ホームインスペクター 小西 昌太

監修者:小西 昌太

コンクリートのひび割れの原因は?補修すべき状況や工法を住宅診断士が解説

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コンクリートのひび割れの原因は?補修すべき状況や工法を住宅診断士が解説

この記事はプロのホームインスペクターが監修しています

いつの間にか家のコンクリートにひび割れが発生していた…。このような経験がある人は多いのではないでしょうか。

コンクリートにひび割れが発生していると「どうして?」「これって大丈夫?」と不安に感じるでしょう。しかしすべてのひび割れが直接的に家の安全性に影響するわけではありません。

今回はコンクリートにひび割れが発生する原因や危険性の見極め方、補修工法などを

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の依頼実績を持つ、さくら事務所所属の住宅診断士が解説します。

コンクリートにひび割れが生じる原因

コンクリートのひび割れする要因は多岐にわたります。ここでは考えられる原因を大きく5つに分けて紹介します。

・乾燥収縮

・温度変化

・地盤の振動や変形などの外的要因

・経年劣化

・[補足]設計上の間違いや施工時の不良

それぞれどういった原理でひび割れが生じるのか見ていきましょう。

乾燥収縮

乾燥収縮とはコンクリート内部の水分が空気中に発散することで、コンクリートの体積が収縮する現象を指します。

新築後1~2年以内に生じることが多い事象です。

コンクリートを型枠へ流し込む(打設)作業直後に、直射日光や風の影響などで表面が急速に乾燥すると、コンクリート表面のみ収縮が進行します。これにより表面部分と内部の体積に差が生まれ、ひび割れが発生するのが初期の乾燥収縮のメカニズムです。

乾燥収縮によるひび割れは、後述する温度変化によるものと合わせて、もっとも一般的で避けるのが難しいひび割れのひとつと言えます。

乾燥収縮によるひび割れを防ぐには、材料の配合計画を確認するだけでなく、コンクリート打設後の散水や養生シート掛けなど、適切な管理が有効です。

温度変化

コンクリートのひび割れは急激な温度変化によっても生じます。

実はコンクリートが固まるメカニズムは乾燥によってではなく、セメントと水分の化学反応によるものです。この化学反応が起きる際にコンクリートは熱を生み出します。この化学反応で生じた熱を「水和熱」と言います。温度変化によるひび割れは、水和熱と外気温を管理することで発生リスクを抑えなければいけません。

具体的な温度変化によるひび割れ対策として以下2つが挙げられます。

  • 発熱量の小さいセメントを選択する
  • 極端に暑い日や寒い日を避ける

地盤の振動や変形などの外的要因

軟弱な地盤では、建物の荷重や地震により、家屋が傾くリスクが大きくなります。こうしたゆがみによって荷重が局所に偏ると、基礎に深刻なひび割れを発生させる恐れがあります。

不同沈下や地盤の歪みによるひび割れは以下の点について管理を行うことで発生リスクの低減が可能です。

  • 事前に地盤調査などを行い、結果に基づいた地盤対策工事を実施する
  • 監理者などが立会いのもと、設計図書のとおりに適切な工事を行う

不同沈下なども含めた地盤の振動や変形によるひび割れは、建物の過度な傾斜や破損などが伴うリスクがある、非常に危険度が高い事象です。適切が対策が不可欠のため、専門家による詳細調査を実施したうえで、沈下修正などの地盤対策工事を検討しましょう。

経年劣化

コンクリートは、カルシウムを多く含むため、強アルカリ性です。アルカリ性によって基礎の内部にある鉄筋はサビから守られています。しかし、長い年月をかけて雨水や大気中の二酸化炭素と徐々に結合しコンクリートが中性化していきます。

このコンクリートの中性化が経年劣化によるひび割れの主な原因です。経年劣化による中性化が進むとコンクリート内部の鉄筋に錆びが発生します。鉄筋の錆の膨張により内部から力がかかることでひび割れが発生し、コンクリートの破壊が進行します。

経年劣化によるひび割れは完全には防止できません。ただし、コンクリート表面から鉄筋までの距離(被り厚さ)を適切に管理すれば、コンクリートの劣化スピードを抑えられます。

[補足]設計上の間違いや施工時の不良

設計上の間違いや施工時の人的な不良が、前述した4つが生じる原因になっているケースもあります。

具体的には下記が考えられます。

  • そもそも設計計画が間違っている
  • 設計図書のとおりに配筋やかぶり厚が確保されていない
  • コンクリート配合不良により強度が不足している
  • 配筋の不良や位置の乱れによるかぶり厚が不足している
  • 養生期間が足りていない

