都心に好アクセスの船橋市!知っておくべき地形や災害リスクとは?

  • Update: 2021-09-06
都心に好アクセスの船橋市!知っておくべき地形や災害リスクとは?

この記事はプロのホームインスペクターが監修しています

昨今のリモートワーク推進により、都心を離れて郊外に移り住む人が増加傾向にあります。船橋市は千葉県の北西部に位置し、県内でも東京にほど近い場所であることから、郊外狙いの人たちから注目を浴びています。

特に交通アクセスは大変良好で、場所によっては30分以内の通勤圏内に。総武線一本で秋葉原や新宿への移動や総武線快速では東京、横浜方面に直通しているため、通勤・通学をはじめ、ちょっとしたお出かけにも非常に便利です。

魅力は都心に近いことだけではありません。湾岸地域の巨大ショッピングモールやインテリア・生活雑貨の商業施設の存在も大きく、船橋を語る上では外せない目玉になっています。

また、広大な敷地のふなばしアンデルセン公園、中山競馬場といった有名観光スポット、東京湾を望めるふなばし三番瀬海浜公園なども人気の高いポイントに。あえて都心に出向かなくても、市内で事足りてしまう至便性が人気の秘訣と言っても過言ではありません。

そんな魅力あふれる船橋市ですが、場所によって起こりうる災害には注意が必要です。

市内でも災害リスクの低いエリアはどこか、災害をどのように予防すべきか。船橋を次なる住処の地と考える方へ、安心安全な暮らしができるよう、数多くの災害リスクを調査してきた千葉県のホームインスペクター(住宅診断士)が、地形の特徴からまるごと船橋を解説いたします。

災害リスクカルテ

船橋市の地形の特徴と災害リスク

船橋市は、千葉県北西部に広がる「下総台地」の一角に位置しています。その地形は、

  • 市内北部が「下総台地」と呼ばれる台地
  • 船橋駅~西船橋付近に広がる海岸平野
  • 南部の港湾部に近い埋立地

に分けることができます。

主に概ね国道14号を境に、北側は平坦で浅い海底だった場所が海面低下してでできた台地になっています。また、南側は海沿いの海岸平野の低地に広がる水田であった場所などを盛土した造成地や、海を埋め立てた埋め立て地から形成されています。

船橋市の地形の特徴
国土地理院「地理院地図」に土地条件図を表示して抜粋。
図中に地形の名前(紫色文字)、右上に地形の凡例を追記

市内北部の「下総台地」

比較的安定した高台の地盤

下総台地は、火山灰(ローム層)からなる標高の高い高台の平坦地(主に、上図で「台地」の地域)です。台地の地域は、地盤の沈下や、地震の揺れ、液状化、大規模な水害などの災害リスクが小さい、比較的安定した高台の地盤といえます。

ただし、台地の上でも、浅い谷やくぼ地になっているような地域(中小河川沿いで主に、上図で「台地上の凹地・浅い谷」の地域)では、近くに川がなくても、雨水が集まって排水されない「内水氾濫」の危険性があります。

大雨や地震の際の土砂災害などに注意

高台の台地と川沿いの低地の間は、標高差がある斜面となっています(主に、上図で「台地の斜面」の部分)。斜面では土砂災害警戒・特別警戒区域が指定されていることがありますが、区域指定がなされていないがけ地もあります。これらの場所では大雨の際や地震時に土砂災害(がけ崩れ)の懸念があります。

また、斜面を宅地に造成する際には、山側を削り、谷側を埋めたひな壇型の造成地が作られる場合があり、このような場所では地震時の宅地地盤の崩壊や、地盤沈下、擁壁の倒壊などが発生する可能性もあります。

川沿いの低地は河川の洪水・氾濫の可能性も

下総台地の地域でも、船橋市街地を流れる海老川やその支流のほか、市内北東部では神崎川、新川やそれらの支流の川沿いには「谷底低地」が広がっています(主に、上図でオレンジ色の「台地」に囲まれた「盛土地」、「谷底平野・氾濫平野」の地域)。

これらの川沿いの低地は、河川の洪水・氾濫に注意が必要です。

また、川が運んできた軟弱な泥や砂の地盤がある場合があり、地震の時に揺れが大きくなりやすいことがあります。

さらに谷底低地では、「腐植土」と呼ばれる沼地で植物が溜まってできた、地盤沈下を引き起こしやすい地盤が分布することがあります。

船橋駅~西船橋付近に広がる海岸平野

海岸低地は、海沿いに広がる標高の低い低平な土地からなり、河川の氾濫、内水氾濫、高潮のいずれも注意が必要な地域ですので、水害ハザードマップの確認が必要です。海沿いに堆積した軟弱な泥や砂の地盤がある場合があり、地震の時に揺れが大きくなりやすいことがあります。

船橋駅より内陸側でも高潮の浸水想定区域もあり、注意が必要です。洪水・内水ハザードマップでは総武線の下総中山、西船橋、船橋駅などはいずれも浸水想定区域にあります。

南部の港湾部に近い埋立地

埋立地は、地形図で実線の斜線で示された範囲です。沿岸部に主に明治時代以降に埋め立てられた場所で、標高は低地よりも嵩上げされていることが多いですが、部分的に内水氾濫、高潮、および津波による浸水が懸念される地域があり、各ハザードマップの確認が必要です。

また、埋立地の地盤は砂や泥で埋め立てられていることから、埋立ての状況等によっては地震の時に揺れが大きくなりやすいこと、地盤の液状化が発生しやすいことがあります。実際に、2011年の東北地方太平洋沖地震では、市内の埋立地において液状化現象による被害が発生しています。

津波においては、埋立地のほか、海老川下流域などでも浸水想定区域にないか確認をお勧めします。

海岸近くで起こりやすい災害への予防策は?

