住宅の基礎工事中に雨が降るのは問題ない!コンクリートに雨が影響しない理由を解説

  • Update: 2022-12-26
住宅の基礎工事中に雨が降るのは問題ない!コンクリートに雨が影響しない理由を解説

この記事はプロのホームインスペクターが監修しています

「マイホームの基礎工事中に雨が降ってきた…コンクリートに水が混ざっても大丈夫だろうか」
「基礎工事が梅雨の時期に重なりそう…基礎の品質に影響しないかな?」

基礎は建物を支える重要な部分です。だからこそ工事中は雨の影響がとても心配ですよね。

実は例外のケースさえ抑えておけば基礎工事中は雨が降っても問題ありません。

今回は基礎工事中の雨が影響しない理由と、抑えておくべき例外のケースについてデータを交えながらわかりやすく解説します。


また以下の動画でも、基礎工事中に雨が降って本当に問題なく建てられるのかを詳しく解説していますので、気になる方はご覧ください。 https://www.youtube.com/watch?v=ZNhogBsCoxA

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基礎工事中のコンクリートに雨が降っても問題ない理由

冒頭お伝えしている通り、基礎工事中の雨は基本的には品質に問題ありません。

主な理由は以下の2点です。

  • コンクリートは乾燥で固まるものではないため
  • 基礎工事中に散水を行うため

それぞれ詳しく解説していきます。

乾燥で固まるものではないから

多くの方は「固まる=乾燥する」といったイメージを持たれているかもしれません。しかしコンクリートが固まるメカニズムは、実は乾燥によるものではありません。

コンクリートが固まるメカニズムは水とセメントの化学反応によるものです。この反応は水和反応という名前です。

水和反応は水とセメントが混ざった直後から始まり、数日間で急激に進み、固まります。しかし固まった後も反応が進み、緩やかにコンクリートの強度が上がっていきます。

出典)住友大阪セメント株式会社 技術資料第2版 p.21

このようにコンクリートは乾燥で固まるわけではないので、雨が降っても品質に影響はありません。

散水するから

基礎工事の流れは大まかに以下の流れで進みます。

 1. 地縄はり・遣り方工事 建物の位置を確認

 2. 掘削 基礎の形に合わせて地面を掘る

 3. 砕石敷き・捨てコンクリート 地面を締め固め、基礎下を平らにする

 4. 配筋 基礎の骨組みの鉄筋を組み上げる

 5. 型枠 コンクリートを流し込む枠を作る

 6. コンクリート打設 コンクリートを型枠に流し込む

 7. 養生 コンクリートが固まるまで待つ

 8. 脱型枠 型枠を外す

 9. 仕上げ 段差や継ぎ目などを綺麗に研磨する

尚、より詳しく基礎工事の流れを知りたい方はこちらのコラムをお読みください。

※合わせて読みたい
【図解ガイド】基礎工事とは?種類や工程もすべてご紹介

手順6のコンクリート打設を行なった後に、乾燥を防止するためにコンクリート表面に水をかける場合があります。

実はコンクリートが固まる過程は乾燥が大敵です。理由は固まるまでにコンクリートが乾燥してしまうことで水和反応に使う水分が不足し、十分な強度が出ないためです。

下図のように、むしろ常に表面が濡れた状態の方がコンクリートが乾燥せず、緻密な状態で固まるため強度が高くなります。

出典)東京土木施工管理技士会 「基礎講座 コンクリート施工のポイント3」p.9

【例外】雨でコンクリートに影響するケース

基本的には基礎工事中の雨は影響がないとお伝えしましたが、実は例外もあります。

具体的に説明すると以下のようなケースです。

  • 基礎コンクリート打設中の雨
  • 土砂降り、ゲリラ豪雨

それぞれ、なぜ例外になるのかを詳しく解説していきます。

基礎コンクリート打設中の雨

基礎の型枠にコンクリートを流し込む「コンクリート打設」の作業中に雨が降ると強度に影響します。

先ほどのグラフをもう一度見てみましょう。
グラフには3つの曲線が並んでいます。水セメント比(W/C)と呼ばれる数値別に3つのコンクリート強度が、時間と共にどう変化するかを比較しています。

出典)住友大阪セメント株式会社 技術資料第2版 p.21

水セメント比とは「セメントに対する水の量」のことで、値が大きいほど水分量が多い状態を表しています。

水セメント比が多いほど、コンクリートは強度が低くなっていきます。打設中に多量の雨水が混ざると設計された強度が得られなくなるため、注意が必要です。

土砂降り・ゲリラ豪雨

土砂降り・ゲリラ豪雨など多量の雨が降っている中でのコンクリート打設は、先に述べたようにコンクリート強度に悪影響を与えるため、もちろん論外の行為です。

ただ、このような雨の強い状態は打設後も注意が必要です。先に述べたようにコンクリートは打ちたての柔らかい状態で、強い雨に降られたとしても強度自体に影響はありません。しかし柔らかいコンクリートに強い雨が当たり続けると、表面の仕上がりがガタガタになってしまいます。

そのため強雨やゲリラ豪雨が多く発生する梅雨の時期は以下の点について対策が必要でしょう。

  • 強雨予報前には打設しない
  • ゲリラ豪雨に備えシートなどで養生

基礎工事の雨で不安が残るならホームインスペクションを活用しよう

基礎工事中の雨で基礎の強度に影響するのは以下の場合です。

  • 基礎打設中の雨
  • 打設後の強雨、ゲリラ豪雨

上記以外の雨は基礎工事に悪影響はありません。むしろセメントと水との間に水和反応がしっかり行われ、強度が上がるケースがあります。

とはいえ基礎工事中の雨は気になるものです。

「基礎工事中に大雨が何度も降ったけれど、うちの家は大丈夫だろうか?」
「雨対策をしてあるように見えるけど、果たして正しい方法なのか?」

など、考え始めると不安は尽きないでしょう。

これらの不安を解消する方法の一つにさくら事務所の新築工事中ホームインスペクション(第三者検査)サービスがあります。

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ホームインスペクター 田村 啓
監修者

さくら事務所 執行役員
さくら事務所 プロホームインスペクター
さくら事務所 住宅診断プランナー
だいち災害リスク研究所 研究員

田村 啓

大手リフォーム会社での勤務経験を経て、さくら事務所に参画。
建築の専門的な分野から、生活にまつわるお役立ち情報、防災の分野まで幅広い知見を持つ。多くのメディアや講演、YouTubeにて広く情報発信を行い、NHKドラマ『正直不動産』ではインスペクション部分を監修。2021年4月にさくら事務所 経営企画室長に、2022年5月に執行役員に就任。