設計上の間違いや施工時の不良により、通常よりも早く劣化が進行して、複合的な要因でひび割れが生じることもあります。状況が深刻な場合には、基礎のやり直しや補強が必要です。

コンクリートのひび割れは原因の特定が難しいことが多いため、必要に応じて専門家に詳細な調査を依頼しましょう。

補修が必要なひび割れを見分けるポイント


家のコンクリートにひび割れを見つけた際、「大丈夫なのだろうか」と不安に感じることでしょう。しかしコンクリートのひび割れがすべて危険なわけではありません。もちろん構造体に支障をきたすものもありますが、程度によっては放置しても問題がないひび割れも存在します。
危険なひび割れかどうかは以下の目安で判断が可能です。

  • ひび割れ幅が0.3mm以上または0.5mm以上か
  • ひび割れの深さが20mm以上または40mm以上か
  • ひび割れが1箇所に集中していないか
  • 横方向のひび割れがないか

それぞれの確認方法も含めて詳しくみてみましょう。

ひび割れ幅が0.3mm以上または0.5mm以上か

コンクリートにおけるひび割れの危険性を確認する目安のひとつはひび割れの幅です。
ひび割れ幅が0.3mm以上の場合は、構造躯体に影響を与えている場合があるため、補修や点検が推奨されます。

ひび割れ幅が0.5㎜以上の場合には、著しいひび割れと判断でき、構造躯体に影響するリスクが高い状態です。原則、早めの補修をおすすめします。

ひび割れが大きいほど雨水が浸入し、コンクリートの内部からの腐食を引き起こす危険性が高くなるため注意しましょう。

対して0.3mm未満のひび割れは危険性が低いひび割れで「ヘアークラック」と呼ばれています。ヘアークラックの場合はすぐに危険を及ぼすひび割れではないことから、補修は必須ではありません。しかし時間が経過するごとにひび割れが広がる可能性も考えられるため、定期的な観察や状況に応じた処置が求められます。

ひび割れの幅は「クラックスケール」と呼ばれる道具を使用すると、簡単に測定ができます。ホームセンターなどで購入できるため用意しておくとよいでしょう。

ひび割れの深さが20mm以上または40mm以上か

コンクリートのひび割れが危険な状態かどうかはひび割れの深さからも判断できます。

ひび割れの深さは幅のように、目視での計測が難しいため、明確な基準はなく部分的に計測および推測しながら判断しなければいけません。

一般的には、基礎のコンクリートなど表面に化粧モルタルが施工されている場合、化粧モルタル(厚さ数ミリ程度)までのひび割れは、構造躯体には問題がないと考えられます。

一方、深さが20mm以上のひび割れは、瑕疵保険の基準などにも該当しコンクリートの中性化リスクが高まっている状態のため、補修を検討しましょう。

また、深さが40mm以上や内外で貫通が疑われる場合には、コンクリート内部の鉄筋も腐食していることが懸念される状態です。早期で構造的な補修メンテナンスが必要になります。

早急に補修が必要なのは深さが4mm以上のひび割れです。
ひび割れの深さを個人で正確に計測するのは難しいですが、簡易的に測定する方法もあります。細く曲げやすいピアノ線や針金をひび割れに差し込むことで、おおよその深さまで測定可能です。専門業者へ調査依頼する前提で自身で測定してみるのも良いでしょう。

ひび割れが1箇所に集中していないか

ひび割れの状況がヘアークラックのような軽微なひび割れだとしても、1箇所に集中して発生している場合は注意しましょう。1箇所に集中して発生している場合は、その部位に力や荷重が集中している可能性が高いためです。

危険性を判断する目安は1m範囲内に3箇所以上ひび割れが発生しているかどうかです。この目安を超えたひび割れが発生している場合は、不同沈下など何かしらの要因が存在する可能性が考えられるため、早めに専門家に相談することをおすすめします。

横方向のひび割れがないか

コンクリートのひび割れは、地面に対して縦や斜めに亀裂が入っているケースが多いですが、横方向(地面と平行)にひび割れている場合は要注意です。

横方向のひび割れは、設計や施工時の何らかの初期不良が原因となることが多く、コンクリート内部の鉄筋に腐食や変形が生じていることにより、部分的にコンクリートに負荷がかかっている可能性があります。

