契約前にホームインスペクションできない!対処法や契約後に行うメリットとは

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契約前にホームインスペクションできない!対処法や契約後に行うメリットとは

この記事はプロのホームインスペクターが監修しています

ホームインスペクション(住宅診断)は、「申し込み後〜契約前」の段階で入れるのがベストです。

ただし、契約完了後でも早い段階であればホームインスペクションを有効活用できます。早期でホームインスペクションを入れることで、補修する箇所を明確にし、建築会社や売主に補修してもらってから引き渡しを受けられる可能性があるためです。

本コラムでは、住宅引き渡しまでの各タイミングにおける、ホームインスペクションを入れるメリットや注意点を、「品確法の瑕疵担保責任」や「契約不適合責任」といった権利とともに詳しく解説します。「契約前にインスペクションできなさそう」と諦めている方や、タイミングを悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

そもそもなぜホームインスペクションは契約前のほうがよい?


新築の場合は、契約前にホームインスペクションを入れて、施工時の不具合が見つかれば引き渡しを受ける前に補修してもらえます。

中古の場合は、修理が必要な不具合や修理費用がわかったうえで契約を進められ、深刻な不具合があれば無条件で契約を取りやめることが可能です。

契約後にホームインスペクションで見つかった不具合は、状況によっては補修を求めても対応してもらえない可能性があります。さらに入居後に見つかった不具合となると、どの時点で発生したものなのかの判断も難しいです。

そのためホームインスペクションは、可能な限り契約前、間に合わない場合も引渡し前には入れるようにするのが望ましいでしょう。

ホームインスペクションを契約前にできない理由


ホームインスペクションを契約前にできない理由はさまざまですが、おもに以下の点が挙げられます。

  • スケジュールの問題で契約前に間に合わない
  • 売主や不動産会社が拒否する
  • 第三者検査を実施済みのため不要と言われる

そこで対処法を講じる前に、ホームインスペクションが行えない理由ついて理解を深めていきましょう。

スケジュールの問題で契約前に間に合わない

不動産売買の場合、申込から契約までの期間の目安は1~2週間前後です。

一般的な調査会社の場合、相談からホームインスペクション実施まで1週間程度時間を要するため、依頼のタイミングによっては契約までに間に合わないケースがあります。

ちなみにさくら事務所ではお問い合わせ翌日や、当日にホームインスペクションを行った実績もありますので、「明日が契約です」「契約日に間に合うか不安」という場合は、まずはお電話かお問い合わせフォームよりお気軽にお問合せください。

売主や不動産会社が拒否する

売主や不動産会社に「ホームインスペクションを入れるなら売らない」などと拒否されることがあります。

不動産会社や売主がホームインスペクションを嫌う主な理由は以下の点です。

  • 不具合が発覚してしまうため
  • その結果次第では取引が白紙になる可能性があるため
  • 不具合が見つかると不動産の資産価値が下がると考えているため

ホームインスペクションは売買契約後のトラブルを減らせるため、本来売主にとっても有益なものです。

しかし本質を理解していない不動産関係者も多く、契約前にホームインスペクションを入れるのは、面倒なうえ売る側にとってリスクしかないと考えているため、拒否といった行動につながってしまうのです。

第三者検査を実施済みのため不要と言われる

新築工事で第三者検査を実施しているからといって、必ずしも安心とは言えません。

新築の場合「第三者検査を実施しているからホームインスペクションは不要」と言われるケースがあります。新築物件の場合、進捗に合わせて下記のような第三者機関の検査を入れるのは事実です。

  • 建築確認申請(中間検査、完了検査なども含む)
  • 住宅性能表示制度
  • 住宅瑕疵担保責任保険に関連する検査(基礎配筋検査、上部躯体検査など)

しかし上記の検査は不具合を改善するために行われるものではありません。図面通りに施工できているかを確認するために行われるため、不具合を見落としてしまう可能性が十分に考えられます。

