「コスパ」の良い物件を見極める6つのポイント

  • Update: 2023-10-23
「コスパ」の良い物件を見極める6つのポイント

建築コストや人件費などの高騰により、住まいの価格がどんどん上がっています。加えて光熱費や食料品、ガソリンなど、生活に不可欠なものの値上げも続いている今、少しでも「コスパ」の良い家を購入したいと考えている方は多いのではないでしょうか?

そこで今回は、コストパフォーマンスの良い物件を見極める6つのポイントを紹介します。

住まいにおける「コスパ」とは

まずは「コストパフォーマンスの高い家」とはどんな住まいなのか考えてみましょう。

コスパの考え方

住まいのコストは、次の2つに大別されます。

  • イニシャルコスト(取得時のコスト)
  • ランニングコスト(居住中のコスト)

住む期間にもよりますが、終の住処として40年、50年住み続けるとすれば、2つのコストのうち後者のランニングコストのほうが高額といわれています。いずれも安ければいいのですが、ランニングコストの低い家は、イニシャルコストが高い傾向にあります。

ランニングコストには、次のような費用が含まれます。

  • 光熱費
  • 税金
  • メンテナンス費
  • リフォーム・リノベーション費用

これらの費用は「ライフサイクルコスト(LCC)」といわれることもあります。

イニシャルコストが高くても、ライフサイクルコストを抑えられれば住まいにかかる総コストは下がるため、コストパフォーマンスは高くなるといえるでしょう。

コスパを見極めるポイント1.耐震性

近年、多発している大規模地震。近い将来の発生の切迫性が指摘される大規模地震は多数あり、エリアも広域にわたります。地震はいつどこで起こるかわかりませんが、震度6強や7の揺れを想定した場合、修繕費を考慮すれば耐震等級が高いに越したことはありません。

耐震等級による地震力に対する強度

(出典:国土交通省

耐震等級は、上記のように3段階です。耐震等級1は、建築基準法を満たしたレベル。大規模地震でも倒壊は避けられる可能性が高いですが、大規模な修繕や建て替えを要する破損が見られるかもしれません。一方、耐震等級3は、建築基準法の1.5倍の地震に対する強度を持っています。

耐震等級3の家は熊本地震でも大破・倒壊ゼロ

(出典:国土交通省

耐震等級3の住宅は、震度7を2回観測した熊本地震で被害が最も大きかったエリアでも大破・倒壊がなく、大多数は無被害で、被害があった住宅も軽微な小破に留まりました。

当然ながら、耐震等級を上げれば建築費は高くなりますが、一般的に差額は数十万円程度。費用対効果および「安心」を考えると、高い耐震等級の住宅を選ぶ価値はあるといえます。

コスパを見極めるポイント2.省エネ性能

省エネ性能についても基本的に性能の高さとイニシャルコストは比例しますが、毎日の光熱費が抑えられるため、一般的な住宅と高断熱住宅では、20〜30年程度でイニシャルコストが上がった分を回収できるといわれています。

また、今後の法改正および暮らしの快適性も考慮すれば、性能の高い住宅を取得するメリットは大きいと考えられます。2025年度には、すべての新築住宅に対し、省エネ基準への適合が義務付けられます。ここで求められる断熱等性能等級は「4」以上ですが、2022年には等級「5」「6」「7」が新設されました。

等級7

2022年(令和4年)10月1日施行。暖冷房にかかる一次エネルギー消費量をおおむね40%削減可能なレベルの性能。

等級6

2022年(令和4年)10月1日施行。暖冷房にかかる一次エネルギー消費量をおおむね30%削減可能なレベルの性能。

等級5

2022年(令和4年)4月1日施行。断熱等性能等級4より上位の「ZEH(ゼッチ)基準」相当が断熱等性能等級5になる。断熱材や窓ガラスなどは、断熱等性能等級4以上に高いレベルの断熱が必要となる。