基礎の耐久性を損ねている危険性があるため、早めに専門家に点検してもらいましょう。

早急に補修すべきコンクリートのひび割れの事例

上記の写真は、さくら事務所が点検して見つかった、早急に補修すべきコンクリートのひび割れです。

基礎のコンクリートの複数箇所に、幅が広く構造体にまで影響を与えるほどのひび割れが発生していました。

さらにひび割れだけでなく、配管を通すためにあけていた穴から、コンクリート内部にある鉄筋が露出(赤色の矢印部分)しています。

露出した鉄筋はさびやすくコンクリートのひび割れを助長してしまうため、早期対処が望まれます。

コンクリートのひび割れの補修方法と費用相場

許容範囲を超えたひび割れを放置していると非常に危険です。危険なひび割れを発見した場合は早急な補修を行いましょう。

コンクリートのひび割れの補修方法は主に以下の3つがあります。

補修方法

作業内容

費用相場

Uカットシール工法(Vカットシール工法)

ひび割れ部分をU字型にカットし、補修材を充填して表面を整える方法

5,000~10,000円/m程度

ビックス工法(低圧注入工法)

専用器具を用いて、ひび割れの奥深くまでエポキシ樹脂を注入する方法

10,000~20,000円/m程度

アラミド繊維シートの貼り付け

ひび割れが生じている基礎表面にアラミド繊維シートをエポキシ樹脂で貼り付けた後、その上をモルタルなどで整える方法

20,000~40,000円/m程度

引用)さくら事務所コラム 【中古住宅の基礎にひび割れ】正しい見分け方と補修方法を徹底解説

なお、上記金額は各方法の施工単価です。諸経費などが別途かかる可能性があります。

以下でそれぞれ詳しく紹介します。

Uカット(Vカット)シール材充填工法

Uカット(Vカット)シール材充填工法は、ひび割れの幅が深くまでひび割れ発生部分を、U字またはV字の溝ができるように大きくカットします。カットした部分に防水性能のあるシーリング材を充填し、仕上げはセメントで表面を整えます。

充填したシーリング材によって雨水が内部へ浸入しにくくなるのに加え、弾性の高いシーリング材がコンクリートの変形に追従するため、ひび割れが進行しにくくなります。

ただし、この工法の効果は表面からの雨水浸入を妨げるもので、構造体としての耐久性を補強するものではありません。

相場は5,000~10,000円/m程度、工期は規模にもよりますが、おおむね1〜2日です。

ビックス工法(低圧注入工法)

ビックス工法はひび割れが鉄筋まで到達しているような、進行度の高いひび割れに有効な工法です。

エポキシ樹脂などの補修材を特殊な器具を用いてひび割れに加圧注入します。加圧は低圧で行われ、ひび割れの深層部までゆっくりと補修材を充填します。

施工完了後はひび割れ発生前の健全な状態と同等の耐久力まで回復可能と言われており、構造クラックの補修に最適な工法です。

費用は10,000〜20,000円/m程度とUカットシール工法より高額で、工期は2日程度必要です。

アラミド繊維シート貼り付け工法

アラミド繊維シートは劣化が進行したコンクリート構造体の補強に適した工法です。

鋼材の引張強度と比べて約7倍の強度をもつアラミド繊維をシート状にし、基礎などの構造体にエポキシ樹脂などで貼り付けて補強します。

劣化によって低下した基礎の耐久力を、エポキシ樹脂で貼り付けたアラミド繊維が受け持ちます。そのため鉄筋の腐食によって内部から破壊が進んだコンクリート基礎の補強などに最適です。

費用は20,000〜40,000円/m程度です。基礎補強工期は1~3日程度とされています。

コンクリートのひび割れはDIYで補修できる?

専門業者を呼んでの補修は相応の費用がかかります。そのため少しでもコストを抑えるためにDIYで補修したいと考える人もいるでしょう。

結論から言うと軽微なひび割れであればDIYでの補修は可能です。

ただし、DIYでのひび割れ補修を行うには以下のポイントを押さえておく必要があります。

  • DIYで補修可能なのは0.3mm以下のヘアークラック
  • DIY補修は見た目を良くするための応急処置

それぞれ詳しく解説します。

0.3mm未満のヘアークラックはDIYで補修可能

DIYでひび割れの補修が可能なのはヘアークラックの場合に限られます。ひび割れ幅が0.3mm以上の場合はコンクリートの耐久性を低下させる可能性が高いため、DIYでの補修ではなく必ず専門業者に相談しましょう。

DIYでの補修方法はひび割れにセメントや樹脂が主材料の補修材を詰め込むのが一般的です。粘土やパテのような固形のものや、チューブに入った液状のものなど種類はいくつもあります。ひび割れの形状や場所によって使い分けると良いでしょう。

補修材はホームセンターなどに販売されており、多くは1,000円程度で手に入ります。

DIY補修は応急処置や見た目を良くするための手段

DIYでの補修でご注意いただきたいのが、あくまで応急処置である点です。

先に述べた危険性の高いひび割れに対する補修では、防水性や耐久性を高めることを目的としています。対してDIYでの補修は補修材を隙間に埋め込むだけなので、上記のような耐久性の向上は期待できません。

