大きな地震の度に話題になる液状化現象。
道路の寸断、ライフラインへの多くの影響があります。
この液状化現象とは何なのか、また起きたらどうなるのかを、今回は特にマンションにポイントを絞ってご紹介したいと思います。
液状化現象って?
液状化現象とは、
- 地中の「砂の層」に含まれていた水分が
- 地震などの揺れで一気に地表面に浮き出てきて
- 浮き出た水の体積分、地表面が沈む
現象です。写真のように道路が沈下したり、住宅が傾いたりするなどの被害が発生します。
地震発生時のゆれやすさや液状化、浸水、土砂災害の可能性など、土地・地盤に関する情報をまとめプロが解説!
さくら事務所の「災害リスクカルテ」
マンションで液状化現象が起きるとどうなる?
■出入り口の段差
マンションの場合、建物下部にある杭が地盤の性状にあったもので、液状化する層の下の強固な地盤まで届いていれば、建物は傾かないことが多いです。ただ建物が傾かなかったとしても、敷地内は液状化の影響で地表面が凸凹になり、建物と建物外周部(舗道や植栽など)との段差が非常に大きくなることがあります。
たとえば、それまで公道からエントランスホールまで、なだらかなスロープを使って入っていたのに、地面が下がったことでスロープを改造しないとベビーカーや車椅子などは通れなくなってしまう、といった不具合が生じます。 凹凸の大きさが支障をきたす部分は、管理組合の修繕積立金で直しますが(注※)、敷地全体に凹凸が発生した場合は全体を完全になだらかにするのは難しい場合も考えられます。
(注※)予定外の支出のため、来る大規模修繕の費用が不足する場合には、修繕積立金を値上げしたり、一時金を徴収する可能性があります。また、かかる費用は被害の大きさにより数千万円単位になることがあります。
■ライフライン
上下水道、ガス等のライフラインは、管が埋まっている地面が大きく沈めば、建物内の管との接続部が大きくずれて破損する可能性があります。 また、敷地内だけの問題でなく、公道下にある管も地面の沈下により破損被害を受けることがあります。いくら建物が傾かなかったとしても、日常生活を取り戻すには多少時間がかかりやすそうだと言えます。
液状化しやすい場所は、広域・ピンポイントの情報で把握を
マンションの敷地だけでなく、周辺地域も含めて広域で液状化しやすい・しにくいかどうかを知りたければ、行政が発表している情報がわかりやすいです。
ピンポイントでそのマンションの建物直下の地盤について知りたい場合は、地盤調査に関する資料を見ます。
■新築マンション
売主に「地盤調査報告書」の閲覧を問い合わせます。地質調査の詳細なデータも載っていますが、総括として「液状化しやすい地盤」などのまとめが載っているため、それを参考にします。
■中古マンション
管 理組合が所有する竣工図書(設計図)に載っている「ボーリングデータ」から情報を得ます。液状化の可能性を推測するには専門的な知識が必要になるので、よ くわからないときは、建築士に竣工図書を見てもらったり、仲介会社などに液状化の可能性を調べてもらうよう依頼します。
危ないのは埋立地や海沿い?
液状化現象というと、埋立地や海沿いで起こりやすいというイメージをお持ちの方が多いのではと思います。けれども以下のポイントが当てはまる場所であれば、埋立地や海沿いから遠く離れた場所でも発生するのです。
- 細かい砂でできた層の地盤が弱い
- 地中に水が多く含まれている
- 強い揺れが加わる
逆にポイントが当てはまらない場所であれば、埋立地や海沿いでも液状化しづらくなると言えます。
住みたい場所が液状化しそう・・・
通勤・通学の都合や、慣れ親しんだ地域ゆえに、液状化しやすい地域と分かっていても住みたい場合があるでしょう。誰しも液状化しないところに住めたほうがいいはずですが、日々の生活・利便性なども住まいを選ぶ重要な判断材料。
「大地震が起きない限りは関係ない」、「建物が傾く可能性が低ければいい」という考えもあるでしょう。また、液状化は心配だけど「この地域の環境がとても好き」「通勤がラクになることで時間の余裕ができる」という考えもあるかと思います。
どんな被害や不便が起きるのか、それにはどのくらいの突発的な支出を伴う可能性があるのかなどを知り、住まいを買う目的や予算などを含め、総合的に判断されることをおすすめします。