いつの間にか家のコンクリートにひび割れが発生していた…。このような経験がある人は多いのではないでしょうか。
コンクリートにひび割れが発生していると不安に感じるでしょう。しかしすべてのひび割れが直接的に家の安全性に影響するわけではありません。
今回は危険性の高いひび割れの見極め方と補修方法、ひび割れが発生する要因などを
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の依頼実績を持つ、さくら事務所所属の住宅診断士が解説します。
危険なひび割れを見分けるポイント
家のコンクリートにひび割れを見つけた際、「大丈夫なのだろうか」と不安に感じることでしょう。しかしコンクリートのひび割れがすべて危険なわけではありません。もちろん構造体に支障をきたすものもありますが、程度によっては放置しても問題がないひび割れも存在します。
危険なひび割れかどうかは以下の目安で判断が可能です。
- ひび割れ幅が0.3mm以上か
- ひび割れ深さが4mm以上か
- ひび割れが1箇所に集中していないか
それぞれの確認方法も含めて詳しくみてみましょう。
ひび割れ幅が0.3mm以上か
コンクリートにおけるひび割れの危険性を確認する目安のひとつはひび割れの幅です。
ひび割れ幅が0.3mm以上かどうかが危険性を判断する目安です。0.3mm以上のひび割れ幅は構造体に影響を与えると考えられており、さらにひび割れが進行すると雨水の浸入を引き起こし、コンクリートの内部から腐食を引き起こす恐れがあります。
対して0.3mm未満のひび割れは危険性が低いひび割れで、「ヘアークラック」と呼ばれています。ヘアークラックの場合はすぐに危険を及ぼすひび割れではないことから、補修は必須ではありません。しかし時間が経過するごとにひび割れが広がる可能性も考えられるため、定期的な観察や状況に応じた処置が求められます。
ひび割れの幅は「クラックスケール」と呼ばれる道具を使用すると、簡単に測定ができます。ホームセンターなどで購入が可能なので、持っておくと良いでしょう。
https://www.sakurajimusyo.com/guide/33944/
http://www.qsr.mlit.go.jp/onga/cpds_20160907/images/h25/siryou_0829_1_1.pdf
ひび割れの深さが4mm以上か
コンクリートのひび割れが危険な状態かどうかはひび割れの深さからも判断ができます。
ひび割れの深さが4mm以上の場合は早急に補修が必要な状態といえます。先に述べた幅とともに深さが目安を超えているひび割れは構造クラックや貫通クラックなどと呼ばれ、コンクリートの耐久性に影響を及ぼす恐れが高い状態です。
建物の基礎や柱などの構造体にひび割れが深くまで進行すると、コンクリート内部に隠れている鉄筋にまで到達する可能性があります。鉄筋までひび割れが及ぶと、空気中の水分や雨水の浸入によってコンクリートの劣化の進行が早まってしまいます。そのため、ひび割れ深さが4mm以上の場合は早急に対処が必要でしょう。
ひび割れ深さは幅の測定と異なり正確な測定が困難です。なぜならひび割れは直線ではなく、曲線で発生するためです。そのため最端部まで測定しようと思うと、特殊な機械を用いなければなりません。
とはいえ簡易的に測定する方法は存在します。その方法はピアノ線や針金を使用する方法です。細く、曲げやすいピアノ線や針金であれば、おおよその深さまで測定ができるので、専門業者へ調査依頼する前に自身で測定してみるのも良いでしょう。
ひび割れが1箇所に集中していないか
ひび割れの状況がヘアークラックのような軽微なひび割れだとしても、集中して発生している場合は注意しましょう。コンクリートのひび割れが1箇所に集中して発生している場合は、その部位に力や荷重が集中している証拠です。
危険性を判断する目安は1m範囲内に3箇所以上ひび割れが発生しているかどうかです。この目安を超えたひび割れが発生している場合は、不同沈下など何かしらの要因が存在する可能性が考えられます。早急に専門家に相談しましょう。
ひび割れを放置するとどうなるのか
ここまでひび割れの危険性について解説しましたが、危険なひび割れを放置するとなぜ問題なのかをもう少し詳しくみてみましょう。
ひび割れを放置していると以下のような順に劣化が進みます。
1. ひび割れが広がる
2. コンクリート内部に水分が浸入する
3. 鉄筋が錆びて内部から破壊が進む
それぞれ順を追って解説します。
1.ひび割れが広がる
危険性の高いひび割れは、コンクリートが何かしらの荷重を受けて発生しているケースが多いです。そのため、放置している間も繰り返し荷重を受ける事で、ひび割れの幅や深さ、範囲が広がって行きます。
場合によっては内部の鉄筋にまでひび割れが到達する可能性もあります。
2.コンクリート内部に水分が浸入する
ひび割れの幅が0.3mm以上になると、ひび割れから雨水をはじめとした水分がコンクリート内部へ浸入して行きます。
寒冷地の場合、コンクリート内部の水分が凍結融解を繰り返す事でひび割れが悪化する原因にもなります。
3.鉄筋が錆びて内部から破壊が進む