地震時の液状化被害

東日本大震災時は船橋市も被害に遭いました。特に海岸を埋め立てた南側では地盤の液状化等により、建物損傷、ライフラインの切断、道路の陥没などの被害が多く発生。海岸付近以外でも河川の近くや、北側の台地でも旧低湿地では被害が発生しています。

予防策

まず、地盤調査を行い、埋め立てや盛り土の形跡、不同沈下につながりやすい自沈層がないか確認します。

次に近隣の地盤調査の記録、旧地形図、震災時の被害分布などの資料による確認をし、可能性がある場合は、地盤改良、杭基礎、基礎のハンチを付けるなどの検討をします。また、地盤沈下や液状化によるライフライン切断を想定した設備・装備の検討も必要です。

中古住宅の場合は建物の構造部分にひび割れや破損などの不具合がないか、建物が傾斜してないかを確認します。

不同沈下の原因になりやすい埋め立て、盛り土

特に海岸に近い南側や河川の近くの埋め立てや盛り土で十分に締め固められていない場合には、地盤が柔らかいことから沈下が発生し易いです。また、旧湿地なども自沈層があり不同沈下の原因となることがあるので注意が必要です。

予防策

地盤調査は敷地に1箇所とせず、建物の四隅と中央など多数で行います。盛土が疑われる際は、深基礎や地盤改良・杭などを検討。中古住宅の場合は建物の構造部分にひび割れや破損などの不具合がないか、建物が傾斜してないかを確認をします。

家が建てられる場所かどうか、調査が必要

船橋市は土地の約3分の1を「市街化調整区域」が占めています。「市街化調整区域」とは市街化を抑制すべき区域であり、都市計画法により建築が認められているものを除き、原則として建築物の建築、増改築はできません。また、住宅として建築が認められた建築物を事務所や倉庫など別の用途で使用することも規制されています。

開発行為や開発許可を受けて住宅を建てた場所もありますが、基本的に住宅が建てられるか、建て替えられるのかは土地の所有者の諸条件や敷地条件により異なります。

また、市街化調整区域はライフラインが整備されていない箇所もあり、例えば本下水が未整備の場所は浄化槽などの設置を要するところもありますが、この辺りは概ね田畑と緑が多く、一部低層の閑静な住宅があるエリアになっており、のんびりと静かに過ごせるメリットがあります。

都市部とは異なった落ち着いた場所を探している方には良い住環境ですが、環境を保全するために建築に制限があるため、あらかじめ調査や整備が必要です。まずは船橋市の建築部宅地課へどのような諸条件があるのか確認しておくと良いでしょう。

万が一の災害を予測し、理想の住まいを

たとえ利便性が高く魅力的な場所であったとしても、災害時にはその被害の度合いが地形や地盤に大きく左右されます。

船橋市は下総台地の地域に位置することから、比較的安全なエリアと認識されていることも多いようですが、場所によっては河川の氾濫や湾岸エリア特有の液状化や津波など、水害の危険性を見過ごすことはできません。

魅力的な街だから住みたい!でも、万が一の際の危険性はどのくらい?災害を想定して、どのように整備したら良い?土地勘がないとさまざまな不安がありますよね。そんな時こそ、信頼のおけるホームインスペクション(住宅診断士)を活用されることをおすすめします。

さくら事務所では、実績豊富なホームインスペクターが多く在籍。第三者の立場として、建物についてだけでなく、その土地の地形や地盤を考慮し、それぞれの条件に則した最適解をご提案しています。さらに「宅地建物取引士」「マンション管理士」など、建築士以外の国家ライセンス保有者が在籍し、建物以外にも契約やマンション管理など幅広いご相談対応・フォローが可能です。

家族との思い出を刻む大切な住まいづくりのお手伝いができるよう、さくら事務所が全面的にサポートしてまいります。

船橋市で住宅のご購入を検討されている方はぜひお気軽にお問い合わせください。

ホームインスペクター 田村 啓
監修者

さくら事務所 執行役員
さくら事務所 プロホームインスペクター
さくら事務所 住宅診断プランナー
だいち災害リスク研究所 研究員

田村 啓

大手リフォーム会社での勤務経験を経て、さくら事務所に参画。
建築の専門的な分野から、生活にまつわるお役立ち情報、防災の分野まで幅広い知見を持つ。多くのメディアや講演、YouTubeにて広く情報発信を行い、NHKドラマ『正直不動産』ではインスペクション部分を監修。2021年4月にさくら事務所 経営企画室長に、2022年5月に執行役員に就任。