新築工事の着工遅れは珍しいことではありません。しかし、着工遅れが原因で引き渡しに影響が生じると、大きなトラブルに発展する可能性もあるため注意が必要です。
本記事では、新築工事の着工遅れが発生する理由について解説します。着工遅れが発生した場合の影響や的確な対応なども紹介しているので、併せて参考にしてください。
新築工事の着工遅れが発生する理由とは
新築工事の着工遅れが発生する理由は、主に以下の3つです。
- 人手不足
- 工事ラッシュの時期による影響
- 建築確認申請に時間がかかっている
それぞれの理由について、詳しく解説します。
人手不足
現場で働く職人が不足すると、着工遅れが発生しやすくなります。新築工事を行う際は多くの職人が必要となるものの、少子高齢化の影響によって職人が不足しているのが現状です。そのため職人の手が足りず、一つひとつの工程が遅れたり、必要な作業に手が回らなくなってしまったりすると、工事に着手できなくなる可能性があります。
各売主も必死になって人員の手配を行っているものの、なかなか人手不足を解消するのは難しいでしょう。
工事ラッシュの時期による影響
新築工事の着工遅れは、工事ラッシュの影響も考えられます。特に同じ地域内で新築工事が集中している場合は、なかなか人員が集まらず作業に影響を与えている可能性も否定できません。新築工事に関わっていた職人が急に変更となったり、現場監督と連絡が取れなかったりする場合は、工事ラッシュによる影響が懸念されます。
なお、工事ラッシュによって起きる着工遅れは人手不足に陥っているため、急かしても解決するのは難しいでしょう。
建築確認申請に時間がかかっている
新築工事の着工遅れが発生する理由に、建築確認申請に時間がかかっていることも考えられます。建築確認申請とは、新しく建物を建てるときに必要な申請のことです。つまり、建築確認申請に通らないと、新築工事を開始できません。そのため、申請に時間がかかってしまうと、着工遅れの原因となります。
基本的に、建築確認申請は1~2週間で終了します。しかし、書類の不備や担当者のミスがあると申請に時間がかかってしまうため、事前準備をしっかりと行っておくことが大切です。
着工遅れが発生しそうなサイン
着工遅れが発生しそうなサインは、以下のとおりです。
- 着工寸前で予定の職人さんが突然変わる
- 現場監督からのメールが返ってこない
それぞれのサインについて詳しく見ていきましょう。
着工寸前で予定の職人さんが突然変わる
着工寸前に「大工さんがケガをしました」「予定していた職人さんが来られなくなりました」と、職人さんが変更になるケースも聞かれます。
もちろん本当かもしれません。人手不足でアサインできず…やむなくといった場合もあり得ます。
予定外の職人さんだからといって一概に「施工トラブルになるかも…」とも限らず、新しい担当がとても頼りになる職人さんでスムーズに工事が進むこともあるかもしれません。
ですが、人が足りない中で突然来る場合は、打合せ不足・情報共有不足であるケースも考えられるため、不具合や工期遅れ、施工トラブルなどにつながるサインと言えるでしょう。
現場監督からのメール返信が返ってこない
この時期の現場監督は多忙ですが、大切な連絡の返信がなかなか返ってこないのが常態化している場合は、多くの担当を持ちすぎていて、ひとつひとつの工事に目を配れない状況である可能性も…。
やはり不具合・施工トラブルのリスクも高くなるでしょう。
着工遅れが発生した場合の影響
着工遅れが発生した場合に考えられる影響は、主に以下の2つです。
- 手抜き工事による欠陥住宅
- 引き渡し時期が遅れる可能性
それぞれ、どのような影響が起きるのか詳しく解説します。
手抜き工事による欠陥住宅
着工遅れが発生した場合、欠陥住宅が完成する可能性があります。着工遅れを取り戻そうと急いで工事を進めていくため、結果的に手抜き工事となってしまうからです。釘やビスが正しい場所に打たれていなかったり、断熱材の施工が雑なために住み心地の悪い住宅になったりと、さまざまな影響が懸念されます。
もちろん、着工遅れがあったからといって、必ずしも手抜き工事が行われるというわけではありません。しかし、手抜き工事が行われる可能性が高くなることを理解しておくといいでしょう。
