根深い問題があることが考えられます。管理会社任せになっているマンションは、特にこの傾向が強いと言えます。

管理不全マンションを事前に回避するためには

不動産仲介会社の営業担当者は、「不動産売買」のプロであっても「マンション管理」のプロではないため、マンション管理に精通している第三者へアドバイスを求め、上記のような管理状態になっていないか、購入対象マンションの管理レベルを確認することが大切です。

最後に当社の「マンション管理インスペクション」を受けたAさんから、「これからマンションを購入される方へのアドバイス」をいただきましたのでご参考になさってください。

東京都江東区・豊洲のマンションにお住まいのAさん

中古マンションの購入の際にはたくさんの情報を精査し、判断を下す必要が出てきます。
判断を下すにあたり、情報・内容の妥当性、現状把握、将来の予測、リスクといった点を正確に理解することが正しい判断への道だと思いますが、買主としては住宅購入は人生で何度も経験することは少なく、住宅に関する知識は素人です。そのような中で他の購入希望者との競争の観点から、短い期間で判断を下すことを求められます。これらのことから、理想通り進めることは難しいという現状がありました。
不動産仲介会社の担当者もアドバイスはくれますが、仲介の担当者にとってマイナスなことには触れてこないので、利害関係者であることを念頭に置いて聞く必要があります。

これらの点をマンションインスペクション、マンション管理インスペクションで第3者がプロの視点で客観的にレポートいただくことで正確な情報理解と、スピーディーな判断につなげ、安心してマンション購入を実現することができました。費用はかかりますが、お願いしてよかったと振り返って感じています。
なお、いただいたアドバイスは、購入後、マンションの総会の運営に参加したり、資料を読み解く上でも役に立っております。理想的には、各買主が個別にインスペクションを申し込む形でなく、売主が売買戦略の一つとしてインスペクションを申し込む業界慣習になればよりよい不動産取引の業界になるのでは?と思う次第です。

売主、買主のどちらにも忖度しない中立性とプロフェッショナリズムが肝になりますね。

Aさんの言うように、マンションの検討から購入までの短い期間の中で、大きな判断を下さなくてはならないようなことが何度もあります。そのような時間がない中で、不動産取引の際に提供される資料により、概ねの管理状態を把握することは可能であるものの、不動産仲介エージェントが管理関連書類の読み方すらわからないケースが多いというのが実情です。もし、少しでもご不安がある方はぜひ一度「マンション管理インスペクション」をご利用ください。マンション管理コンサルタントのプロの目でしっかりとチェックいたします。