建物の基礎や柱などの構造体にコンクリートが使用されている部分には、コンクリート内部に鉄筋が入っているケースがほとんどです。
これらの部分でひび割れが広がり、鉄筋まで到達すると水分によって鉄筋に錆びを引き起こし、腐食が始まります。
腐食が進行すると鉄筋が膨張し内部からコンクリートの破壊が進みます。この段階まで劣化が進行するとコンクリートの耐久性が一気に低下するため非常に危険な状態です。
ひび割れの補修方法
許容範囲を超えたひび割れを放置していると非常に危険です。危険なひび割れを発見した場合は早急な補修を行いましょう。
補修方法は主に以下の3点が挙げられます。
補修方法 |
作業内容 |
費用相場 |
Uカットシール工法(Vカットシール工法) |
ひび割れ部分をU字型にカットし、補修材を充填して表面を整える方法 |
4,000~6,000円/m程度 |
ビックス工法 |
専用器具を用いて、ひび割れの奥深くまでエポキシ樹脂を注入する方法 |
10,000~20,000円/m程度 |
アラミド繊維シートの貼り付け |
ひび割れが生じている基礎表面にアラミド繊維シートをエポキシ樹脂で貼り付けた後、その上をモルタルなどで整える方法 |
20,000~30,000円/m程度 |
引用)さくら事務所コラム 【中古住宅の基礎にひび割れ】正しい見分け方と補修方法を徹底解説
https://www.sakurajimusyo.com/guide/33944/
Uカット(Vカット)シール材充填工法
Uカット(Vカット)シール材充填工法は、ひび割れの幅が深くまでひび割れ発生部分を、U字またはV字の溝ができるように大きくカットします。カットした部分に防水性能のあるシーリング材を充填し、仕上げはセメントで表面を整えます。
充填したシーリング材によって雨水が内部へ浸入しにくくなるのに加え、弾性の高いシーリング材がコンクリートの変形に追従するため、ひび割れが進行しにくくなります。
ただし、この工法の効果は表面からの雨水浸入を妨げるもので、構造体としての耐久性を補強するものではありません。
相場は4,000~6,000円/m程度、工期は規模にもよりますが、おおむね1〜2日です。
ビックス工法(低圧注入工法)
ビックス工法はひび割れが鉄筋まで到達しているような、進行度の高いひび割れに有効な工法です。
エポキシ樹脂などの補修材を特殊な器具を用いてひび割れに加圧注入します。加圧は低圧で行われ、ひび割れの深層部までゆっくりと補修材を充填します。
施工完了後はひび割れ発生前の健全な状態と同等の耐久力まで回復可能と言われており、構造クラックの補修に最適な工法です。
費用は10,000〜20,000円/m程度とUカットシール工法より高額で、工期は2日程度必要です。
アラミド繊維シート貼り付け工法
アラミド繊維シートは劣化が進行したコンクリート構造体の補強に適した工法です。
鋼材の引張強度と比べて約7倍の強度をもつアラミド繊維をシート状にし、基礎などの構造体にエポキシ樹脂などで貼り付けて補強します。
劣化によって低下した基礎の耐久力を、エポキシ樹脂で貼り付けたアラミド繊維が受け持ちます。そのため鉄筋の腐食によって内部から破壊が進んだコンクリート基礎の補強などに最適です。
費用は20,000円前後/mです。基礎補強工期は1~3日程度とされています。
DIYで補修しても大丈夫なのか
専門業者を呼んでの補修は相応の費用がかかります。そのため少しでもコストを抑えるためにDIYで補修したいと考える人もいるでしょう。
結論から言うと軽微なひび割れであればDIYでの補修は可能です。
ただし、DIYでのひび割れ補修を行うには以下のポイントを押さえておく必要があります。
- DIYで補修可能なのは0.3mm以下のヘアークラック
- DIY補修は見た目を良くするための応急処置
それぞれ詳しく解説します。
0.3mm以下のヘアークラックはDIYで補修可能
DIYでひび割れの補修が可能なのはヘアークラックの場合に限られます。ひび割れ幅が0.3mm以上の場合はコンクリートの耐久性を低下させる可能性が高いため、DIYでの補修ではなく必ず専門業者に相談しましょう。
補修方法はひび割れにセメントや樹脂が主材料の補修材を詰め込むのが一般的です。粘土やパテのような固形のものや、チューブに入った液状のものなど種類はいくつもあります。ひび割れの形状や場所によって使い分けると良いでしょう。
補修材はホームセンターなどに販売されており、多くは1,000円程度で手に入ります。
DIY補修は応急処置や見た目を良くするための手段
DIYでの補修でご注意いただきたいのが、あくまで応急処置である点です。
先に述べた危険性の高いひび割れに対する補修では、防水性や耐久性を高めることを目的としています。対してDIYでの補修は補修材を隙間に埋め込むだけなので、上記のような耐久性の向上は期待できません。
あくまで見た目を綺麗に整えるための応急処置である点はしっかり把握しておきましょう。
ひび割れを未然に防ぐ方法
ここまでコンクリートのひび割れが発生した際のチェックや補修方法について解説しましたが、ひび割れを未然に防ぐ方法はあるのでしょうか。
