断熱等性能等級とは?「断熱性」を比較する基準と新設の等級6・7も解説

  • Update: 2022-12-02
断熱等性能等級とは?「断熱性」を比較する基準と新設の等級6・7も解説

住宅の性能の中でも「断熱性」は重要な要素となってきました。夏の暑さ、冬の寒さをしのぐには断熱性の高い家が必要です。断熱性はエアコンの使用を前提とする現在の住宅には不可欠なものとなっています。この断熱性の性能を表すのが断熱等性能等級です。断熱等性能等級は、2022年10月に「断熱等性能等級6、7」が新設されました。

そこで今回は断熱等性能等級と断熱性能について解説していきますので、ぜひ参考にしていただければ幸いです。

あなたのお家の災害リスクを診断!災害リスクカルテ

断熱等性能等級とは

断熱等性能等級とは、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)に規定された省エネ性能を表す等級のことを示したものであり、国土交通省が制定しています。断熱等性能等級はこれまでに何度も更新されており、2022年4月1日時点では5つのランクが設定されていましたが、同じく2022年10月1日から、新たに等級6、7が創設されました。

等級7 2022年(令和4年)10月1日施行。暖冷房にかかる一次エネルギー消費量をおおむね40%削減可能なレベルの性能。
等級6 2022年(令和4年)10月1日施行。暖冷房にかかる一次エネルギー消費量をおおむね30%削減可能なレベルの性能。
等級5 2022年(令和4年)4月1日施行。断熱等性能等級より上位の「ZEH(ぜっち)基準」相当が断熱等性能等級5になる。断熱材や窓ガラスなどは、断熱等性能等級4以上に高いレベルの断熱が必要となる。
等級4 1999年(平成11年)制定。「次世代省エネ基準」といわれる。壁や天井だけでなく、開口部(窓や玄関ドア)なども断熱が必要となる。
等級3 1992年(平成4年)制定。通称「新省エネ基準」。一定レベルの省エネ性能を確保。
等級2 1980年(昭和55年)制定。40年前の基準なので省エネのレベルは低い。
等級1 上記以外

では、これまでの最高である等級5と、10月から新設された等級6、7。求められる性能の違いを知るために、それぞれの等級で使用が求められる断熱材の仕様や厚さの一例(6地域・東京等の場合)を見てみましょう。

断熱材

等級5 等級6 等級7

天井断熱材

吹き込み用グラスウール18K 210mm 吹き込み用グラスウール18K 270mm 高性能グラスウール20K 210mm

壁断熱材

高性能グラスウール16K 105mm 【内側】高性能グラスウール16K 105mm
【外側】押出法ポリスチレンフォーム3種 25mm
【内側】高性能グラスウール20K 105mm
【外側】フェノールフォーム 100mm

床断熱材

【内側】高性能グラスウール24K 42mm
【外側】高性能グラスウール24K 80mm
押出法ポリスチレンフォーム3種 95mm 【内側】フェノールフォーム 100mm
【外側】フェノールフォーム 100mm
参照:国土交通省「③住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく住宅性能表示制度におけるZEH水準を上回る等級について」

https://www.mlit.go.jp/common/001430097.pdf

断熱等性能等級はUA値で定められる

もう少し詳しく見ていくと断熱等性能等級は、必要な「UA値(外皮平均熱貫流率)」が定められています。UA(ユー・エー)は「室内と外気の熱の出入りのしやすさ」を表したもの。建物の内外の温度差を1℃とした時に、建物の内部から外へ逃げる単位時間あたりの熱量を外皮面積で割ることで算出します。つまり、このUA値が小さいほど熱が出入りしにくく、断熱性能が高いということ。東京などの地域(6地域)に関して言えば、等級5ならUA値が0.6、等級6は0.46、等級7は0.26以下でなくてはなりません。

断熱等性能等級が上がると室内環境が快適になる

断熱等性能等級が上がるということはUA値が小さくなるということ。つまり、室内と外気の熱の出入りがしにくくなる、外気の温度が室内に伝わりにくくなる、ということです。これは要するに、エアコンを無駄なく効率的に使えるという意味でもあります。夏は設定温度が高めでも涼しくいられますし、同様に冬は設定温度を低めにしていても暖かく過ごせるようになるのです。