等級4

1999年(平成11年)制定。「次世代省エネ基準」といわれる。壁や天井だけでなく、開口部(窓や玄関ドア)なども断熱が必要となる。

等級3

1992年(平成4年)制定。通称「新省エネ基準」。一定レベルの省エネ性能を確保。

等級2

1980年(昭和55年)制定。40年前の基準なので省エネのレベルは低い。

等級1

上記以外

※関連コラム:断熱等性能等級とは?「断熱性」を比較する基準と新設の等級6・7も解説

国土交通省は、2025年以降も次のように省エネ基準を引き上げることを検討しています。

2030年

新築について、ZEH(1年間で消費するエネルギーの量を実質的にゼロ以下にする家)水準の省エネ性能の確保を目指す

2050年

中古住宅を含めZEH水準の省エネ性能の確保を目指す

2024年度からは、不動産ポータルサイトなどの物件情報に省エネ性能が表示される制度もスタートします。これらの取り組みや改正により、省エネ性能は住まいに求められる大きな要素の1つとなっていくことでしょう。省エネ性能が住まいの資産価値に大きく影響する未来もそう遠くないはずです。

断熱性・気密性に大きく関わる「窓」

ひと昔前まで広く使われてきた窓は「アルミサッシ」です。しかし、アルミサッシは断熱性能が低く、今ではほとんど使われていません。アルミサッシが一般的だった頃のお住まいにホームインスペクションで伺うと、高確率で結露やカビの発生が見られます。木造住宅において最も怖いのは、シロアリの被害を受けてしまうこと。シロアリはジメジメとした環境を好むため、湿気は住まいの大敵であり、ライフサイクルコストを引き上げる大きな要因となります。

(出典:日本サッシ協会

結露の発生を抑制するには、住まいを高断熱化・高気密化することが有効です。住まいの断熱性・気密性を高めるには、開口部である窓が重要な役割を担います。アルミより熱を伝えにくい樹脂を使った樹脂サッシや複層ガラス、トリプルガラスの窓を選ぶことで、住まいのライフサイクルコストを大きく下げられるでしょう。

省エネ性能の高い家は住宅ローン減税でも優遇される

(出典:国土交通省

省エネ性能が高い住宅は、住宅ローン減税でも優遇されます。住宅ローン減税は、10年や13年など長きにわたって受けられる控除制度です。借り入れ限度額は、省エネ性能等によって上記のように異なります。

たとえば、2024年に新築のZEH水準住宅に入居した場合と省エネ基準適合住宅に居住した場合とでは、13年間を通じた控除額に最大45.5万円の差があります。控除額の差額もまた、たとえイニシャルコストがかかったとしても省エネ性能の高い住まいを取得すべき理由の1つです。

コスパを見極めるポイント3.維持管理のしやすさ・労力・費用

維持管理のしやすさも、住まいのコストパフォーマンスに影響する要素です。

省エネ性能が高い家なら維持・管理の負担も軽減する

建物の維持・管理にかかる労力や費用も、省エネ性能と密接に関わってきます。省エネ性能が高い住宅は、住まいの大敵である結露や湿気が発生しづらい傾向にあります。

建物の傷みを進行させる結露は、窓の周りなどで発生する目に見える結露だけではありません。壁の中で起こる「壁内結露」は、建物の構造部の劣化を進行させる大きな要因となります。省エネ性能が高い住宅は、目に見える結露だけでなく、壁内結露の発生も抑制するため住宅が長寿命化し、維持・管理にかかる労力や費用も抑えてくれるのです。

家の状態を把握しやすい構造であることも大切

都市部の3階建などの住まいに多く見られるのが、床下の高さが低いケースです。床下に潜り込めるスペースがないと、漏水など何かあったときや点検時に床下を調査することができません。これは屋根裏のスペースにも言えることです。

住まいの適正な維持・管理には、床下や屋根裏の点検は必要不可欠です。人や機械が潜って床下を調査することができる高さの目安は、30cmほど。住まい選びで床下や屋根裏の高さまで見る方は少ないですが、これを知っているか知らないかで住まいの維持・管理のしやすさは大きく異なります。

コスパを見極めるポイント4.外壁・屋根・内装材

外壁や屋根、内装材の耐久性も、住まいのコストパフォーマンスを大きく左右します。

外壁・屋根材

常に紫外線や風雨に晒され続けている外壁。適切にメンテナンスしていかなければ、雨漏りや躯体の劣化の要因になってしまいます。

一般的に使われている外壁材のうち「ガルバリウム鋼板」は、イニシャルコストは高めなものの、長持ちしやすいという特徴があります。従って、コスパが良い外壁材だといえるでしょう。

