「工務店へ家づくりをお願いしたいけどデメリットはあるの?」「ハウスメーカーと工務店とではどちらがいいの?」といった疑問は家づくりを始めたばかりの人の多くが抱えていることでしょう。
工務店に限らず、ハウスメーカーにもデメリットは存在します。どちらを選ぶかはデメリットを把握した上であなた自身にとってベストな判断や選択ができるかどうかがポイントです。
そこで今回は工務店のデメリットやメリット、ハウスメーカーとの特徴の違いについて解説します。工務店に向いているタイプの人や実施に依頼する際の注意点など、より実践的な内容も解説します。
ぜひ最後まで読んで、後悔のない家づくりを進めてみてください。
工務店のデメリット
工務店へ依頼する際に想定されるデメリットを見てみましょう。
具体的なデメリットは以下の通りです。
- 工期が長い傾向がある
- 工務店によって品質のばらつきがある
- 倒産リスクがある
それぞれについて解説していきます。
工期が長い傾向がある
工務店はハウスメーカーと比較すると工期が長い傾向があります。理由は現地作業がハウスメーカーよりも多い傾向があるためです。
たとえばハウスメーカーの場合は多くの部材を工場で生産、加工しています。中には本来現地で作業するような外壁や室内の壁下地なども工場で加工・組立てを行い、現場へ搬入するハウスメーカーも見られます。対して工務店は基本的に本来の建築工事の流れで進めるため、現地作業がほとんどです。その結果、工場での加工の差で工期にも差が生まれます。
工務店によって品質のばらつきがある
もう一つのデメリットは工務店によって品質のばらつきがある点です。ハウスメーカーの場合、施工マニュアルが完備されており、中には特殊な施工方法を要求されるため工事業者の認定制度や実習制度を行っている場合も見られます。
対して工務店の場合は一般工法での工事になるため、資材の選別や施工の技量は抱えている職人に左右されます。その結果、工務店によって品質にばらつきが生まれます。
倒産リスクがある
3つ目のデメリットは倒産のリスクがある点です。地域密着型の工務店はハウスメーカーと異なり、細々と経営しているケースがあります。中には家族経営で行っている場合も十分考えられるでしょう。そのためハウスメーカーと比べると経営の安定性においては不安があります。
加えて近年はウッドショックによる資材高騰や人材不足、コロナ禍による●●●などが重なり、中小工務店の倒産数が増加中です。
工務店が倒産してしまうと、アフターサービスが受けられなくなってしまったり、工事中の場合は工事がストップしてしまったりするリスクがあるので注意が必要です。
工務店のメリット
先ほどは工務店のデメリットを紹介しましたが、もちろんメリットも存在します。
具体的なメリットは以下の通りです。
- 使用や設計に関して自由度が高い
- コストが抑えられる
- 地域の特徴を把握している
工務店のデメリットだけでなく、メリットも合わせて把握して、注文住宅会社選びの参考にしてください。
仕様や設計に関して自由度が高い
工務店のメリットは仕様や設計に関して自由度が高い点です。基本的に工務店の場合は構造体以外の規格が決まっていないケースが多く、設備機器や建材などは自由に選択できる特徴を持っています。そのため断熱や耐震など、性能に関わる部分においても自由に選択可能です。設計次第では、ハウスメーカーの性能や仕様以上の建物も建てられる可能性もあります。
ただし工務店の中にはコストを抑えるために、いくつかの仕様パターンから選択するセミオーダー形式をとっているケースもゼロではありません。工務店へ依頼する際は事前にセミオーダーかどうかの確認は必要でしょう。
コストが抑えられる
ふたつ目のメリットはコストが抑えられる点です。工務店の多くはハウスメーカーのように大々的に広告・宣伝を行っていません。広告費が省ける分、建物価格も抑えられます。
工務店の中には家族経営の体制をとり、人件費も抑えて営業している工務店も存在します。
そのためハウスメーカーと比べて、安く注文住宅の建築が可能です。また先ほどのメリットと合わせればコストを抑えつつも、ハウスメーカーよりも高性能な家を建てられる可能性があります。
地域の特徴を把握している
地域密着型経営の工務店のメリットには、その地域の特色を把握している点が挙げられます。
地域によっては気候や地盤の強さ、水害の経験などを把握し、これらの情報を加味した設計を行ってくれる可能性が高いです。
とくに水害の情報は貴重で、市が提供しているハザードマップだけでは把握できないケースがあります。
ハウスメーカーでは営業範囲が広く、地域の工務店よりも土地の特色の把握は希薄になりやすい恐れがあります。
ハウスメーカーとの違い
工務店の特徴をより深く理解するためにハウスメーカーとの違いについて解説します。
具体的な違いは下記の通りです。
- ハウスメーカーは安定した品質かつ短工期が売り