補助金を受けられる可能性がある

断熱等性能等級の高い住宅には、室内環境の他にもメリットがあります。その1つが、行政からの補助金。新築時に、国や県、市町村から補助金が下りる可能性があるのです。ただし、「県産の木材を○%以上使用していること」といった条件があることがありますので、補助金を活用する際にはよくチェックしておいてください。

断熱等性能等級4が最低限の水準となる

2022年10月以降、等級が1から7までの7段階になったわけですが、法改正により、2025年4月以降はすべての新築住宅に等級4が義務づけられました。つまり、新築住宅に関しては、断熱等性能等級4が「最低限」の水準になるということです。

2022年4月に等級5が新設される前までは最高水準だった等級4が、一気に最低水準に。工務店やメーカーは、これまでの戦略の見直しが必要になるでしょう。

さらに、断熱等性能等級3は注意が必要です。2025年4月に等級4が義務化されると、断熱等性能等級3の住宅は最低限の省エネレベルを満たしていないことになります。法律違反になるわけではありませんが、そうなることがわかっていれば、2025年度の基準に合わせておいた方が良いですよね。今後住宅を購入される際には注意が必要です。

断熱等性能等級4でも十分ではない

断熱等性能等級4は、今の技術レベルではそれほど高い断熱性能ではありません。これは、長期優良住宅の基準が2022年の10月に断熱等性能等級4から等級5に引き上げられたことからもわかります。

また、住宅金融支援機構のフラット35では、断熱等性能等級5レベルの新築住宅に対応したプランも準備され始めました。今後新築住宅では、等級5が標準になる時代がくるのは間違いないでしょう。

等級を上げると建築費用も高くなる

断熱等性能等級が高ければ高いほど過ごしやすい家になり、さらに補助金が受けられるメリットもあります。ただその反面、既に見てきたように、必要な断熱材の仕様や厚さが変わってきます。当然それは、建築費用にかかってきます。実際、どれくらい費用は変わるのでしょう。

仮に、いま新しく建てようとしている2階建て住宅の断熱等性能等級が5だとしましょう。もし断熱等性能等級6を取得しようとすればプラス100万円、断熱等性能等級7を取得しようとすればプラス200万円以上。これくらいのコストアップを見込んでおくといいでしょう。

住宅全体を考えると何千万円もの費用がかかるわけですので、100万円も200万円もほんの誤差に感じられるかもしれませんが、そこはいったん、どうぞ落ち着いて。空調が効率的になることで電気代を抑えながら快適な生活を送ることができるというメリット、それとコストアップによるデメリットを十分に比較検討してみてください。

建築士の説明義務を導入

通称「建築物省エネ法」の改正で建築士には、委託を受けた住宅の省エネ性能を説明する義務が生じました。

自分の設計した住宅が「この住宅は断熱等性能等級4相当です」、「この住宅は省エネ基準に達していません」といった説明です。

省エネ基準に達するようにするには、どれくらいの費用が必要かも説明します。少しずつ高断熱化に向けての取り組みは進められているのです。

HEAT20のG2・G3を目指そう

断熱性能を表す数値として、ここまでは「断熱等性能等級」を紹介してきましたが、もう一つの物差しもご紹介しましょう。「HEAT(ヒート)20」です。HEAT20は「一般社団法人20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」という断熱の普及を目指した団体が制定したもので、G1、G2、G3と3段階で断熱性能を表しています(数字が高いほうが性能が高い)。東京などの地域区分を例に、断熱性能を示す数値の1つであるUA値で比べてみると、

  • 断熱等性能等級5…UA値0.6/HEAT20G1…UA値0.56
  • 断熱等性能等級6…UA値0.46/HEAT20G2…UA値0.46
  • 断熱等性能等級7…UA値0.26/HEAT20G3…UA値0.26

となり、断熱等性能等級5とHEAT20G1はほぼ同じ、等級6とG2、等級7とG3はまったく同じであることがわかります。これから家を建てるのであれば、HEAT20の基準も参考にしたいものです。

ちなみに鳥取県では、国やHEAT20の基準を上回る独自の基準(とっとり健康省エネ住宅性能基準)を定め、より省エネ性能の高い住宅の供給推進を図っています。同基準は3段階に分かれており、T-G1(最低限レベル)はUA値が0.48、T-G2(推奨レベル)はUA値が0.34、T-G3(最高レベル)はUA値が0.23。これから暮らす場所を探す場合には、こうした自治体の動きにも目を配っておくといいでしょう。

