緑豊かで住みやすい練馬区、地形や災害リスクは大丈夫?

  • Update: 2021-07-31
緑豊かで住みやすい練馬区、地形や災害リスクは大丈夫?

この記事はプロのホームインスペクターが監修しています

練馬区は、緑豊かで閑静な住宅街として知られています。光が丘公園や石神井公園など大きな公園をはじめ、中小の公園数は都内一。農地面積も23区で最も広く、都市型農業の先進地区としての顔を持つ自然豊かなエリアです。

緑あふれる自然を残しながら都心へのアクセスもよく、ベッドタウンとしての魅力を持つ練馬区。子育て世代・ファミリー層からの支持を集め、2021年1月1日の住民基本台帳によれば、23区内での人口は世田谷区に次いで2番目となっているのも特徴です。

暮らしやすい練馬区での住宅購入を検討される方も多くいらっしゃると思います。そこで今回は、東京都のホームインスペクターが、土地の高低差などの地形の特徴を中心に練馬区のエリアの物件選びのポイントを解説します。練馬区での住まい選びにぜひお役立てください。

災害リスクカルテ

練馬区の地形の特徴と注意点

練馬区の地形の特徴と注意点

まずは練馬区の地形の特徴を見ていきましょう。練馬区は、東京23区の北西、東西に約10キロ、南北4~7キロの細長い形状をしています。いわゆる「武蔵野台地」に位置しています。台地とは、周囲に比べて高い平坦な台のような地形のことです。

安定した地盤である高台の「武蔵野台地」に位置

武蔵野台地は火山灰(ローム層)からなる高台の平坦地(主に、下図で「台地」の地域)で、日本に多い洪積台地(こうせきだいち)です。洪積台地は、周囲に比べて盛り上がってできた土地ではなく、河川や波などの影響で浸食されずに残った土地で、川や海よりも高く平坦に残った部分です。

そのため武蔵野台地は、全体的には地盤が強く、沈下や地震の揺れ、液状化、大規模な水害などの災害リスクが小さい地域だといえます。ただし、強い地盤の上に軟弱な土が載っている場所もあることから、建物を建てる際には、都度、地盤の強さや揺れやすさなどを調べる必要があります。

ちなみに「ねりま」という地名の由来は諸説あるようですが、そのうちのひとつに、関東ローム層の赤土をねったところを「ねりば」といったこともあるようです。(練馬区発行「練馬区のあらまし」より)

台地より低くなる谷底低地が川沿いにある

区を横切る形で、北から白子川、石神井川が流れています。川沿いエリアには、台地より低い「谷底低地」が広がります(主に下図で「盛土地」と表記される地域)。川沿いの低い土地であるため、河川の氾濫や洪水に気をつけなければなりません。

谷底低地は、台地や丘陵部分が河川や水路などによって浸食されるなどしてできた谷(くぼみ)部分に、川が運んできた軟弱な泥や砂、枯れた植物などが堆積してできる場合も少なくありません。そういった土地では地盤が弱く、地震の際の揺れが大きくなる可能性が高くなります。

谷底低地の川や沼地にたまった植物は腐植土という水を多く含むぜい弱な土となり、沼地のような状態になります。谷底低地の地盤では腐植土が含まれている場所もあり、軟弱地盤で地盤沈下のおそれが危惧されます。

台地と川沿いエリアの中間にある斜面では土砂災害の懸念も

高台の台地部分と低地の川沿いには当然ながら標高差が生まれます(主に、下図で「台地の斜面」の部分)。ちょうど台地と川沿いの境目にあたる部分が斜面となり、大雨や地震の際の土砂災害(がけ崩れ)が発生するリスクをはらんでいます。

傾斜があり、土砂災害のおそれが予見される斜面では、土砂災害警戒区域が指定されます。一方で、がけ地でありながらも区域指定されていない場所もあり、自然災害の予見が万全に行えるわけではないことから、土砂災害警戒区域に指定されていないがけ地でも、大雨や地震時の土砂災害(がけ崩れ)の可能性を頭に入れておく必要があるでしょう。

斜面での宅地造成では、山側を削って谷側を埋めて作られる場合もあります。ちょうどひな人形を飾る壇のような形状で、階段のようになっている「ひな壇型」の造成地です。

ひな壇型の造成地では、切り土・盛り土などの造成工事、擁壁が行われることが多くなります。このような場所では、地震時の宅地地盤の崩壊(地すべりなど)や、地盤沈下、擁壁の倒壊などが発生する場合があります。より慎重な調査を行う必要がある箇所といえます。

比較的安心な台地地域にも災害リスクはある?

練馬区は武蔵野台地という安定した地盤にあり、住宅用地盤としては比較的良好なエリアと見なされています。

しかし台地の上にあっても、浅い谷やくぼ地のように低くなっている地域(主に、下図で「台地上の凹地・浅い谷」の地域)には注意が必要です。

たとえ近くに川がなくても、雨水が溜まって排水されない「内水氾濫」の危険性があるため注意が必要です。

練馬区の地形の特徴
練馬区の地形の特徴
国土地理院「地理院地図」に土地条件図を表示して抜粋。
図中に地形の名前(紫色文字)、右下に地形の凡例を追記

ここは見逃せない!練馬区での物件探しにおけるチェック項目

道路幅員が狭い土地

土地や地盤、それ以外にも練馬区の物件探しでチェックしておきたい4つのポイントをご紹介します。

谷部分や元は水田だった場所は地盤に注意

安定した地盤である武蔵野台地ですが、場所によっては地盤が弱いところも存在します。特に表層に軟弱な堆積層がある場所は地盤が弱くなる傾向にあり、要注意です。

堆積層とは、がれきや砂、泥やさまざまな鉱物、生物の死骸などの堆積物が時間をかけて層になったものをいいます。層になってから年月を経ていない部分は十分な固さがなく、弱い地盤となっています。次のようなエリアは慎重に地盤を見極めることが大切です。

