厳しい夏の暑さ対策として効果的なのは、なんといってもエアコンといえるでしょう。
しかし、エアコンの持つパフォーマンスは、設置する環境に左右されることはご存知でしょうか?
エアコンを設置するときには、機種や設置位置などをしっかり検討することが効率を高めるうえで重要です。
今回は、エアコンを新規に設置するとき、十分なパフォーマンスを発揮するために注意しておきたい2つのポイントについてご紹介したいと思います。
ポイント1:住環境に適したエアコンを選ぶこと
まずエアコン選びにおいて、多くの人が参考にするのは「畳数」になるでしょう。
この「畳数」は、エアコンの能力を知るうえで目安となる重要な指標です。
では、もし「畳数」と設置する部屋が適合しないとどのような影響があるでしょうか?
設置する部屋の大きさがエアコンの能力よりも小さい場合、まず適正な能力の機器を設置するよりも導入コストが高くなる可能性があります。
そして必要以上の能力を使うため、ランニングコストの増加にもつながります。
さらにはエアコンが効きすぎることで体調不良の原因になるかもしれません。
逆に設置する部屋の大きさがエアコンの能力よりも大きい場合、運転中は能力が追い付かず常にフル稼働している状態になります。
そうなるとランニングコストの増加につながるばかりか、エアコンへの負荷がかかり過ぎて寿命を縮めることにもなります。
いずれにせよ、部屋の大きさとエアコンの能力が一致していないと十分なコストパフォーマンスは得られないということです。
そしてエアコン選びは、建物の断熱性能や部屋の位置などの住環境によっては能力過多になったり、あるいは能力不足になったりすることがある点でも注意が必要です。
●エアコンの「畳数の目安」の注意点
エアコンの「畳数の目安」には注意しなくてはいけないことがあります。
例えば、「畳数の目安」表示が「冷房8~12畳」だった場合、単純に8~12畳の部屋に適した機種ということではありません。
「畳数の目安」の表示は、小さい数値は木造住宅に適した畳数、大きい数値は鉄筋コンクリート造住宅に適した畳数になります。
つまり「冷房8~12畳」のエアコンの場合は、木造住宅なら8畳の部屋に、そして鉄筋コンクリート造住宅なら12畳の部屋に適しているということです。
エアコンの機種選びの際は、設置する住宅の建物構造を考慮し、そして部屋の大きさとエアコンの能力が一致するように決定しましょう。
●建物の断熱性能による注意点
建物の断熱性能によって、エアコンの効果は大きく変わります。
エアコンは、「畳数の目安」に適合するものを選んだほうがよいことは解説した通りです。
ただしこの基準は、1964年に定められて未だ見直されていません。
当時の住宅事情はというと、断熱基準などはなく断熱材が入っている住宅などは皆無でした。
つまり現在の断熱基準に照らし合わせた場合、能力過多になることは明らかといえます。
とくに1990年に改正された「次世代省エネ基準」で建てられた住宅は、ハイレベルな断熱性能を有しています。
したがって「次世代省エネ基準」を満たす住宅であれば能力過多になる可能性が高く、間違っても「畳数の目安」以上のエアコンの設置はしないことをおすすめいたします。
●部屋の位置による注意点
エアコンを設置する部屋の位置によっては、エアコンの能力不足が起こることがあります。
おもに室内温度が上昇しやすい環境になりますが、例えば戸建て住宅やマンションの最上階、あるいは吹き抜けのあるリビングや西日が差し込む窓のある部屋などです。
これらの部屋はエアコンの設置とともに、遮熱ガラスへの交換やすだれの設置など日射熱への対策も考慮する必要があるでしょう。
ポイント2:電力効率を下げない設置を検討すること
エアコンは室内機と室外機を設置しますが、それぞれの配置を考慮することも重要なポイントです。
電力効率を下げない場所への設置を検討することで、かなりのムダを省けます。
こちらでは、室内機と室外機を設置するときの配置について、電力効率を下げないためのポイントやその他注意しておきたいポイントも併せてご紹介したいと思います。
●室内機を配置するときの注意点

まずは室内機からです。
- 吹き出し口周辺に障害物がないこと
吹き出し口周辺に障害物があると、エアコンからの風が遮断され部屋全体に行きわたらない場合があります。
タンスなど障害物がない場所に設置するか、あるいはエアコンを設置する場合は障害になりそうなものは移動させることが重要です。 - 部屋の短辺側の壁に設置すること
エアコンの吹き出し方向に奥行がある方が、効率のよい対流が生まれやすくなります。
逆に奥行のない位置だと、空気の動きが小さく温度ムラが大きくなってしまいます。
やむをえない場合は、サーキュレーターなどを使って空気を循環させるなどの工夫が必要です。 - 構造上重要な壁に穴をあけないこと
エアコンを設置する位置に配管用の穴がない場合は、新規にあける必要があります。
しかし耐力壁など構造上重要な壁にあけてしまうと、耐力が低下して耐震機能を損ねる可能性があります。
穴をあける必要がある場合は、住宅会社に聞いておくなど事前にチェックしておくことが重要です。 - 下地補強をしている壁に設置すること
エアコンを壁に設置するときには、壁には重量を支える強度が必要です。
重量を支える強度を確保するには、石膏ボードの裏側に合板を入れるなど補強しなくてはいけません。
下地補強のない壁に設置すると、場合によっては落下してしまうこともあります。 - エアコン専用のコンセントがあること
エアコンの設置位置付近には、専用のコンセントが必要です。
ない場合は分電盤から新しく配線し増設することになります。
●室外機を配置するときの注意点

続いて室外機です。
- 適正な配管の経路を確保すること
室内機と室外機をつなぐ配管は、長さや高低差などメーカーごとに規定があります。
規定を超えた場所に配置すると本来の能力は発揮できません。
また配管の距離が長くなるほど能力は低下するため、室内機と室外機の距離はできるだけ短くなるよう検討するとよいでしょう。 - 室外機周辺に一定以上のスペースを確保すること
室外機は、おもに背面から吸気をして前面から排気するため、一定以上のスペースがないと効率が低下するばかりか故障の原因にもなってしまいます。
またメンテナンス時には作業するためのスペースも必要です。
これらスペースについてもメーカーごとに規定が定められています。 - 直射日光が当たらないようにすること
室外機周辺で、直射日光が当たって温度が上昇しやすい環境にあると、熱交換機に負荷がかかり電気代の高騰につながります。
直射日光が当たらない場所に設置するか、日よけカバーを取り付けるなど温度低下を図るとよいでしょう。 - 近隣に迷惑がかからない場所を選ぶこと
夏の冷房時は、室外機の前面から熱風を排気します。
近隣の敷地に向かって排気するようだと迷惑をかけてしまうこともあるでしょう。
また室外機の運転中は低周波音を発生させますが、人によっては睡眠障害や食欲不振などの健康被害を生じることもあります。
近隣に配慮しながら室外機の配置を検討することも重要です。
まとめ
エアコンを設置するときのポイントをまとめると以下の2点になります。
- 住環境に適したエアコンを選ぶこと
- 電力効率を下げない設置を検討すること
エアコンの電力効率を高めることは、同時にエアコンへの負荷を軽減することにつながります。
要するに、節電をしながらエアコンの寿命を延ばすことにもつながるわけです。
また運転中には、冷風が部屋中に行きわたるよう風通しをよくすること、そしてサーキュレーターで空気を循環させることなどの工夫も重要なポイントです。
これからエアコンを新しく設置するというご家庭は、以上のポイントを参考にしてみてはいかがでしょうか。