実はコンクリートの特性上、完全にひび割れを防ぐ方法はありません。どういった意味なのか詳しく解説します。
完全に防ぐ方法はない
実はコンクリートのひび割れは完全には防げません。
ひび割れにはさまざまな要因があります。
例を挙げると、温度変化や乾燥収縮、振動や経年劣化なども含まれます。さらにコンクリートが施工されている場所は外部であることが多く、立地や環境がその場所で異なるでしょう。
このようにコンクリートのひび割れに影響する要因が非常に多いため、すべての要因について対処するのは困難です。
ひび割れ対策は完全に防ぐというよりは、許容できる範囲に抑えることが大切です。
工事中の適切な管理でひび割れを抑えられる
コンクリートのひび割れが発生する要因には施工中の管理が大きく影響しています。
コンクリートの施工には主に以下のような管理ポイントが存在します。
- 砂やセメント、水などの量を決める配合計画
- コンクリートの運搬時間
- コンクリートを流し込む作業時間
- 温度管理
- 養生(コンクリートを固める)期間
これらのポイントにおいて適切な管理が行われていれば、ひび割れの発生リスクは低減されるでしょう。
ひび割れの原因を学ぼう
工事中の適切な管理と言っても、具体的にどんなポイントを理解すべきか、一般の方はなかなかイメージできないでしょう。
そこでひび割れが発生する原因について解説します。
乾燥収縮
乾燥収縮とはコンクリート内部の水分が空気中に発散することで、コンクリートの体積が収縮する現象を指します。
コンクリートを型枠へ流し込む(打設)作業直後に、直射日光や風の影響などで表面が急速に乾燥すると、コンクリート表面のみ収縮が進行します。これにより表面部分と内部の体積に差が生まれ、ひび割れが発生するのが初期の乾燥収縮のメカニズムです。
コンクリート打設直後の乾燥収縮によるひび割れを防ぐには、材料の配合だけでなく、コンクリート打設後の散水や養生シート掛けなど、適切な養生が有効です。
温度変化
コンクリートのひび割れは急激な温度変化によっても生じます。
実はコンクリートが固まるメカニズムは乾燥によってではなく、セメントと水分の化学反応によるものです。この化学反応が発生する際にコンクリートは熱を生み出します。この熱を水和熱と呼びます。温度変化によるひび割れは水和熱と外気温を管理することで発生リスクの低減が可能です。
温度変化によるひび割れ対策は以下の点が挙げられます。
- 発熱量の小さいセメントを選択する
- 極端に暑い日や寒い日を避ける
不同沈下や地盤の歪み
軟弱な地盤では、建物の荷重や地震により、家屋が傾くリスクが大きくなります。こうしたゆがみによって荷重が局所に偏ると、基礎に深刻なひび割れを発生させる恐れがあります。
不同沈下や地盤の歪みによるひび割れは以下の点について管理を行うことで発生リスクの低減が可能です。
地盤改良を適切に行う
設計図通りに鉄筋を配筋する
経年劣化
コンクリートは、カルシウムを多く含むため、強アルカリ性です。アルカリ性によって基礎の内部にある鉄筋はサビから守られています。しかし、長い年月をかけて雨水や大気中の二酸化炭素と徐々に結合しコンクリートが中性化していきます。
このコンクリートの中性化が経年劣化によるひび割れの主な原因です。経年劣化による中性化が進むとコンクリート内部の鉄筋に錆びが発生します。鉄筋の錆の膨張により内部から力がかかることでひび割れが発生し、コンクリートの破壊が進行します。
経年劣化によるひび割れは完全には防止できません。ただし、コンクリート表面から鉄筋までの距離(被り厚さ)を適切に管理すれば、コンクリートの劣化スピードを抑えられます。
危険なひび割れの防止、発見には専門的な知識や調査が必要
先にも述べたように、ひび割れを防止するためには、コンクリートの施工・品質管理が適切に行われている必要があります。また、ひび割れの調査についても正確に判断するためには専門的な機械や材料を用いる必要があります。さらに補修についても、危険性の高いものは専門業者に依頼して適切に対処しなければ、ひび割れの進行を抑えられません。
この記事でご紹介した目安を参考に危険性の有無を確認し、必要に応じて専門家の力を借りるようにしましょう。
プロの住宅診断士によるホームインスペクションを活用しよう
ひび割れには危険性が高いものとそうでないものが存在します。これらを判別するにはひび割れ幅と深さの測定が必要です。
危険度の高いひび割れが家に発生しているのを見つけたら、早急に対応しましょう。自身で隙間を埋めるよりも、一度専門知識を有する人に確認、判断してもらうのが確実です。
知人に専門家がいるならば相談しても良いでしょう。もし相談できる人がいない場合は、さくら事務所のようなプロの住宅診断士が在籍するホームインスペクションを利用するのも手です。
さくら事務所では新築だけでなく、中古住宅についてもホームインスペクションが可能です。購入検討中の中古住宅の安全性について診断も可能なので、興味がある方はぜひチェックしてみてください。
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