一つの購入検討の目安にはなりますが、本当の安心を得るには買主主導でのホームインスペクションの実施がベストと言えるでしょう。

新築のホームインスペクションは無駄じゃない!理由を住宅診断士が徹底解説

ホームインスペクションを契約前にできないときの対処法


ご紹介するホームインスペクションが行えなかった時の主な対処法は以下の4つです。

  • 実施したい理由を伝えて交渉する
  • 不動産会社の変更を検討する
  • 別物件の購入を検討する
  • 契約後にホームインスペクションを入れる

それぞれの内容について解説していきます。

実施したい理由を伝えて交渉する

先に述べたように、ホームインスペクションを拒否する売主や不動産会社は「ホームインスペクションを入れると売れなくなる」と考えている可能性が高いです。しかし、実際は売主・買主間での後々のトラブルを回避できるため、売主にとってもホームインスペクションは有効になります。

ホームインスペクションの本質は安心して住み続けるために行う検査です。粗探しが目的ではなく、購入を前向きに検討しているからこそ、ホームインスペクションを実施したいという想いをしっかり伝えて交渉しましょう。

不動産会社の変更を検討する

想いを伝えても変わらない場合は、不動産会社の変更を検討しましょう。建売住宅や中古住宅の場合、売主と買主の間に不動産会社が仲介業者として存在しているケースがあります。この場合、ホームインスペクションを断っているのは仲介業者であって、売主自身は把握していない可能性も考えられます。

別の仲介業者である不動産会社に相談を持ちかけてみると、難なくホームインスペクションを受け入れてもらえることも。

交渉が長引きそうな場合は、不動産会社の変更も手段のひとつとして覚えておきましょう。

別物件の購入を検討する

「ホームインスペクションは無理」の一点ばりで売主に拒否される場合は、物件を諦める選択肢も視野に入れましょう。頑なに拒否をする場合は、大きな不具合や不都合を隠していると思われても仕方がありません。

契約前であれば違約金が発生しない「白紙撤回」が可能なため、なるべく早めに決断し、別の物件探しに時間をかけましょう。

契約後にホームインスペクションを入れる

どうしても契約前にホームインスペクションができない、その物件を気に入っていて別物件は考えられない、といった場合は契約後にホームインスペクションを入れるのもありです。

ホームインスペクションを入れるベストタイミングは契約前ですが、契約後だからこそ得られるメリットもあります。

ホームインスペクション自体を諦めるのではなく、契約後なるべく早いタイミングでいられるように動き出しましょう。

【タイミング別】ホームインスペクションのメリットと注意点

ホームインスペクションを行えるタイミングは、契約前だけではありません。

まずは住宅購入の流れを確認しましょう。

販売会社や、検討している物件(マンションなのか一戸建てなのか)によって多少の違いはありますが、一般的な住宅の購入検討から引き渡しまでの流れは以下の通りです。一般的な住宅購入の流れ

※中古物件の場合は内覧会はありません

流れの中で、ホームインスペクションを入れるタイミングは以下3つが考えられます。

  • ベストタイミング!申し込み~契約前
  • 契約後~引き渡し前
  • 引き渡し後

それぞれメリットや注意点、買主の保有権利についてみていきましょう。

時期別の買主様の保有権利はこちらでまとめています
(別ウインドウで表示されます)

ベストタイミング!申し込み〜契約前

申し込み後から契約前のタイミング
ホームインスペクションの様子ホームインスペクションの様子ホームインスペクションの様子

ホームインスペクションを行うタイミングは、申し込み〜契約前までの時期がベストです。

このタイミングのメリットは3つあります。

  • ホームインスペクションの結果(修繕費用など)を資金計画に組み入れることができる
  • 万が一、大きな問題が見つかった場合には無条件で引き返せる
  • 申し込みをしているため、原則として他の方に買われる心配がない

申し込みの流れは通常、物件の見学後に「買おうかな」という意思が生まれた段階で「申し込み」を行い、「買付証明書」「申込書」などの書類に記名・押印、「申込金」を1~10万円程度支払う流れが一般的です。

この段階は「契約前」であり、いまだなんらかの権利・義務とも発生していません。よって無条件で申し込みを解消でき、申込金も当然返還されます。

【注意点】

中古住宅の場合、契約前だと売主が居住していたり家具や家財が置かれたりしているケースもあり、充分な調査ができないことがあります。また、不具合が見つかっても現状で引き渡す、という売主の意向があれば補修はしてもらえません。

