耐震等級3とは?どれくらいの地震に耐えられるの?耐震性アップのポイントも解説

  • Update: 2023-08-03
耐震等級3とは?どれくらいの地震に耐えられるの?耐震性アップのポイントも解説

この記事はプロのホームインスペクターが監修しています

住宅を購入する際にパンフレットや広告などでよく目にする耐震等級3。地震に対する強さを表していることはわかるけれど、実際にどれくらいの地震に耐えられるのか理解している人は少ないのではないでしょうか。

そこで今回は耐震等級とはどんなものなのか、どれくらいの地震に耐えられるのかを解説します。比較的簡単に耐震性をアップさせる方法も合わせて解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

中古一戸建てホームインスペクション(住宅診断)

耐震等級3とは?

耐震等級3とは

耐震等級は、法律で定められた建物の耐震性能を示す指標です。その中でも、耐震等級3は最高の等級です。耐震等級3の認定を受けると、大きな地震に耐えられるだけでなく、地震保険の料金が割引されるなどのメリットも存在します。地震発生リスクの高い我が国にとって、耐震等級は家を購入する上で重要な要素です。そこで耐震等級とは具体的にどのようなものなのか、等級ごとの違いは何かについて詳しく解説します。

建物の耐震性の高さをあらわす

耐震等級とは「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づいた「住宅性能表示制度」で評価される指標のひとつです。住宅性能表示制度とは、住宅の品質を客観的に評価するための指標であり、10分野33項目の等級が設定されています。

中でも耐震等級は、構造の安定に関する等級のひとつで、地震発生時に建物が安定性を保ち、住民の安全を確保する能力を表す重要な指標です。耐震等級は、建物の構造や材料、設計などの要素に基づいて評価されます。

耐震等級は3つの等級に分かれる

耐震等級には、耐震性能を示す指標として、耐震等級1から耐震等級3までの3つの等級が存在します。ここからは各等級の概要について解説します。

耐震等級1

耐震等級1は耐震等級の中で一番低い等級です。耐震等級1の建物は建築基準法で定められた耐震性能と同等のものを指します。「数十年に1度発生するような地震(震度5強)を受けても損傷せず、数百年に一度発生するような大地震(震度6強~7)を受けても倒壊しない」建物と定義されています。そのため、大規模な地震に遭うと大規模な修繕や住み替えが必要になる可能性が高いです。

耐震等級2

耐震等級2は、耐震等級1で想定している1.25倍の地震力に耐えられる建物を表しています。そのため数百年に一度発生するような大きな地震を受けても、修繕を行えば住み続けられる可能性が耐震等級1よりも上がります。また耐震等級2は、長期に渡り良好な環境で住み続けられる住宅である「長期優良住宅」の認定基準のひとつです。

耐震等級3

耐震等級3は、耐震等級の中で最も高い耐震性能を持つ建物を指します。耐震等級1の1.5倍以上の地震力にも耐えられると定めています。数百年に一度発生するような大きな地震を受けても軽微な修繕を行えば住み続けられる想定です。また耐震等級3は消防署や官公庁など防災時に、重要な拠点となる建物と同等レベルの耐震性能を有するとされています。

耐震等級3の認定を受けると地震保険が割引される

耐震等級3の認定を受けると、地震保険の料金が割引され、保険料が安くなるメリットがあります。保険料が安くなる理由は、耐震等級が高い建物は地震に対してより強い耐力を持ち、建物の被害を最小限に抑えることが期待されるからです。

具体的な保険料の割引率は、保険会社や契約内容によって異なりますが、耐震等級3の建物においては、一般的に他の等級と比較して割引率が高く設定される傾向があります。耐震等級が上がるにつれ割引率は10%、30%、50%と段階的に引き上げられ、保険料の負担が軽減されます。

耐震等級3の家はどれくらい地震に強い?

耐震等級3の強さを震度に具体的に結びつけるのは難しいです。なぜなら、耐震等級は地震力に基づいて評価され、震度との直接的な関係は定義されていないからです。

そこで続いては実際に発生した大地震のデータから、どれくらいの地震に何度耐えられるのかをみてみましょう。

熊本地震では倒壊ゼロ

耐震等級3の建物がどれくらいの地震に強いかを見るために熊本地震におけるデータをみてみましょう。

以下のグラフは国土交通省によるデータで、耐震等級1同等レベルと耐震等級3の木造建築物の被害状況を表したものです。

出典)国土交通省住宅局

「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書のポイント p.5

グラフから読み取れるように、熊本地震における大破・倒壊の棟数は建築基準法レベル(耐震等級1同等レベル)が19棟に対し、耐震等級3の建物は0棟でした。実際の地震においても耐震等級3の建物は大きな地震に耐えられることが証明されました。

震度7の地震にも複数回耐えうる

実は熊本地震は震度7の地震が2回発生した類をみない稀な地震でした。耐震等級3はこの地震で倒壊数ゼロだったことから、震度7の大きな地震にも複数回耐えうる耐震性を有していると言えるでしょう。

もちろん何度も震度7の地震を受ければダメージが蓄積され、修繕が必要となる可能性がありますが、少なくとも2回は修繕なしでも住み続けられることが証明されています。

耐震等級3を取得するために必要な費用

耐震等級3の認定を受けるためには評価を行う機関へ評価を依頼しなければなりません。評価機関への依頼費そのものは10〜20万円程度ですが、依頼費の他に住宅会社の設計費や作図費用、耐震部材の調達費などが加算されます。建築設計段階から耐震性能を考慮する必要があります。

具体的な費用は建築物の規模や設計内容、住宅会社によって異なるため、実際の金額は個別のケースによって異なりますが、一般的な規模の住宅であれば20〜40万円程度が相場と言えるでしょう。