引き渡し時期が遅れる可能性
着工遅れがあると、引き渡し時期も遅れる可能性があります。引き渡しとは、住宅を購入して自分の家にすること。引き渡し時期が遅れると仮住まいの期間が延びてしまい、余分な家賃を払わなければいけなかったり、前の家を処分するタイミングを再調整する必要があったりと、さまざまな影響が生じます。また、家が未完成のまま引き渡しされるリスクもあるため注意が必要です。
着工が遅れると新居の引き渡しまで問題が長引く可能性もあるため、施主には適切な対応が求められます。
着工遅れが起きた場合の的確な対応
着工遅れが起きたときの的確な対応は、以下のとおりです。
- 工期よりも完成度を優先して工期を急かさない
- 損害賠償金の請求を検討する
それぞれの対応方法について詳しく解説します。
工期よりも完成度を優先し工事を急かさない
着工遅れが起きた場合は、工期よりも完成度を優先してもらいましょう。工期を間に合わせるために、手抜き工事が行われていたら意味がありません。安心して暮らせる住宅を手に入れるためにも、工事を急かさずに完成度の高い施工を行ってもらうことが大切です。
なお、手抜き工事をしていないかチェックするためには、ホームインスペクション(住宅診断)を活用するのがおすすめです。ホームインスペクションとは、住宅に精通したホームインスペクターが第三者の視点で住宅をチェックする業務のこと。欠陥の有無や改修すべき箇所などのアドバイスを行ってくれます。
損害賠償金の請求を検討
着工遅れによって引き渡しに影響が出るようであれば、損害賠償金の請求を検討しましょう。引き渡しが延びれば仮住まいの家賃を余分に負担したり、引っ越し日時を変更したりすることで生じる差額代金など、さまざまな損害が生じます。
また、着工遅れの影響が引き渡しにまで及んだ場合、売主の管理体制が十分でない可能性も否定できません。こちらの意向に対応してもらえないことも多いため、損害賠償金の請求も視野に入れておくといいでしょう。
着工遅れを発生させないための事前対策
着工遅れを発生させないための事前対策は、以下のとおりです。
- 遅延賠償金額を明確に定めておく
- 契約前に着工日を明記してもらう
それぞれの対策について見ていきましょう。
遅延賠償金額を明確に定めておく
着工遅れを防ぐために、遅延賠償金額を明確に定めておきましょう。引き渡しの遅延で発生した損害は、売主に請求できます。しかし、後から申立てを行うと「言った・言わない」のトラブルになったり、業界の慣習だからと取り合ってくれなかったりします。そのため、事前に遅延賠償金額を明確に定めておくことが大切です。
遅延賠償金額を決める際は「理由にかかわらず遅延が発生したら払うこと」も明記してもらうことが大事です。実害がなくても請求できる準備はしておきましょう。
契約前に着工日を明記してもらう
着工遅れを発生させないためには、契約前に着工日を明記してもらうことも大切です。売主によっては「着工日は記載していませんが、確実に工事を進めていくので信じてください」と伝えてくるケースがあります。たとえ対応の良い売主であったとしても、着工日は必ず契約書に記載してもらうことが重要です。
契約書に着工日を記載していないとのちのちトラブルに発展する可能性があるため、しっかりと確認しておきましょう。
ホームインスペクションの導入で安心の住宅造りを
新築工事の着工遅れは、引き渡しにも影響を与える可能性があるため軽視できません。着工遅れを未然に防ぐためにも遅延賠償金額を明確に定めておいたり、着工日を契約書に明記したりして対策を取っておきましょう。あらかじめ対策を取っておけば、大きなトラブルに発展する可能性も低くなります。また、着工遅れが発生しそうなサインが見られるときは、早めに売主に確認しておくと安心です。
なお、工期が遅れそうな場合は、工事を急かすことなく完成度を優先してもらいましょう。手抜き工事になっていないか確認する際は、ホームインスペクションがおすすめです。さくら事務所のホームインスペクションでは、工事中の検査から立ち会ってチェックできるため欠陥住宅を未然に防げます。