中古住宅の契約前には以下のホームインスペクションサービスをご利用下さい。

中古一戸建てホームインスペクション

中古マンションホームインスペクション

契約後〜引き渡し前

契約後から引き渡し前のタイミング

売買契約後〜引き渡し前にホームインスペクションを入れることもできます。「売買契約後」とは「重要事項説明書」「不動産売買契約書」に署名・捺印し、手付金を支払ったあとです。この瞬間から契約に基づく「権利」と「義務」が発生します。

このタイミングでホームインスペクションを入れるメリットは以下2点です。

  • 引渡し前に補修してもらえる
  • 家財がない状態(中古の場合)で点検できる

契約完了後、早い段階にホームインスペクションを入れると、新築の場合は建築会社に補修してもらってから引き渡しを受けられます。

中古物件の場合も、契約時に聞いていない不具合が見つかれば補修の交渉が可能です。売主の退去後に実施すれば家財がない状態で点検できるのもメリットと言えるでしょう。

【注意点】

中古物件で契約時に聞いていない不具合があった場合、物件値引きなどの費用の交渉は、売主が補修に応じないまたは補修が不可能なときに限ります。すでに契約済みのため、大きな不具合があっても修復可能な場合には後戻りできないことも注意点です。

さくら事務所では、新築一戸建ての内覧会に同行する「新築一戸建て内覧会(竣工検査)立ち会い・同行」サービスや、新築マンションの内覧会に同行する「新築マンション内覧会(お披露目会)立ち会い・同行」サービスをご用意しておりますので、引き渡し前の方は是非ご検討ください。

中古住宅の方は、契約前と同じホームインスペクションサービスをご利用下さい。

中古一戸建てホームインスペクション
中古マンションホームインスペクション

引き渡し後

引き渡し後(入居後)のタイミング

物件の引き渡し後にホームインスペクションを入れても意味がないのでは?と思われる方もいるかもしれませんが、適切な時期に入れることで有効活用できます。

引き渡し後にホームインスペクションを実施する場合は、引き渡し後、できるだけ早期の実施おすすめです。

新築住宅と中古住宅で効果的な実施タイミングが違うため注意しましょう。以下でそれぞれ解説します。

新築住宅の場合

売主が独自に設けているアフターサービス基準(一般的には2年以内)に間に合うようにインスペクションを入れましょう。

引き渡しまでの間に、仲介業者様がアフターサービスについて詳しく説明する時間を設けないケースがあります。また、アフターサービスは一般的には2年以内とされていますが、厳密には、独自の基準で設けられているため、一度詳細の確認をしておきましょう。

新築住宅は品確法で引渡し後10年間「構造耐力上主要な部分等」と「雨水の浸入を防止する部分」で不具合が見つかった場合、売主が補修や損害賠償などの責任を負わなければいけないことが定められています。

  • 構造耐力上主要な部分:基礎や杭、スラブ、柱など建物の荷重を支える基本的な構造部分
  • 雨水の浸入を防止する部分:屋根や外壁など雨水の侵入を防ぐために機能する部分

しかし、当然ながら上記以外にも不具合が発生することもあるため、売主がアフターサービスを設けて、一定期間に限り保証しているのです。

アフターサービス期間内にホームインスペクションを実施して、不具合が見つかれば原則として無償で補修してもらえます。

特に築2年程度はアフターサービスの活用が非常に重要です。

引き渡し当初は、建物の基礎や建材の一部には多くの水分が含まれています。

この水分は1~2年をかけて徐々に抜けていきますが、水分が抜ける過程で基礎や建材が収縮するなど、建物内のあらゆる部位で変化が現れることがあるのです。

要するに、築後2年程度であれば軽微な不具合が起こることは珍しくなく、むしろ当たり前といっても過言ではありません。これら軽微な不具合は、初期段階で適切に補修しておくことで、その後の安定が見込めます。