具体的な金額を知るためには、あらかじめ建築設計や施工業者に相談し、見積もりを取ることが重要です。

耐震等級3と耐震等級3相当は意味が異なる

住宅会社の中には耐震等級3相当と呼び、性能をアピールしている会社もあります。しかし耐震等級3相当とは耐震等級3と同じではない点に注意が必要です。

耐震等級3相当とは、耐震等級3と同等の耐震性能を持つ設計が行われた建物であると、住宅会社がアピールする際に利用される単語です。実際には評価機関によって評価されていない点が通常の耐震等級3との大きな違いです。

評価されているかどうかは、第三者への建物性能のアピールに影響を与えます。例えば先ほど挙げた地震保険の割引が受けられなかったり、長期優良住宅の認定が受けられなかったりなどのケースが代表的です。長期優良住宅の建物は住宅ローン金利の引き下げや、住宅ローン控除や固定資産税の減税などの多くのメリットがあります。

そのため耐震等級3相当の建物は、上記に挙げたデメリットを理解した上で選ぶようにしましょう。

耐震性をアップさせるための3つのポイント

続いては安心・安全な家を作るには耐震性をできるだけ上げたいと考える人も少なくないでしょう。そこで一般の人でも判断がつきやすい、耐震性をアップさせるためのポイントを3つ解説します。

具体的なポイントは以下の通りです。

  • 耐力壁の量を増やす
  • 建物を軽くする
  • 上下階の壁の位置をなるべき揃える

それぞれについて詳しくみてみましょう。

耐力壁の量を増やす

地震に強い家を作るためには耐力壁をできるだけ多く、バランスよく配置しましょう。

耐力壁とは、地震や台風などの自然災害に対する建物の強度を高めるための壁のことです。耐力壁は、筋交や合板を壁に張ることで壁の耐久性を向上させています。

より多くの耐力壁を均等に配置することで、建物全体の強度と安定性を高められます。

窓や建具が配置されている場所には耐力壁は配置できないため、窓や建具の配置が偏らないように注意しましょう。

建物を軽くする

建物を軽くすることで、一般的には耐震性を向上させられます。

なぜなら建物が受ける地震力は建物の重量に標準せん断力と呼ばれる係数をかけて求められるためです。そのため建物の重量を軽くするほど、建物が受ける地震力を抑えられ、耐震性能が向上します。

特に屋根材を軽くすると建物の重心が低くなり、地震による建物の揺れが抑えられるため効果的です。屋根の材質を瓦からガルバリウム鋼板やカラーベストなどの軽量なものに変更すると、比較的簡単に耐震性を向上させられるのでおすすめです。

上下階の壁の位置をなるべく揃える

複数階ある建物の場合、最も安定している間取りは1、2階とも壁の位置が同じ状態です。とはいえ戸建て住宅の場合は1、2階では部屋の種類や大きさが異なるため、全く同じ位置に壁を配置するのは現実的に困難です。

間取りに影響がない範囲で壁の位置を揃えると、耐震性アップに効果があるので意識して間取りを考えてみましょう。

例えばトイレや収納、窓のサイズや位置を上下階で揃えると、壁の位置が揃いやすいのでおすすめです。

耐震性は工事の品質でも左右される

建物の耐震性能は、施工品質によっても左右されることがあります。特に土台や柱、梁などの躯体部分に不具合が発生してしまうと耐震性能の低下につながるので注意が必要です。

実際にさくら事務所が実施したホームインスペクションで、躯体部分に不具合が発生しているケースが見つかっています。

事例を一部紹介します。

【屋根を支える小屋組の構造体が切り欠かれているケース】

引用)さくら事務所コラム

「欠陥住宅の事例12選│新築戸建は8割に施工不良がある!原因と対策を紹介」

 

【建物を支える土台を固定するボルトがずれているケース】

引用)さくら事務所コラム

「欠陥住宅の事例12選│新築戸建は8割に施工不良がある!原因と対策を紹介」

上記のような不具合が発生していると、その部分に力が集中し、建物にダメージが蓄積されます。

工事の品質は耐震面においても、重要と言えるでしょう。

専門家の力を借りて耐震性の高い家をつくろう

耐震等級とは品格法に基づいて定められた住宅性能表示の等級のひとつです。耐震等級3が最も高い等級で、震度7の地震に複数回耐えたデータも存在しています。

耐震等級は耐震性が高いだけでなく、地震保険の割引や長期優良住宅の認定条件などのメリットがある点も特徴です。

間取りや使用材料の工夫で比較的簡単に耐震性を向上できますが、施工品質にも左右される点に注意が必要です。しかし一般の方にとって不具合を見極めるのは至難の業。そこでさくら事務所のようなホームインスペクションを実施している業者にサポートを依頼するのがおすすめです。

さくら事務所では「新築工事中ホームインスペクション」サービスを実施しています。本サービスでは、完成後に確認ができなくなる基礎・構造・防水・断熱などの建物の重要箇所について、ホームインスペクター(住宅診断士)が工事中の検査を実施します。

年間100棟を超える調査では、実に「75%以上で施工の不具合」が見つかっており、特に耐震性に関わる検査では不具合発生率80%以上という結果でした。工事中の各検査や完成時の検査を組み合わせることで、施工ミスを未然に防げます。

無料相談を実施していますので、興味がある方はぜひお気軽にお問い合わせください。

完成後には発見できない重大欠陥を未然に防ぐ「新築工事中ホームインスペクション」

ホームインスペクター 柴尾 竜也
監修者

さくら事務所 プロホームインスペクター

柴尾 竜也

住宅の販売、仲介、現場施工管理、工事監理と一戸建て住宅に関連する業務に従事。その後、さくら事務所に参画。神奈川県を拠点として東日本に対応。