マイホームづくりやリフォームは、人生の大きな買い物だからこそ、家族みんなが長く快適に住み続けられる空間にしていきたいものです。
「安心で快適」「長く住み続けられる」住みやすい家づくりについて、さくら事務所のホームインスペクターであり、日頃から注文住宅やリフォームを手掛けている女性の建築士3名に、インタビューを行いました。女性ならではの細やかな目線で、家族みんなが長く快適に住み続けられる家づくりのポイントをご紹介します。
若い世代こそ、バリアフリー住宅のススメ
子育てしやすい家は老後も暮らしやすい家
家族みんなが長く快適に住み続けられる家にするためには、若いうちからのバリアフリー化がお勧めです。子育てしやすい家は、家の中の段差がなく、小さな子供がいても安心して過ごせたり、家族がお互い見守れる空間になっています。これらは老後の暮らしにおいても必要なことです。
よくある出産を機に住宅購入するケースでは、段差を解消することで、身体的に動きにくくなる妊婦さんが、つまづいて転ぶリスクを軽減できます。特に小さな段差こそ気付きにくいものなので、敷居やドアレールなどは出来るだけフラットにしましょう。段差がなく、滑りにくい床材であれば、歩き始めの赤ちゃんにも安心です。共働き世帯に人気の家事アイテム、お掃除ロボットの使いやすさも向上します。
このほか、浴室スペースは、広めにとっておくことで赤ちゃんの入浴がしやすく、将来の介護にも役立ちます。また、道路側から玄関にかけてスロープを設置しておくと、ベビーカーや車いすでも出かけやすく、足腰が不自由になった場合でも外出しやすいため、アクティブなシニアライフにも繋がります。子育て世代にやさしい家は、高齢者にもやさしい家といえます。
暮らしに合わせて家を変えていく
住宅購入時は、いまの生活目線で家づくりを考えがちですが、子供が巣立った後、病気や怪我で身体の動きに制約がある場合など、家族の変化に応じて住み替えやリフォームが必要になるケースもあります。なるべく長く住み続けることができるように、将来の暮らしや可能性を想定した「可変性のある家」にする事が大切です。
コメント:「自分の暮らしの変化にあわせて、家を変えていくことができるのが持ち家の良さです。老後は体が思うように動かなくなってくるので、家の中を歩きやすくして、動くのが億劫にならないようにしましょう。」
【事例:バリアフリー化への備え】
・浴室、玄関など手すりが必要になる箇所は予め壁下地を補強
・手すりを設置しても車いすが通れる廊下幅の確保
・敷居やドアレール等の小さな段差を無くしたフラットな造り
・道路側から玄関に出入りするスロープを設置できる余白確保
家事がしやすく、快適な暮らし
家事動線を考えた間取りと収納
子育て中も老後の暮らしも、いつでも家事はなるべくラクにしたいものです。起床から就寝まで、家族の行動パターンを考えた間取り・部屋の配置にし、必要な機能を動線上に置くことで、限られた空間の中でも動きやすくなり、無駄な動作を減らせます。収納も適材適所にすることで、散らかりにくく、片付けがしやすくなります。
【事例:間取りのアイデア】
・「洗濯物が片付かない」という悩みには、ランドリースペースを設置する等、「洗う・干す・収納する」という動線を近づける
・家族みんなが料理をする家庭では、回遊しやすく対面で作業できるアイランド型にする
・帰宅後、上着、ベビーカー、部活の道具など、収納せずに一旦置いておける場所を玄関付近に設ける
室内の気温差はなるべく均一に
暑さ寒さは住まいの快適性に大きく影響を与えます。室内の温度をなるべく均一にできるように、家の断熱性能を上げましょう。初期費用はかかるものの、昨今は光熱費が高騰しており、長期的には家計の助けになります。また、温度差による体への負担を軽減することで、血圧が上がりやすい妊婦にはもちろん、急激な温度差によって発生する高齢者のヒートショック予防にもなります。若い世代であっても、気温差は身体へのストレスになるので、家族みんなの健康維持にも役立ちます。
近年は省エネ性能を有する住宅や、既存住宅における断熱リフォームを対象とした補助金制度が、国交省だけでなく地方自治体でも実施されています。お住まいの地域における支援事業を調べてみるとよいでしょう。
コメント:「内窓や複層ガラスなど、熱が出入りしやすい窓まわりの対策は特に効果的です。浴室にも暖房乾燥機を入れるなど、入浴時の温度差をなるべく少なくしましょう。」
未来のためのスペースづくりで、理想を叶える
こんな暮らしがしたい!ライフステージごとに想像してみる
これからのライフステージを想像して、将来に備えた家づくりをしておくと、長く住み続けることができます。「将来は独立して自宅をオフィスにしたい。」「子育てがひと段落したら自宅でカフェをやってみたい。」など、将来の夢を描いたスペースを予め想定した造りにしておくことで、ぐっと実現に近づきます。また、年を重ねると掃除が大変になってきたり、2階に上がるのも一苦労に。老後は1階だけでコンパクトに生活できるように、水回りの想定をしておくことも一案です。活用の可能性は家族によって幾通りもあるでしょう。
コメント:「2階は趣味の物をおくなど、フリーコーナーとして使えます。2階にもトイレや洗面所のスペースを想定しておけば、民泊にすることも可能です。実際、定年後に始める方も増えてきています。木造住宅は柔軟性が高いので、暮らしに合わせて家を変えていくことができます。」
介護や家事代行など、家族以外の訪問者が入ることも想定
子育て世代は、1日1日を無事に終えることだけで精一杯です。共働き家庭ともなれば、家事代行やベビーシッターなど、家族以外の人の力を頼りにした、外部サービスの利用機会も増えてきます。介護においても、台所や浴室など生活空間に介助者が出入りする必要性が生じてきます。ただ、どの家庭でも訪問者には触れられたくなかったり、見せたくないものがあるでしょう。訪問者が入らなくても済む一室があれば、プライバシーの確保がしやすくなり、外部サービスの利用もしやすくなるでしょう。
まとめ
家族みんなが安心・快適に長く住み続けられる家づくりを、「お母さんに優しい暮らし」という目線で考えてみるのはいかがでしょうか。家族のライフステージを想像し、いま現在の悩みを解決する方法だけでなく、「こんな暮らしにしたい」と未来の暮らしや夢を実現できるようなつくりにしておくことで、長く住み続けることができ、お母さんにとっても、家族みんなにとっても、暮らしやすい家づくりになるといえます。
そして、長く暮らす家であれば、家づくりと同時に建物のコンディションを把握しておくことも大切です。さくら事務所では、新築やリフォームにおけるホームインスペクション(住宅診断)を提供しております。バリアフリー住宅についてもアドバイスを行うことができますので、ご相談ください。