断熱性能をチェックするには

あなたはご自宅の断熱性能がどのレベルなのか、ご存じですか?建築士には説明義務がありますので、もし説明を受けていない場合は、問い合わせてみてください。またさくら事務所のような第三者機関が図面調査を行うことで断熱性能を調べることもできます。

前述したように、2025年4月以降は、新築住宅において最低でも断熱等性能等級4が求められる点を念頭に置いてご確認ください。

また残念ながら、図面上での断熱性能が高くても、施工ミス、施工不良によって実際の断熱性能が下がってしまっているという例が数多くあります。断熱材というものはその性質上、住居が完成すると壁や床、天井に隠れて目に見えなくなるものですから、仕様通りに断熱材が使われているかどうかを確認できるのは「工事中」のタイミングしかありません。

新築工事中の施工ミスについて私たちが調べたところによると、断熱材に関係した箇所に関しては約80%の確率で何かしらの施工ミスが発生していることがわかりました。

さくら事務所では工事中の住宅を検査する「新築工事チェック」サービスも行っており、施工ミスを未然に防ぐべく、取り組んでいます。ぜひご活用いただき、断熱性能の高い住宅での快適な生活を手に入れてください。


また以下の動画では、断熱工事の注意点を住宅検査のプロが詳しく解説しています。
気になる方はぜひご覧ください。

断熱材の施工チェックには新築工事チェックサービスのご検討を

工程別の不具合発生率データ

暑さと寒さをしのぐには断熱が不可欠であり、エアコンの使用を前提とすると、断熱性能の低い家は省エネの観点からもマイナスとなります。

遅まきながらも少しずつ改善の傾向がみられる日本の断熱材ですが、実際に施工中のところへ断熱材の検査に伺うと、隙間があいていたり、断熱材がしっかり留まっていなくて下がってきていたりすることがあり、どんなに性能の良い断熱材を使用しても、施工がしっかりしていなければ断熱性能は低下しますし、壁の内部結露などを起こしてしまう可能性もあります。

新築工事の段階ですでに「約80%」の施工ミスを発見!

私達さくら事務所が、2019~2020年にかけて大手ハウスメーカーや地元の工務店まで幅広く工事中の施工ミスを集計・分析した結果、おおよそ8割近く発生していることがわかりました。

※【参考コラム】新築工事の時点で8割に欠陥が!?工程・タイミング別チェックポイント

新築工事チェック(建築途中検査)サービスは、本来施工ミスを防ぐ最も良いタイミングである工事中に、完成後には発見できない基礎・構造など建物の重要箇所について、建物に精通したホームインスペクター(住宅診断士)が複数回の検査をし、引き渡し時の完成検査(内覧会同行チェック)も併せて行います。

施工ミスの原因は、現場監督が「法律や規定を知らなかった」「うっかり間違えた」など、初歩的なことが多いです。しかし、工事中の施工不良は住宅完成後に立ち戻り検査をすることができなく、時限爆弾式に10年以上たってから大きな不具合が発生するなどのケースも多々あり、欠陥住宅を未然に防ぎたいお客様には、当サービスを強くおすすめしております。

  • 工事途中からのご利用も問題ありませんので、お急ぎの方はまずは一度お問合わせください。
  • 特に、現在設計もしくは建築中の住宅が断熱等性能等級3にあたる場合は、2025年度の省エネレベルに満たない可能性があります。まずはお早めにお問い合わせください。

さくら事務所は業界No.1!経験年数20年以上のプロ集団が提供

さくら事務所は、国内におけるホームインスペクション普及のパイオニア的存在であり、これまでご依頼実績は業界No.1(累計60,000件超)、満足度98%(Google口コミ☆4.8)と非常に有り難い評価をいただいております。

非常に重要な観点である「第三者性・中立性」を保持しながら、建築・不動産・防災・マンション管理など、あらゆる難関資格を持つメンバーが連携、サービスご利用後にもあらゆる住まいのご相談に対応するための「永年アフターフォローサービス」もご用意。これから暮らす住まいの安心に加え、心強い建築士と末永いお付き合いをいただける内容となっております。

  • ご依頼から概ね3日~1週間以内での調査実施が可能です。お急ぎの方は、まずはお問合せください!