- ハウスメーカーは積極的に広告している
それぞれ内容を見てみましょう。
ハウスメーカーは安定した品質かつ短工期が売り
ハウスメーカーは安定した品質と短工期が売りです。ハウスメーカーは多くの部材を工場生産で行い、施工マニュアルを用意しているため、品質が安定している傾向があります。
とくにプレハブ系のハウスメーカーは本来現地で行う作業を極力工場で行うなど、品質の安定化に力を入れています。
引渡し期限が限られている方や、品質第一に考えている方人にとってハウスメーカーはおすすめな選択肢です。
ハウスメーカーは積極的に広告している
ハウスメーカーは工務店と比較して、積極的に広告を出して知名度を獲得している点が特徴のひとつです。
広告費にコストを割いている分、商品価格にもその費用が乗ってきます。
結果として、同じような仕様の建物を建てる際、ハウスメーカーの建物は工務店よりも工事費が高くなる傾向があります。
工務店に向いている人の特徴
ここまで工務店のメリット・デメリットを紹介しました。しかし特徴を理解しても、自分が工務店とハウスメーカーどちらを選べば良いか、悩んでしまうという人もいるでしょう。
そこでここからは工務店に向いている人はどんな人なのかを解説します。
具体的なポイントは以下の通りです。
- 性能にこだわって家づくりをしたい人
- じっくり時間をかけて家づくりをしたい人
- きめ細かなアフターサポートを期待している人
それぞれ詳しく解説します。
性能にこだわって家づくりをしたい人
耐震性能や断熱性能などの建物性能にとことんこだわった家づくりをしたい人は工務店に向いています。建物性能はハウスメーカーの場合も一般水準から見ると高いレベルの家を建てられます。しかし規格化によって仕様が決まっている場合が多く、規格以上の性能を求めるのは難しいです。対して、工務店の場合は使用材料が自由に選べるため、高性能である家を実現できます。
ネームバリューを気にせず、とことん性能にこだわった家を作りたい人に工務店はおすすめです。
じっくり時間をかけて家づくりをしたい人
じっくりと時間をかけて家づくりしたい人も工務店向きです。
工務店の場合、モデルハウスがなかったり、積極的に広告していなかったりなどのケースが見られ、情報収集に労力が必要です。
資料請求や情報誌のチェックだけでなく、工務店へ直接問い合わせたり、工務店主催の構造見学会や完成見学会などへ参加したりなども必要となるでしょう。
このような労力を苦に感じず、家づくりを楽しんで行えるかどうかが、見極めるポイントのひとつです。
きめ細かなアフターサポートを期待している人
工務店はきめ細かなアフターサポートを期待している人にも向いています。もちろんハウスメーカーにおいても充実したアフターサポートを整備されている場合がほとんどです。ただし組織的にアフターサポート制度が整備されているため、担当者が変わったり、対応に時間がかかったりなどの可能性があります。
対して工務店の場合は地域密着型の経営を行っているため、地域の評判は直接業績につながる重要な要素です。そのため工務店は信頼を得るために、アフターサポートに関しては手厚い傾向があります。気軽に相談できたり、すぐに対応に駆けつけてくれたりなど、スピーディーかつ柔軟な対応も、担当者によっては期待できるでしょう。
工務店の選び方、依頼方法
ここからは工務店の選び方、依頼方法について解説します。
依頼までは以下の通り進めていくのがおすすめです。
- 雑誌やSNSなどで情報収集
- 気になる工務店のイベントに参加する
- 工務店へ見積もり依頼をする
- 比較検討して工務店を決める
とくに工務店は広告を出していないため、情報収集に労力が必要です。スムーズに工務店を選ぶためには手順を把握しておくと良いでしょう。
それぞれのポイントについて見てみましょう。
雑誌やSNSなどで情報収集
まずは家を建てるエリアに対応した工務店を洗い出すところから始めます。そのために雑誌やSNSなど、複数の手段で情報収集を行いましょう。
具体的な工務店の情報収集方法には以下のものが挙げられます。
- 雑誌
- 工務店検索ポータルサイト
- 知人からの評判
- オーナーのSNS投稿
住宅情報誌の中に地域の工務店情報をまとめたものがあります。またWeb上に工務店情報が検索できるポータルサイトなどもあるため、比較的楽に情報収集が行えます。活用してみるのも良いでしょう。加えて気になる工務店のSNSで施工事例や現場の様子をチェックしてみると、工務店の特徴を把握できるのでおすすめです。
上記の他には知人やオーナーのSNSでの口コミ情報などを参考にすると良いでしょう。ただし、口コミの中には信ぴょう性が低いものも存在するため、注意が必要です。
気になる工務店のイベントに参加する
情報収集をした上で気になる工務店がいくつかピックアップできたら、その工務店が主催しているイベントに足を運びましょう。
ここでいうイベントとは以下のものです。
- 構造見学会