あくまで見た目を綺麗に整えるための応急処置である点はしっかり把握しておきましょう。

コンクリートのひび割れを放置する危険性


危険なひび割れを放置するとどうなるのか詳しくみてみましょう。

ひび割れを放置していると以下のような順で劣化が進みます。

 1. ひび割れが広がる

 2. コンクリート内部に水分が浸入する

 3. 鉄筋が錆びて内部から破壊が進む

それぞれ順を追って解説します。

1.ひび割れが広がる

危険性の高いひび割れは、コンクリートが何かしらの荷重を受けて発生しているケースが多いです。そのため、放置している間も繰り返し荷重を受ける事で、ひび割れの幅や深さ、範囲が広がって行きます。

場合によっては内部の鉄筋にまでひび割れが到達する可能性もあります。

2.コンクリート内部に水分が浸入する

ひび割れの幅が0.3mmを超えると、ひび割れから雨水をはじめとした水分がコンクリート内部へ浸入して行きます。

寒冷地の場合、コンクリート内部の水分が凍結融解を繰り返す事でひび割れが悪化する原因にもなります。

3.鉄筋が錆びて内部から破壊が進む

建物の基礎や柱などの構造体にコンクリートが使用されている部分には、コンクリート内部に鉄筋が入っているケースがほとんどです。

これらの部分でひび割れが広がり、鉄筋まで到達すると水分によって鉄筋に錆びを引き起こし、腐食が始まります。

腐食が進行すると鉄筋が膨張し内部からコンクリートの破壊が進みます。この段階まで劣化が進行するとコンクリートの耐久性が一気に低下するため非常に危険な状態です。

コンクリートのひび割れを未然に防ぐ方法


ここまでコンクリートのひび割れが発生した際のチェックや補修方法について解説しましたが、ひび割れを未然に防ぐ方法はあるのでしょうか。

実はコンクリートの特性上、完全にひび割れを防ぐ方法はありません。どういった意味なのか詳しく解説します。

ひび割れを完全に防ぐ方法はない

実はコンクリートのひび割れは完全には防げません。
ひび割れの原因は温度変化や乾燥収縮、振動や経年劣化などさまざまです。さらにコンクリートが施工されている場所は外部であることが多く、立地や環境も影響してきます。

このようにコンクリートのひび割れに影響する要因が非常に多いため、すべての要因について対処するのは現実的ではありません。

ひび割れ対策は完全に防ぐというよりも、許容できる範囲に抑えることが大切です。

工事中の適切な管理でひび割れを抑えられる

コンクリートのひび割れが発生する要因には施工中の管理が大きく影響しています。

コンクリートの施工には主に以下のような管理ポイントが存在します。

  • 砂やセメント、水などの量を決める配合計画
  • コンクリートの運搬時間
  • コンクリートを流し込む作業時間
  • 温度管理
  • コンクリート打設時の充分な締固め作業
  • 養生(コンクリートを固める)期間

これらのポイントにおいて適切な管理が行われていれば、ひび割れの発生リスクは低減されるでしょう。

耐久性を脅かすひび割れもある!プロの住宅診断士に相談しよう


コンクリートがひび割れする原因はさまざまで、危険性が高いものとそうでないものが存在します。これらを判別するにはひび割れ幅と深さの測定が必要です。

危険度の高いひび割れが家に発生している場合は、構造体まで悪影響を及ぼしている可能性があるため、早急に対応しましょう。自身でDIYしてひび割れを応急処置するよりも、一度専門知識を有する人に確認、判断してもらうのが確実です。

知人に専門家がいるならば相談しても良いでしょう。もし相談できる人がいない場合は、さくら事務所のようなプロの住宅診断士が在籍するホームインスペクションを利用して、ひび割れ調査を行うのも手です。

さくら事務所では、年間3,000件以上の豊富な調査データを活用し、業界20年以上のベテランが指導する体制のもと、ホームインスペクションを行っています。

新築だけでなく、中古住宅についてもホームインスペクションが可能です。

購入検討中の中古住宅の安全性について診断できるため、コンクリートのひび割れでお悩みの方はぜひチェックしてみてください。

自宅のホームインスペクション(住宅診断)のご相談はこちら
https://www.sakurajimusyo.com/expert/tatemono-tyousa-ckt.php

中古住宅のホームインスペクション(住宅診断)のご相談はこちら
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ホームインスペクター 小西 昌太

監修者小西 昌太

基本スタンスでもある「第三者性、中立性、客観性」を最大限に活かしたコミュニケーションを心掛け、可能な範囲で建物の現状をより多くの人へわかりやすく伝えられる「住まいの良き翻訳者」を目指します。

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