  • くぼんだ谷部分、周りより標高の低いところ
  • 元は水田だったところ(上で解説した腐植土などが含まれる弱い地盤の可能性がある)

混雑する大通りは騒音や振動の心配がある

練馬区にはバスなどの大型車も通るなど交通量が多いわりに車道が狭く、渋滞の原因になる富士街道、石神井通り、学芸大通り、中杉通りがあります。歩道も狭く、歩行者・自転車にとっては安全な道とはいえません。

練馬区に限らず、バスやトラックなど大型車両がよく通行する道路付近は、建物が振動で揺れる傾向にあります。ただ道幅が狭い道を頻繁にバスが通行、交通量は多いため振動や騒音の影響も少なからずあります。気になる方は交通量の多い道路沿いを避けるなどの対策を検討しておくのがおすすめです。

道路幅員が狭い土地はセットバックも視野に

建築基準法により、住宅の敷地に接する道路は4m以上の幅員(道幅)であり、道路に2m以上接していなければならないと決まっています。4m以上の幅員が確保できないときには、道路の中心線から2mの位置まで敷地を後退させなければ家を建てられません。これをセットバックといいます。

セットバックをすると、見た目の敷地の大きさに比べて建物が建てられる面積が狭まるケースも出てきます。

練馬区では助成金の交付などにより、狭あい道路(きょうあい道路:主に一般の交通に供される幅員4m未満の道路)の解消を進めています。しかし現状、区内の道路の約37%は未だ幅員4m未満の道路となっています。(2021年6月30日現在、練馬区ホームページより)

注文住宅を検討する場合は、建てられる位置・広さの説明を事前に受け、納得の上で進めることが大切です。

生産農地が多い練馬区ならではの注意点

23区で最も農地面積が広い練馬区。住宅地の中に生産緑地が点在し、練馬区の特徴のひとつとなっています。ちなみに生産緑地とは市街化区域内にある農地または森林のこと。法律で最低30年間は農地・緑地とするなど利用目的が決められる代わりに、税制面で優遇される土地のことです。

畑がなくなる?生産緑地2022年問題

生産緑地は制度が始まった1992年に指定された土地が多く、2022年がちょうど30年目にあたります。そこで、2022年には生産緑地としておく義務(営農義務)が切れる土地が多数出てくるといわれています。

今は生産緑地の場所が畑ではなくなる可能性があるということですので、現在検討中の土地の近隣に生産緑地があれば、いずれ建物が建つ可能性があることを考慮します。なお、注文住宅を建てる場合、生産緑地に建物が建った場合を想定し、自分の家の窓の位置や素材などを考えておくといいでしょう。

土や砂ぼこり、落ち葉が飛んでくる

畑や生産緑地が多いため、舞い上がった土・砂ぼこりが自宅まで届くことがあります。車や洗濯物などへの付着、家屋内部までの侵入などの影響も考えられます。同様に落ち葉なども飛来するため、掃除の頻度が高くなるかもしれません。雑草が多くなる、虫が増えるなども可能性として考えられます。

詳細な土地の情報は専門家に相談を!

専門家に相談

練馬区がある武蔵野台地は、住宅に向いている地盤を備えているものの、くぼんだところや谷、台地と谷の境、造成や擁壁を施した場所に地盤が弱い箇所もあり、一見して判断が難しいといえます。

ハザードマップなどの確認も大切ですが、ハザードマップはあくまでも想定であり、指定されていなくても災害が起こる可能性がありますので、その場所ごとのより詳細な災害リスク情報を得ておく必要があります。

そこで検討したいのがホームインスペクション(住宅診断)です。当社では、第三者としての立場を守りつつ、住宅そのものの診断だけでなく、ご希望地点の災害リスクのアドバイスなど、不動産・住まいの総合不動産コンサルティングサービスを多数ご提供しています。家をこれから建てる方であれば、地盤の揺れやすさを調べ、その結果を考慮した耐震性アドバイスも可能です。

お問い合わせから当日まで迅速かつ丁寧に行える社内体制を整備。お待たせすることがないよう、専属の建築士が多数在籍しています。また、「宅地建物取引士」「マンション管理士」など、建築士以外の国家ライセンス保有者も在籍しており、建物以外にも契約やマンション管理など幅広いご相談対応・フォローが可能なのも、さくら事務所ならではの特徴です。

練馬区でお住まいの新築、ご購入を検討の際、気になることがあればお気軽にご相談ください。


ホームインスペクター 田村 啓
監修者

さくら事務所 執行役員
さくら事務所 プロホームインスペクター
さくら事務所 住宅診断プランナー
だいち災害リスク研究所 研究員

田村 啓

大手リフォーム会社での勤務経験を経て、さくら事務所に参画。
建築の専門的な分野から、生活にまつわるお役立ち情報、防災の分野まで幅広い知見を持つ。多くのメディアや講演、YouTubeにて広く情報発信を行い、NHKドラマ『正直不動産』ではインスペクション部分を監修。2021年4月にさくら事務所 経営企画室長に、2022年5月に執行役員に就任。