- 完成見学会
- オーナー宅訪問会
上記のイベントへ足を運ぶと、工務店の現場作りや実物の施工事例を確認できるため、よりリアルに工務店の特徴を感じられます。また場合によっては施主の話を聞ける場合もあるため、とても貴重な機会といえます。ハウスメーカーと比べて情報が少ないからこそ積極的にイベントへ参加し、検討材料を集めると良いでしょう。
工務店へ見積もり依頼をする
イベント参加などを通して依頼したいと感じた工務店が見つかったら、実際に見積もり依頼をしましょう。理想は1社ではなく、2、3社程度に見積もり依頼をするのがおすすめです。複数社に見積もりを依頼することで、建築費の比較検討ができます。
ただし、見積もり比較をするためには希望条件を揃えておく必要があります。見積もり依頼前に自身の希望条件をできるだけ具体的に書き出しておき、各社で要望がずれないように注意しましょう。
比較検討して依頼する工務店を決める
見積もりが出揃ったらいよいよ依頼する工務店を決めます。ここでの注意点は見積もり金額だけで判断しないことです。
これまでに情報収集した工務店の特徴やイベントでの経験や口コミなどを総合的に判断して、自身の希望条件を多く叶えてくれそうな工務店を選びましょう。
工務店に依頼する際の注意点
工務店へ依頼する際には注意点が存在します。「こんなはずじゃなかった」と後悔しないためにも工務店へ依頼する際の注意点について押さえておきましょう。
工務店に依頼する際の注意点は以下の通りです。
- 2種類の依頼方法がある
- 住宅完成保証制度の確認をする
- アフターサービスの確認をする
それぞれの注意点について解説します。
2種類の依頼方法がある
工務店への依頼方法は下記の2種類があります。
- 一括発注方式:設計・工事を一貫してひとつの工務店が請け負う方式
- 分離発注方式:設計は設計事務所、工事は工務店へそれぞれ分離して依頼する方法
一括発注方式のメリットは設計・工事がワンストップで行われるため、情報伝達や調整ごとがスムーズに行えます。また施主にとっても担当者が固定されるため、やりとりがシンプルになりなため、手間がかからない点もメリットのひとつです。対してデメリットに工事管理・監理それぞれ本来の機能を果たせない点があります。
本来は工事管理を工務店などの施工会社、工事監理を設計事務所が行います。施主と合わせた3つの関係性でそれぞれがチェックを行うことで、工事の品質や仕上がりがを担保されるわけです。しかし一括発注方式の場合は設計・工事ともひとつの会社が行うことになるので、この3者の関係性が崩れてしまいます。
対して分離発注方式は、3者の関係性が崩れることなく依頼できます。
どちらかを選択して工事を行うことになるのですが、工務店の多くが一括発注方式を採用しているのが実情です。
「一括発注方式の弱点を補う方法はないの?」と感じた人もいるでしょう。そのような人にはホームインスペクションの導入をおすすめします。
ホームインスペクションを工事中に入れることで、工事監理に近い立場で第三者性を保ちながら工事チェックが実施可能です。不具合が見つかった際は施主に代わって施工会社とのやりとりも行えますので、安心して利用できます。
住宅完成保証制度の確認をする
工務店へ依頼をする際は住宅完成保証制度に加入しているか確認をしましょう。
住宅完成保証制度とは加入している工務店が倒産するなどで工事を継続できなくなった際に、発注者が最小限の追加負荷で住宅完成できるように保証会社がサポートする制度です。
前払金や工事の引き継ぎにかかる費用などが保証されます。
前述の通り、近年は工務店の倒産数が増加傾向にあります。万が一のリスクに備えて住宅完成保証制度への加入有無は必ずチェックしておきましょう。
アフターサービスの確認を行う
会社が異なれば得られるサービスが異なるのは当然のことです。この点はアフターサービスにおいてもいえます。
地域密着型の工務店は評判が業績につながる重要なポイントなので、アフターサービスに力を入れている場合が多いです。
ただし、保証期間や対象については工務店の考え方により異なるため「こんなはずじゃなかった…」と後悔しないように、事前に内容確認を行いましょう。
また会社の社風や社員の人柄は気軽に相談できる、親身に聞いてくれるなど、アフターサービスの対応にも左右されるポイントです。打ち合わせを通して見極めておくと良いでしょう。
工務店への依頼はしっかり情報収集するのが大切!
工務店には工期の長さや倒産リスク、品質などの懸念点があります。しかし、じっくり家づくりを楽しみたいという人にはハウスメーカーとは違った魅力を感じられる特徴を持っています。
また注意点を押さえておけばデメリットで解説したリスクについても抑えられるため、今回紹介したポイントをしっかりと理解しておきましょう。
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