一方、多くのお住まいで使われている「サイディング」は、イニシャルコストが抑えられ、デザインも豊富ですが、コスパはガルバリウム鋼板に劣ります。とくに厚さが薄いサイディングは、適切なスパンで外壁塗装をしていたとしても30年前後で張り替えが必要になります。外壁を張り替えるとなると、足場を作り、外壁をすべて剥がしたうえで新たなものを張ることになるため、ライフサイクルコストは上がりやすいといえるでしょう。

屋根材も、長期的にみれば、ガルバリウム鋼板がコスパが良い仕様の1つです。スレートも多く採用される屋根材ですが、窯業系サイディングの外壁同様、30年前後で葺き直しが必要になってくるため、40年、50年スパンで考えるとコスパが良いとはいえません。

内装材

内装材は「新建材」と「自然素材」に大別されます。このうち、コスパが高いのは自然素材。新建材は、基本的に使い捨てることを前提とした建材ですが、自然素材はメンテナンス次第で半永久的に使うことができます。とはいえ、新建材はメンテナンスフリーであることも多く、維持・管理が楽というメリットがあります。

壁紙についても同様のことが言えるでしょう。新建材のシートフローリングはワックスやオイルがけなどが不要なうえにイニシャルコストも下げることができます。しかし、メンテナンスで長持ちさせることは難しく、劣化したら張り替えるしかありません。一方、自然素材の無垢フローリングはオイルやワックスなどを使ったメンテナンスをすれば、半永久的に使えるものもあります。

コスパを見極めるポイント5.間取り

暮らし方・働き方の多様化を受け、最近では3〜4畳程度の小さな書斎を作ったり、LDKの一角などにゆったりくつろげる「ヌック」を作ったりするのがトレンドです。

一方、建築コストが上がっている近年、住まいはどんどん狭小化しています。ワークスペースやリラックススペースは、住まいを取得した時点では必要なものかもしれません。しかし、限られたスペースに用途が限定される部屋や空間を取り入れると、経年によって利用頻度が落ちたり、将来、売却するときにトレンドが廃れてしまったときに使い勝手の悪い家として認識され、売りにくくなってしまったりすることも懸念されます。

少し前に「DEN(デン)」という多目的ルームを住まいに取り入れることが流行りましたが、今では納戸として使われているお住まいをよく目にします。昔は書斎やキッズスペースとして活用されていたDENも、今では使い方に悩んでしまっている方が多いのでしょう。

自分たちが住み続けるとしても、将来、売却するにしても、住まいにはある程度の可変性が求められます。あまり作り込みすぎた間取りや部屋にしてしまうと、将来、リノベーションが必要になり、ライフサイクルコストが上がってしまう要因にもなりかねません。

コスパを見極めるポイント6.設備

近年では、省エネとともに災害対策にもなる太陽光発電や蓄電池を住まいに導入する方が増えています。一方、共働き世帯が増えた昨今では、家事の負担を軽減してくれる食洗機や浴室乾燥機などの設備も人気です。

このような設備は、ライフサイクルコストを下げたり、家事効率を高めたりする効果に期待できますが、維持・管理には一定の費用がかかるということも併せて認識しておくことが大切です。家電や設備の寿命の多くは15〜25年。ライフサイクルコストは下がったとしても、同時期に修理や入れ替えが重なってしまうと家計を圧迫しかねません。節約できた分を少しずつ積み立てるなどし、修理や入れ替えに備えましょう。

まとめ

ここまで、イニシャルコスト、そしてランニングコストの面で、コストパフォーマンスの良い住宅を購入するためのポイントを見てきました。

最近では、ネットなどでよくよく情報収集をしてから住宅購入に臨む方が増えてきているように感じますが、イニシャルコストにはこだわっても意外とランニングコストまで考えられている方はまだそう多くないように思います。

それほど実際に住んでみないとわからない部分が多いというのも事実ですので、そのようなときはぜひ、さくら事務所の専門家相談をご利用ください。数え切れないほどの住まいと住まい手を見てきたプロの専門家だからこそのアドバイスをさせていただきます。