また以下の記事では、さらに詳しく新築住宅におけるホームインスペクションの必要性について解説しています。気になる方はぜひご覧ください。

※【関連コラム】ホームインスペクションは無駄じゃない!事例を交えて住宅診断士が徹底解説

中古住宅の場合

中古住宅の場合は、引き渡し後すぐにホームインスペクションを入れることをおすすめします。なぜなら設備機器は引き渡しから7日以内に申し出れば補修してもらえる場合があるためです。

また、売主は最低2年間契約不適合責任を負います。

売主が個人の場合、契約不適合責任の期間は引き渡しから最大3ヶ月以内に設定されていることが多く、この期間に契約の内容に適合しない不具合などがあれば売主に補修交渉が可能です。

契約不適合責任の期間内であっても、住み始めてしばらく経ってからだと、見つかった不具合がいつから存在していたのかの判断が難しくなってしまいます。

「売主が無償で直すべきところを住宅を購入された方が100万円以上かけて実費で補修していた」といった事例もあるため、引き渡し後は出来るだけ早くホームインスペクションを実施し、建物の状態に契約不適合の項目や不具合がないかを第三者の目で確認しておくとよいでしょう。

リフォーム目的のホームインスペクションもご検討を

購入後しばらくしてからリフォームやリノベーションを検討し始めた時に、ホームインスペクションをご利用される方もいらっしゃいます。

リフォーム目的のホームインスペクションのメリットは主に以下4つです。

  • リフォームや修繕に「いつごろ」「どこに」「いくらお金がかかるのか」がわかる
  • ご依頼者と売主の今後の関係に配慮した的確なアドバイスが受けられる
  • 必要なリフォームと不要不急なリフォームがわかる
  • リフォームや修繕工事のベースとして活用でき、不要な工事を避けられる

国土交通省が所管する公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理センターから発表された「住宅相談統計年報2024」によると、トラブルに関する相談のうち、契約や相隣関係以外の「住宅のトラブルに関する相談」は、もっとも多いのが新築相談で98%でしたが、次いで多いのがリフォーム相談で97.8%でした。リフォームの場合も新築とほぼ同じ数の相談が寄せられているのです。

参照:公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター「住宅相談統計年報2024(3)相談内容の傾向 ②トラブルに関する相談の内訳」

リフォームのトラブルは起こってしまってからでは解決が難しいケースも多く、またトラブルの相手のほうが住宅や工事に関する知識が豊富であることが一般的です。リフォームによるトラブルを回避するには事前の予防が重要で、その対策のひとつがホームインスペクションです。

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ホームインスペクションとは?

住宅の購入は、多くの方にとって人生で一番高価な買い物です。また、同じ建築会社でも、職人の腕や個々の住宅によって施工の精度に差が出ることは良くあります。

そのため、住宅購入での後悔を防ぐため、利害関係のない第三者の専門家にホームインスペクションを依頼し、専門家の目で建物の状態を見極めることが大切です。

さくら事務所は、国内におけるホームインスペクション普及のパイオニア的存在であり、これまでご依頼実績は業界No.1(累計75,000件超)、満足度98%(Google口コミ☆4.8と非常に有り難い評価をいただいております。

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非常に重要な観点である「第三者性・中立性」を保持しながら、建築・不動産・防災・マンション管理など、あらゆる難関資格を持つメンバーが連携、サービスご利用後にもあらゆる住まいのご相談に対応するための「永年アフターフォローサービス」もご用意。これから暮らす住まいの安心に加え、心強い建築士と末永いお付き合いをいただける内容となっております。

※ご依頼から概ね3日~1週間以内での調査実施が可能です。お急ぎの方は、まずはお問合せください!

ホームインスペクションを行うベストなタイミングは「申し込み〜契約前」です。

    ただし、どのタイミングでも手遅れということはありません入居後に利用される方もたくさんいらっしゃいますので、ホームインスペクションを依頼する際には、業界No.1の実績を持つさくら事務所に是非お任せください。

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    ホームインスペクター 小西 昌太
    監修者

    小西 昌太

    基本スタンスでもある「第三者性、中立性、客観性」を最大限に活かしたコミュニケーションを心掛け、可能な範囲で建物の現状をより多くの人へわかりやすく伝えられる「住まいの良き翻訳者」を目指します。

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